フワフワの毛玉が歩いているような「ポメラニアン」と、ウルウルした大きな瞳が愛らしい「チワワ」。
どちらも日本で絶大な人気を誇る小型犬(愛玩犬)ですよね。
見た目の愛らしさから「どっちも可愛い!」と迷ってしまいますが、実はこの2犬種、被毛のタイプ、体の大きさ、そして何より性格(気質)が全く異なります。
結論から言うと、「ポメラニアン」はドイツ原産のスピッツの仲間で、活発で好奇心旺盛、フワフワのダブルコートが特徴。一方、「チワワ」はメキシコ原産の世界最小の犬種で、飼い主に非常に忠実で勇敢、被毛は2タイプあります。
この記事では、この大人気2犬種の見分け方から、飼育上の重要な注意点、なりやすい病気の違いまで、詳しく比較していきます!
【3秒で押さえる要点】
- 毛の違い:ポメラニアンはフワフワのダブルコートで抜け毛が非常に多い。チワワはロングコートとスムースコートの2種類。
- サイズ:チワワが「世界最小の犬種」として知られ、ポメラニアンよりやや小さい傾向があります。
- 性格:ポメラニアンは活発で好奇心旺盛、賢い反面やや頑固。チワワは飼い主に深く忠実で愛情深いが、勇敢すぎて他の犬に立ち向かうことも。
| 項目 | ポメラニアン(Pomeranian) | チワワ(Chihuahua) |
|---|---|---|
| 分類・系統 | スピッツタイプ(愛玩犬) | 超小型犬(愛玩犬) |
| 原産国 | ドイツ | メキシコ |
| サイズ(体重目安) | 1.8kg 〜 3.5kg | 1.5kg 〜 3kg |
| 被毛(コート) | ダブルコート(長毛) | ロングコートとスムースコートの2種 |
| 抜け毛 | 非常に多い(特に換毛期) | 多い(スムースもロングも抜ける) |
| 頭部の特徴 | タヌキ顔、キツネ顔 | アップルヘッド、モレラ(ペコ)がある個体も |
| 行動・性質 | 活発、好奇心旺盛、賢い、自己主張が強い(頑固)、警戒心が強く吠えやすい | 飼い主に忠実、愛情深い、勇敢(時に攻撃的)、警戒心が強く吠えやすい |
| 飼育難易度 | 中級者向け(抜け毛ケアと吠えのしつけが必須) | 中級者向け(吠えのしつけと健康管理が必須) |
| 寿命(目安) | 12〜16年 | 12〜18年 |
| かかりやすい病気 | 気管虚脱、膝蓋骨脱臼(パテラ)、アロペシアX(脱毛症) | 膝蓋骨脱臼(パテラ)、気管虚脱、水頭症、低血糖症 |
見た目とサイズの違い(毛量と頭の形)
最大の見分け方は「毛量」と「頭の形」です。ポメラニアンは常にフワフワなダブルコートで抜け毛が非常に多いです。チワワは短毛のスムースと長毛のロングの2種がおり、頭はリンゴ型(アップルヘッド)で、頭頂部に「モレラ(ペコ)」という柔らかい部分があるのが特徴です。
一見して最も分かりやすい違いは「被毛」と「頭の形」です。
被毛(コート)
ポメラニアンは、毛が二重構造になったダブルコートです。首回りや胸、尻尾に豊かな飾り毛があり、綿毛のようなアンダーコート(下毛)が密生しているため、全体的にフワフワと丸いシルエットに見えます。このため、抜け毛は年間を通して非常に多く、特に換毛期(春と秋)は驚くほどの量が抜けます。
チワワは、毛のタイプが2種類存在します。
- スムースコート:短く滑らかで、光沢のある被毛。体にぴったりと沿っています。
- ロングコート:耳や首、四肢、尾に飾り毛がある、柔らかく長い被毛。
どちらのタイプも抜け毛はありますが、ポメラニアンの爆発的な抜け毛量と比較すると、お手入れはしやすい傾向にあります。
サイズと頭の形
