LambとSheepの違い!ラム肉とマトンの違いは年齢だった

「ラム肉は好きだけど、シープはちょっと…」あれ?と思ったら、その感覚は正しいようで少し混乱があるかもしれません。

実は、「シープ(Sheep)」は動物としての「羊」そのものを指す言葉です。そして、私たちがよく食べる「ラム(Lamb)」は、そのシープの子供、つまり「子羊」のことなんです。

この違いは、単なる呼び名だけでなく、食肉の世界では風味や価格、調理法を決定づける重要な境界線となっています。この記事では、動物としての「シープ」と「ラム」の違いから、食肉としての「ラム」と「マトン(成羊肉)」の見分け方まで、スッキリと解説します。

【3秒で押さえる要点】

  • 動物としての違い:「シープ」は「羊」全般、「ラム」は生後1年未満の「子羊」。
  • 食肉としての違い:「ラム」は子羊の肉で柔らかくクセが少ない。「シープ」の肉は一般的に「マトン(生後2年以上)」と呼ばれ、風味が強く硬め。
  • 中間:生後1年〜2年未満の羊を「ホゲット」と呼ぶこともあります。
「ラム」と「シープ(羊・マトン)」の主な違い
項目 ラム(Lamb) シープ(Sheep)※主にマトンとして
分類・定義 動物:生後1年未満の子羊
食肉:ラム(子羊肉)
動物:「羊」全般
食肉:マトン(生後2年以上の成羊肉)
食肉の色 淡いピンク色・明るい赤色 濃い赤色・暗赤色
肉質 柔らかく、キメが細かい 硬めで、引き締まっている
風味・香り クセが少なく、さっぱりしている 羊特有の風味が非常に強い(クセがある)
主な用途 ステーキ、ジンギスカン、ロースト、煮込み ジンギスカン、煮込み、ソーセージ等の加工品
価格帯 マトンに比べて高価な傾向 ラムに比べて安価な傾向
中間(参考) 生後1年〜2年未満の羊の肉は「ホゲット」と呼ばれる

「シープ(Sheep)」と「ラム(Lamb)」の根本的な意味の違い

【要点】

英語圏において「シープ(Sheep)」は、年齢や性別に関わらず「羊」という動物そのものを指す総称です。対して「ラム(Lamb)」は、生後1年未満の「子羊」を特定して指す言葉です。

日本で生活していると、「ラム肉」は聞くけれど「シープ肉」はあまり耳にしませんよね。この混乱の元は、英語の使い分けにあります。

まず大前提として、「シープ(Sheep)」は羊という動物の総称です。日本語の「羊」と同じで、オスもメスも、子供も大人もすべて含みます。動物園にいる羊は、すべて「シープ」です。

一方で「ラム(Lamb)」は、生後1年未満の「子羊」を指します。羊は生後4〜6ヶ月ほどで乳離れし、1年でほぼ大人のサイズに成長しますが、この幼い期間にある個体を「ラム」と呼びます。

つまり、動物としての関係は「シープというグループの中に、ラムという若いステージがある」ということになります。すべてのラムはシープですが、すべてのシープがラムではない(大人のシープもいる)のです。

食肉としての違い:「ラム」と「マトン」

【要点】

日本で流通する羊肉は、主に月齢で区別されます。「ラム」は生後1年未満で柔らかくクセが少ないのが特徴です。「マトン」は生後2年以上の成羊の肉で、肉質は硬めですが、羊本来の強い風味とコクがあります。

ここからが本題です。私たちが「ラム」という言葉を使うとき、そのほとんどは「ラム肉(子羊の肉)」を指しています。では、「シープ(大人の羊)の肉」は何と呼ぶのでしょうか?

それが「マトン(Mutton)」です。

日本の農林水産省の統計消費者庁の食品表示基準などでも用いられる一般的な区分では、羊肉は以下のように分類されます。

  1. ラム(Lamb):生後1年未満の羊の肉。肉は淡いピンク色で、非常に柔らかく、キメ細かいのが特徴です。羊特有の香り(クセ)が少なく、さっぱりとした上品な味わいがあります。ステーキや高級ジンギスカン、ローストなどに使われます。
  2. マトン(Mutton):生後2年以上の羊の肉。肉は濃い赤色で、肉質は硬く引き締まっています。羊特有の香りが非常に強く、これが「羊肉はクセがある」というイメージの主な理由です。しかし、その分うま味とコクは濃厚で、ジンギスカンや煮込み料理、加工品(ソーセージなど)にすると、その風味がいかんなく発揮されます。
  3. ホゲット(Hogget):ラムとマトンの中間にあたる、生後1年〜2年未満の羊の肉です。日本ではあまり流通していませんが、ラムの柔らかさとマトンのコクを併せ持つ、通好みの肉とされています。

