オーツヘイとチモシーの違いは?ウサギの主食とおやつの使い分け

「オーツヘイ」と「チモシー」。どちらもウサギやモルモット、チンチラといった草食動物草食小動物)にとって欠かせない「牧草」ですが、この2つ、栄養価と与えるべき「役割」が全く異なります

結論から言うと、「チモシー」は低カロリー・高繊維質で毎日食べ放題で与える「主食」であるべき牧草です。
一方、「オーツヘイ」は高カロリー・高タンパクで嗜好性が非常に高いため、「おやつ」や「食欲増進の補助食」として与えるべき牧草です。

「どっちもイネ科の牧草だし、似たようなものでは?」と混同していると、知らず知らずのうちにペットを肥満や偏食に導いてしまうかもしれません。この記事では、この2つの牧草の決定的な違いと、正しい使い分けについて詳しく解説します!

【3秒で押さえる要点】

  • チモシー(主食):低カロリー・低タンパク・高繊維質。ウサギやモルモットの歯と腸の健康維持に不可欠な「主食」です。
  • オーツヘイ(おやつ):高カロリー・高タンパク・高脂質。甘い香りと穂(実)があり嗜好性が抜群に高い「おやつ牧草」です。
  • 使い分け:チモシーは食べ放題にし、オーツヘイは食欲がない時や、ご褒美として少量与えるのが基本です。
「オーツヘイ」と「チモシー」の主な違い
項目 オーツヘイ(Oat Hay) チモシー(Timothy Hay)
分類 イネ科カラスムギ属 イネ科オオアワガエリ属
別名 燕麦(えんばく)、オートヘイ オオアワガエリ(和名)
主な役割 おやつ、補助食、食欲増進 主食(毎日食べ放題)
タンパク質 高い 低い
脂質・カロリー 高い 低い
繊維質 やや低い(チモシー一番刈り比較) 高い
嗜好性(好み) 非常に高い(甘い香りと穂) 普通(個体差あり)
見た目の特徴 茎が太く、平べったい。黄色(黄金色)が強い。実(穂)がついていることが多い。 茎が細く、緑色が強い(一番刈り)。円柱状の穂が特徴。
主な用途 食欲不振時、チモシー嫌いの克服、成長期・体力回復期 毎日の主食(歯の摩耗、腸の運動促進)

最大の違い:「役割」と「栄養価」(おやつ vs 主食)

【要点】

最大の違いは栄養バランスです。「チモシー」は低タンパク・低脂質・低カロリーかつ高繊維質で、ウサギやモルモットが毎日際限なく食べる「主食」として理想的です。対照的に「オーツヘイ」は、高タンパク・高脂質・高カロリーなため「おやつ」や「補助食」の位置づけです。

この2つの牧草の使い分けを間違えてはいけない理由は、その「栄養価」にあります。

チモシー(主食向き)
チモシーは、ペットとして飼育されるウサギ、モルモット、チンチラなどにとって、理想的な「主食」です。その理由は、低タンパク・低カロリーでありながら、非常に豊富な繊維質を含んでいるためです。
草食動物は、この繊維質を腸内で発酵させることでエネルギーを得ており、同時に牧草の硬い繊維を長時間咀嚼(そしゃく)することで、伸び続ける歯を適切に摩耗させています(不正咬合の予防)。チモシーは、彼らのお腹の調子と歯の健康を守る、まさに「命の草」なのです。

オーツヘイ(おやつ向き)
一方のオーツヘイは、人間が「オートミール」として食べる燕麦(えんばく)の、実が熟す前に刈り取ったものです。そのため、チモシーと比べるとタンパク質、脂質、そしてカロリーが明らかに高いのが特徴です。
これをチモシーと同じ感覚で主食として与え続けてしまうと、カロリーオーバーで肥満になったり、美味しすぎるために偏食(オーツヘイしか食べないワガママ)になったりするリスクが非常に高いです。

見た目と嗜好性(香り・甘み)の違い

【要点】

チモシーは細い茎で緑色が強く、乾いた草の香りがします。オーツヘイは茎が太めで、完熟前に刈り取るため全体的に黄金色(黄色っぽい)です。穂(実)の部分に甘みがあり、香ばしく甘い香りがするため、嗜好性はオーツヘイの方が圧倒的に高いです。

栄養価だけでなく、見た目や香りも大きく異なります。

チモシー
「一番刈り」と呼ばれる春に収穫されるものは、茎が太く硬く、繊維質が豊富で、色は濃い緑色をしています。穂は、猫じゃらしのような円柱状の形が特徴です。香りは、いわゆる「牧草の乾いた香り」です。

