「ラガマフィン」と「ラグドール」、どちらも「ぬいぐるみ」や「テディベア」に例えられる、大きくて人懐っこい猫種。
見た目も性格も非常によく似ていますが、実は「ラガマフィン」は「ラグドール」をベースに作出された、比較的歴史の浅い猫種という決定的な違いがあります。
最も簡単な答えは、ラグドールが「ブルーの目」と「ポインテッド柄」に限定されるのに対し、ラガマフィンは「あらゆる毛色や目の色」が認められている点です。
この違いは、ラグドール作出時のブリーディングに関する厳格な規制に反発したブリーダーたちが、独立して生み出したのがラガマフィンだからです。この記事を読めば、なぜこの2種が分かれたのかという歴史的背景から、それぞれの魅力、飼育上の違いまでスッキリと理解できます。
まずは、両者の決定的な違いを比較表で押さえましょう。
| 項目 | ラガマフィン(Ragamuffin) | ラグドール(Ragdoll) |
|---|---|---|
| 分類・系統 | 大型猫(アメリカ原産、ラグドールから派生) | 大型猫(アメリカ原産) |
| サイズ(体重) | 4.5kg〜9kg程度(大型) | 4kg〜9kg(オスは10kg近くになることも) |
| 目の色 | 全ての色が許可 | ブルーのみ |
| 毛色・パターン | 全ての毛色とパターンが許可 | ポインテッド、ミテッド、バイカラーのみ |
| 性格・行動 | 非常に穏やか、人懐っこい、遊び好き、賢い | 非常に穏やか、人懐っこい、抱っこで脱力、賢い |
| 歴史 | 1990年代にラグドールから派生 | 1960年代に作出 |
| 猫種登録団体(例) | CFAなどで公認(TICAでは非公認) | CFA、TICAなど主要団体で公認 |
【3秒で押さえる要点】
- 血縁:ラガマフィンはラグドールをベースに作出された猫種です。
- 見た目:ラグドールは「ポインテッド柄」と「ブルーの目」のみ。ラガマフィンはあらゆる毛色・目の色が認められます。
- 性格:どちらも「ぬいぐるみ」のように穏やかで人懐っこい性格が共通しています。
見た目とサイズの違い
最大の違いは「色の多様性」です。ラグドールが厳格に「ポインテッド柄」と「ブルーの目」に限定されるのに対し、ラガマフィンはあらゆる毛色と目の色が認められています。サイズはどちらもイエネコ最大級です。
ラガマフィンとラグドールの最大の違いは、その「色の多様性」にあります。
ラグドールは、その犬種標準(スタンダード)において、毛色はシャム猫のような「ポインテッド(体の末端に色が入る)」と、そのバリエーションである「ミテッド(手足が白い靴下状)」、「バイカラー(八割れなど)」のみが認められています。そして、目の色は「ブルー」以外は認められていません。
一方、ラガマフィンはラグドールから派生した猫種であり、その最大の特徴は色の自由度の高さです。ラグドールでは認められていないソリッド(単色)、タビー(縞模様)、キャリコ(三毛)など、ほぼ全ての毛色とパターンが公認されています。目の色もブルーだけでなく、グリーン、ゴールド、オッドアイなど、あらゆる色が認められています。
サイズや体格については、どちらもイエネコの中で最大級の大型猫であり、骨格がしっかりしています。オスは9kgを超えることも珍しくありません。
被毛はどちらも「猫のテディベア」 と呼ばれるように、シルキーで豊かなミディアムロングの毛質を持っています。
性格・行動特性としつけやすさの違い
性格は「ほぼ同じ」と考えて差し支えありません。どちらも「穏やかな巨人(ジェントルジャイアント)」と呼ばれるほど、非常に人懐っこく、穏やかで、賢い猫種です。
ラガマフィンとラグドールの性格や行動特性は、「最大級の共通点」と言えます。
ラグドールはその名の通り「ぬいぐるみ(Ragdoll)」に由来し、抱っこされると力を抜いてリラックスする個体が多いことで有名です。ラガマフィンもその性質を色濃く受け継いでおり、非常に穏やかで人懐っこく、スキンシップを好みます。
