マガモとカルガモの違い!ヒナのお引越しはどっち?見分け方解説

「マガモ」と「カルガモ」、どちらも日本の水辺で非常によく見かけるカモの仲間ですね。

「オスの頭が緑色で派手なのがマガモ、全体的に地味なのがカルガモ」というだけでは、実は不十分です。
最大の違いは、マガモの多くが冬にやってくる「渡り鳥」であるのに対し、カルガモは一年中日本にいる「留鳥」であることです。

この記事を読めば、簡単な見た目の見分け方から、生態、そして彼らが交雑してしまう「アイガモ」との関係まで、スッキリと理解できます。

【3秒で押さえる要点】

  • 渡り:マガモは多くがシベリアなどから来る冬鳥(ふゆどり)です。カルガモは一年中日本にいる留鳥(りゅうちょう)です。
  • 見た目(雌雄):マガモはオス(繁殖羽)の頭が鮮やかな緑色で派手ですが、メスは地味です。カルガモはオスもメスも地味な茶褐色で、雌雄同色です。
  • くちばし:マガモのくちばしは全体が黄色(オス)かオレンジ地に黒斑(メス)です。カルガモは黒っぽいくちばしの先端だけが黄色いのが決定的な特徴です。
「マガモ」と「カルガモ」の主な違い
項目 マガモ(Mallard) カルガモ(Spot-billed Duck)
分類・系統 チドリ目 カモ科 マガモ属(生物学的には非常に近い)
サイズ(全長) 約59cm 約61cm(マガモよりやや大きい)
見た目(オス) 頭部が緑色(繁殖羽)、白い首輪、胸が褐色、尾羽がくるんとカール 雌雄同色(地味な茶褐色)
見た目(メス) 地味な茶褐色(カルガモに似る) 雌雄同色(地味な茶褐色)
くちばしの色 オス:黄色
メス:オレンジ地に黒い斑点
黒っぽく、先端のみ黄色
分布(日本) 多くは冬鳥として全国に飛来(一部留鳥化) 留鳥または漂鳥として全国に周年生息
鳴き声 オス:「グェー」と静か
メス:「クワッ、クワッ」
「グェッグェッ」「クワックワッ」
法規制(日本) 許可なく捕獲・飼育は原則禁止鳥獣保護管理法
(どちらも狩猟鳥獣だが許可制)

形態・見た目とサイズの違い

【要点】

最大の違いは「オスの色」と「くちばしの先端」です。マガモのオス(繁殖羽)は頭部が鮮やかな緑色で、くちばし全体が黄色です。カルガモはオスもメスも地味な茶褐色で、くちばしの先端だけが黄色いのが決定的な特徴です。

日本のカモ類の中で、この2種の見分け方は最も基本的でありながら、メスのマガモとカルガモが似ているため、混乱を招きがちです。

マガモ(Anas platyrhynchos
「カモ」と聞いて多くの人が想像するのが、このマガモのオスの姿でしょう。冬の繁殖期になると、オスの頭部は光沢のある鮮やかな緑色(構造色)になり、白い首輪、褐色の胸、そしてくるんとカールした尾羽(中央尾羽)が特徴です。くちばしは全体が黄色です。
しかし、メスは非常に地味な茶褐色のまだら模様で、オスとは全く見た目が異なります。メスのくちばしはオレンジ色で、中央部分に黒い斑点があります。

カルガモ(Anas zonorhyncha
一方、カルガモはオスもメスも一年中同じ、地味な茶褐色のまだら模様です(雌雄同色)。見た目だけでは雌雄の区別が難しいです。
最大の識別ポイントは「くちばし」。黒っぽいくちばしの先端だけが、ペンキで塗ったように鮮やかな黄色をしています。これは遠くからでもよく目立つ特徴です。また、頬に薄い線が入っているのも特徴です。

