「スピッツ」と「日本スピッツ」、名前が似ているけれど、一体何が違うの?もしかして同じ犬のこと?と疑問に思うかもしれませんね。
結論から言うと、「スピッツ」は特定の犬種名ではなく、原始的な犬の「グループ名(総称)」であり、「日本スピッツ」はそのスピッツ・グループに属する「日本原産の犬種名」です。
つまり、「日本スピッツはスピッツの一種」というのが正しい関係です。この「スピッツ」という大きなグループには、実は柴犬や秋田犬、ポメラニアン、サモエドなども含まれています。この記事では、紛らわしい「スピッツ」という言葉の意味から、私たちがよく知る“白いフワフワの犬”=「日本スピッツ」の本当の魅力、飼育上の注意点までスッキリ解説します!
【3秒で押さえる要点】
- スピッツとは:犬種名ではなく「グループ名(スピッツタイプ)」。立ち耳、巻き尾、尖った口吻を持つ原始的な犬の総称です。
- 日本スピッツとは:スピッツ・グループに属する「犬種名」。日本原産で、純白の被毛が特徴です。
- 性格の違い:日本スピッツは非常に陽気で遊び好き、飼い主に忠実です。かつて「よく吠える」と言われましたが、現在は改良され、賢く飼いやすい家庭犬になっています。
| 項目 | スピッツ(犬種グループの共通特徴) | 日本スピッツ(Nihon Spitz) |
|---|---|---|
| 分類 | 犬種のグループ(タイプ)名 | 特定の犬種名(スピッツ・グループの一員) |
| 語源 | ドイツ語で「尖った」の意 | 日本原産のスピッツ系犬種 |
| 代表的な犬種 | 日本スピッツ、ポメラニアン、サモエド、シベリアン・ハスキー、柴犬、秋田犬など多数 | (日本スピッツ自身) |
| 見た目の特徴 | 立ち耳、巻き尾(または差し尾)、尖った口吻、厚いダブルコートが共通 | 純白の被毛、豊かな飾り毛。サイズは小型犬〜中型犬に分類される。 |
| サイズ(体高) | 犬種により様々(超小型〜超大型) | オス:30〜38cm / メス:オスよりやや小さい |
| 性格の傾向 | 独立心が強い、警戒心が強い、飼い主に忠実、頑固(犬種差大) | 陽気で活発、非常に利口、飼い主に忠実、遊び好き、警戒心あり。 |
| 飼育難易度 | 犬種により様々(易〜難) | 初心者〜中級者向け。賢く物覚えが良いが、警戒心や頑固さへの理解は必要。 |
| 原産国 | ー | 日本 |
「スピッツ」と「日本スピッツ」の関係性(最大の違い)
最大の違いは「言葉の範囲」です。「スピッツ」は特定の犬種ではなく、立ち耳・巻き尾などの特徴を持つ犬の「グループ(タイプ)」を指す広い言葉です。「日本スピッツ」は、そのスピッツ・グループに含まれる、日本原産の「特定の犬種名」です。
この2つの言葉の違いを理解する上で最も重要なのが、「スピッツ」という言葉が何を指しているかです。
多くの方が「スピッツ」と聞くと、白いフワフワの犬(=日本スピッツ)を思い浮かべますが、犬種分類の世界では、「スピッツ」は特定の犬種名ではありません。
「スピッツ(Spitz)」とは、ドイツ語で「尖った」という意味の言葉に由来し、
- 尖った口吻(マズル)
- ピンと立った耳(立ち耳)
- 背中に巻いた尾(巻き尾)
- 寒さに強い厚い被毛(ダブルコート)
といった、オオカミに近い原始的な形態的特徴を持つ犬たちの「グループ(タイプ)」を指す総称なのです。
ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種分類では、第5グループ「原始的な犬・スピッツ」としてまとめられています。