どちらも攻撃性が低く、我慢強いため、小さなお子様がいる家庭や、他の犬・猫とも良好な関係を築きやすいとされています。非常に賢く、飼い主に従順なため、しつけに苦労することも少ないでしょう。「ジェントルジャイアント(穏やかな巨人)」 という愛称は、この両方の猫種に当てはまります。
寿命・健康リスク・病気の違い
血縁が非常に近いため、注意すべき遺伝病リスクは共通しています。特に「肥大型心筋症(HCM)」は両方の猫種で遺伝子変異が特定されており、迎える前の親猫の検査確認が非常に重要です。
平均寿命は12〜15年程度と、大型猫としては標準的です。
健康面で注意すべき点も共通しています。なぜなら、ラガマフィンはラグドールを基礎としているため、ラグドールが持つ遺伝的リスクをそのまま引き継いでいる可能性が高いからです。
最も注意すべきなのは、「肥大型心筋症(HCM)」という心臓病です。これは、心臓の筋肉が厚くなり、心臓の機能が低下する病気で、ラグドールやメインクーンで発症リスクの高い遺伝子変異が特定されています。
また、体が大きい猫種全般に言えることですが、「股関節形成不全」 などの関節疾患にも配慮が必要です。
家族に迎える際は、ブリーダーが親猫の遺伝子検査(HCMなど)をきちんと行っているかを確認することが非常に重要です。
「ラガマフィン」と「ラグドール」の共通点
どちらもアメリカ原産の大型猫であり、「ぬいぐるみ」や「テディベア」と形容されるほど穏やかで人懐っこい性格、そして豊かなミディアムロングの被毛を持つ点が最大の共通点です。
ラガマフィンはラグドールから派生した猫種であるため、違いを探す方が難しいほど多くの共通点を持っています。
- 穏やかで人懐っこい性格:「ぬいぐるみ」 や「テディベア」 と形容されるほど、人とのスキンシップを好み、攻撃性が低いです。
- 大型の体格:どちらもイエネコの中で最大級のサイズを誇る大型猫です。
- 豊かな被毛:シルキーで触り心地の良い、ミディアムロングの豊かな被毛を持っています。
- ブルーの瞳(の個体がいる):ラグドールはブルーの目のみですが、ラガマフィンもラグドールの血を引いているため、ブルーの瞳を持つ個体が数多く存在します。
- アメリカ原産:どちらもアメリカで作出された猫種です。
歴史・ルーツと性質の関係
両者を分けたのは「歴史」です。ラグドールは1960年代に作出されましたが、そのブリーダーは厳格な登録規制を敷きました。ラガマフィンは1990年代、その規制に反発したブリーダーたちが独立し、より多様な毛色を求めてラグドールをベースに作出した猫種です。
この2種の最大の違いは、その「歴史」にあります。
ラグドールは、1960年代にアメリカのブリーダー、アン・ベイカー氏によって、特定の性質(抱っこされると脱力する)を持つ猫たちを基礎に作出されました。ベイカー氏は独自のブリーダー組織(IRCA)を設立し、その繁殖や登録に関して非常に厳格な規制を設けました。
ラガマフィンは、このアン・ベイカー氏の厳格な管理やビジネス手法に反発したブリーダーたちが、1990年代にラグドールをベースに独立して作出した猫種なのです。
彼らはラグドールの素晴らしい性質(穏やかさ、人懐っこさ)を引き継ぎつつ、ペルシャやヒマラヤン、その他の長毛種とも交配させ、ラグドールでは認められていなかった多様な毛色やパターン、目の色を持つ猫たちを生み出しました。この「独立」と「色の多様性の追求」こそが、ラガマフィンが誕生した理由です。
どっちを選ぶべき?ライフスタイル別おすすめ
性格や飼育の手間はほぼ同じです。そのため、選択は「見た目の好み」になります。「ブルーの目とポインテッド柄」というクラシックな美しさを求めるならラグドール。「黒猫や茶トラ」など、色の自由度や個性を求めるならラガマフィンがおすすめです。
性格や飼育の手間(毎日のブラッシング、広いスペースの確保、十分な遊び時間)は、どちらの猫種もほぼ同じと考えて良いでしょう。そのため、選択の基準は「見た目の好み」と「希少性」になります。
【ラグドールがおすすめな人】
- 「猫と言えば、青い目とポインテッド柄」というクラシックな美しさを求める人。
