アニスとスターアニスの違いとは?味や香りとおすすめの使い分け

「アニス」と「スターアニス」、名前も香りも似ていますが、実は全く別の植物から採れるスパイスだということをご存知でしょうか。

アニスは西洋で古くから愛されるセリ科の小さな種子、スターアニスは中華料理に欠かせないマツブサ科の星型の果実です。

この記事を読めば、それぞれの香りの特徴や料理への使い分け、うっかり代用する際のコツ、そして絶対に知っておくべき安全上の注意点まで、自信を持って扱えるようになります。

それでは、まず決定的な違いを比較表で見ていきましょう。

結論|アニスとスターアニスの違いを一言でまとめる

【要点】

アニスは「セリ科の種子」で西洋料理や菓子に使われる繊細な香り、スターアニスは「マツブサ科の果実」で中華料理に使われる濃厚な香りが特徴です。植物としては別種ですが、香り成分が共通しているため似た風味を持ちます。

名前が似ているため混同されがちですが、この二つは「出身地」も「植物としての種類」も全く異なります。

「アニス(アニスシード)」は、地中海沿岸が原産で、古くからヨーロッパで薬草やスパイスとして使われてきたセリ科の植物の種子です。

一方、「スターアニス(八角)」は、中国原産で、トウシキミという常緑高木の果実を乾燥させたものです。

主な違いを以下の表にまとめました。

項目アニス(アニスシード)スターアニス(八角)
植物分類セリ科(草本)の種子マツブサ科(木本)の果実
見た目小さな粒(ゴマより少し大きい)星型(8つの角がある)
香りの強さ繊細で甘く、マイルド濃厚で強く、若干の苦味・渋味あり
主な用途クッキー、パン、リキュール、ハーブティー豚の角煮、中華料理、カレー、ホットワイン
原産地・文化地中海・エジプト・ヨーロッパ中国・ベトナム・東南アジア

このように、アニスは「西洋のハーブ」、スターアニスは「中華のスパイス」とイメージすると分かりやすいでしょう。

僕も最初は「同じ植物の部位違いかな?」と思っていましたが、植物園で全く違う姿を見て驚いた経験があります。

植物としての分類・見た目の違い

【要点】

アニスはセリ科の一年草で、スパイスとして使うのは小さな「種子(シード)」です。スターアニスはマツブサ科(旧シキミ科)の常緑高木で、スパイスとして使うのは星型をした「果実」です。

植物としての姿は、両者で大きく異なります。

「アニス」はセリ科の植物で、フェンネルやパクチー(コリアンダー)の親戚にあたります。

高さ50cmほどの草で、白くて可愛らしい花を咲かせた後にできる、数ミリ程度の小さな種子(厳密には果実)をスパイスとして利用します。

見た目はクミンシードやフェンネルシードによく似ています。

一方、「スターアニス」は「トウシキミ」という木の果実です。

10m以上にもなる大きな木になり、果実が熟して乾燥すると、あのお馴染みの星型(八角形)になります。

木の実なので硬く、木質化しているのが特徴ですね。

味・香り・風味の違い

【要点】

両者の香りが似ているのは「アネトール」という共通の成分を含んでいるためです。ただし、スターアニスの方がアネトールの含有量が多く、より強烈でスパイシーな香りを持っています。

共通する香り成分「アネトール」

全く別の植物なのに、なぜ香りが似ているのでしょうか。

それは、どちらも「アネトール」という揮発性の芳香成分を主成分としているからです。

このアネトールが、あの独特の甘く、少し薬草のような、あるいはリコリス(甘草)に似た香りを作り出しています。

ちなみに、同じくセリ科のフェンネル(ウイキョウ)もアネトールを含んでいるため、これら3つは「甘い香りのスパイス三兄弟」のように扱われることがあります。

繊細なアニスと濃厚なスターアニス

成分は同じでも、香りの「質」と「強さ」には違いがあります。

アニスの香りは、繊細で優しく、どこか爽やかさを感じさせます。

口に含んだ時に広がる甘みも上品で、後に残る清涼感が特徴です。

対してスターアニスは、香りが非常に強く、濃厚です。

アネトールの含有量が多いため、甘い香りがガツンとくるだけでなく、わずかに苦味や渋味、スパイシーな刺激も感じられます。

「アニスを野性的にしたのがスターアニス」と表現されることもありますね。

料理での使い分け・相性の良い食材

【要点】

アニスは焼き菓子やパン、リキュールなど西洋的な甘いものや魚料理に適しています。スターアニスは豚の角煮などの中華料理や肉料理の臭み消し、濃厚なソース作りに最適です。