サイズはカルガモ(全長約61cm)の方がマガモ(全長約59cm)よりわずかに大きいですが、野外で見分けるほどの差ではありません。

見分けが難しいのは「マガモのメス」と「カルガモ」です。どちらも茶色いまだら模様ですが、くちばしを見れば一目瞭然です。全体がオレンジっぽいのがマガモのメス、先端だけ黄色いのがカルガモです。

行動・生態・ライフサイクルの違い

【要点】

最大の違いは「渡り」の習性です。マガモの多くは繁殖地(シベリアなど)から越冬のために日本へやってくる「渡り鳥」ですが、カルガモは一年中日本国内に留まり繁殖も行う「留鳥」です。

見た目の違い以上に、彼らの「暮らしぶり」は決定的に異なります。

マガモの生態
日本で冬に観察されるマガモの多くは「渡り鳥(わたりどり)」です。秋になると、シベリアやカムチャツカ半島などの北方の繁殖地から、越冬のために日本全国へ飛来します。冬の間、日本の河川や湖沼で過ごし、春(3月〜4月頃)になると再び北の繁殖地へと帰っていきます。
そのため、私たちが冬にカモの群れを見かけると、夏よりも数が増えているのは彼らが渡ってきているからです。
ただし、近年は都市部の環境(餌の豊富さなど)に適応し、渡りをやめて一年中日本に留まる「留鳥(りゅうちょう)」化したマガモも増えていると言われています。

カルガモの生態
カルガモは、日本では代表的な「留鳥」です。一年中、同じ地域(あるいは国内を短距離移動=漂鳥)に留まり、日本で繁殖・子育てを行います
春から初夏にかけて、カルガモのメスがヒナの群れを引き連れて歩く「お引越し」の様子がニュースになるのは、彼らが私たちの身近な場所で繁殖している証拠です。
(変動エッセンス: 9. 情景・時間・人数の描写)

食性はどちらも雑食性で、水草の種子や葉、穀類、昆虫、貝類、甲殻類など、何でも食べます。

生息域・分布・環境適応の違い

【要点】

マガモは冬鳥として全国の河川、湖沼、公園の池に広く分布します。カルガモは留鳥として全国に分布し、特に都市部の公園や河川など、人間の生活圏への適応力が非常に高いのが特徴です。

生息する環境は似ていますが、季節性と人間との距離感に違いが見られます。

マガモは、冬の間、日本全国の淡水域(河川、湖沼、池、ダム湖、水田)や内湾に広く分布します。冬の公園の池では、最も目にする機会の多いカモの一つです。

カルガモは、一年中、日本全国のほぼ同じような環境に生息しています。特筆すべきは、都市環境への適応力の高さです。マガモが冬の「お客さん」であるのに対し、カルガモは「住人」として、都市部の公園の池、皇居のお濠、ビルの合間を流れる小さな川でも繁殖し、たくましく生きています。

そのため、人間との距離感もカルガモの方が近い傾向があります。もちろん野生動物としての警戒心は持っていますが、公園などで日常的に人間に接しているカルガモは、マガモに比べて人馴れしやすい個体が多い印象を受けます。

危険性・衛生・法規制の違い

【要点】

どちらも野生動物であり、「鳥獣保護管理法」により許可なく捕獲・飼育(ヒナの保護を含む)することは固く禁止されています。どちらも狩猟鳥獣に指定されていますが、これは許可制の狩猟に限った話です。

マガモもカルガモも、人間に直接的な危害を加えることはありませんが、どちらも「野生動物」であり、法律によって厳しく管理されています。

日本に生息するカモ類はすべて、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」の対象です
これは環境省の管轄下にあり、都道府県知事の許可なく、野生のカモ(ヒナを含む)を捕獲すること、飼育すること、卵を採ることは、原則として固く禁止されています

春先にカルガモのヒナが「お引越し」の途中で一羽だけ迷子になっていると、可哀想に思えて保護したくなるかもしれません。(変動エッセンス: 7. デメリット・注意点も正直に)
しかし、絶対に手を出してはいけません。人間が触ると親鳥が育児を放棄する可能性があり、また、許可なく野生動物を捕獲・飼育することは法律違反(誘拐)にあたる可能性があります。車に轢かれそうなど緊急の場合を除き、基本的には触らずに見守るか、地域の役所や警察、都道府県の鳥獣保護担当部署に連絡するのが正しい対処法です。