- TICAやCFAなど、主要な猫血統登録団体での歴史とスタンダードを重視する人。
- 「抱っこで脱力する」という、ラグドール本来の物語性に魅力を感じる人。
【ラガマフィンがおすすめな人】
- 穏やかな大型猫がいいが、毛色や目の色にもこだわりたい人(例:ソリッドブラック、レッドタビー、グリーンの目など)。
- ラグドールの規制から独立した「色の自由度」という歴史的背景に魅力を感じる人。
- 「猫のテディベア」 と呼ばれる、より丸みを帯びた愛らしい表情を好む人。
僕が出会った「ラグドール」と「ラガマフィン」の“色の自由度”の違い(体験談)
僕がキャットショーで見たラグドールたちは、皆、息をのむような美しいブルーの目と、淡いクリーム色の体にポイントが入った、まさに「王道」の姿でした。彼らは審査員に抱き上げられても、本当に「フニャッ」と力を抜き、その穏やかさで会場を魅了していました。
一方、別のブリーダーさんのお宅で出会ったラガマフィンは、同じように穏やかで大きな体なのに、見た目が全く違いました。一匹は全身真っ黒なソリッドブラックで、もう一匹は鮮やかなレッドタビー(茶トラ)でした。「この子たちもラグドールの親戚なんですよ」と聞き、ラグドールの「型の美学」と、ラガマフィンの「自由な個性」という、それぞれのブリーダーの哲学の違いを感じた瞬間でした。どちらも、信じられないほど人懐っこく、初対面の僕の膝にも乗ってくる「穏やかな巨人」でした。
「ラガマフィン」と「ラグドール」に関するよくある質問
Q: ラガマフィンとラグドール、結局どっちが飼いやすいですか?
A: どちらも「ジェントルジャイアント(穏やかな巨人)」と呼ばれるほど、非常に穏やかで人懐っこく、飼いやすい猫種です。性格に大きな違いはありません。
Q: ラガマフィンの方がラグドールより大きいのですか?
A: ほぼ同じサイズです。どちらもイエネコの中では最大級の大型猫であり、個体差の範囲内と言えます。ラグドールのオスは10kg近くになることもあります。
Q: ラガマフィンはTICAに登録されていますか?
A: TICA(The International Cat Association)では公認されていません。ラグドールとの違いが毛色やパターン、目の色などに留まるためとされています。ただし、CFA(Cat Fanciers’ Association)など、他の主要な猫血統登録団体では公認されています。
Q: ラグドールから派生したなら、ラガマフィンも抱っこで脱力しますか?
A: ラグドールの「抱っこすると脱力する」という性質は有名ですが、ラガマフィンもその血を受け継いでいるため、同様にリラックスして抱っこを好む個体が多い傾向にあります。
「ラガマフィン」と「ラグドール」の違いのまとめ
ラガマフィンとラグドールは、性格や体格はほぼ同じ「穏やかな巨人」ですが、その歴史と色の基準が異なります。
- 歴史が違う:ラガマフィンは、ラグドールの厳格なブリーディング規制に反発したブリーダー達によって、1990年代にラグドールをベースに作出されました。
- 色の規則が違う:ラグドールは「ポインテッド柄」と「ブルーの目」のみです。ラガマフィンは、ラグドールの性質を持ちながら、あらゆる毛色と目の色が認められています。
- 性格は共通:どちらも「ぬいぐるみ」 のように穏やかで人懐っこく、非常に飼いやすい大型猫です。
- 遺伝病リスクは共通:「肥大型心筋症(HCM)」など、ラグドールが持つ遺伝病のリスクはラガマフィンも共通して持っているため、迎える際は親の遺伝子検査歴の確認が重要です。
あなたが「クラシックな美しさ」を求めるならラグドール、「色の自由度や個性」を求めるならラガマフィンが向いているかもしれませんね。ぜひ、他のペット・飼育に関する違いについても、他の記事をご覧ください。
参考文献(公的一次情報)
- CFA (The Cat Fanciers’ Association)(https://cfa.org/)
- TICA (The International Cat Association)(https://www.tica.org/)