「コラット」と「ロシアンブルー」、どちらも銀色に輝くブルー(灰色)の被毛を持つ、非常に美しく気品のある猫ですよね。
その洗練された姿は「ブルーキャット御三家」(コラット、ロシアンブルー、シャルトリュー)とも呼ばれ、しばしば混同されます。
しかし、この2犬種ならぬ2猫種は、原産国も体型も、そして性格も異なる、まったく別の猫種です。
結論から言うと、「コラット」はタイ原産で筋肉質なハート型の顔を持つ猫であり、「ロシアンブルー」はロシア原産でスリムな体型とアーモンド型の目が特徴的な猫です。この記事では、このそっくりな美猫2種の見分け方と、飼育上の違いについて詳しく解説します!
【3秒で押さえる要点】
- 体型:コラットは筋肉質でがっしりしており、見た目より重い(セミコビー)。ロシアンブルーはスリムでしなやか(フォーリン)。
- 顔と目:コラットは顔全体がハート型で、目は丸くペリドットグリーン。ロシアンブルーは顔がV字型(ウェッジ)で、目はアーモンド型のエメラルドグリーン。
- 被毛:コラットはシングルコートでサテンのような光沢。ロシアンブルーはダブルコートで、厚くビロードのような手触り。
| 項目 | コラット(Korat) | ロシアンブルー(Russian Blue) |
|---|---|---|
| 原産国 | タイ | ロシア |
| 分類・体型 | セミコビー(やや丸く筋肉質) | フォーリン(スリムでしなやか) |
| 顔の形 | ハート型 | V字型(ウェッジシェイプ) |
| 目の形 | 丸く大きい | アーモンド型(つり目気味) |
| 目の色 | ペリドットグリーン(またはヘーゼル、イエローも許容される場合あり) | エメラルドグリーン(グリーンのみ) |
| 被毛の構造 | シングルコート(アンダーコートがほぼ無い) | ダブルコート(アンダーコートが密生) |
| 毛質 | 短毛。サテンのような光沢。 | 短毛。厚くビロードのよう。毛先が銀色(ティッピング)。 |
| 性格 | 愛情深く、賢い。遊び好き。ややプライドが高く自己主張もする。 | 飼い主に忠実(犬のよう)。人見知りで神経質。静かで穏やか。 |
| 鳴き声 | 比較的よく鳴き、飼い主に話しかける。声は柔らかい。 | 「ボイスレスキャット」と呼ばれるほど静かで鳴き声が小さい。 |
| 飼育難易度 | 中級者向け(愛情深く、要求も示す) | 中級者向け(賢いが、神経質でストレスに配慮が必要) |
見た目とサイズの違い
最大の見分けポイントは、顔の形・目の色・被毛の構造です。コラットは「ハート型の顔」に「丸い目」、「シングルコート」。ロシアンブルーは「V字型の顔」に「アーモンド型の目」、「ダブルコート」です。
銀灰色の短毛種という点でそっくりな両者ですが、細部を比較すると明確な違いがあります。
体型
ロシアンブルーは「フォーリン」と呼ばれる、スリムでしなやか、手足や胴体が長いエレガントな体型をしています。一方、コラットは「セミコビー」に分類され、ロシアンブルーよりも筋肉質でがっしりしており、丸みを帯びています。抱き上げると見た目よりもずっしりと重く感じることが多いです。
顔の形と目の色
最も分かりやすい違いが顔です。
- コラット:顔全体がハート型に見え、目が丸く大きいのが特徴です。目の色は、輝くような「ペリドットグリーン」(黄緑色)と表現されますが、ヘーゼル(淡褐色)やイエロー、ゴールドも許容される場合があります。
- ロシアンブルー:顔の輪郭がV字型(シャープなウェッジシェイプ)です。目はアーモンド型で、色は鮮やかな「エメラルドグリーン」のみが認められています。
どちらも子猫の頃はキトンブルー(青みがかった色)の目をしており、成長と共にグリーンに変化していきます。
被毛(コート)の違い
手触りも異なります。コラットはアンダーコート(下毛)がほとんどないシングルコートで、毛は短く、サテンのように滑らかで光沢があります。
一方、ロシアンブルーはアンダーコートが密生したダブルコートです。毛が二重になっているため非常に厚みがあり、その手触りはビロード(ベルベット)に例えられます。毛先の先端だけが銀色に輝く「ティッピング」もロシアンブルーの大きな特徴です。
性格・行動特性としつけやすさの違い
どちらも賢く、飼い主に愛情深い性格です。ロシアンブルーは「ボイスレスキャット」と呼ばれるほど静かで人見知り、神経質な面が強いです。一方、コラットは比較的おしゃべりで、飼い主に話しかけるように鳴き、自己主張もハッキリする傾向があります。
見た目だけでなく、性格にも対照的な面があります。
コラットの性格
コラットは、非常に愛情深く、賢い猫です。飼い主と認めた相手には強い絆を結び、寄り添うことを好みます。遊び好きで活発な一面もありますが、基本的には穏やかで静かな環境を好みます。
