「アトランティックサーモン」と「トラウトサーモン」、どちらもお寿司やスーパーの鮮魚コーナーでよく見かける人気の食材ですよね。
でも、この二つ、実は生物学的な分類から味、脂のり、食感まで全く異なる魚だってご存知でしたか?
アトランティックサーモンは「タイセイヨウサケ(大西洋鮭)」というサケ科の魚。一方でトラウトサーモンは、本来淡水魚である「ニジマス(虹鱒)」を海水で養殖し、大型化させたものなんです。
この記事を読めば、それぞれの厳密な定義、味や食感の具体的な違い、栄養価、そして料理での最適な使い分けまでスッキリと理解できます。
もうスーパーの鮮魚コーナーで「どっちが美味しいの?」と迷うことはありません。まずは、二つのサーモンの最も大きな違いから、詳しく見ていきましょう。
結論|アトランティックサーモンとトラウトサーモンの違いを一言でまとめる
アトランティックサーモンとトラウトサーモンの最大の違いは、生物学的な分類(魚の種類)です。アトランティックサーモンは「タイセイヨウサケ」であり、脂が非常に多くとろけるような食感が特徴です。一方、トラウトサーモンは「ニジマス」であり、脂は比較的さっぱりしていて身が締まっているのが特徴です。
どちらも「サーモン」と呼ばれていますが、厳密には全く異なる種類の魚です。この違いが、味や食感、最適な調理法に大きく影響しています。
それぞれの特徴を一覧表にまとめましたので、まずはこちらで全体像を掴んでくださいね。
| 項目 | アトランティックサーモン | トラウトサーモン |
|---|---|---|
| 日本語名 | タイセイヨウサケ(大西洋鮭) | ニジマス(虹鱒) |
| 生物学的分類 | サケ科 タイセイヨウサケ属 | サケ科 タイヘイヨウサケ属 |
| 主な産地 | ノルウェー、チリ、カナダなど | チリ、ノルウェー、日本国内など |
| 味の特徴 | 脂のりが非常に強い、濃厚な旨味 | 比較的さっぱり、サーモン本来の風味 |
| 食感 | とろけるように柔らかい | ぷりぷりと身が締まっている |
| おすすめの料理 | 寿司、刺身、カルパッチョ(生食) | 生食全般、ムニエル、ソテー(加熱) |
| 価格帯 | 比較的高価な傾向 | 比較的安価な傾向 |
このように、私たちが普段「サーモン」として楽しんでいるものには、大きく分けて2つの異なるルーツがあることがわかります。それでは、それぞれの定義をさらに詳しく掘り下げてみましょう。
アトランティックサーモンとトラウトサーモンの定義・分類・生息地の違い
アトランティックサーモンは「タイセイヨウサケ属(*Salmo*)」、トラウトサーモンは「タイヘイヨウサケ属(*Oncorhynchus*)」に分類されます。名前は似ていますが、生物学的には属レベルで異なる魚です。
アトランティックサーモンとは?
アトランティックサーモンは、その名の通り大西洋(Atlantic Ocean)に生息するサケで、学名は「*Salmo salar*(サルモ・サラー)」です。日本語では「タイセイヨウサケ(大西洋鮭)」と呼ばれます。
本来はヨーロッパや北米の大西洋岸の河川で生まれ、海に下って成長し、産卵のために川に戻る遡河性の魚です。
現在、日本市場で流通している「アトランティックサーモン」のほとんどは、ノルウェーやチリ、カナダなどで養殖されたものです。天然ものは資源保護の観点から漁獲が厳しく制限されており、市場に出回ることは稀です。
トラウトサーモンとは?
