エールとラガーの違い!「上面発酵」と「下面発酵」って何?

エールとラガー、どちらもビールのスタイルですが、その違いをご存知ですか?

クラフトビールブームで「エール」という言葉をよく聞くようになりましたが、私たちが普段日本で飲んでいるビールの多くは「ラガー」に分類されます。

最も決定的な違いは「発酵方法」です。エールは「上面発酵」という常温に近い温度で発酵させ、ラガーは「下面発酵」という低温で発酵させる点にあります。

この発酵方法の違いが、味わいや香りに大きな個性の差を生み出しています。

この記事を読めば、エールとラガーの根本的な違いから、味、香り、代表的な種類、歴史までスッキリと理解でき、ビール選びが何倍も楽しくなりますよ。

結論|エールとラガーの違いを一言でまとめる

【要点】

エールとラガーの違いは、ビールの「発酵方法」にあります。エールは「上面発酵酵母」を使い、常温(15~25℃程度)で発酵させるため、フルーティーで芳醇な香りが特徴です。一方、ラガーは「下面発酵酵母」を使い、低温(5~10℃程度)で長時間熟成させるため、スッキリとしたキレと爽快なのどごしが特徴です。

まずは、この二つの違いを一覧表で比較してみましょう。

項目エール (Ale)ラガー (Lager)
発酵方法上面発酵下面発酵
使用酵母エール酵母(S. cerevisiae)ラガー酵母(S. pastorianus)
発酵温度常温(約15~25℃)低温(約5~10℃)
発酵・熟成期間短い(数週間)長い(数週間~数ヶ月)
味わいの特徴フルーティー、芳醇、複雑スッキリ、クリーン、シャープ
香りの特徴華やか(エステル香)、果実のよう爽快、クリーン、ホップや麦芽の香り
代表的なスタイルペールエール、IPA、スタウト、ヴァイツェンピルスナー、ヘレス、ボック
日本の大手ビール(少数派)例:よなよなエール(主流)例:アサヒスーパードライ

決定的な違い:発酵温度と酵母の種類(上面発酵 vs 下面発酵)

【要点】

ビールの個性は「酵母」と「発酵温度」で決まります。エールは常温で活発に動く「上面発酵酵母」を使い、酵母が液面に浮き上がります。ラガーは低温でゆっくり動く「下面発酵酵母」を使い、酵母がタンクの底に沈みます。

ビール造りは、麦汁(麦芽の糖分)を酵母が食べてアルコールと炭酸ガスを造り出す「発酵」が命です。この酵母の働き方が、エールとラガーを分ける最大のポイントです。

エール(Ale)とは?(上面発酵)

エールは、「上面発酵酵母(エール酵母)」を使用して造られます。

この酵母は、15℃~25℃程度の常温に近い温度で活発に活動し、発酵の過程で麦汁の表面に浮かび上がってくる層を形成するため「上面発酵」と呼ばれます。

比較的高温で発酵させるため、酵母が「エステル」と呼ばれる華やかな香り成分を大量に生み出します。これが、エールビール特有のリンゴやバナナのようなフルーティーで芳醇な香りの源泉となります。

ラガー(Lager)とは?(下面発酵)

ラガーは、「下面発酵酵母(ラガー酵母)」を使用して造られます。

この酵母は、5℃~10℃程度の低温でゆっくりと活動し、発酵が終わるとタンクの底に沈んでいく性質があるため「下面発酵」と呼ばれます。

低温で発酵させるため、エールのような華やかなエステル香はあまり生成されません。その代わり、雑味が少なく、麦芽やホップの風味がストレートに出る、スッキリとクリーンな味わいに仕上がります。

また、「ラガー(Lager)」という言葉自体が、ドイツ語で「貯蔵する」を意味します。低温での発酵後、さらに低い温度(0℃近く)で数週間から数ヶ月にわたり「熟成(ラガーリング)」させるのが特徴で、この工程がキレのある爽快なのどごしを生み出します。

製造工程と原材料の違い

【要点】

エールは発酵期間が短く(3~5日程度)、熟成も短期間で完了します。ラガーは発酵期間が長く(7~10日程度)、さらに低温での「熟成(ラガーリング)」に数週間~数ヶ月を要します。原材料の麦芽やホップは、スタイルによって使い分けられます。

製造工程(発酵・熟成)

