「ジュウシマツ(十姉妹)」と「ブンチョウ(文鳥)」、どちらも小さく愛らしいフィンチの仲間で、古くから日本で愛されてきた飼い鳥の代表格です。
見た目やサイズ感は似ていますが、実は性格、人へのなつきやすさ、そして飼育の楽しみ方が全く異なる鳥だということをご存知でしたか?
ジュウシマツは「温和で協調性抜群の社会派」、文鳥は「情熱的で飼い主に深く懐くパートナー」と言えます。この記事を読めば、それぞれの魅力や飼育上の重要な違いがスッキリと理解できます。あなたが家族に迎えるのは、優しいジュウシマツでしょうか?それとも、情熱的な文鳥でしょうか?
【3秒で押さえる要点】
- 性格:ジュウシマツは非常に温和で他の鳥とも協調できる(多頭飼い向き)。文鳥は活発で縄張り意識が強く、飼い主には非常に良くなつく(単独飼い推奨)。
- なつきやすさ:ジュウシマツは人にはあまり懐かない(観賞向き)。文鳥は「手乗り文鳥」と呼ばれるほど人に懐き、深い絆を築ける。
- 見た目(クチバシ):ジュウシマツは鉛色(暗い灰色)で細め。文鳥は鮮やかなピンク色(桜・白文鳥の場合)で太くがっしり。
| 項目 | ジュウシマツ(十姉妹) | 文鳥(ブンチョウ) |
|---|---|---|
| 分類・系統 | スズメ目 カエデチョウ科 | |
| サイズ(全長) | 約11〜12cm | 約13〜14cm |
| サイズ(体重) | 約12〜15g | 約23〜25g |
| 行動・性質 | 温和、臆病、社会性が非常に高い。他の鳥とも争いにくい(多頭飼い向き)。 | 活発、勇敢、縄張り意識が強い。飼い主への愛情が深い(単独飼い推奨)。 |
| 人へのなつきやすさ | なつきにくい(観賞向き)。 | 非常になつきやすい(手乗り文鳥)。 |
| 鳴き声 | オスが「ピピピ」「ジュクジュク」と小さくさえずる。メスはほぼ鳴かない。 | オスが「ピッ」「チチッ」とさえずる。メスは「チッ」「ピッ」という地鳴きが中心。 |
| 飼育難易度 | 易しい(初心者向け)。 | 易しい(初心者向けだが、愛情深く、発情管理などに注意が必要)。 |
| 寿命 | 約7〜10年 | 約7〜10年 |
| 原産地 | 作出種(野生種なし)。日本または中国が起源とされる。 | インドネシア(ジャワ島、バリ島など)。 |
| かかりやすい病気 | 卵詰まり(メス)、消化器系疾患、そのう炎 | 卵詰まり(メス)、肝臓疾患、トリコモナス症、副鼻腔炎 |
見た目とサイズの違い
最大の違いはクチバシの色と形、そして体格です。ジュウシマツのクチバシは鉛色(暗い灰色)で細めですが、文鳥は鮮やかなピンク色(桜文鳥や白文鳥の場合)で円錐形のがっしりしたクチバシを持ちます。並べると文鳥の方が一回り大きく、体重もジュウシマツの約1.5倍から2倍近くあります。
ジュウシマツと文鳥は、どちらも手のひらに乗る小型フィンチですが、並べてみると意外なほど体格差があります。ジュウシマツは全長約11〜12cm、体重は約12〜15gと非常に軽量です。
一方、文鳥は全長約13〜14cm、体重は約23〜25gと、ジュウシマツに比べてずっしりと重く、体格も一回り大きいです。
見分け方の最大のポイントは、クチバシでしょう。
ジュウシマツのクチバシは鉛色(暗い灰色)で、やや細長い形状をしています。対照的に、文鳥(特に桜文鳥や白文鳥)のクチバシは、鮮やかなピンク色で太く、がっしりとした円錐形をしています。このクチバシの色の違いは、遠目からでも識別できる最も簡単な違いです。
羽色については、ジュウシマツは「並ジュウシマツ」と呼ばれる茶色と白のまだら模様が基本ですが、白ジュウシマツやシナモン、小斑(こぶち)など様々な品種がいます。文鳥も、黒と白のコントラストが美しい「桜文鳥」、真っ白な「白文鳥」、淡いグレーの「シルバー文鳥」、茶色系の「シナモン文鳥」など、多様な品種(カラーバリエーション)が存在します。