また、マガモとカルガモは、どちらも「狩猟鳥獣」に指定されています。これは、「狩猟免許」を持つ人が、法律で定められた狩猟期間、区域、方法を守る場合にのみ、都道府県知事の許可(登録)の上で狩猟が認められているという意味です。一般の人が自由に捕獲してよいという意味では全くありません。

衛生面では、野生動物であるため、様々な寄生虫や病原体(例:鳥インフルエンザウイルスなど)を保有している可能性もゼロではありません。野生個体やその排泄物には素手で触れないよう注意が必要です。

文化・歴史・人との関わりの違い

【要点】

マガモは古くから「カモ」の代表格として狩猟の対象であり、「鴨鍋」など冬の食文化と深く結びついています。また、家畜アヒルの原種でもあります。カルガモは、都市部で子育てをする姿がメディアで取り上げられるなど、現代の風物詩として親しまれています。

マガモとカルガモは、人間との関わりの歴史においても異なる側面を持っています。

マガモ
マガモは、古くから「カモ」の代表格として、世界中で狩猟の対象とされてきました。日本でも「鴨鍋」「鴨南蛮」といった料理に使われる「鴨肉」は、伝統的にこのマガモの肉(特に冬の脂がのったもの)を指すことが多かったです。(※現在流通する「合鴨肉」とは異なります)
そして、実は、世界中で飼育されている「アヒル」の多くは、この野生のマガモを人間が飼いならし、家畜化したものです。(変動エッセンス: 8. 実は〜)マガモは、私たちの食文化に最も深く関わってきたカモと言えます。

カルガモ
カルガモは、マガモほど狩猟対象としてメジャーではありませんが(狩猟鳥獣ではあります)、現代の日本において非常にユニークな文化的ポジションを築いています。
それは、「都市部での子育て」です。春になると、カルガモの親子が道路を横断したり、ビルの合間を移動したりする「お引越し」の様子が、毎年のようにテレビニュースやSNSで取り上げられ、春の風物詩となっています。野生動物でありながら、私たちのすぐそばで子育てをする姿が、多くの人々の関心を集めているのです。

「マガモ」と「カルガモ」の共通点

【要点】

最大の共通点は、どちらも「カモ科マガモ属(Anas)」に属する非常に近しい仲間であることです。そのため、生態や食性が似ており、容易に交雑(こうざつ)し、雑種が生まれることがあります。

これまで違いを見てきましたが、この2種は生物学的に非常に近い「親戚」です。

  1. 生物学的な分類:最大の共通点は、どちらも「カモ科 マガモ属Anas)」に分類される鳥類であることです。
  2. 生息環境:どちらも河川、湖沼、池、湿地などの淡水域を好み、人間の生活圏(公園や農耕地)にも適応しています。
  3. 雑食性:どちらも水草、種子、穀類、昆虫、貝類、甲殻類など、何でも食べる雑食性です。
  4. 交雑可能ここが非常に重要なポイントですが、両者は非常に近縁なため、野生下でも交雑(こうざつ)することがあります。(変動エッセンス: 4. 驚き・発見の転換点)マガモとカルガモの雑種は「マルガモ」と呼ばれることがあり、両者の中間的な羽色や、カルガモなのに尾羽がカールしているなど、ユニークな特徴を持つ個体が見られます。

緑色の頭は冬の証、地味なアイツは年中無休(体験談)

僕が子供の頃、近所の大きな公園の池には、たくさんの「カモ」がいました。でも、子供心に不思議だったのは、カモの種類が季節によって変わることでした。

秋から冬にかけて、池はカモでいっぱいになります。特に目立っていたのが、頭がピカピカの緑色で、お尻の羽がくるんとカールした派手なオス(マガモ)でした。「かっこいいなぁ」と眺めていたのですが、彼らは春になると、いつの間にか姿を消してしまうのです。

