「甘茶(あまちゃ)」と「甜茶(てんちゃ)」、どちらも名前に「甘」や「甜(甘い)」と付くだけあって、砂糖不使用でも強い甘みを持つお茶として知られています。
しかし、この二つ、「甘いお茶」という共通点以外は、原料の植物から主な飲用シーンまで、全く異なる飲み物だということをご存知でしたか?
一言でいえば、最大の違いは「原料の植物」と「主な用途」です。「甘茶」はアジサイ科の植物(アジサイの変種)が原料で、主に4月8日の釈迦の誕生を祝う「花まつり(灌仏会)」で使われます。一方、「甜茶」は主にバラ科の植物が原料で、花粉症などのアレルギー対策の「健康茶」として広く飲まれています。
この記事を読めば、両者の甘みの成分の違い、カフェインの有無、そして文化的な背景までスッキリと理解でき、目的に合わせて正しく選べるようになりますよ。
まずは、両者の決定的な違いを一覧表で比較してみましょう。
結論|甘茶と甜茶の違いを一言でまとめる
「甘茶」と「甜茶」の最も大きな違いは、①原料の植物と②主な飲用シーンです。「甘茶」はアジサイ科の植物の葉が原料で、その甘みは「フィロズルチン」という成分に由来します。伝統的に「花まつり」の儀式で仏像に注ぐために使われます。一方、「甜茶」は主にバラ科の植物の葉が原料で、甘みは「ルブソシド」という成分に由来します。健康茶として、特に花粉症対策の目的で飲まれます。
どちらも「お茶」という名前ですが、緑茶や紅茶の原料であるチャノキとは異なるため、カフェインは含まれていません。
| 項目 | 甘茶(あまちゃ) | 甜茶(てんちゃ) |
|---|---|---|
| 原料植物 | アジサイ科(アジサイ属 アマチャ) | バラ科(キイチゴ属 テンチャバラ) |
| 主な用途 | 花まつり(灌仏会)の儀式用、無病息災 | 花粉症・アレルギー対策の健康茶 |
| 甘み成分 | フィロズルチン(砂糖の数百倍) | ルブソシド(砂糖の約75倍) |
| 味・香り | 非常に強い甘み、舌に残る独特の風味 | すっきりした甘み、紅茶に似た風味 |
| カフェイン | 含まない(ゼロ) | 含まない(ゼロ) |
| 分類 | 健康茶、儀式用茶 | 健康茶、ハーブティー |
※「甜茶」は中国で甘いお茶の総称であり、バラ科以外(ユキノシタ科やブナ科など)を原料とするものも存在しますが、日本で花粉症対策として流通しているのは、主にバラ科の「甜葉懸鈎子(テンチャバラ)」です。
「甘茶」と「甜茶」の定義と原材料の違い
「甘茶」はアジサイの変種である「アマチャ(Hydrangea serrata ‘Oamacha’)」の葉を乾燥・発酵させたものです。一方、日本で「甜茶」として知られるものの多くは、バラ科キイチゴ属の「甜葉懸鈎子(テンチャバラ)」の葉を乾燥させたものです。植物学的に全くの別物です。
「甘茶(あまちゃ)」とは?|アジサイ科の植物
「甘茶」は、その名の通り「甘いお茶」ですが、その原料は日本原産のアジサイ科(またはユキノシタ科)アジサイ属の落葉低木、「アマチャ」の葉です。
見た目はガクアジサイによく似ています。
収穫した葉を乾燥させ、揉捻(じゅうねん:もむこと)し、発酵させると、葉に含まれる配糖体「フィロズルチン」が加水分解され、砂糖の数百倍(400~800倍とも)の強い甘みを持つ成分に変わります。この工程を経ないと甘くならないのが特徴です。
「甜茶(てんちゃ)」とは?|バラ科の植物
「甜茶」は中国語で「甘いお茶」を意味し、本来は特定の植物を指す言葉ではなく、中国南部で古くから飲まれている甘みのあるお茶の総称でした。