エールとラガーでは、製造にかかる時間も大きく異なります。

  • エール:常温で活発に発酵させるため、発酵期間は3日~5日程度と短めです。その後の熟成期間も比較的短く、短期間で完成させることができます。
  • ラガー:低温でゆっくり発酵させるため、発酵期間は7日~10日程度かかります。さらに、そこから低温貯蔵庫で長い「熟成(ラガーリング)」期間を経るため、完成までにエールよりもかなり長い時間とコストがかかります。

原材料(麦芽やホップ)

基本的な主原料(麦芽、ホップ、水、酵母)はどちらも同じです。

ただし、目指すビールのスタイルによって、使う麦芽(モルト)の種類や焙煎度合い、ホップの種類(苦味用、香り用)や投入タイミングを変えます。

例えば、ラガーの中でも主流の「ピルスナー」は、淡色のピルスナーモルトと、華やかな香りのホップ(ザーツなど)が使われます。

エールの中でも黒い「スタウト」は、麦芽を真っ黒になるまで強く焙煎した「ローストバーレイ」を使い、あの独特の苦味とコーヒーのような香りを生み出します。

味・香り・見た目(色)の違いを比較

【要点】

エールはフルーティーで複雑な香り、芳醇なコクと甘みが特徴です。色は淡いものから黒いもの(スタウト)まで非常に多彩です。ラガーはスッキリとしたキレと爽快なのどごしが特徴で、香りはクリーン。色は黄金色のものが主流です。

エールの味わい(フルーティー・芳醇・色が濃いめ)

エールは、酵母が生み出す華やかでフルーティーな香り(エステル香)が最大の特徴です。味わいも、麦芽の甘みや旨味、ホップの苦味が複雑に絡み合い、芳醇でコクのあるものが多くなります。

色はスタイルによって様々です。黄金色のペールエール、赤褐色のアンバーエール、真っ黒なスタウトやポーターなど、非常に多彩なのがエールの世界の魅力です。

ラガーの味わい(スッキリ・クリーン・色が薄め)

ラガーは、低温で発酵・熟成させるため、酵母由来の香りが控えめな分、麦芽の風味やホップの苦味がストレートに感じられます。

味わいは「スッキリ」「クリーン」「シャープ」といった言葉で表現され、ゴクゴク飲める爽快なのどごしが最大の特徴です。

私たちが日本で「ビール」として親しんでいる、黄金色で白い泡が乗ったビールのほとんどは、ラガーの中の「ピルスナー」というスタイルです。そのため、ラガー=黄金色というイメージが強いですね。

アルコール度数と飲み方の違い

【要点】

度数に明確な差はありませんが、エールには10%を超えるような高アルコールのスタイルも存在します。ラガーは「のどごし」を楽しむため5℃前後に冷やしてゴクゴク飲むのが適しています。エールは「香り」を楽しむため、少し高めの温度(8℃~15℃)でゆっくり味わうのがおすすめです。

アルコール度数の傾向

アルコール度数は、発酵方法の違いよりも、各ビールのスタイルによって決まります。

日本のラガービール(ピルスナー)は5%程度が主流です。エールも5%前後のものが多いですが、中には「バーレイワイン」のように10%を超える高アルコールのスタイルや、逆に「セッションIPA」のように3~4%の低アルコールのスタイルも存在し、非常に多様です。

飲み方の違い(エール:香りを楽しむ/ラガー:のどごしを楽しむ)

味わいの特徴が違うため、おすすめの飲み方(温度)も異なります。

ラガー
キレとのどごしを最大限に楽しむため、冷蔵庫でキンキンに冷やして(5℃前後)、ジョッキやタンブラーでゴクゴク飲むのが最適です。日本の「とりあえず生!」の文化は、まさにラガー(ピルスナー)の楽しみ方そのものです。

エール
複雑でフルーティーな「香り」を楽しむため、冷やしすぎない(8℃~15℃程度)のが美味しく飲むコツです。温度が少し上がることで、閉じ込められていた香りが華やかに開きます。パイントグラスなどで、香りを楽しみながらゆっくりと味わうのに適しています。

