コビトカバとカバの違い!体重10分の1&臆病な世界三大珍獣

「コビトカバ」と「カバ」、名前は似ていますが「カバのミニチュアサイズ」と思ったら大間違いです。

結論から言うと、この二種は生物学的に「属」レベルで異なる、全く別の動物です。カバが「カバ属」であるのに対し、コビトカバは「コビトカバ属」という独立した属に分類されます。

最大の違いは、カバが「サバンナの水辺」で「群れ」を作る のに対し、コビトカバは「森林の湿地」で「単独」生活を送ることです。この記事を読めば、その決定的な見分け方から、性格、危険性の違いまでスッキリと理解できます。

【3秒で押さえる要点】

  • サイズ:コビトカバの体重はカバの約10分の1しかなく、圧倒的に小型です。
  • 生態:カバはサバンナの川で「群れ」を作ります。コビトカバは森林の湿地で「単独」生活をします。
  • 性格と危険性:カバは非常に攻撃的で危険猛獣 ですが、コビトカバは臆病な動物です。
「コビトカバ」と「カバ」の主な違い
項目 コビトカバ(Pygmy Hippopotamus) カバ(Hippopotamus)
分類・系統 カバ科 コビトカバ属 カバ科 カバ属
サイズ(体重) 約180〜275kg 約1,600〜3,200kg
形態(頭部) 丸みがある。目は側面にあり突出しない。 四角形で平ら。目は上面に突出し、水面から出せる。
形態(体型) 丸みがある。背中がやや傾斜。 巨大な樽型
生息域(環境) 森林内の湿地・沼 サバンナの河川・湖
生息域(国) 西アフリカの一部(リベリア、シエラレオネなど) アフリカ大陸(サハラ以南)の広範囲
行動(社会性) 単独生活(またはペア) 群れ(10〜30頭)で生活
行動(水中依存度) 陸上での活動も多い。出産・哺乳は陸上。 日中の大半を水中で過ごす。出産・哺乳も水中。
性格 臆病、警戒心が強い 非常に攻撃的・縄張り意識が強い
法規制(日本) 特定動物(飼育に許可が必要) 特定動物(飼育に許可が必要)
保全状況(IUCN) EN(絶滅危惧種) VU(危急種)

形態・見た目とサイズの違い

【要点】

コビトカバはカバの約10分の1の体重しかありません。また、カバの目は水面から周囲を警戒するために顔の上面に突出していますが、コビトカバの目は突出しておらず、顔も丸みを帯びています。

まず、誰もが一目でわかるのが「サイズ」です。
カバ(標準和名カバ)は、ゾウやサイに次ぐ巨大な陸生哺乳類で、体重は1.6トンから3トンを超えることもあります。
一方、コビトカバの体重は180kg〜275kg程度。なんと、カバの約10分の1ほどの体重しかなく、ブタやイノシシとさほど変わらない大きさです。

顔つきも決定的に異なります。
カバは、一日の大半を水中で過ごすため、目・耳・鼻が顔の上面に一直線に並んでおり、水面から突出しやすい構造になっています。これにより、体を水中に隠したまま呼吸や周囲の警戒ができます。
コビトカバは、カバほど水中生活に依存していないため、目は顔の側面にあり、突出していません。頭の形も、カバが四角く平らなのに対し、コビトカバは丸みを帯びています。

行動・生態・ライフサイクルの違い

【要点】

生態は正反対です。カバは日中を水中で「群れ」で過ごし、夜間に陸に上がって草を食べます。コビトカバは森林で「単独生活」を好み、陸上での活動時間も長く、出産や子育ても陸上で行います。

コビトカバが「ミニカバ」ではない理由は、その生態がカバとは全く異なる点にあります。

社会性(群れ vs 単独)
カバは「群れ」で生活する社会的な動物です。日中は10頭から30頭ほどの群れ(ポッド)で水中に集まり、縄張り意識の強いオスが群れを率います。
一方、コビトカバは基本的に「単独」で生活します。繁殖期にペアになる以外は、森林の中で一頭で行動します。

生活空間(水中 vs 陸上)
カバは皮膚が乾燥に非常に弱いため、日中のほとんどを川や湖の「水中」で過ごし、体温調節と皮膚の保湿を行います。出産や授乳、交尾さえも水中で行うほど、水への依存度が高いです。
コビトカバも皮膚は乾燥に弱いですが、生息地が湿度の高い森林の中であるため、カバほど水に浸かり続ける必要がありません。陸上での活動時間も長く、出産や子育ても主に陸上で行います。

夜になるとどちらも陸に上がって草や木の葉、果実などを食べる草食動物です。

生息域・分布・環境適応の違い

【要点】

生息する環境が全く異なります。カバはアフリカ大陸の広範囲(サハラ以南)にわたり、「サバンナの河川や湖沼」に生息します。コビトカバは「西アフリカの熱帯雨林や湿地帯」という限られた地域にのみ生息しています。

両者は同じアフリカ大陸の動物ですが、住んでいる場所は重なっていません。

カバは、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸の、河川や湖沼とその周辺の草原(サバンナ)に広く分布しています。日中を過ごす水場と、夜間に採食する草原が揃った環境が必要です。

コビトカバの生息域は非常に限定的で、西アフリカの熱帯雨林や湿地帯(主にリベリア、シエラレオネ、ギニア、コートジボワール)にしか生息していません。サバンナではなく、常に湿度が高く、身を隠す場所の多い鬱蒼とした森の中を好みます。

危険性・衛生・法規制の違い

【要点】

性格と危険性も正反対です。カバはアフリカで最も多くの人間を死傷させる動物の一つとされるほど攻撃的な猛獣です。コビトカバは非常に臆病で、人や危険を避けて生活します。どちらも日本では「特定動物」に指定され、愛玩目的での飼育は禁止されています。