どちらも超小型犬(または小型犬)に分類されますが、チワワは「世界最小の犬種」としてギネスにも認定されており、ポメラニアンよりもさらに小さい(体重1.5kg〜3kg)傾向があります。
最大の特徴は「アップルヘッド」と呼ばれるリンゴのような丸い頭の形です。個体によっては、頭頂部の骨が完全に閉じていない「モレラ(泉門・ペコ)」と呼ばれる柔らかい部分があることが特徴です。
ポメラニアンは、体重1.8kg〜3.5kg程度でチワワよりやや大きくなる個体も多いです。顔立ちは個体差があり、「キツネ顔(マズルが長い)」や「タヌキ顔(マズルが短い)」と呼ばれるタイプがあります。
性格・行動特性としつけやすさの違い
どちらも賢く、警戒心が強いため「吠えやすい」という共通点があります。ポメラニアンは好奇心旺盛で活発、遊び好きですが、スピッツ特有の頑固さも持ちます。チワワは飼い主への忠誠心が非常に強く甘えん坊ですが、その反面、勇敢すぎて他の犬に攻撃的になることもあります。
どちらも小さく愛らしい見た目に反して、気が強く勇敢な「テリア気質」ならぬ「小型犬気質」を持っています。
ポメラニアンの性格
スピッツの仲間であるポメラニアンは、非常に活発で好奇心旺盛、遊びが大好きです。知能が高く物覚えも早いですが、同時に自己主張が強く頑固な一面も持ち合わせています。
また、警戒心が強いため、見知らぬ人や物音に対して「吠えやすい」犬種としても知られています。しつけには、褒めて伸ばすことを基本としながらも、飼い主が一貫した態度でリーダーシップを取ることが重要です。
チワワの性格
チワワの最大の魅力は、飼い主(家族)に対する深い愛情と忠誠心です。飼い主のそばにいることを好み、甘えん坊な姿を存分に見せてくれます。
しかし、その愛情深さの裏返しで、飼い主を守ろうとする意識が非常に強く、警戒心が強く吠えやすいです。また、「小さな巨人」と呼ばれるほど勇敢(時に無謀)で、自分より何倍も大きな犬や見知らぬ人にも臆せず立ち向かっていこうとすることがあります。臆病さと攻撃性が同居しているため、子犬の頃からの社会化訓練が非常に重要です。
寿命・健康リスク・病気の違い
寿命はどちらも12〜16年以上と長寿です。どちらも小型犬特有の「膝蓋骨脱臼(パテラ)」や「気管虚脱」に注意が必要です。ポメラニアンは「アロペシアX(脱毛症)」、チワワは頭部の構造から「水頭症」 に特に気をつける必要があります。
平均寿命は、ポメラニアンが12〜16年、チワワが12〜18年 と、どちらも小型犬らしく非常に長寿な傾向があります。
しかし、どちらも小型犬・超小型犬ならではのかかりやすい病気(好発疾患)があります。
【両犬種に共通するリスク】
- 膝蓋骨脱臼(パテラ):後ろ足の膝のお皿がずれる、小型犬に最も多い関節疾患。滑る床や高所からのジャンプは厳禁です。
- 気管虚脱:興奮した時などに「ガーガー」とアヒルのような咳をする、気管が潰れてしまう病気。首輪よりハーネス(胴輪)が推奨されます。
【ポメラニアン特有のリスク】
- アロペシアX(脱毛症):原因不明の脱毛症で、特にポメラニアンに多く見られるため「ポメラニアン脱毛症」とも呼ばれます。
【チワワ特有のリスク】
- 水頭症:脳室に髄液が溜まり、脳を圧迫する病気。特に頭が極端に丸いアップルヘッドの子に注意が必要です。
- モレラ(ペコ):頭頂部の骨が開いている状態。病気ではありませんが、衝撃に非常に弱いため、頭をぶつけないよう細心の注意が必要です。
「ポメラニアン」と「チワワ」の共通点
どちらも「超小型犬〜小型犬」サイズであり、JKC(ジャパンケネルクラブ)の分類では同じ第9グループ「愛玩犬(トイ・グループ)」に属します。また、体が小さく寒さに弱いこと、警戒心が強く番犬気質(吠えやすい)ことも共通しています。