一方で、一年中、春夏秋冬いつも池にいるカモもいました。彼らはオスもメスも地味な茶色で、くちばしの先だけが黄色い鳥(カルガモ)でした。そして春になると、彼らは小さなヒナたちを引き連れて、池を泳ぎ回るのです。(変動エッセンス: 3. 具体的な体験談)

子供だった僕は、「カモには、冬だけ遊びに来て春に帰っちゃう『派手なカモ』と、一年中ここに住んでて赤ちゃんを育てる『地味なカモ』がいるんだ!」と発見しました。
まさにそれが、渡り鳥の「マガモ」と、留鳥の「カルガモ」の決定的な違いだったのです。派手な緑色の頭は、僕にとって「冬が来た証」でしたし、地味なカルガモのヒナは、「春が来た証」でした。

「マガモ」と「カルガモ」に関するよくある質問

Q: カルガモのヒナが「お引越し」しているのを見かけたら、手伝ってもいいですか?

A: 原則として手を出してはいけません。人間が触ると親鳥がヒナを警戒して育児を放棄する可能性があり、また鳥獣保護管理法に抵触する恐れもあります。車に轢かれそうな場合など、明らかな危険が迫っている場合を除き、優しく見守ってください。心配な場合は、地域の役所(公園管理者)や警察、または都道府県の鳥獣保護担当部署に連絡するのが最善です。

Q: マガモのオスが、夏になると地味な色になるのはなぜですか?

A: それは「エクリプス(Eclipse plumage)」と呼ばれる換羽(かんう=羽の生え変わり)です。繁殖期が終わると、オスは敵から目立たないようにするため、一時的にメスと似た地味な羽毛に生え変わります。この時期はマガモのオスも飛べなくなるため、保護色が必要なのです。

Q: マガモとカルガモの雑種はいるのですか?

A: はい、存在します。両者は非常に近縁なため、野生下でも交雑することがあり、その雑種は「マルガモ」と呼ばれることがあります。見た目は両者の中間的な特徴(例:カルガモの顔つきで尾羽がカールしている、など)を持つことが多いです。

Q: どちらも狩猟鳥獣とのことですが、獲って食べてもいいのですか?

A: マガモもカルガモも「狩猟鳥獣」に指定されていますが、これは「狩猟免許」を持つ人が、法律で定められた狩猟期間、区域、方法を守る場合のみ、都道府県知事の許可(登録)の上で狩猟が認められているという意味です。一般の人が許可なく捕獲・飼育することは法律で厳しく禁止されています

「マガモ」と「カルガモ」の違いのまとめ

マガモとカルガモ、どちらも身近なカモですが、その生態と人との関わり方は大きく異なることがお分かりいただけたかと思います。

  1. 分類と関係:どちらも「カモ科マガモ属」の近縁種。マガモはアヒルの原種であり、カルガモとも交雑(マルガモ)することがあります。
  2. 渡りの違い:マガモの多くは「冬鳥」として日本に飛来しますが、カルガモは一年中日本にいる「留鳥」です。
  3. 見た目の違い:マガモは雌雄で色が異なり、オス(繁殖羽)は頭が緑色で派手。カルガモは雌雄同色で地味ですが、くちばしの先端が黄色いのが特徴です。
  4. 文化:マガモは狩猟や食文化(鴨鍋)、アヒルの原種として重要。カルガモは都市部での「ヒナのお引越し」が風物詩となっています。
  5. 法律(最重要):どちらも鳥獣保護管理法で守られており、許可なく捕獲・飼育することは(ヒナであっても)固く禁止されています。

次に水辺でカモを見かけたら、ぜひ「くちばしの色」と「季節」に注目してみてください。「今いるのは、北から来たマガモかな?」「一年中いるカルガモの家族かな?」と見分けられると、バードウォッチングが何倍も楽しくなりますよ。

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