オーツヘイ
燕麦の青刈り牧草であるため、茎はチモシーより平べったく太い傾向があります。色は緑色というより、黄金色・黄色っぽいことが多く、これが「Oat Hay(オーツヘイ)」の由来とも言われています。
最大の特徴は「」です。オーツヘイの穂には、オートミールの元となる実(穀物)が含まれていることがあり、これが強い甘みと香ばしい香りの源となっています。このため、嗜好性(食いつき)はチモシーに比べて圧倒的に高いです。

与え方の注意点と健康リスクの違い

【要点】

「チモシー」は、成体(大人)のウサギやモルモットには、毎日食べ放題で与えるのが基本です。一方、「オーツヘイ」は与えすぎ厳禁です。高カロリーによる肥満や、穂(実)の美味しさによる偏食(チモシーを食べなくなる)のリスクがあります。

両者の役割は明確です。

チモシーの与え方
健康な大人のウサギ、モルモット、チンチラには、「主食」としてケージの中に常備し、いつでも食べられる状態(食べ放題)にしておくのが正しい与え方です。彼らは1日の大半を牧草を食べることに費やす必要があり、牧草が切れる時間を作ってはいけません。

オーツヘイの与え方
オーツヘイは「おやつ」または「補助食」です。主食として与えてはいけません
与えすぎると、高カロリーによる肥満のリスク や、美味しすぎる穂(実)の部分ばかり選んで食べてしまい、繊維質が豊富で本当に食べてほしい茎の部分や、主食であるチモシーを食べなくなってしまう「偏食」のリスク があります。
与える場合は、1日にひとつまみ程度のご褒美にするか、チモシーに少量混ぜて食欲を刺激する程度に留めましょう。

「アルファルファ」との違いは?(イネ科 vs マメ科)

【要点】

チモシーとオーツヘイは「イネ科」ですが、「アルファルファ」は「マメ科」で全くの別物です。アルファルファは超高タンパク・超高カルシウムであり、成長期の子ウサギや授乳中の母親以外には、与えすぎてはいけない牧草です。

牧草選びでよく登場する「アルファルファ」についても触れておきます。
「チモシー」と「オーツヘイ」はどちらも「イネ科」の牧草です。

しかし、「アルファルファ」は「マメ科」の植物であり、栄養素が全く異なります。
アルファルファは、イネ科牧草と比べてタンパク質とカルシウムの含有量が極端に高いのが特徴です。そのため、たくさんの栄養が必要な成長期(生後6ヶ月頃まで)の子ウサギや、妊娠・授乳中の母親には適していますが、健康な大人のウサギに与え続けると、高タンパク・高カルシウムが原因で肥満や尿路結石などの病気を引き起こすリスクがあります。

「オーツヘイ」と「チモシー」の共通点

【要点】

どちらも「イネ科」の牧草であり、ウサギやモルモットなどの歯の健康維持(不正咬合の予防)や、腸の運動を促進するために不可欠な「繊維質」を豊富に含んでいる点が共通しています。

役割や栄養価は異なりますが、どちらも草食動物にとって重要な牧草であることに変わりはありません。

  1. イネ科の牧草:アルファルファ(マメ科)とは異なり、どちらもイネ科の植物です。
  2. 繊維質が豊富:オーツヘイも(チモシーほどではないものの)繊維質を豊富に含みます。
  3. 歯と腸の健康:硬い繊維を咀嚼(そしゃく)することで歯の伸び過ぎ(不正咬合)を防ぎ、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にして「毛球症」などを予防する働きがあります。
  4. 対象動物:ウサギ、モルモット、チンチラ、デグーなど、牧草を主食とする草食動物に与えられます。

どっちを選ぶべき?ペットの年齢や状態別おすすめ

【要点】

健康な大人のペットには「チモシー」を主食としてください。「オーツヘイ」は、チモシーを食べない時の風味付け、食欲不振の時、または成長期や高齢で痩せてきた時のカロリー補助として使うのが最適です。

