スーパーや専門店で鶏肉を選ぶ際、「地鶏」と「赤鶏」という表示を見て、どちらも高級そうだけど、一体何が違うの?と迷った経験はありませんか。
どちらも一般的なブロイラー(若鶏)より美味しいイメージがありますが、この二つは全く異なる基準で分類されています。
「地鶏(じどり)」は、日本農林規格(JAS)によって血統や飼育期間・方法が厳格に定められた鶏肉を指す「公的な規格」です。一方、「赤鶏(あかどり)」は、そのような公的な定義はなく、主に羽毛が赤褐色系の鶏(銘柄鶏の一種)を指す「一般的な呼称」です。
この記事では、赤鶏と地鶏の根本的な定義の違いから、味、食感、価格、最適な調理法まで、専門的に徹底比較します。
結論:赤鶏と地鶏の違いが一目でわかる比較表
赤鶏と地鶏の決定的な違いは「JAS規格(日本農林規格)の有無」です。「地鶏」は、在来種の血統(50%以上)、飼育期間(75日以上)、飼育方法(平飼い)など、JASの厳格な定義を満たした鶏肉だけが名乗れます。一方、「赤鶏」は主に羽毛が赤い鶏(銘柄鶏の一種)を指す一般的な名称であり、JASのような公的な定義はありません。
まずは、この二つの鶏肉の主な違いを、一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | 赤鶏(あかどり) | 地鶏(じどり) |
|---|---|---|
| 定義・分類 | 公的な定義なし。 (銘柄鶏の一種) | 日本農林規格(JAS)による定義あり |
| 主な血統 | 主に赤褐色の羽毛を持つ鶏(ロードアイランドレッド等)の交配種 | 在来種の血統が50%以上必須 |
| 飼育期間 | 定義なし(通常ブロイラーより長い) | 75日以上が必須 |
| 飼育方法 | 定義なし(平飼いが多い) | 28日齢以降は平飼い(1㎡あたり10羽以下)が必須 |
| 食感 | 適度な歯ごたえ | 非常に硬く、強い弾力 |
| 味わい | ブロイラーより旨味が強い | 濃厚なコクと旨味 |
| 価格 | ブロイラーより高価、地鶏より安価 | 非常に高価 |
「赤鶏」と「地鶏」の定義と根本的な違い
「地鶏」は、日本在来種の血を50%以上引き、75日以上平飼いで育てるなど、JASの厳しい基準をクリアした鶏肉です。一方、「赤鶏」は法的な定義がなく、主に羽が赤い品種の鶏肉(多くは「銘柄鶏」)を指す通称です。
「地鶏」が公的な「称号」であるのに対し、「赤鶏」は見た目や品種の「通称」であるという点が根本的に異なります。
地鶏(じどり)とは?(JAS規格)
「地鶏」を名乗るためには、日本農林規格(JAS)が定める以下の3つの厳格な条件をすべて満たす必要があります。
- 血統:在来種(明治時代までに日本に土着した鶏)の血液が50%以上入っていること。
- 飼育期間:孵化(ふか)した日から75日以上飼育していること。
- 飼育方法:28日齢以降、平飼い(鶏が地面を自由に運動できる飼い方)で、1平方メートルあたり10羽以下の密度で飼育すること。
代表的な地鶏には、「名古屋コーチン」「比内地鶏」「薩摩地鶏」などがあります。これらはすべて、この厳しい基準をクリアした鶏肉です。
赤鶏(あかどり)とは?(鶏の品種・銘柄)
「赤鶏」には、JASのような公的な定義や基準は一切ありません。
一般的に、羽毛の色が赤褐色系の鶏を指す通称として使われます。多くの場合、フランスやアメリカ原産の「ロードアイランドレッド」や「ニューハンプシャー」といった赤褐色の品種を親に持つ交配種です。
これらは「銘柄鶏(めいがらどり)」と呼ばれるカテゴリに含まれることが多いです。「銘柄鶏」もJASの定義ではありませんが、一般的なブロイラー(若鶏)とは飼料や飼育期間を変えて、肉質や味に特色を持たせた鶏肉を指します。
【徹底比較】肉質・味・食感・見た目の違い
地鶏は、長期飼育と平飼いによる運動量から、肉質が非常に硬く(弾力が強く)、赤みが濃いのが特徴です。噛むほどに濃厚な旨味が出ます。赤鶏は、地鶏ほどの硬さはなく、適度な歯ごたえとブロイラーよりも強い旨味を併せ持ちます。
