アガーとゼラチン、どちらもゼリーなどのお菓子作りで使われる凝固剤ですが、仕上がりの食感や透明感、さらには固まる温度まで全く違うことをご存知ですか?
「レシピに『ゼラチン』とあるけど、アガーで代用できる?」と迷ったことがあるかもしれませんね。
この二つの最大の違いは、アガーが海藻由来の「植物性」であるのに対し、ゼラチンはコラーゲン由来の「動物性」である点です。
この記事を読めば、原料の違いがもたらす特性(食感、透明度、固まる温度)から、栄養価、そして最適な料理の使い分けまで、スッキリと理解できますよ。
まずは、この二つの凝固剤の決定的な違いを、比較表で見ていきましょう。
結論|アガーとゼラチンの違いが一目でわかる比較表
アガーとゼラチンの最も大きな違いは「原料」と「固まる温度」です。アガーは海藻(植物性)が原料で常温(30~40℃)で固まり、弾力がなくサクッとした食感です。一方、ゼラチンは動物性コラーゲン(動物性)が原料で冷蔵庫(5~10℃)で固まり、弾力があり口溶けが良い(体温で溶ける)のが特徴です。
一見似ている二つですが、特性は正反対と言えるほど異なります。
| 項目 | アガー | ゼラチン |
|---|---|---|
| 原材料 | 海藻(テングサ、オゴノリなど) | 動物のコラーゲン(牛や豚の骨・皮) |
| 分類 | 植物性(多糖類) | 動物性(タンパク質) |
| 見た目 | 透明度が非常に高い | やや黄色がかった透明 |
| 食感 | 弾力がなく、サクッ、ほろり、つるん | 弾力があり、プルプル、とろける |
| 固まる温度 | 常温(30~40℃)で固まる | 冷蔵庫(5~10℃)での冷却が必要 |
| 溶ける温度 | 高温(80~90℃以上)で溶ける (夏場の室温では溶けない) | 低温(20~25℃)で溶け出す (口溶けが良い) |
| 主な栄養素 | 食物繊維 | タンパク質(コラーゲン) |
| カロリー(100g) | ほぼゼロ(※製品による) | 約344 kcal |
※カロリーは「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の「ゼラチン」の数値を参照。アガーは製品により異なりますが、多くは食物繊維が主でカロリーはほぼありません。
アガーとゼラチンの定義と原材料の違い
アガーの原料はテングサやオゴノリなどの海藻で、植物性です。一方、ゼラチンの原料は牛や豚の骨・皮に含まれるコラーゲン(タンパク質)で、動物性です。この原料の違いが、栄養成分や固まる性質の違いを生み出しています。
アガー(Agar)とは?(植物性)
アガーは、テングサ(天草)やオゴノリといった海藻から抽出される多糖類(食物繊維)を主成分とする凝固剤です。「寒天(かんてん)」と似ていますが、一般的に「アガー」として販売されているものは、寒天よりも精製度が高く、カラギーナン(スギノリなどの海藻から抽出)などを加えて食感を調整している製品が多いです。
植物性であるため、菜食主義(ヴィーガン)の方でも使用できます。無味無臭で、非常に高い透明度を持つのが最大の特徴です。
ゼラチン(Gelatin)とは?(動物性)
ゼラチンは、動物の骨や皮に多く含まれるタンパク質「コラーゲン」を加熱して抽出・精製したものです。
コラーゲンは温かい状態では液体(ゾル)ですが、冷やすと網目構造を作って固まる(ゲル化)性質があります。この性質を利用したのがゼラチンです。動物性タンパク質が主成分であるため、栄養価としてはタンパク質(コラーゲン)に分類されます。
スーパーでは、粉末状の「粉ゼラチン」や、シート状の「板ゼラチン」が販売されていますね。
食感・見た目・風味の違い
食感の差は歴然です。アガーは弾力がなく、「サクッ」「ほろり」とした歯切れの良い食感です。ゼラチンは弾力が強く、「プルプル」「ふるふる」とした食感と、体温で溶ける滑らかな口溶けが特徴です。
食感(サクッ・ほろり vs プルプル・とろける)
この二つで作ったゼリーは、食感が全く異なります。
アガーで作ったゼリーは、弾力(弾性)がほとんどありません。スプーンですくうと、サクッ、あるいは「ほろり」と崩れるような独特の食感(専門用語で「脆性(ぜいせい)」と言います)が特徴です。口に入れても弾力はなく、つるんとしたのど越しが楽しめます。