ロシアンブルーとの大きな違いは「鳴き声」です。コラットは比較的おしゃべりで、飼い主に話しかけるようによく鳴くと言われています。ただし、その声は柔らかくメロディアスだと表現されます。
ロシアンブルーの性格
ロシアンブルーは、「ボイスレスキャット」または「サイレントキャット」の異名を持つほど、鳴き声が小さく、物静かな猫として有名です。
飼い主には「犬のよう」と例えられるほど非常に忠実で、深い愛情を示します。しかし、その忠誠心は特定の人にしか向けられず、見知らぬ人には極度に人見知りをし、神経質で臆病な側面が強く出ます。環境の変化にも敏感で、ストレスを感じやすいため、静かで落ち着いた環境での飼育が求められます。
しつけに関しては、どちらも非常に賢いため物覚えは早いですが、コラットはややプライドが高い面、ロシアンブルーはプライドが高く神経質な面 があるため、叱るしつけは逆効果です。根気よく褒めて伸ばす必要があります。
寿命・健康リスク・病気の違い
寿命はどちらも10〜15年程度と平均的です。コラットは遺伝的に「GM1/GM2ガングリオシドーシス」という神経疾患のリスクが知られています。ロシアンブルーは比較的丈夫ですが、密な被毛ゆえの皮膚疾患や、神経質な性格からのストレス性疾患に注意が必要です。
平均寿命は、コラットが10〜15年程度、ロシアンブルーも10〜15年程度とされ、猫としては平均的です。
コラットは、遺伝性疾患として「GM1ガングリオシドーシス」および「GM2ガングリオシドーシス」という致死性の神経疾患のリスクが知られています。これは特定の酵素が欠損する病気で、子猫のうちに発症することが多いです。幸い、近年は遺伝子検査が進んでおり、信頼できるブリーダーは親猫の遺伝子検査(クリアランス)を行っているため、迎える際には確認が必須です。
ロシアンブルーは、比較的丈夫な犬種ならぬ猫種とされていますが、特有の注意点もあります。
- 皮膚疾患:アンダーコートが非常に密なダブルコートのため、湿気がこもりやすく、皮膚炎を起こすことがあります。
- ストレス性疾患:非常に神経質で繊細なため、環境の変化(引っ越し、来客、騒音など)によるストレスから、膀胱炎や下痢、あるいは威嚇行動など(凶暴化と表現されることも)を引き起こすことがあります。
どちらも短毛種ですが、ロシアンブルーはダブルコートのため、コラット(シングルコート)よりも抜け毛は多く、ブラッシングが重要です。
「コラット」と「ロシアンブルー」の共通点(ブルーキャット)
最大の共通点は、その美しく輝く「ブルー(銀灰色)」の短毛です。毛先が銀色に輝く「ティッピング」を持ち、光の当たり方でキラキラと輝いて見えます。また、どちらも賢く、飼い主への愛情が深い猫種です。
もちろん、これだけ似ているのには理由があり、多くの共通点を持っています。
- ブルーの被毛:最大の特徴は、銀灰色(シルバーブルー)の美しい被毛です。どちらの猫種も、毛先が銀色に輝く「ティッピング」を持っており、これが独特の光沢を生み出しています。
- 短毛種:どちらも手入れが比較的容易な短毛種です(ただしロシアンブルーはダブルコートなので抜け毛は多め)。
- 賢さと愛情深さ:どちらも非常に賢く、飼い主との間に強い絆を築くことができます。
- 目の色の変化:どちらも子猫の頃は「キトンブルー」と呼ばれる青みがかった目の色をしており、成長するにつれて緑色に変化していきます。
歴史・ルーツと開発背景の違い
コラットはタイ北東部のコラット地方で自然発生し、「幸運の猫(シ・サワット)」として古くから大切にされてきた猫種です。一方、ロシアンブルーはロシア北部のアルハンゲリスク港が起源とされ、船乗りたちによってイギリスに持ち込まれ、貴族に愛された歴史を持ちます。
両者のルーツは、その気品ある姿を裏付けるような歴史を持っています。
コラットは、その名の通り、タイのコラット地方で自然発生した非常に古い猫種です。タイでは「シ・サワット(幸運の猫)」と呼ばれ、その銀色の毛並みは富を、グリーンの目は豊作を意味するとされ、幸福と繁栄の象徴として大切にされてきました。特に新婚の花嫁に贈られると幸せになれるという言い伝えがあります。アメリカに渡ったのは1959年と比較的新しく、そこから計画繁殖が進みました。
ロシアンブルーは、ロシア北部のアルハンゲリスク港が起源とされる、こちらも自然発生の猫種です。その美しさから「アルハンジェルキャット」と呼ばれ、船乗りたちによってイギリスやヨーロッパに持ち込まれました。イギリスのヴィクトリア女王やロシア皇帝にも愛されたと言われる、まさに貴族的な歴史を持つ猫です。第二次世界大戦中に絶滅の危機に瀕しましたが、戦後にブリーダーたちの努力(シャムネコなどとの交配)によって復活しました。
どっちを選ぶべき?愛犬・愛猫のタイプ別おすすめ