しかし、日本では1990年代以降、花粉症対策として特定の甜茶がブームになり、現在「甜茶」として販売されている製品の多くは、バラ科キイチゴ属の「甜葉懸鈎子(てんようけんこうし)」(通称:テンチャバラ)の葉を原料としています。
こちらの甘み成分は「ルブソシド」と呼ばれ、砂糖の約75倍程度の、すっきりとした甘みが特徴です。
味・香り・甘み・カフェインの違い
どちらも砂糖不使用で甘いですが、甘みの「質」が異なります。「甘茶」は非常に強く、舌に独特の甘みが残るのが特徴です。「甜茶」は、砂糖に似た、すっきりとキレのある上品な甘みが特徴です。どちらもチャノキが原料ではないため、カフェインは含まれていません。
味と香りの比較
甘茶
香りは、少し薬草や発酵茶に似た、独特の香りがします。味は、とにかく「甘い」の一言に尽きます。砂糖の何百倍もの甘み成分(フィロズルチン)から来る、強烈で濃厚な甘みが特徴で、後味にも甘さが長く残ります。
甜茶
香りは、ほのかに甘く、紅茶にも似たマイルドな風味があります。味わいは、甘み成分(ルブソシド)による、クセのない、すっきりとした甘さです。甘茶ほどの強烈さはなく、上品で飲みやすいのが特徴です。
カフェインの有無|どちらもカフェインゼロ
これは両者に共通する大きなメリットです。
「甘茶(アジサイ科)」も「甜茶(バラ科)」も、緑茶や紅茶の原料である「チャノキ(ツバキ科)」とは全く異なる植物です。
そのため、どちらもカフェインは一切含まれていません(0.00%)。
就寝前や、カフェインを避けたい方、小さなお子様でも安心して飲むことができます(ただし、甘茶の飲み過ぎには注意が必要です)。
健康イメージと主な用途の違い
用途は明確に異なります。「甘茶」は、主に4月8日のお釈迦様の誕生日「花まつり(灌仏会)」で、仏像に注いだり、無病息災を願って飲んだりする儀式的な飲み物です。一方、「甜茶」は、花粉症やアレルギー性鼻炎の症状緩和を期待する「健康茶」として、日常的に飲まれます。
甘茶の主な用途|花まつり(灌仏会)
甘茶の最も代表的な用途は、宗教儀式です。
4月8日の「花まつり(灌仏会)」では、花御堂(はなみどう)に安置された誕生仏(お釈迦様の像)に、この甘茶を柄杓(ひしゃく)で注ぎかけて祝います。これは、お釈迦様が誕生した際、天から九頭の龍が現れ、甘露の雨(甘い雨)を降らせたという伝説に由来しています。
この時に使われた甘茶を飲むと、無病息災のご利益があると信じられています。
その他、抗アレルギー作用や抗潰瘍作用、歯周病予防に関する成分の研究もされていますが、一般的なイメージは「花まつりのお茶」ですね。
甜茶の主な用途|花粉症・アレルギー対策
甜茶の用途は、完全に「健康茶」としての側面が強いです。
特に、バラ科の甜茶に含まれる「甜茶ポリフェノール(GODポリフェノールなど)」が、体内でアレルギー反応を引き起こすヒスタミンなどの放出を抑える働きがあるとされています。
このことから、花粉症やアレルギー性鼻炎の症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)を緩和することを期待して、花粉が飛散する季節に愛飲する人が非常に多いです。
飲み方・注意点
甘茶
非常に甘みが強いため、濃いまま飲むことは推奨されません。濃すぎると、人によっては吐き気や気分が悪くなることがあります。必ずお湯や水で5倍〜10倍程度に薄めて、適量を飲むようにしてください。
甜茶
ティーバッグや茶葉で市販されており、一般的なお茶と同様に、お湯や水で煮出したり、水出ししたりして飲みます。花粉症対策としては、症状が出始める2週間〜1ヶ月前から、毎日継続して飲むのが良いとされています。