飼育方法が全く異なるため、肉質や味わいも対照的です。
地鶏:筋肉質で硬い食感と濃厚な旨味
地鶏の飼育期間(75日以上)は、一般的なブロイラー(約40~50日)の約1.5倍以上です。さらに平飼いで自由に運動するため、筋肉が非常によく発達します。
その結果、肉質は非常に硬く、強い弾力を持ちます。見た目も、運動量が多いためミオグロビン色素が増え、鮮やかな赤みを帯びています。
味わいは、長期飼育によって旨味成分(イノシン酸など)が豊富に蓄積され、非常に濃厚でコク深いのが特徴です。鶏本来の野性味あふれる風味を楽しめます。
赤鶏:適度な歯ごたえとバランスの良い旨味
赤鶏(銘柄鶏)の飼育期間は、地鶏ほど長くはありませんが、ブロイラーよりは長い(例:60日程度)ことが一般的です。
そのため、肉質はブロイラーのように柔らかすぎず、地鶏のように硬すぎず、「適度な歯ごたえ」を持っているのが魅力です。
味わいも、ブロイラーの淡白さと地鶏の濃厚さの中間に位置し、バランスの取れた鶏肉らしい旨味を感じられます。
ブロイラー(若鶏)との違い
参考までに、日本で最も流通している「ブロイラー(若鶏)」は、短期間(約40~50日)で効率よく成長するように品種改良され、ケージ飼いなどで高密度に飼育されます。運動量が少ないため、肉質は柔らかく、味わいは淡白で、価格が最も安価なのが特徴です。
栄養・成分の違い
飼育期間が長く、運動量が多い地鶏は、一般的にブロイラーや赤鶏に比べて脂質が少なく、タンパク質や旨味成分(イノシン酸など)が豊富に含まれる傾向があります。赤鶏もブロイラーよりは旨味成分が多いとされます。
運動量と飼育期間の違いは、栄養成分にも影響を与えます。
地鶏は、筋肉質で引き締まっているため、余分な脂肪が少なく、タンパク質が豊富です。また、長期間飼育されることで、肉の旨味の源であるアミノ酸やイノシン酸などがより多く蓄積されます。
赤鶏も、ブロイラーに比べれば飼育期間が長いため、同様に旨味成分がブロイラーよりも多く含まれる傾向があります。
料理での使い分け・おすすめの調理法
地鶏は、その硬い食感と濃厚な旨味を活かす「炭火焼き」や「鍋物(水炊きなど)」が最適です。赤鶏は、適度な歯ごたえと旨味があるため、「親子丼」や「筑前煮」など、ブロイラーでは物足りないと感じる料理を格上げしてくれます。
それぞれの肉質に合わせた調理法を選ぶことが、美味しく食べるための最大のコツです。
地鶏のおすすめ調理法(炭火焼き・鍋物)
地鶏の「硬さ」は「弾力」であり、最大の長所です。この食感を活かす料理が向いています。
- 炭火焼き:宮崎地鶏の炭火焼きのように、強火で一気に焼き上げることで、外は香ばしく、中はジューシーに仕上がります。噛むほどに旨味が溢れ出ます。
- 鍋物(水炊き、すき焼き):長時間煮込んでも煮崩れしにくく、鶏肉から非常に濃厚な「だし」が出ます。
- 刺身・たたき:新鮮な地鶏は、その強い弾力を生で(または表面を炙って)楽しむ「鶏刺し」としても提供されます。(※鶏肉の生食はカンピロバクターなどの食中毒リスクがあるため、専門の認可・処理施設を経たもの以外は絶対にしないでください)
赤鶏のおすすめ調理法(親子丼・煮物・ロースト)
ブロイラーよりもワンランク上の味わいを手軽に楽しむのに最適です。
- 親子丼・筑前煮:適度な弾力があるため、煮込んでもパサつかず、鶏肉の存在感がしっかり残ります。
- ローストチキン・ソテー:皮目をパリッと焼くと、ブロイラーにはないしっかりとした肉の旨味を楽しめます。
- 唐揚げ:地鶏ほど硬くなく、ブロイラーよりもジューシーで旨味が強いため、唐揚げにも最適です。
価格と希少性の違い
価格は、「地鶏 > 赤鶏(銘柄鶏) > ブロイラー(若鶏)」の順になるのが一般的です。地鶏はJAS規格を満たすための飼育の手間と時間がかかるため、希少価値が非常に高く、最も高価になります。
スーパーの価格を見ても、その差は明らかです。