一方、トラウトサーモンは、本来は淡水魚である「ニジマス(虹鱒)」を、海水で養殖できるように品種改良し、大型化させたものです。学名は「*Oncorhynchus mykiss*(オンコリンクス・ミキッス)」と言います。
ニジマスは、アトランティックサーモンとは異なり、太平洋(北米大陸西岸)が原産の魚です。そのため、生物学的な分類では「タイヘイヨウサケ属」に属します。
「トラウト(Trout)」は英語で「マス(鱒)」を意味します。つまり、「トラウトサーモン」や、よく似た名前の「サーモントラウト」は、直訳すると「サケマス」となり、「マス(トラウト)だけど、サケ(サーモン)のように大きく美味しく育てました」という商品名に近いニュアンスを持っています。
実は生物学的に全く異なる魚
ここで重要なポイントは、アトランティックサーモンが「タイセイヨウサケ属(*Salmo*属)」であるのに対し、トラウトサーモン(ニジマス)は「タイヘイヨウサケ属(*Oncorhynchus*属)」であるという点です。
日本のスーパーでよく見かける「ギンザケ(銀鮭)」や「ベニザケ(紅鮭)」なども、このタイヘイヨウサケ属に含まれます。つまり、トラウトサーモンは、生物学的にはアトランティックサーモンよりも、ギンザケやベニザケに近い仲間ということになりますね。
見た目や名前が似ているため混同されがちですが、この2種類は「属」レベルで異なる、全く別の魚だということを覚えておきましょう。
アトランティックサーモンとトラウトサーモンの味・脂のり・食感・見た目の違い
アトランティックサーモンは、圧倒的な脂のりと、とろけるような柔らかい食感が最大の特徴です。一方、トラウトサーモンは、脂が比較的さっぱりしており、身が締まったぷりぷりとした食感が楽しめます。
生物学的な違いが、味や食感にどのように影響しているのか、具体的に比較してみましょう。
味と脂のり
最も分かりやすい違いは「脂のり」です。
アトランティックサーモンは、非常に脂が多く、濃厚な旨味と甘みを持っています。醤油を弾くほどのたっぷりの脂が、口の中に入れた瞬間に体温でとろけ出すのが特徴です。この「とろサーモン」のような味わいが、日本のお寿司屋さんで爆発的な人気を得た理由でもあります。
トラウトサーモンは、アトランティックサーモンと比較すると脂は控えめで、さっぱりとした味わいです。脂が少ない分、サーモン本来の魚の風味や旨味をしっかりと感じることができます。もちろん、淡水で育つニジマスと比べれば格段に脂は乗っていますが、アトランティックサーモンが「こってり」なら、トラウトサーモンは「あっさり」と表現できますね。
食感と身質
味の違いは、そのまま食感の違いにも直結します。
アトランティックサーモンは、脂が多いため身質が非常に柔らかく、ふんわりとしています。舌の上でとろけるような滑らかな食感が魅力です。
トラウトサーモンは、身がしっかりと締まっており、ぷりぷりとした弾力のある歯ごたえが特徴です。この食感の違いは、特に加熱調理をした際に顕著に現れます。
見た目(色・形)
見た目にも違いがあります。
アトランティックサーモンの身の色は、鮮やかで明るいオレンジ色(サーモンピンク)をしていることが多いです。サク(切り身)の形は、身が厚く、丸みを帯びている傾向があります。
トラウトサーモンの身の色は、アトランティックサーモンよりも赤みが強く、濃い朱色に近いことが多いです。これは、ニジマスが本来持つ色素(アスタキサンチン)によるものです。サクの形は、比較的薄く、細長い形状になることが多いですね。
スーパーで見分ける際は、まず「身の色」と「脂のサシの入り方」に注目すると分かりやすいでしょう。
アトランティックサーモンとトラウトサーモンの栄養・成分・健康面の違い
どちらもEPA、DHA、アスタキサンチンといった健康に良い成分を豊富に含んでいます。アトランティックサーモンは脂質(カロリー)がトラウトサーモンより高い傾向にありますが、トラウトサーモンはタンパク質がより豊富です。
どちらのサーモンも、私たちの健康維持に役立つ優れた栄養素を豊富に含んでいます。
共通して含まれる代表的な栄養素は以下の通りです。
- オメガ3脂肪酸(EPA・DHA):血液をサラサラにする効果や、脳の働きを活性化させる効果が期待される良質な脂質です。
- アスタキサンチン:身の赤色(オレンジ色)のもととなる色素で、非常に強力な抗酸化作用を持ち、アンチエイジングや疲労回復に役立つとされています。
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にする働きがあります。
文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)」によると、栄養価には以下のような違いが見られます(いずれも養殖・生、100gあたり)。
| 項目 | アトランティックサーモン | トラウトサーモン(ニジマス) |
|---|---|---|
| エネルギー | 216 kcal | 176 kcal |
| タンパク質 | 20.1 g | 21.3 g |
| 脂質 | 15.8 g | 10.1 g |
やはり、アトランティックサーモンの方が脂質が多く、その分カロリーも高いことが数値からも分かりますね。一方、トラウトサーモンはタンパク質がより豊富です。
ダイエット中の方や、脂質を少し控えたい方はトラウトサーモンを、良質な脂質をしっかり摂りたい方はアトランティックサーモンを選ぶ、といった健康面からの使い分けも可能です。
使い方・料理での扱い方の違い|生食用?加熱用?