つまり、食肉の世界では「ラム vs シープ」ではなく、「ラム(子羊) vs マトン(成羊)」という対立構造で呼ばれているのです。シープはあくまで動物そのものを指す言葉として使われることが多い、と覚えておきましょう。

見た目・形態の違い(子羊と成羊)

【要点】

「ラム(子羊)」は体が小さく、体重も軽く、被毛も柔らかく短いです。一方、「シープ(成羊)」は体が大きく、がっしりとした体格で、被毛も長く密生しています。品種によっては立派な角を持つものもいます。

動物としての「ラム(子羊)」と「シープ(成羊)」を見分けるのは非常に簡単です。最大の違いは、やはりその「サイズ」です。

生まれたばかりのラムは体重数kg程度しかなく、母親の羊(シープ)と比べると明らかに小さいです。生後1年未満といっても、月齢が若いほど体は小さく、成羊のような威厳はありません。被毛もまだ柔らかく、短いことが多いです。

一方、大人の「シープ(羊)」は品種にもよりますが、体重は40kgから100kgを超えるものまで様々です。がっしりとした体つきで、毛も長く密に生え揃っています(羊毛用種の場合)。メリノ種やサフォーク種など、品種によってはオス(時にはメスも)に立派な螺旋状の角が生えているのも成羊の特徴です。(ただし、角がない品種も多くいます)

牧場などで羊の群れを見かけた場合、明らかに他より小柄で、元気に跳ね回っている個体がいれば、それは「ラム」である可能性が高いです。

行動・生態の違い(子羊と成羊)

【要点】

ラム(子羊)は好奇心旺盛で、遊び好き。群れの中で跳ね回ったり、他の子羊とじゃれ合ったりする姿がよく見られます。一方、シープ(成羊)はより落ち着きがあり、臆病で強い群居性を示します。

行動にも年齢による違いは顕著に現れます。

ラム(子羊)は、非常に好奇心旺盛で遊び好きです。生後数時間で立ち上がり、母親について歩き始めます。群れの中でピョンピョンと跳ね回る行動(「ギャンボリング」と呼ばれることもあります)は、ラム特有の元気な姿です。他の子羊たちと頭を突き合わせたり、追いかけっこをしたりして社会性を学んでいきます。

対照的に、シープ(成羊)は非常におとなしく、臆病な動物として知られています。彼らは強い群居性(群れを作る性質)を持っており、単独で行動することを極端に嫌います。一頭が動くと群れ全体が同じ方向に動くのは、捕食者から身を守るための本能的な行動です。ラムに比べると落ち着きがあり、日中の多くを反芻(はんすう)しながら過ごしています。

ラムが好奇心から人間に近寄ってくることがあるのに対し、成羊は(人馴れしていない限り)警戒心が強く、人間が近づくとすぐに群れで逃げようとします。

食文化・利用・歴史の違い

【要点】

羊は人類の最も古い家畜の一つで、紀元前から乳・肉・羊毛のために飼育されてきました。ラム肉は高級食材として、マトン肉は安価で栄養価の高い食材として、世界中で利用されてきました。日本ではジンギスカンが有名です。

羊(シープ)は、犬に次いで最も古くから家畜化された動物の一つとされ、その歴史は紀元前9000年頃の中東にまで遡ると言われています。当初は乳や肉、そして羊毛を利用するために飼育が始まりました。

食文化としては、世界的に見て羊肉は非常によく食べられています。特に中東、北アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドなどでは食生活に欠かせないタンパク源です。

「ラム」は、その柔らかさとクセのなさから、比較的高級な食材として扱われることが多いです。特にフランス料理やイタリア料理では、ラムチョップのローストや煮込み料理(ナヴァランなど)は定番のごちそうとされています。

一方、「マトン」は、その強い風味から好みが分かれますが、安価で栄養価が高いため、古くから庶民の味として親しまれてきました。インドや中東では、マトンの風味をスパイスで活かしたカレーやケバブが主流です。

日本における羊肉の歴史は比較的浅く、本格的に食べられるようになったのは明治時代以降です。特に北海道では、羊毛生産のために飼育が奨励された歴史があり、その副産物として「ジンギスカン」が誕生しました。かつてのジンギスカンは安価なマトンが主流でしたが、近年は輸送技術の発達により、柔らかいラム肉を使ったジンギスカンが人気を集めています。

「ラム」と「シープ(羊)」の共通点

【要点】

ラムもシープ(羊)も、同じ「ウシ科ヤギ亜科」に属する動物です。どちらも草食性で、反芻(一度飲み下した食物を再び口に戻して噛むこと)を行います。また、臆病で強い群居性を持つ点も共通しています。