そして、この「スピッツ・グループ」には、「日本スピッツ」はもちろんのこと、「ポメラニアン」「サモエド」「シベリアン・ハスキー」、そして意外かもしれませんが「柴犬」や「秋田犬」といった日本犬たちも含まれています。
つまり、「スピッツと日本スピッツの違いは?」という問いは、「哺乳類とヒトの違いは?」と聞いているのに似ています。「日本スピッツ」は、「スピッツ」という大きなカテゴリーの中の、日本で確立された一つの犬種なのです。
「スピッツ・グループ」に共通する特徴(見た目・性格)
スピッツ・グループ(原始的な犬)は、見た目では立ち耳、巻き尾、尖った口吻、厚いダブルコートが共通します。性格面では、自立心が強く、飼い主に忠実である一方、警戒心が強く頑固な一面を持つ犬種が多いのが特徴です。
では、日本スピッツも属する「スピッツ・グループ」の犬たちには、どのような共通点があるのでしょうか。
見た目の特徴は前述の通り、オオカミに近い原始的な形態です。極寒の地でソリを引いたり、猟犬として活躍したりしてきた歴史を持つ犬種が多いため、寒さから身を守るための密生したアンダーコート(下毛)と硬いオーバーコート(上毛)からなるダブルコートを持つ犬がほとんどです。
性格面での共通点は、「自立心(独立心)の強さ」と「警戒心の強さ」です。
彼らの多くは、猟犬や番犬、そり犬として、人間の指示を待つだけでなく、自ら状況を判断して行動することが求められてきました。そのため、非常に賢い反面、自分が納得しない命令には従わない「頑固さ」も持ち合わせています。
また、群れや縄張りを守る本能が強く残っているため、家族(群れ)と認めた相手には非常に忠実ですが、見知らぬ人や他の犬には強い警戒心を見せることが多いのも特徴です。日本犬である柴犬や秋田犬が、飼い主に忠実でありながらもベタベタせず、頑固な一面を持つのは、まさにこのスピッツ気質が色濃く残っているからです。
「日本スピッツ」固有の特徴(見た目・性格・しつけ)
日本スピッツの最大の特徴は、純白で豊かな被毛と、笑顔のように見える愛らしい表情です。サイズは中型犬に近い小型犬に分類されます。性格はスピッツ・グループの中でも特に陽気で遊び好き、非常に利口です。かつての「よく吠える」性質は改良され、現在は賢い家庭犬として知られています。
数あるスピッツ・グループの中で、「日本スピッツ」が持つ固有の特徴は、何といってもその「純白の被毛」です。
全身を覆う真っ白でフワフワの毛、特に首回りや胸、尾の豊かな飾り毛(ふさ毛)が、その優雅さを際立たせています。黒い瞳と鼻、そして引き締まった口角がまるで笑っているかのように見える「スピッツ・スマイル」も大きな魅力です。
サイズは、ジャパンケネルクラブ(JKC)のスタンダードでは体高がオスで30〜38cmと定められており、犬種分類上は小型犬、あるいは中型犬に近いサイズ感です。(戦後は中型犬サイズが主流でしたが、現在は小型化が進んでいます)
性格は、スピッツ・グループの例に漏れず、非常に賢く、飼い主に忠実です。しかし、柴犬のようなクールさとは異なり、非常に陽気で活発、遊び好きな点が日本スピッツの際立った特徴です。飼い主家族とコミュニケーションを取るのが大好きで、まるで子供のような明るさで家庭を照らしてくれます。
ただし、警戒心が強く感覚が鋭いのも事実です。かつて昭和30年代頃に大流行した際、一部の犬が番犬として過度に吠えたことから「スピッツ=うるさい」というイメージが定着してしまいました。
しかし、その後のブリーダーたちの熱心な改良により、現在の日本スピッツは無駄吠えが少なく、非常に飼いやすい賢明な犬種へと変化しています。