静かな環境で、猫にベタベタされるより忠誠心を感じたいなら「ロシアンブルー」。家族とコミュニケーションを取り、おしゃべりな猫が好みなら「コラット」が向いています。どちらも賢くデリケートなため、穏やかな環境で暮らせる人向けです。
どちらも非常に魅力的ですが、あなたのライフスタイルや猫に何を求めるかによって、おすすめは変わってきます。
【コラットがおすすめな人】
- 猫とおしゃべり(コミュニケーション)を楽しみたい人
- 飼い主に一途で、愛情深いパートナーを求めている人
- シングルコートで、ダブルコートの猫よりは抜け毛ケアが楽な方が良い人
- 遺伝子検査(GMガングリオシドーシス)の重要性を理解し、信頼できるブリーダーを探せる人
【ロシアンブルーがおすすめな人】
- 静かな環境で、鳴き声が小さい猫(ボイスレスキャット)と暮らしたい人
- 来客が少なく、落ち着いた家庭環境を提供できる人
- 犬のように忠実な猫を求めているが、人見知りや神経質な面も理解できる人
- ダブルコートの密な抜け毛のケア(ブラッシング)を厭わない人
僕が出会ったコラットとロシアンブルーの“世界”の違い(体験談)
僕は以前、キャットショーで両方の猫種を間近で見る機会がありました。その時の印象は、まさに彼らの性格の違いを象徴するものでした。
ロシアンブルーは、審査ケージの奥で静かに丸くなっていました。人が近づいても一切動じず、ただ静かに、エメラルドグリーンのアーモンド型の目でこちらを観察しているようでした。その姿は「触れるべからず」といった気高いオーラがあり、まさに「ロシアの貴族」という風格でした。鳴き声も一切聞かれませんでした。
一方、コラットは、審査員(ジャッジ)がケージに近づくと、すぐに立ち上がって「ニャッ、ニャッ」と柔らかい声で何かをアピールしていました。そのペリドットグリーンの丸い目は好奇心に満ちており、ロシアンブルーの「静」とは対照的な「動」の魅力を感じました。ハート型の顔も相まって、非常に愛嬌がある印象を受けました。
どちらも息をのむほど美しいブルーキャットですが、ロシアンブルーが「静謐(せいひつ)な美」なら、コラットは「雄弁な美」だと感じた体験です。
「コラット」と「ロシアンブルー」に関するよくある質問
Q: 「シャルトリュー」も似ていますが、この2種との違いは何ですか?
A: 「シャルトリュー」もブルーキャット御三家の一種です。シャルトリューはフランス原産で、コラットやロシアンブルーよりも体が大きく、非常に筋肉質でがっしりした体型(セミコビー〜コビー)が特徴です。最大の違いは目の色が「ゴールド」や「カッパー(銅色)」である点です。
Q: 抜け毛が少ないのはどっちですか?
A: 「コラット」の方が少ない傾向があります。コラットはアンダーコート(下毛)がほとんどないシングルコートですが、ロシアンブルーはアンダーコートが密生したダブルコートのため、特に換毛期には多くの抜け毛があります。
Q: ロシアンブルーは本当に「凶暴」になることがあるのですか?
A: ロシアンブルーは本来穏やかな性格ですが、非常に繊細で神経質なため、強いストレス(騒音、来客、環境の変化など)を感じると、パニックになって威嚇したり、噛んだりする行動(いわゆる「凶暴化」)が出ることがあります。これは攻撃性ではなく、ストレスによる防衛反応であることがほとんどです。静かな環境を整えることが非常に重要です。
「コラット」と「ロシアンブルー」の違いのまとめ
銀灰色の美しい毛並みを持つ「コラット」と「ロシアンブルー」。見た目は似ていても、そのルーツも個性も全く異なる猫種であることがお分かりいただけたかと思います。
- 原産国とルーツが違う:コラットはタイ原産の「幸運の猫」。ロシアンブルーはロシア原産の「貴族の猫」。
- 見た目が違う:コラットは「ハート型の顔・丸い目・シングルコート・筋肉質」。ロシアンブルーは「V字型の顔・アーモンド型の目・ダブルコート・スリム」。
- 性格が違う:コラットは比較的「おしゃべり」で飼い主に要求を伝える。ロシアンブルーは「ボイスレスキャット」と呼ばれるほど静かで神経質。
- 飼育の注意点:どちらも賢く飼い主に愛情深いが、コラットは遺伝子検査の確認、ロシアンブルーはストレス管理が特に重要。
どちらもデリケートで賢い猫種です。もし家族として迎えるなら、その子の個性を深く理解し、静かで安心できる環境を提供してあげてくださいね。他のペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。
参考文献(公的一次情報)
- (参考)ロイヤルカナン(ROYAL CANIN)猫種図鑑「コラット」(https://www.royalcanin.com/jp/cats/breeds/korat)
- (参考)環境省「動物の愛護と適切な管理」(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/) – 終生飼養の責任について