西洋料理・スイーツ向けのアニス

アニスは、その繊細さを活かして、ヨーロッパではお菓子やパンによく使われます。

ドイツのクリスマスクッキーや、シュトーレンなどの焼き菓子には欠かせません。

また、ギリシャの「ウーゾ」やフランスの「パスティス」といった、水を加えると白く濁るリキュールの香り付けにも使われています。

魚料理との相性も良く、「フィッシュハーブ」という別名があるほど、魚の生臭さを消すのに役立ちます。

中華料理・肉料理向けのスターアニス

スターアニス(八角)と言えば、やはり中華料理です。

豚の角煮(東坡肉)やルーローハンなど、脂っこい肉料理に使うと、脂のしつこさを中和し、食欲をそそる異国情緒あふれる香りを付けてくれます。

また、五香粉(ウーシャンフェン)の主原料でもあり、中華風の唐揚げや炒め物にも活躍します。

最近ではスパイスカレーのスタータースパイスとして、油に香りを移す使い方も人気ですね。

杏仁豆腐のシロップにひとかけら入れると、本格的な風味になりますよ。

代用は可能か?比率と注意点

【要点】

香りの系統が同じなので代用は可能ですが、香りの強さが違うため分量調整が必要です。スターアニスをアニスの代わりに使う場合は、香りが強くなりすぎないよう少なめに使うのが鉄則です。

レシピに「アニス」とあるのに手元にない場合、スターアニスで代用することは可能です。

ただし、スターアニスの方が香りが圧倒的に強いため、分量には注意が必要です。

アニスシード小さじ1に対して、スターアニスならひとかけら(星型の一片)程度で十分な場合が多いでしょう。

逆に、スターアニスの代わりにアニスを使う場合は、少し多めに入れるか、フェンネルを混ぜるとより近い風味になります。

ただし、焼き菓子などに混ぜ込む場合、アニスシードはプチプチとした食感も楽しめますが、スターアニスは硬くて食べられないため、パウダー状にするか、香りだけ移して取り出す工夫が必要です。

健康面・効能・安全性の違い

【要点】

どちらも消化促進や体を温める効果が期待されますが、スターアニスはインフルエンザ治療薬の原料成分を含みます(直接食べても薬効はありません)。重要なのは、有毒な「日本産シキミ」と混同しないことです。

消化促進とリラックス効果

アニスもスターアニスも、古くから健胃薬や整腸剤として利用されてきました。

食後にアニスティーを飲んだり、スターアニス入りの料理を食べたりすることで、消化を助け、お腹の張りを和らげる効果が期待されています。

また、アネトールの甘い香りにはリラックス効果や、喉の調子を整える作用もあると言われています。

【重要】有毒な「シキミ」との混同に注意

ここで一つ、絶対に知っておいてほしいことがあります。

スターアニス(トウシキミ)は、日本に自生する「シキミ」という植物の実に形状が非常によく似ています。

しかし、日本のシキミは「アニサチン」という猛毒を含んでおり、劇物に指定されています。

お墓や仏壇に供えられるあの葉っぱの植物です。

スーパーのスパイス売り場で売られている「八角(スターアニス)」は安全なトウシキミですが、山歩きなどで似た実を見つけても、絶対に口にしてはいけません。

過去には誤食による中毒事故も起きているため、食用として販売されているもの以外は使用しないのが賢明です。

歴史・地域・文化的背景の違い

【要点】

アニスは古代エジプト時代から使われ、ローマ帝国を通じてヨーロッパ全土に広まりました。スターアニスは中国南部原産で、大航海時代にヨーロッパに伝わり、希少なアニスの代用品として普及した歴史があります。