しつけの面では、非常に利口で物覚えが早いため、初心者でも比較的トレーニングしやすい犬種です。ただし、賢いがゆえに飼い主の甘さや矛盾を見抜きます。褒めて伸ばすしつけ(陽性強化)を基本としながらも、子犬の頃から一貫したルールで接することが重要です。
日本スピッツの歴史・ルーツ(なぜ「日本」スピッツと呼ばれるのか)
日本スピッツの直接の祖先は、大正時代にシベリア経由で日本に持ち込まれた白い「ジャーマン・スピッツ」とされています。その後、カナダやアメリカなどから輸入された他のスピッツ系犬種と交配・改良され、昭和23年(1948年)に日本で犬種標準が確立されました。
「日本スピッツ」という名前ですが、柴犬や秋田犬のように古来から日本にいたわけではありません。
その歴史は比較的新しく、大正時代に始まります。ジャパンケネルクラブ(JKC)によれば、日本スピッツの直接の祖先は、1920年(大正9年)頃にシベリア大陸を経由して日本に持ち込まれた、大型の白い「ジャーマン・スピッツ」であったとされています。
1921年(大正10年)には東京の展覧会に出陳され、その後1936年(昭和11年)頃までに、カナダ、アメリカ、オーストラリア、中国などから、様々な白いスピッツ系の犬種が輸入されました。
日本スピッツは、これらの輸入されたスピッツたちを基礎犬(ベース)とし、日本国内で交配・改良を重ねて小型化・純白化を進め、独自の犬種として固定化された犬種なのです。そして戦後の1948年(昭和23年)に、ジャパンケネルクラブによって統一された犬種標準(スタンダード)が確立されました。
日本で独自の改良を経て誕生したスピッツ系の犬種であるため、「日本スピッツ」と呼ばれています。
日本スピッツの寿命・健康リスク・病気
平均寿命は12〜16年程度と、小型〜中型犬としては比較的長寿です。純白の被毛のため、涙やけ(流涙症)による目の周りの変色が目立ちやすいです。また、小型犬に多い「膝蓋骨脱臼(パテラ)」や、皮膚疾患にも注意が必要です。
日本スピッツの平均寿命は12〜16年程度と言われており、比較的丈夫で長生きする犬種とされています。
遺伝的な好発疾患は少ない犬種ですが、注意したい点がいくつかあります。
第一に「涙やけ(流涙症)」です。これは病気ではありませんが、涙が過剰に出て目の周りの毛が赤茶色に変色してしまう現象です。日本スピッツは被毛が純白のため、この涙やけが非常に目立ちやすいです。こまめに涙を拭き取って清潔に保つほか、ドッグフードが体質に合っていない場合や、逆さまつげ、鼻涙管の詰まりなどが原因の場合もあるため、獣医師に相談が必要です。
第二に「膝蓋骨脱臼(パテラ)」です。これは小型犬全般に多い関節疾患で、膝のお皿がずれてしまいます。滑りやすいフローリングの床を避けたり、ソファなどからの飛び降りをさせない工夫が必要です。
第三に「皮膚疾患」です。あの豊かなダブルコートは、換毛期には大量の抜け毛があるだけでなく、湿気がこもりやすい構造です。高温多湿な日本の夏は特に苦手で、手入れを怠るとアレルギー性皮膚炎や膿皮症などを発症しやすいため、毎日のブラッシングと定期的なシャンプー、涼しい室温管理が欠かせません。
日本スピッツはどんな人におすすめ?(飼いやすさ)
日本スピッツは、犬と積極的にコミュニケーションを取りたい人、遊びやしつけに時間をかけられる人に向いています。抜け毛が非常に多いため、こまめな掃除やブラッシングが苦にならないことも重要です。初心者でも飼育可能ですが、警戒心の強さを理解する必要があります。
かつての「うるさい犬」というイメージは過去のものとなり、現在では非常に飼いやすい家庭犬として見直されている日本スピッツ。彼らを家族として迎えるには、どのような人が向いているのでしょうか?