全く異なるルーツを持つ両者ですが、愛玩犬として小型化された結果、いくつかの共通点を持っています。
- 愛玩犬(トイ・グループ):ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種分類では、どちらも第9グループ「愛玩犬(コンパニオン・ドッグ&トイ・ドッグ)」に属します。
- 警戒心と吠えやすさ:どちらも小さく愛らしい見た目とは裏腹に、警戒心が強く勇敢で、見知らぬ人や物音に反応して吠えやすい傾向があります。
- 寒さに弱い:体が小さく、地面からの距離が近いため、寒さに弱いです。特にスムースコートのチワワや、毛量が少ないポメラニアンは、冬場の温度管理や洋服での防寒が欠かせません。
歴史・ルーツと性質の関係
ポメラニアンはドイツ原産。元々は大型のスピッツ(そり犬など)でしたが、19世紀にイギリスのヴィクトリア女王に愛されたことで爆発的に小型化・愛玩犬化が進みました。チワワはメキシコ原産で、アステカ文明時代から「テチチ」と呼ばれた犬が祖先とされる、世界最古の犬種の一つです。
両者の性格の違いは、その歴史的背景に色濃く反映されています。
ポメラニアンは、ドイツとポーランドの国境にまたがるポメラニア地方が原産です。その祖先は、サモエドやジャーマン・スピッツといった、体重10kg以上にもなる大型のスピッツ(そり犬や牧羊犬)でした。
現在の姿になったのは19世紀後半、イギリスのヴィクトリア女王がこの犬種を熱愛し、より小型(現在のサイズ)の個体を好んで繁殖させたことがきっかけです。元々の作業犬としての賢さ・活発さと、愛玩犬としての愛らしさを併せ持つことになったのです。
チワワは、メキシコが原産で、その歴史は非常に古く、アステカ文明の時代(14〜16世紀頃)にはすでに「テチチ(Techichi)」と呼ばれる小型犬が、王族のペットや宗教的な儀式の供物として飼育されていた記録が残っています。
その正確な起源は謎に包まれていますが、世界最古の犬種の一つとされ、「世界最小の犬種」として愛玩犬の地位を確立しました。
どっちを選ぶべき?ライフスタイル別おすすめ
どちらも吠えやすいため、集合住宅での飼育はしつけが必須です。フワフワの毛並みと毎日のブラッシング、活発な遊びを好むなら「ポメラニアン」。常に飼い主に寄り添う甘えん坊で、勇敢な小さな番犬を望むなら「チワワ」がおすすめです。
どちらも非常に魅力的な犬種ですが、あなたのライフスタイルや犬に求めるものによって、相性は異なります。
【ポメラニアンがおすすめな人】
- フワフワ・モフモフの毛並みを毎日ブラッシングできる人(抜け毛ケアが最重要)
- 犬と活発に遊び、アジリティなどにも挑戦したい人
- 賢い反面、スピッツ特有の頑固さや自己主張を理解し、根気強くしつけができる人
- 警戒心の強さ(吠えやすさ)を理解し、適切にコントロールできる人
【チワワがおすすめな人】
- 常に愛犬と一緒にいたい、深い絆を求める人
- 世界最小の犬種の華奢な体(特にモレラ)を、細心の注意を払って守れる人
- 勇敢な性格を「頼もしい」と受け止め、無謀な行動(攻撃性)に出ないよう社会化できる人
- 警戒心の強さ(吠えやすさ)を理解し、適切にコントロールできる人
僕が出会ったポメラニアンとチワワの“個性”の違い(体験談)
僕はドッグランで、両犬種の対照的な姿をよく目にします。