体験談|花粉症対策で飲み間違えた僕の勘違い
僕が花粉症に悩み始めた数年前のことです。薬には頼りたくないと思い、何か良い健康茶はないかと探していました。
すると、友人が「花粉症には“甘いお茶”が良いらしいよ」と教えてくれました。彼は名前を正確に覚えておらず、「確か、あま…なんとか茶?」と言っていました。
僕はそれを聞いて「甘いお茶=甘茶だな!」と早とちり。早速、漢方薬局で乾燥した「甘茶」の葉を購入しました。
家に帰って淹れてみると、まず独特の香りに少し戸惑い、一口飲んで腰を抜かすほど驚きました。「甘い!何だこの甘さは!」と。砂糖の甘さとは全く違う、舌にまとわりつくような強烈な甘さでした。
「こんなに甘いものが本当に花粉症に効くのか…?」
半信半疑で飲み続けましたが、あまりに甘すぎて長続きしませんでした。後日、改めて調べ直して、僕が飲むべきだったのは「甜茶(てんちゃ)」であり、「甘茶(あまちゃ)」は花まつりで使う別物だということを知りました。
同じ「甘いお茶」でも、原料も用途も全く違う。あの時の強烈な甘みは、今でも忘れられません。名前が似ているからこそ、購入前には「目的(花粉症対策か?)」と「原料(バラ科か?)」をしっかり確認するべきだと痛感した体験です。
甘茶と甜茶に関するよくある質問
甘茶と甜茶の違いについて、よくある疑問にお答えします。
質問1:どちらもカフェインは本当にゼロですか?
回答:はい、どちらもカフェインゼロです。甘茶(アジサイ科)も甜茶(バラ科)も、緑茶や紅茶の原料(ツバキ科のチャノキ)とは異なる植物から作られています。そのため、カフェインは一切含まれておらず、就寝前や妊娠中の方でも安心してお飲みいただけます。
質問2:甘茶はなぜ「お釈迦様の誕生日」に使われるのですか?
回答:お釈迦様が生まれた時、天から九頭の龍が現れ、「甘露(かんろ)」と呼ばれる甘い雨を降らせて産湯にした、という伝説に基づいています。この「甘い雨」に見立てて、日本で古くから栽培されていた「甘茶」が使われるようになったと言われています。
質問3:甜茶はどれも花粉症に良いのですか?
回答:いいえ、「甜茶」は甘いお茶の総称です。日本で花粉症対策として流通しているのは、主にバラ科の「甜葉懸鈎子(テンチャバラ)」から作られたものです。この品種に含まれる「甜茶ポリフェノール」がアレルギー反応に働きかけるとされています。他の植物(ユキノシタ科など)が原料の甜茶では、期待される成分が異なるため、購入時に原料の植物名を確認するのが確実です。
まとめ|甘茶と甜茶、どちらを選ぶべきか?
「甘茶」と「甜茶」、名前は似ていますが、全く異なる二つのお茶の違いが明確になりましたね。
・甘茶 = アジサイ科。フィロズルチン(強烈な甘み)。花まつりの儀式用。
・甜茶 = バラ科。ルブソシド(すっきりした甘み)。花粉症対策の健康茶。
どちらもカフェインゼロですが、その目的は全く異なります。
- 花粉症やアレルギー性鼻炎の対策として、日常的に飲みたい時
→ 「甜茶(バラ科)」がおすすめです。
- 4月8日の花まつり(灌仏会)に参加する時
- 無病息災のご利益を願う時
- 砂糖の代わりになる強烈な甘みを体験したい時
→ 「甘茶」が適しています。(※必ず薄めて飲んでください)
目的と用途をしっかり理解して、正しく使い分けてくださいね。
飲み物の違いについてもっと知りたい方は、飲み物・ドリンクの違いカテゴリのまとめ記事もぜひご覧ください。健康茶に関する情報は、厚生労働省の栄養・食生活に関するページなども参考になりますよ。