【日本スピッツがおすすめな人】
- 犬と活発に遊んだり、コミュニケーションを取るのが好きな人
- 賢い犬種なので、しつけやトレーニングに喜びを感じられる人
- 大量の抜け毛(特に換毛期)の掃除や、毎日のブラッシングを厭わない人
- 集合住宅でも飼育可能だが、警戒心からの吠えをコントロールするしつけができる人
- 初めて犬を飼う人でも、犬種の特性を学び、一貫したしつけができるなら飼育可能です。
逆に、犬とあまりスキンシップを取りたくない人や、抜け毛の掃除を負担に感じる人、番犬として過度に吠えることを期待する人には向いていません。
僕が出会った日本スピッツの“明るさと賢さ”(体験談)
僕の友人宅に、まさに「日本スピッツ」のイメージ通りの真っ白でフワフワな子がいます。名前は「ユキちゃん」。僕が初めて彼らの家を訪れた時、ユキちゃんは玄関で「ワンワン!」と鋭く2回吠えました。
「あ、やっぱりスピッツは警戒心が強いんだな」と思った瞬間、友人が「お客さんだよ、大丈夫」と声をかけると、ピタッと吠えるのをやめ、今度は僕の足元に駆け寄ってきました。
驚いたのはその後です。僕がリビングでソファに座ると、ユキちゃんはすぐにお気に入りのおもちゃを持ってきて、僕の膝に「遊んで!」と前足を乗せてきました。その切り替えの早さと、人懐っこい陽気さに衝撃を受けました。
その後も、友人が「おすわり」「フセ」「まわれ」と指示を出すと、まるでゲームを楽しむかのように的確にこなしていきます。かつての「うるさい犬」というイメージは完全に吹き飛びました。あれは、飼い主を喜ばせたいという「賢さ」と、状況を判断する「利口さ」の表れなのだと感じました。真っ白な毛の下には、非常に聡明で明るい魂が宿っている。それが僕の日本スピッツに対する印象です。
「スピッツ」と「日本スピッツ」に関するよくある質問
Q: 「スピッツ」という犬種はいないのですか?
A: はい、厳密には「スピッツ」という単一の犬種名はありません。犬の形態的な特徴(立ち耳、巻き尾など)を持つ「スピッツ・グループ(タイプ)」の総称です。ただし、ヨーロッパでは「ジャーマン・スピッツ」や「フィニッシュ・スピッツ」など、名前にスピッツと付く犬種は多く存在します。
Q: ポメラニアンやサモエドもスピッツなのですか?
A: はい、どちらも「スピッツ・グループ」の仲間です。ポメラニアンはジャーマン・スピッツを小型化した犬種であり、サモエドはシベリア原産の大型のスピッツ系犬種です。日本スピッツもこれらの犬種と遠い親戚関係にあると言えます。
Q: 日本スピッツは本当に無駄吠えしなくなったのですか?
A: はい、戦後の熱心なブリーダーによる改良の結果、無駄吠えは劇的に少なくなりました。もちろん個体差はあり、警戒心から吠えることはありますが、かつてのように闇雲に吠え続ける犬種ではなく、「賢く、物分かりの良い犬」へと改良されています。
Q: 抜け毛はどれくらいですか?
A: 非常に多いです。特に春と秋の換毛期には、アンダーコートがごっそりと抜けます。純白の毛は床や服で目立ちやすいため、毎日のブラッシングとこまめな掃除が必須です。
「スピッツ」と「日本スピッツ」の違いのまとめ
「スピッツ」と「日本スピッツ」の違い、そして日本スピッツの本当の魅力がお分かりいただけたかと思います。
- 「スピッツ」はグループ名:「スピッツ」は立ち耳・巻き尾などの特徴を持つ原始的な犬の「総称(タイプ)」。
- 「日本スピッツ」は犬種名:そのスピッツ・グループに属する、日本原産の純白の犬種。
- 仲間たち:スピッツ・グループには柴犬、秋田犬、ポメラニアン、サモエドなども含まれる。
- 日本スピッツの魅力:非常に陽気で利口、遊び好き。かつての「よく吠える」イメージは改良され、賢い家庭犬となっている。
- 飼育の注意点:抜け毛が非常に多いため、毎日のお手入れが必須。
もし真っ白な日本スピッツを家族として迎えるなら、その賢さと明るさを存分に引き出し、素晴らしいパートナーとなってくださいね。日本犬の魅力や、他のペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。
参考文献(公的一次情報)
- 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ(JKC)(https://www.jkc.or.jp/)
- 環境省「動物の愛護と適切な管理」(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/)