動物園でのんびりしているイメージとは裏腹に、野生のカバは非常に危険な動物です。

カバ(危険動物)
カバは非常に縄張り意識が強く、攻撃的です。特に水辺の縄張りに侵入するものは、ワニであろうとボートであろうと容赦なく攻撃します。アフリカ大陸では、ライオンやワニよりも多くの人命を奪う「最も危険な動物の一つ」として知られています。

コビトカバ(臆病)
一方、コビトカバは非常に臆病でおとなしい性格をしており、人間を含む外敵の気配を感じると、すぐに森の奥深くや水中に逃げ込んで隠れてしまいます。

法規制(共通)
どちらもカバ科の動物であり、日本では「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」に基づき、特定動物(危険な動物)に指定されています。
2020年6月以降、愛玩目的(ペット)での新規飼育は禁止されており、動物園や試験研究施設など、特定の目的でのみ都道府県知事などの許可を得て飼育が可能です。

保全状況(絶滅危惧)
どちらも生息数の減少が懸念されています。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにおいて、カバは「VU(危急種)」、コビトカバはそれより深刻な「EN(絶滅危惧種)」に指定されています。
コビトカバは、ジャイアントパンダ、オカピと並び「世界三大珍獣」の一つとしても知られています。

「コビトカバ」と「カバ」の共通点

【要点】

どちらもカバ科の動物であり、皮膚が乾燥に弱く、体表から「赤い汗」と呼ばれるピンク色の粘液を分泌して皮膚を保護します。また、どちらも基本的には夜行性で、夜間に陸に上がって採食活動を行います。

属レベルで異なる動物ですが、もちろん「カバ科」としての共通点も多く持っています。

  1. 分類:どちらも偶蹄目 カバ科に属します。
  2. 皮膚:皮膚が乾燥に非常に弱く、体毛がほとんどありません。皮膚を保護するために、体表から「血の汗」とも呼ばれるピンク色(最初は透明)の粘液を分泌します(これは汗ではありません)。
  3. 活動時間:どちらも基本的には夜行性です。日中は水辺や森で休み、夜間に陸に上がって草や木の葉、果実などを食べます。
  4. 大きな口と牙:どちらも口が大きく裂け、鋭く発達した犬歯(牙)を持っています。

ミニチュアじゃない!動物園で驚いた「別物感」(体験談)

僕が初めて動物園でコビトカバを見たとき、正直「カバの赤ちゃんかな?」と思ってしまいました。しかし、解説パネルを読んで、まず「これで大人(成獣)」であることに驚きました。

カバ(標準和名カバ)が水中で目と鼻だけを出して 巨体を潜ませているのに対し、コビトカバは陸上の展示スペースをトコトコと歩き回っていました。その姿は、カバ特有の威圧感や重々しさとは無縁で、むしろブタやミニチュアホースに近いような、愛らしいコンパクトさでした。

そして何より違うのが「顔」です。カバの目は、水面から外を覗くために顔の真上に「飛び出して」いますが、コビトカバの目は顔の側面にあり、まったく突出していません。その丸みを帯びた頭 とつぶらな瞳は、カバとは全く異なる進化を遂げた動物であることを雄弁に物語っていました。

「コビト」という名前は、単にサイズが小さいというだけでなく、カバの「水中生活特化型」の進化とは別の道を歩んだ「森林生活適応型」の進化 を示しているのだと、その「別物感」に感動したのを覚えています。

「コビトカバ」と「カバ」に関するよくある質問

Q: コビトカバは「世界三大珍獣」の一つですか?

A: はい。コビトカバは、その希少性や生態が長く謎に包まれていたことなどから、「ジャイアントパンダ」「オカピ」と並び、「世界三大珍獣」の一つとして数えられています。

Q: カバの「赤い汗」は本当に血なんですか?

A: いいえ、血ではありません。カバ(コビトカバも同様)は、皮膚を乾燥や紫外線から守るために、ピンク色(最初は透明)の粘液を分泌します。これが汗や血のように見えるため、「血の汗」と呼ばれることがあります。

Q: カバはなぜそんなに危険なのですか?

A: カバは非常に縄張り意識が強い動物です。特に水中の縄張りにボートや人が侵入すると、自分たちのテリトリーを守るために激しく攻撃します。体重数トンにもなる巨体と、巨大な牙を持つため、アフリカではライオンやワニ以上に人間を死傷させる動物として恐れられています。

Q: コビトカバやカバをペットとして飼うことはできますか?

A: できません。コビトカバもカバも、動物愛護管理法において「特定動物」に指定されています。2020年6月の法改正により、愛玩(ペット)目的での新規飼育は禁止されました。

「コビトカバ」と「カバ」の違いのまとめ

コビトカバとカバは、名前こそ似ていますが、カバ科という共通点以外は、全く異なる進化を遂げた動物です。

  1. 分類とサイズ:属が異なり、体重は約10倍の差があります。
  2. 生息地:カバは「サバンナの水辺」、コビトカバは「西アフリカの森林」 に生息します。
  3. 生態:カバは「群れ」で水中に依存、コビトカバは「単独」で陸上での活動も多いです。
  4. 性格と危険性:カバは非常に攻撃的、コビトカバは臆病です。
  5. 保全状況:カバは「危急種(VU)」、コビトカバは「絶滅危惧種(EN)」 であり、「世界三大珍獣」の一つ です。

環境省は両種を特定動物に指定し、その危険性と飼育の難しさを示しています。動物園で彼らを見るときは、その全く異なる生態の違いに注目してみてください。他の哺乳類の動物たちの違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。