ポメラニアンは、まるで弾むボールのようにランの中を駆け回り、自分より大きな犬にも「遊ぼう!」と誘いをかけます。その好奇心とエネルギーは底なしで、飼い主さんが「もう帰るよ!」と声をかけても、「まだ遊ぶ!」とばかりに逃げ回っている姿は、まさに「活発」という言葉がぴったりです。そして、その抜け毛は…まさに「綿毛が飛んでいる」ようでした。
一方のチワワは、飼い主さんの足元や抱っこされていることが多いですが、ひとたび他の犬が飼い主さんに近づこうものなら、自分より10倍はあろうかという大型犬に対しても「ウーッ!」と牙を剥いて威嚇します。「ご主人様は僕(私)が守る!」という、その小さな体からは想像もつかない「小さな巨人」っぷりに、いつも驚かされます。
ポメラニアンの魅力が「天真爛漫な遊び相手」なら、チワワの魅力は「忠実な小さな騎士(ナイト)」なのかもしれない、と感じた体験です。
「ポメラニアン」と「チワワ」に関するよくある質問
Q: ポメラニアンとチワワ、どっちが吠えやすいですか?
A: どちらも非常に吠えやすい犬種として知られています。ポメラニアンはスピッツ系の警戒心から、チワワは忠誠心と勇敢さから吠える傾向があります。どちらを飼うにしても、集合住宅などでは子犬の頃からの「無駄吠え防止」のしつけが不可欠です。
Q: 抜け毛が少ないのはどっちですか?
A: どちらも抜け毛は多いですが、ポメラニアンの方が圧倒的に多いです。ポメラニアンはダブルコートで、特に換毛期は大量の綿毛が抜けます。チワワのスムースコートも短毛ながら意外と抜けますが、ポメラニアンのお手入れ(毎日のブラッシング)に比べれば管理はしやすいです。
Q: 初心者でも飼いやすいのはどっちですか?
A: どちらも「吠え」のしつけや、特有の病気(パテラ、気管虚脱など)への理解が必要なため、一長一短があり、中級者向けと言えます。ポメラニアンは抜け毛ケアと頑固さのしつけ、チワワは吠えのコントロールと健康管理(モレラなど) がポイントになります。
Q: 「ポメチワ(チワポメ)」はどんな犬ですか?
A: ポメラニアンとチワワのミックス犬(ハイブリッド犬)で、非常に人気の高い組み合わせです。ポメラニアンのフワフワな毛量と、チワワの愛らしい瞳を受け継ぐことが多いですが、毛質、サイズ、性格は個体差が非常に大きいです。
「ポメラニアン」と「チワワ」の違いのまとめ
日本で愛される超小型犬の2トップ、ポメラニアンとチワワ。その違いは非常に明確でした。
- 原産国とルーツが違う:ポメラニアンはドイツのスピッツ犬がルーツ。チワワはメキシコの古代犬がルーツ。
- 被毛が全く違う:ポメラニアンはフワフワのダブルコート一択で抜け毛が非常に多い。チワワはロングとスムースの2種類がいる。
- サイズと頭部が違う:チワワは世界最小の犬種で、リンゴ型の頭(モレラ)が特徴。ポメラニアンはチワワよりやや大きい傾向がある。
- 性格が違う:ポメラニアンは「活発・好奇心旺盛」。チワワは「飼い主一筋・勇敢」。どちらも警戒心が強く吠えやすい。
どちらも小型犬ならではの魅力と、飼育の難しさ(吠え、病気)を併せ持っています。迎える前には、その犬種の特性を深く理解し、生涯を共にする覚悟が必要ですね。他のペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。
参考文献(公的一次情報)
- (参考)一般社団法人 ジャパンケネルクラブ(JKC)(https://www.jkc.or.jp/) – 犬種標準やグループ分類について
- (参考)環境省「動物の愛護と適切な管理」(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/) – 終生飼養の責任について