文化・歴史的背景

【要点】

ビールの歴史は「エール」から始まりました。中世ヨーロッパではエールが主流でしたが、冷蔵技術がなかったため夏は腐敗しやすかったのです。15世紀頃にドイツ・バイエルン地方で、低温で発酵・貯蔵する「ラガー」技術が確立。19世紀の冷蔵技術の発展と共に、品質が安定するラガーが世界中に広まりました。

ビールの歴史において、実はエールの方がはるかに先輩です。冷蔵設備がなかった古代~中世ヨーロッパでは、常温で発酵させるエールビールが主流でした。

しかし、エールは気温が高い夏場は雑菌が繁殖しやすく、醸造が困難でした。

そこで15世紀頃のドイツ・バイエルン地方で、冬の寒い時期に洞窟などで低温で発酵させ、そのまま春まで「貯蔵(ラガーリング)」する「ラガー」の技術が確立されます。低温で造るラガーは雑菌が繁殖しにくく、品質が安定していました。

19世紀に入り、冷凍機が発明され、酵母の純粋培養技術(ラガー酵母の発見)が確立すると、一年中安定してラガービールを造れるようになりました。このスッキリとした味わいのラガー(特にピルスナー)が世界中で爆発的に広まり、日本の大手ビールもこのスタイルが主流となったのです。

体験談|IPAとピルスナーを飲み比べて

僕も以前は「ビールは全部同じ、のどごしが命!」と思っていました。アサヒスーパードライ(ラガー)一辺倒だったんです。

でもある日、クラフトビール専門店で「IPA(インディア・ペールエール)」というエールビールを勧められて、その違いに衝撃を受けました。

いつものラガーの感覚でゴクッと飲むと、強烈な柑橘系の香りと、ガツンと来る猛烈な苦味。「うわっ、苦い!けど、何だこのフルーティーな香りは!?」と。

それは、僕が知っていた「のどごし」のビールとは全く別物で、「香りと苦味を味わう」飲み物でした。最初は戸惑いましたが、その複雑な味わいがクセになり、今ではすっかりエールの虜です。

ラガーが「一日の疲れを洗い流す爽快なシャワー」なら、エールは「アロマを焚いてリラックスするバスタブ」のような違いだと感じました。どちらも最高ですが、今はその日の気分で「今日はスッキリしたいからラガー」「今日は香りに浸りたいからエール(IPA)」と使い分けています。

エールとラガーに関するよくある質問

日本の大手ビールは、なぜラガー(ピルスナー)ばかりなのですか?

これは、明治時代に日本がビール造りを学んだ際、当時最先端の技術だったドイツのラガー(ピルスナー)醸造技術を導入したからです。また、高温多湿な日本において、低温で品質管理がしやすく、スッキリとした味わいでゴクゴク飲めるラガーが、日本の気候や食文化(特に風呂上がりの一杯)にマッチしたためと言われています。

クラフトビールはエールが多い気がしますが、なぜですか?

エールはラガーに比べて発酵・熟成期間が短く、常温管理が可能なため、ラガー(低温管理と長期熟成が必要)よりも小規模な設備で製造しやすい、という理由があります。また、ホップや麦芽の組み合わせで多彩な香りを表現できるため、醸造家の個性を出しやすいのも、クラフトビールの世界でエールが多く造られる理由の一つです。

IPAやスタウト、ヴァイツェンは何ビールですか?

これらはすべて「エール」の仲間です。IPA(インディア・ペールエール)はホップの苦味と香りが非常に強いスタイル、スタウトは焙煎麦芽を使った黒ビール、ヴァイツェンは小麦麦芽を使ったバナナのような香りのする白ビールで、すべて上面発酵で造られます。

まとめ|エールとラガー、どちらを選ぶべきか?

エールとラガーの違い、スッキリ整理できたでしょうか。

どちらも素晴らしいビールですが、その個性は全く異なります。

のどごしの爽快感や、キレのあるスッキリした味わいを楽しみたい時、キンキンに冷やしてゴクゴク飲みたい時は「ラガー(ピルスナー)」。

果実のようなフルーティーな香りや、麦芽の芳醇なコク、複雑な味わいをじっくりと楽しみたい時、少しぬるめの温度で香りを堪能したい時は「エール」。

このように覚えておけば、その日の気分や料理に合わせて、ビール選びの幅が格段に広がりますよ。

どちらも奥深い飲み物・ドリンクの世界です。ぜひ様々なアルコール類を試して、あなた好みの一杯を見つけてみてください。