ゼラチンで作ったゼリーは、強い弾力と粘性を持っています。揺らすと「プルプル」と震え、口に入れると「とろける」ような滑らかな食感が最大の特徴です。この口溶けの良さは、ゼラチンが低い温度(体温)で溶ける性質から来ています。
見た目(透明度)と風味
見た目、特に透明度にも大きな差が出ます。
アガーは無味無臭で、非常に透明度が高いゼリーを作ることができます。このため、フルーツの色を鮮やかに見せたいフルーツゼリーや、水ようかんのような透明感を活かしたお菓子に最適です。
ゼラチンは原料(動物性タンパク質)由来のわずかな匂いがあり、仕上がりも少し黄色がかった透明になります。アガーほどのクリアさはありませんが、ムースやババロアなど、牛乳や生クリームと合わせる場合は、この風味がコクとして活きることもあります。
固まる温度と溶ける温度の違い
温度特性は正反対です。アガーは30~40℃で固まり始めるため、常温でも作業ができます。一度固まると80℃以上にならないと溶けず、夏場の持ち運びにも強いです。ゼラチンは冷蔵庫で5~10℃まで冷やさないと固まりませんが、20~25℃の室温や体温で溶け始めます。
この「温度」の違いが、アガーとゼラチンを使い分ける上で最も重要なポイントです。
アガー:常温で固まり、夏場も溶けにくい
アガーは、一度80~90℃以上に加熱してしっかり溶かす必要がありますが、冷ます際は常温(30~40℃程度)まで温度が下がると固まり始めます。
わざわざ冷蔵庫に入れる必要がなく、短時間で固まるのが大きなメリットです。
さらに、一度固まると非常に耐熱性が高く、80℃以上にならないと再び溶け出しません。そのため、夏場の室温に置いておいても形が崩れず、持ち運び用のゼリーなどにも安心して使えます。
ゼラチン:冷蔵庫で固まり、口溶けが良い
ゼラチンは、50~60℃のお湯で溶かすことができます(沸騰させると固まりにくくなるので注意)。しかし、固まるためには冷蔵庫でしっかりと冷やす(5~10℃)必要があります。常温では固まりません。
そして、ゼラチンの最大の魅力である「口溶け」は、その融点の低さ(溶け出す温度)にあります。20~25℃程度で溶け始めるため、口に入れた瞬間に体温で溶け出し、あの滑らかな食感を生み出します。
デメリットとしては、夏場の室温に置いておくと、溶けて形が崩れてしまうことが挙げられます。
使い方・料理での最適な使い分け
アガーは透明感と耐熱性を活かし、見た目を美しく仕上げたいフルーツゼリーや常温で持ち運びたい場合に適しています。ゼラチンは口溶けと弾力を活かし、ムース、ババロア、パンナコッタ、マシュマロなど、ふわふわ・プルプル食感のお菓子に不可欠です。
それぞれの特性を理解すれば、どちらを選ぶべきか迷わなくなりますよ。
アガーが向いている使い方
「透明感」と「耐熱性(常温で溶けない)」を活かした料理に最適です。
- フルーツゼリー:果物の色を鮮やかに見せたい場合。
- 水ようかん、プリン:つるんとしたのど越しと、サクッとした食感を出したい場合。
- 持ち運び用のお菓子:夏場のパーティーやピクニックに持っていくゼリー。
ゼラチンが向いている使い方
「口溶けの良さ」と「弾力」を活かした料理に最適です。
- ムース、ババロア、パンナコッタ:口に入れた瞬間に溶ける、クリーミーで滑らかな食感。
- グミ、マシュマロ:プルプル、ふわふわとした弾力のある食感。
- テリーヌ、煮こごり:冷製の前菜を固める場合。
使用上の注意点
どちらも、特定の食材との相性に注意が必要です。
ゼラチンはタンパク質です。パイナップル、キウイ、パパイヤ、メロンなどの生の果実に含まれるタンパク質分解酵素によって分解されてしまい、固まらなくなります。これらの果物を使う場合は、一度加熱して酵素を失活させる(缶詰を使うなど)必要があります。
アガーは食物繊維です。酵素の影響は受けませんが、酸味(レモン汁など)が強い液体と一緒に煮立てると、固まる力が弱まることがあります。その場合は、火から下ろして粗熱を取ってから酸味を加えると良いでしょう。
また、アガーはダマになりやすいため、砂糖などとあらかじめ混ぜ合わせてから液体に加えると、きれいに溶かすことができます。