年齢や肉質に違いはあれど、もちろん多くの共通点があります。

  1. 分類学上の共通点:どちらも「ウシ科ヤギ亜科ヒツジ属」に分類される同じ動物(学名:Ovis aries)です。ヤギとは近縁にあたります。
  2. 食性:完全な草食性で、牧草や木の葉などを食べます。牛と同じように4つの胃を持ち、反芻(はんすう)を行います。
  3. 基本的な性質:非常に臆病で、捕食者から逃げるために群れで行動する強い群居性を持ちます。これはラムも成羊も変わりません。
  4. 利用:ラムもマトンも(そしてホゲットも)、最終的には食肉として利用されるほか、羊毛(ウール)や乳(羊乳、チーズ)、皮(シープスキン)など、人類にとって非常に有用な資源を提供してくれる家畜です。

体験談:ジンギスカンで知る「ラム」と「マトン」の衝撃

僕が「ラム」と「マトン」の違いを決定的に理解したのは、北海道旅行でジンギスカン専門店を訪れた時のことでした。

それまでの僕にとって「ジンギスカン」といえば、子供の頃にスーパーで売っていた、タレに漬け込まれた冷凍の丸い肉、というイメージ。正直、少しクセが強くて、食卓に上ると「あ、今日これか…」と少しテンションが下がるメニューでした。

しかし、そのお店で「食べ比べセット」を注文して、僕は衝撃を受けました。まず運ばれてきたのは「生ラム」。見た目からして淡いピンク色で、僕の知っているジンギスカンとは違います。焼いて塩コショウで食べると…「なにこれ!?」

まったくクセがなく、驚くほど柔らかい。これがラム肉なのか、と感動しました。

次に運ばれてきたのが「マトン」。こちらは見慣れた濃い赤色です。焼いている時から、あの懐かしい(?)羊独特の香りが立ち上ります。恐る恐る口に入れると…確かに肉質は硬め。そして、ガツンと来るあの風味。

でも、不思議なことに、タレと野菜と一緒に食べると、この強い風味がむしろ「うま味」として際立つのです。「ああ、僕が知っていたのはマトンだったんだ。そして、マトンにはマトンの良さがある!」と、20数年来の誤解が解けた瞬間でした。

ラムの魅力が「羊のイメージを覆す上品さ」なら、マトンの魅力は「これぞ羊!と主張する力強さ」なのだと、お腹いっぱいで学んだ体験です。

「ラム」と「シープ」に関するよくある質問

Q: 羊(シープ)はペットとして飼えますか?

A: 羊は家畜であり、犬や猫のような一般的なペットとは異なります。飼育するには、十分な広さの土地(牧草地)、小屋、適切な飼料、そして家畜を診察できる獣医が必要です。また、臆病で群居性があるため、1頭だけで飼うのは非常にストレスがかかると言われています。一般家庭での飼育は非常に困難です。

Q: 「ラム」と「マトン」は栄養価に違いがありますか?

A: どちらも高タンパクで、ビタミンB群や鉄分、亜鉛が豊富です。特に、脂肪燃焼を助ける「L-カルニチン」が他の食肉に比べて非常に多く含まれているのが特徴です。一般的にマトンの方がL-カルニチンの含有量が多いとされていますが、その分脂質もラムより多い傾向があります。

Q: 日本で食べられる羊肉は国産ですか?

A: 政府統計ポータル(e-Stat)などによると、日本国内で消費される羊肉のほとんどは、オーストラリアやニュージーランドからの輸入品です。国産の羊肉(「国産ラム」「国産マトン」)は非常に希少で、高級品として扱われています。

「ラム」と「シープ」の違いのまとめ

「ラム」と「シープ」の違い、そして食肉としての「マトン」との関係がクリアになったでしょうか。動物と食肉で言葉の使い方が少し異なるのが、ややこしいポイントでしたね。

  1. 動物としての違い:「シープ(Sheep)」は「羊」の総称。「ラム(Lamb)」は生後1年未満の「子羊」。
  2. 食肉としての違い:「ラム」は子羊の肉で柔らかくクセが少ない。「シープ」の肉は「マトン(Mutton)」(生後2年以上)と呼ばれ、風味が強く硬い。
  3. 風味の比較:羊肉特有のクセが苦手な人は「ラム」を、羊らしい濃厚な風味を楽しみたい人は「マトン」を選ぶのがおすすめです。
  4. 利用:羊は古くからの家畜であり、肉だけでなく羊毛や乳も利用される、人間にとって重要な動物です。

これであなたも羊肉マスターです。次にジンギスカン屋さんに行ったら、自信を持って「ラム」か「マトン」かを選べるはず。ぜひ、奥深い羊の世界を楽しんでみてくださいね。同じ哺乳類の仲間たちの違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。