性格・行動特性としつけやすさの違い
性格は正反対です。ジュウシマツ(十姉妹)は「十姉妹」の名前の通り、非常に温和で社会性が高く、他の鳥とも争わないため多頭飼いに最適ですが、人にはあまり懐きません。一方、文鳥は活発で縄張り意識が強く、1羽飼いが基本ですが、飼い主には非常に深く懐き、強い愛情表現を見せます。
ここが両者の最大の違いであり、飼い主のライフスタイルに最も影響を与える部分です。
ジュウシマツは、その和名「十姉妹」が示す通り、とにかく温和で協調性抜群です。オス同士、メス同士、あるいは他のフィンチ類と一緒にカゴに入れても、ほとんど争いを起こしません(もちろん相性はありますが)。このため、複数の鳥が賑やかにしている様子を眺めたい「観賞派」の飼い主さんには最適です。しかし、その反面、臆病な性格でもあり、人にベったりと懐く「手乗り」にはなりにくい傾向があります。
一方、文鳥は非常に活発で、好奇心旺盛、そして勇敢な性格をしています。縄張り意識が強いため、特にオス同士は激しく争うことがあり、多頭飼いには細心の注意が必要(基本は1羽飼い推奨)です。
その代わり、飼い主と認めた相手には、犬や猫にも負けないほど深い愛情を注ぎます。「手乗り文鳥」という言葉があるように、ヒナから育てれば飼い主の手や肩に乗るだけでなく、後をついて回ったり、飼い主のそばでウトウトしたりと、まさに「パートナー」と呼べる関係を築くことができます。
しつけという面では、どちらも賢い鳥ですが、文鳥の方が飼い主とのコミュニケーションを強く望むため、しつけ(芸)を覚えさせる楽しみは大きいかもしれません。
寿命・健康リスク・病気の違い
どちらの鳥も平均寿命は約7年~10年ほどで、大きな差はありません。ただし、個体差や飼育環境によって10年以上生きることも珍しくありません。どちらも小型鳥類特有の病気に注意が必要ですが、特に文鳥はトリコモナス症(原虫による感染症)にかかりやすい傾向が指摘されることがあります。
ジュウシマツと文鳥の平均寿命は、どちらも約7年~10年とされています。もちろん、これは飼育下での平均であり、ストレスのない環境と適切な栄養管理、早期の病気発見によって、10年を超える長寿になることも十分に可能です。
かかりやすい病気も、小型の飼い鳥として共通する部分が多いです。
メスはどちらも「卵詰まり(卵塞:らんそく)」のリスクが常につきまといます。これは、卵が体内で詰まってしまい、命に関わる緊急事態です。発情をさせすぎない温度管理や食事管理が予防の鍵となります。
また、ジュウシマツは消化器系の疾患(そのう炎など)に、文鳥は肝臓疾患や、ヒナの時期にトリコモナス症という原虫の感染症にかかりやすい傾向があるとも言われます。どちらを飼うにしても、鳥を専門的に診てくれる動物病院を事前に探しておくことが非常に重要です。
「ジュウシマツ」と「文鳥」の共通点
最大の共通点は、どちらもスズメ目カエデチョウ科に属するフィンチ(硬い種子を主食とする鳥)の仲間であることです。そのため、基本的な飼育設備(ケージ、餌入れ、水入れ)や主食(シードミックスやペレット)はほぼ同じもので対応できます。
見た目や性格は異なりますが、ジュウシマツと文鳥は非常に近い仲間です。
- 分類:どちらもスズメ目カエデチョウ科に属する「フィンチ」です。フィンチは、インコやオウムとは異なり、穀物や種子をすり潰して食べるための、比較的短く太いクチバシを持つグループを指します。
- 食性:主食はヒエ、アワ、キビなどの穀物を混ぜたシードミックス、または栄養バランスの取れたペレットフードです。青菜(小松菜など)やボレー粉(カキの殻)でビタミンやカルシウムを補う点も共通しています。
- 飼育環境:基本的な飼育ケージや、水浴びが大好き(!)な点も共通しています。フィンチは寒さにやや弱いため、特に冬場の温度管理(保温)が重要である点も同じです。