栄養成分・カロリー・保存方法の違い
アガーの主成分は食物繊維であり、製品にもよりますがカロリーはほぼゼロです。ゼラチンの主成分はタンパク質(コラーゲン)であり、100gあたり約344kcalのカロリーがあります。
栄養面では、原料の違いがそのまま反映されます。
アガーの主成分は海藻由来の「食物繊維」です。製品の多くはカロリーがほとんどなく、ヘルシーな凝固剤として知られています。
ゼラチンの主成分は「タンパク質」です。美容や健康で注目されるコラーゲンを手軽に摂取できるという側面もあります。「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」によれば、カロリーは100gあたり約344kcalです。
保存については、どちらも湿気を嫌うため、密閉容器に入れ、直射日光を避けて常温で保存するのが基本です。
体験談|透明フルーツゼリーで大失敗
僕には、アガーとゼラチンの違いを知らなかったために、大切な日に大失敗した苦い思い出があります。
それは友人の誕生日会で、見た目が華やかなフルーツゼリーを作って持って行こうと計画した時のこと。レシピには「アガー」と書いてありましたが、家の棚にあったのは「ゼラチン」だけ。「まあ、同じ固めるものだし大丈夫だろう」と、安易にゼラチンで代用してしまったんです。
まず、イチゴやキウイ、みかんをきれいに並べてゼラチン液を流し込み、冷蔵庫で冷やしました。固まったものを見て、まずガッカリ。アガーのような透き通った感じではなく、ゼラチン特有の少し黄色がかった色で、ゼリー全体が濁って見えたんです。
さらに悲劇が起きたのは、パーティー会場でした。初夏だったこともあり、室温が少し高かったのです。テーブルに置いてしばらくすると、ゼリーがドロドロに溶け始めて形が崩れてしまいました。ゼラチンが体温(室温)で溶ける性質を、全く理解していなかったんですね。
後日、悔しくてアガーでリベンジしたところ、びっくりするほど透明で、キラキラした美しいゼリーが完成しました。しかも、室温でも全く溶けません。
この経験から、料理は科学であり、特に凝固剤の代用は「全くの別物」ができてしまうのだと痛感しました。レシピにアガーと書いてあればアガーを、ゼラチンと書いてあればゼラチンを使う。それが美味しいお菓子への近道ですよね。
アガーとゼラチンに関するFAQ(よくある質問)
Q1. アガーとゼラチンは代用できますか?
A1. おすすめしません。固まる温度(常温 vs 冷蔵)、食感(サクッ vs プルプル)、口溶け(溶けない vs 溶ける)が全く異なるため、レシピ通りの仕上がりにはなりません。ムースにアガーを使うと固くなりすぎ、透明ゼリーにゼラチンを使うと濁ってしまいます。
Q2. 常温で持ち運びたいゼリーには、どちらを使えばいいですか?
A2. アガーが最適です。アガーは一度固まると80℃以上にならないと溶けないため、夏場の室温や持ち運びでも形が崩れません。ゼラチンは室温で溶けてしまうため不向きです。
Q3. ゼラチンに生のパイナップルを入れると固まらないのはなぜですか?
A3. 生のパイナップルやキウイ、メロンなどに含まれる「タンパク質分解酵素」が、ゼラチンの主成分であるタンパク質(コラーゲン)を分解してしまうためです。アガーの主成分は食物繊維なので、これらの酵素の影響は受けませんよ。
まとめ|アガーとゼラチン、どう使い分ける?
アガーとゼラチンの違い、これで迷うことはなくなりそうでしょうか。
どちらが優れているということではなく、作りたい料理の「食感」と「温度」によって使い分けることが大切です。
- アガー(植物性):常温で固まり、夏でも溶けない。透明感とサクッとした食感が特徴。
→ (用途)フルーツゼリー、水ようかん、持ち運び用のお菓子。 - ゼラチン(動物性):冷蔵庫で固まり、体温で溶ける。口溶けとプルプルした弾力が特徴。
→ (用途)ムース、ババロア、パンナコッタ、マシュマロ。
それぞれの特性を理解して、お菓子作りや料理をさらに楽しんでくださいね。
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