アニスは世界で最も古いスパイスの一つと言われ、古代エジプトのミイラ作りの防腐剤としても使われていました。

ローマ人は食後の消化剤としてアニス入りのケーキを食べており、これが現代のウェディングケーキのルーツになったという説もあります。

一方、スターアニスは中国で数千年前から利用されてきました。

ヨーロッパに伝わったのは16世紀頃で、当時高価だったアニスに香りが似ていて安価だったため、「シベリアのアニス」「中国のアニス」と呼ばれて広まりました。

名前の由来も、アニスに似ていることから「スター(星型の)アニス」と名付けられたのです。

体験談・実際に使い比べた印象

僕が初めてスターアニス(八角)を使ったのは、自宅で本格的な豚の角煮を作ろうとした時でした。

レシピ通りに2個入れて煮込んだのですが、完成して蓋を開けた瞬間、キッチンが完全に中華街の香りになりました。

味は抜群に美味しかったのですが、「たった2個でここまで香るのか!」と、そのパワーに圧倒されたのを覚えています。

後日、おしゃれなカフェで「アニスティー」を飲んだ時は、そのギャップに驚きました。

同じ甘い香りなのに、こちらは角がなく、優しくてほっとする味わいだったのです。

「なるほど、お菓子やハーブティーに使うならアニス、肉の臭みを消してパンチを出したいならスターアニスだな」と、体感として理解できた瞬間でした。

一度、ホットワインを作る時にアニスがなくてスターアニスをひとかけら入れてみたのですが、これもまた冬にぴったりの濃厚な味になり、正解でした。

ただ、入れっぱなしにすると渋味が出てくるので、途中で取り出すのがポイントですね。

FAQ(よくある質問)

Q. アニスとスターアニスは代用できますか?

A. はい、香りの成分が共通しているため代用可能です。ただし、スターアニスの方が香りが強く苦味もあるため、アニスの代わりに使う場合は分量を少なめにし、早めに取り出すなどの調整をおすすめします。

Q. スターアニスはそのまま食べられますか?

A. スターアニスは木質化していて非常に硬いため、そのまま食べることはできません。煮込み料理の香り付けとして使い、食べる前に取り除くか、パウダー状のものを少量使うのが一般的です。一方、アニスシードは粒が小さく、クッキーなどに混ぜてそのまま食べることができます。

Q. 日本にあるシキミとスターアニスは同じですか?

A. いいえ、全く別物です。食用のスターアニスは「トウシキミ」の実ですが、日本の仏事に使われる「シキミ」の実は猛毒を持っており、絶対に食べてはいけません。見た目が似ているため、食用として販売されているもの以外は採取・利用しないでください。

まとめ|どちらを選ぶべきか(西洋風か中華風か)

アニスとスターアニス、それぞれの違いと特徴は見えてきましたでしょうか。

最後に、選び方の基準を整理しておきましょう。

  • アニス(シード)がおすすめな人
    • クッキーやケーキなど、西洋のお菓子を作りたい。
    • ハーブティーやリキュールの繊細な香りを楽しみたい。
    • 魚料理の臭み消しに使いたい。
    • 種ごとの食感を楽しみたい。
  • スターアニス(八角)がおすすめな人
    • 豚の角煮やルーローハンなど、本格的な中華料理を作りたい。
    • 肉料理の強い臭みを消したい。
    • ホットワインやチャイに濃厚なスパイス感を加えたい。
    • 見た目の「星型」を飾りとして活かしたい。

似ているようでいて、活躍するステージがはっきりと分かれている二つのスパイス。

「洋のアニス、中のスターアニス」と覚えておけば、料理のレパートリーがぐっと広がるはずです。

ぜひ、作る料理に合わせて最適なスパイスを選び、香り豊かな食卓を楽しんでみてくださいね。

調味料についての詳しい情報は、調味料のまとめ記事でも解説しています。