どちらか一方を選ぶというよりは、愛犬ならぬ愛ペットの状態に合わせて使い分けるのが正解です。

【チモシーを主食にするのがおすすめな子】

  • 健康な大人のウサギ、モルモット、チンチラすべて
  • 肥満気味でカロリー制限が必要な子
  • 歯や腸の健康を第一に考えたい子

【オーツヘイを補助的に使うのがおすすめな子】

  • チモシーに飽きて食いつきが悪くなった子(チモシーに少量混ぜて風味付けに)
  • 病気や高齢で食欲が落ちている子(香りで食欲を刺激)
  • 成長期や授乳期、または痩せ気味で、高カロリー・高タンパクな栄養補助が必要な子
  • 時々のおやつとして、ご褒美をあげたい時

僕の愛兎がチモシー嫌いを克服した「オーツヘイマジック」(体験談)

僕が以前飼っていたウサギが、ある日突然、あんなに大好きだったチモシー(一番刈り)をプイッと食べなくなってしまった時期がありました。
歯の病気(不正咬合)を疑って病院に連れて行きましたが異常はなく、獣医さんからは「飽きたか、好みが変わったんでしょうね。よくあることです」と言われました。

かといって主食のチモシーを食べないのは死活問題。困り果てていた時にペットショップで勧められたのが「オーツヘイ」でした。
「これは嗜好性が高いから、おやつとして少しあげてみてください」と言われ、半信半疑で与えてみると、その香りに気づいた瞬間、目を輝かせて食いついたのです!

特に穂(実)の部分が美味しいらしく、そこばかり選んで食べていました。これに味を占めた僕は、オーツヘイを細かく刻んで、食べなくなったチモシー全体にふりかけるように混ぜてみました。

すると、オーツヘイの甘い香りに釣られて、チモシーも一緒に食べてくれるようになったのです! まさに「オーツヘイマジック」でした。
もちろん、オーツヘイばかり与えると偏食になるため、徐々にオーツヘイの割合を減らしていき、最終的にはまたチモシー中心の食生活に戻すことができました。オーツヘイは、主食にはできませんが、飼い主のピンチを救ってくれる強力なサポーターだと実感した体験です。

「オーツヘイ」と「チモシー」に関するよくある質問

Q: オーツヘイは主食にできますか?

A: おすすめできません。オーツヘイはチモシーに比べて高カロリー・高タンパク・高脂質であり、繊維質がやや少ないためです。主食にすると肥満や栄養バランスの偏り、偏食の原因となる可能性があります。

Q: チモシーの一番刈り、二番刈りとは何ですか?

A: 刈り取る時期の違いです。「一番刈り」は春〜初夏に刈るもので、茎が太く硬く、繊維質が最も豊富です。歯の健康に最適です。「二番刈り」は夏〜秋に刈るもので、葉が多く柔らかいため嗜好性が高いですが、繊維質は一番刈りより劣ります。

Q: オーツヘイとアルファルファの違いは何ですか?

A: 科が違います。オーツヘイ(とチモシー)は「イネ科」ですが、アルファルファは「マメ科」です。アルファルファはイネ科牧草よりもさらに高タンパク・高カルシウムなため、大人のペットには与えすぎ注意の牧草です。

Q: うちの子がチモシーを全く食べません。どうすればいいですか?

A: まずは歯や体調に問題がないか獣医師に相談してください。問題がない場合、チモシーの「刈り取り時期(一番刈り→二番刈りに変えるなど)」、「産地(アメリカ産、カナダ産など)」を変えると食べることもあります。また、本記事で紹介したように「オーツヘイ」 や他のイネ科牧草(イタリアンライグラスなど)を少量混ぜて、牧草の香りに慣れさせるのも一つの方法です。

「オーツヘイ」と「チモシー」の違いのまとめ

「オーツヘイ」と「チモシー」、どちらも草食動物の健康維持に欠かせない牧草ですが、その役割は明確に異なりました。

  1. チモシーは「主食」:低カロリー・高繊維質で、毎日食べ放題で与える。歯と腸の健康を守る基本の牧草。
  2. オーツヘイは「おやつ」:高カロリー・高タンパクで嗜好性が抜群。与えすぎは肥満や偏食の原因になるため、食欲不振時やご褒美に使う。
  3. 見た目の違い:チモシーは「緑色で細い茎と円柱の穂」、オーツヘイは「黄色っぽく太い茎と実のある穂」。
  4. 間違えやすい牧草:「アルファルファ」は「マメ科」で、さらに高タンパク・高カルシウムなので、大人のペットには注意が必要。

愛するペットの健康と長寿のために、「チモシー」を主食の基本としながら、「オーツヘイ」を上手に活用して、豊かな食生活をサポートしてあげてくださいね。他のペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。

参考文献(公的一次情報)