- 鳴き声:どちらもオスがメスへの求愛のために「さえずり(歌)」を歌います。ただし、そのメロディや音量は異なります。
歴史・ルーツと性質の関係
両者の歴史は対照的です。文鳥はインドネシア原産の野生種(Java Sparrow)を江戸時代に日本へ輸入し、品種改良が進んだ鳥です。一方、ジュウシマツは野生種が存在せず、コシジロキンパラなどの鳥を元に、日本(一説には中国)で完全に飼い鳥(か いどり)として作出された品種です。
文鳥の情熱的な性格と、ジュウシマツの温和な性格は、それぞれのルーツに秘密があります。
文鳥の原産地はインドネシアのジャワ島やバリ島で、もともとは野生に生息していた鳥です(学名: *Padda oryzivora*)。日本には江戸時代に輸入され、その美しい姿と鳴き声から愛玩鳥として広まりました。野生由来の活発さや縄張り意識を色濃く残しているのが特徴です。
一方、ジュウシマツは、実は野生種が存在しない、完全な「飼い鳥(か いどり)」です。その起源ははっきりしない部分もありますが、コシジロキンパラという別のフィンチを原種に、江戸時代の日本(あるいは中国)で、より温和で他の鳥の世話(仮母:かも=他の鳥のヒナを育てる役割)ができるようにと人為的に品種改良(作出)されてきた歴史があります。
ジュウシマツのあの極端なまでの温和さと協調性は、人間によって数百年かけて選別されてきた結果なのです。
どっちを選ぶべき?ライフスタイル別おすすめ
鳥との深い触れ合いや「手乗り」を望むなら、間違いなく文鳥です。一方、複数の鳥が仲良くしている姿を眺めて癒されたい、または他のフィンチとの同居を考えているならジュウシマツが最適です。
あなたが鳥との生活に何を求めるかで、選ぶべきパートナーは決まります。
【ジュウシマツがおすすめな人】
- 複数の鳥を同じカゴで飼いたい(多頭飼い)
- 鳥がカゴの中で仲良くさえずる姿を「観賞」して癒されたい
- 人間にベタベタ慣れることよりも、鳥同士の社会性を観察したい
- すでに他のフィンチ(キンカチョウなど)を飼っていて、同居相手を探している
- 鳥の飼育が全くの初めてで、とにかく温和で飼いやすい種類から始めたい
【文鳥がおすすめな人】
- 「手乗り」として、鳥と深いコミュニケーションを取りたい
- 1羽の鳥とじっくり向き合い、深い絆(愛情)を築きたい
- 飼い主の後をついて回るような、犬猫のような懐き方を鳥に求めている
- 活発で、自己主張がはっきりした個性に魅力を感じる
- オスが奏でる美しい「さえずり」を聴きたい
どちらも飼育スペースや基本的な餌は同じですが、「鳥とどう関わりたいか」という点が決定的な違いになります。
僕が出会った「ジュウシマツ」の優しさと「文鳥」の情熱
僕が子供の頃、初めて飼った鳥がジュウシマツでした。2羽のペアでしたが、彼らはいつも寄り添い、毛づくろいをし合い、カゴの中はいつも平和そのものでした。僕がカゴに手を入れても、パニックになって逃げるだけで、決して噛みついたり威嚇したりしません。彼らにとって僕は「大きな何か」でしかなく、仲間として認められることは最後までありませんでした。それでも、その穏やかな姿は、子供心に「優しさ」を教えてくれた気がします。
一方、友人が飼っていた手乗りの桜文鳥は衝撃的でした。その文鳥は、友人が部屋に入ると「ピッ!」と鳴いてカゴから飛び出し、一直線に友人の肩へ。僕が手を出そうとすると、友人を守るかのように「ガッ!」と鋭いクチバシで本気で噛みついてきました。
飼い主だけに向けられる、あの強烈な独占欲と情熱。ジュウシマツの「優しさ」が全体に向けられたものだとしたら、文鳥の「愛情」はたった一人に向けられた鋭い矢のようだと感じた体験です。
「ジュウシマツ」と「文鳥」に関するよくある質問
Q: ジュウシマツと文鳥、鳴き声がうるさいのはどっちですか?