地鶏は、在来種の血統を守り、75日以上という長い期間をかけて、広い場所で平飼いするという、非常にコストと手間のかかる飼育方法が法律で義務付けられています。そのため流通量が少なく、価格は最も高くなります。
赤鶏(銘柄鶏)は、地鶏ほどの厳格な縛りはありませんが、ブロイラーよりは長い飼育期間や特別な飼料を使っていることが多く、その分のコストが上乗せされます。そのため、価格はブロイラーより高く、地鶏よりは安くなります。
ブロイラーは、最も効率的に生産されるため、最も安価に流通しています。
体験談:地鶏の炭火焼きと、赤鶏の親子丼
僕が「地鶏」と「赤鶏」の違いを明確に意識したのは、食感と味の体験でした。
以前、宮崎旅行で食べた「地鶏の炭火焼き」は、まさに衝撃でした。一口食べて「硬い!」と驚くほどの強い弾力。しかし、噛み続けるうちに、その硬い繊維の間から信じられないほど濃厚な鶏の旨味が溢れ出してきました。「これが本物の鶏肉の味か…」と感動したのを覚えています。これはブロイラーでは絶対に味わえない、「食感」と「コク」のご馳走でした。
一方、近所の少しこだわったお蕎麦屋さんでランチに食べた「赤鶏の親子丼」も印象的でした。そこの親子丼は、いつも家で作るブロイラーの親子丼とは違い、鶏肉がプリッとしていて、適度な歯ごたえがありました。火が通ってもパサつかず、鶏肉自体の味がしっかりしているので、卵と出汁に負けていないんです。
この二つの体験から、僕は「地鶏」と「赤鶏」の役割を理解しました。
地鶏は、その硬さと旨味自体を主役として味わう「特別な食材」。赤鶏は、普段の料理(親子丼や煮物)を、ブロイラーよりもワンランク上の「しっかりした味わい」にしてくれる「万能な食材」。
どちらも美味しいですが、求める食感と料理によって使い分けるべきだと学んだ体験でしたね。
赤鶏と地鶏の違いに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 「地鶏」は「赤鶏」の一種ですか?
A1. 違います。「地鶏」はJAS規格で定められた血統と飼育方法を満たす鶏肉の「規格名」です。一方、「赤鶏」は主に羽の色が赤い鶏の「通称(銘柄鶏の一種)」であり、JASの定義とは関係ありません。地鶏の中にも羽が赤い品種(例:薩摩地鶏)はいますが、「赤鶏=地鶏」ではありません。
Q2. 赤鶏は地鶏より美味しくないのですか?
A2. 美味しさの基準によります。地鶏は非常に硬い弾力と濃厚な旨味が特徴です。赤鶏は、ブロイラーよりは歯ごたえがあり旨味も強いですが、地鶏ほどの硬さはありません。柔らかさと旨味のバランスが良いのが赤鶏、歯ごたえとコクを追求するのが地鶏と言えます。
Q3. 一番高い鶏肉はどれですか?
A3. 一般的に「地鶏」が最も高価です。次いで「赤鶏(銘柄鶏)」、最も安価なのが「ブロイラー(若鶏)」となります。地鶏は飼育期間が長く、手間がかかるため高価になります。
まとめ|赤鶏と地鶏、賢い使い分け術
赤鶏と地鶏の違い、明確にご理解いただけたでしょうか。最後にポイントをまとめます。
- 地鶏:JAS規格品。在来種の血統(50%以上)+長期(75日以上)平飼い。非常に硬く、味が濃厚。高価。
→ 炭火焼き、鍋物など、食感とだしを楽しむ料理に。 - 赤鶏:公的な定義なし。主に羽が赤い品種の銘柄鶏。適度な歯ごたえと旨味。地鶏より安価。
→ 親子丼、煮物、ローストなど、普段の料理を格上げしたい時に。
「地鶏」という言葉はブランド力があるため、JAS規格を満たしていないのに「地鶏風」として販売されているケースも稀にあります。本物の地鶏を選ぶ際は、JASマークの有無を確認するのも一つの手ですね。
それぞれの個性を理解して、料理に合わせて賢く使い分けてみてください。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な肉・魚介類の違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。