A: どちらもインコやオウムに比べれば鳴き声は非常に小さいです。ただし、鳴き声の「質」が異なります。ジュウシマツのオスは「ピピピ」「ジュクジュク」と複雑で小さな声でさえずります。文鳥のオスは「ピッ!ピッ!チチチ…」と比較的クリアで響く声でさえずります。どちらも「騒音」というレベルではありませんが、文鳥の方が声が通りやすいため、アパートなどでは気になる場合があるかもしれません。
Q: ジュウシマツは本当に「十姉妹」という名前の通り、メスばかりなのですか?
A: いいえ、オスもメスもいます。名前の由来は、姉妹のように仲が良い(=協調性が高い)ことから来ています。オスとメスは外見でほぼ見分けがつかず、オスだけが「さえずる(歌う)」ことで判別するのが一般的です。
Q: 文鳥は1羽飼いだと可哀想ではないですか?
A: 文鳥は縄張り意識が強く、飼い主との絆を非常に深く築く鳥です。そのため、飼い主さんが毎日たっぷりと放鳥(カゴから出す)時間を確保し、遊んであげられるのであれば、1羽飼いでも全く可哀想ではありません。むしろ、飼い主さんを「つがい」の相手と認識し、深い愛情を注いでくれます。逆に中途半端に2羽で飼うと、鳥同士でペアになってしまい、「手乗り」ではなくなる可能性もあります。
Q: ジュウシマツと文鳥を同じカゴで飼えますか?
A: 推奨されません。ジュウシマツは非常に温和ですが、文鳥は活発で縄張り意識が強い(特にオス)ため、ジュウシマツが一方的にいじめられてしまう可能性が非常に高いです。体格差もあるため、喧嘩になるとジュウシマツが怪我をする恐れがあります。フィンチ同士であっても、種が違う場合はカゴを分けるのが基本です。
「ジュウシマツ」と「文鳥」の違いのまとめ
ジュウシマツと文鳥、どちらも日本の飼い鳥文化を象徴する素晴らしいフィンチですが、その魅力は正反対と言ってもいいでしょう。
- 性格と関係性:ジュウシマツは「温和で平和」。鳥同士の社会性を眺めて癒される観賞向き。文鳥は「情熱的で一途」。飼い主と1対1の深い絆を築くパートナー向き。
- 見た目(クチバシ):ジュウシマツは鉛色で細め。文鳥はピンク色(桜・白)で太くがっしり。
- 飼育形態:ジュウシマツは協調性が高いため多頭飼いが容易。文鳥は縄張り意識が強いため1羽飼いが基本。
- ルーツ:ジュウシマツは人によって作出された完全な飼い鳥。文鳥は野生種を家畜化した鳥。
もしあなたが初めて鳥を飼うなら、どちらを選んでも素晴らしい体験が待っています。あなたが鳥に何を求めるかをじっくり考えて、最高のパートナーを選んでくださいね。他の鳥類やペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。