生食(寿司・刺身)で「とろける食感」を楽しみたいならアトランティックサーモンが最適です。一方、加熱調理(ムニエル・ソテー)にも使う場合は、身が締まって崩れにくいトラウトサーモンが扱いやすいでしょう。
味と食感の違いは、そのまま最適な調理法の違いにつながります。
生食(寿司・刺身・カルパッチョ)
アトランティックサーモンの最大の魅力は、なんといってもその脂のりです。この「とろけるような食感」をダイレクトに味わうには、生食が一番です。
特に寿司ネタとしては最高で、シャリの酢飯と濃厚な脂が口の中で一体となります。カルパッチョやマリネにしても、その柔らかさと旨味が際立ちます。
トラウトサーモンも、もちろん生食で非常に美味しくいただけます。アトランティックサーモンほどの脂はありませんが、ぷりぷりとした歯ごたえと、さっぱりした後味が楽しめます。脂がくどくないため、サラダのトッピングや海鮮丼の具材としても食べ飽きない魅力があります。
加熱調理(ソテー・ムニエル・フライ)
加熱調理では、両者の違いがさらに明確になります。
アトランティックサーモンは、脂が多く身が柔らかいため、加熱すると身がほぐれやすく、形が崩れやすいという側面があります。ホイル焼きや蒸し料理のように、形を保ったままふっくらと仕上げる料理には向いています。
トラウトサーモンは、身が締まっているため、加熱しても型崩れしにくいのが最大の強みです。ムニエルやソテー、フライなど、切り身の形を活かした料理に最適です。皮目をパリッと焼き上げ、中はふっくらと仕上げるような調理法で真価を発揮します。
養殖方法・主な産地・価格の違い
現在流通しているものの多くは養殖です。アトランティックサーモンはノルウェーやチリ、トラウトサーモンはチリや日本国内(ご当地サーモン)が主な産地です。価格はアトランティックサーモンの方が高価な傾向があります。
養殖方法と主な産地
日本で生食用のサーモンが普及したのは、1980年代にノルウェーが始めたアトランティックサーモンの養殖技術(伝染病の心配がない)が確立されたことが大きなきっかけです。
現在、私たちがスーパーなどで目にするアトランティックサーモン、トラウトサーモンのほとんどは、管理された環境で育てられた養殖ものです。
- アトランティックサーモン:主な養殖産地は、ノルウェー、チリ、カナダ、スコットランドなどです。特にノルウェー産は品質管理が徹底されており、高い評価を得ています。
- トラウトサーモン:主な養殖産地は、チリ、ノルウェーなどです。また、トラウトサーモン(ニジマス)は日本国内でも養殖が盛んで、各地で「ご当地サーモン」としてブランド化されています。(例:青森県の「海峡サーモン」、長野県の「信州サーモン」など)
価格の違い
一般的に、アトランティックサーモンの方がトラウトサーモンよりも高価な傾向があります。
アトランティックサーモンは、そのとろけるような脂のりとブランド力から、高級寿司ネタやレストランでの需要が高いためです。
一方、トラウトサーモンは比較的安価で安定して供給されており、スーパーの特売などで見かける機会も多いかもしれません。ただし、国内のご当地サーモンなどは、こだわりの飼料や飼育方法で育てられているため、アトランティックサーモンと同等、あるいはそれ以上に高価な場合もあります。
体験談|実際に食べ比べてみた印象
僕もこの違いを明確にするために、先日スーパーの鮮魚コーナーで「アトランティックサーモン(ノルウェー産・養殖)」と「トラウトサーモン(チリ産・養殖)」の刺身用サクを両方購入し、食べ比べてみました。
まず、見た目からして違いましたね。アトランティックサーモンは身が厚く、鮮やかなオレンジ色。一方のトラウトサーモンは、少し赤みが強く、身が引き締まって見える印象でした。
生で一切れずつ食べてみると、その差は歴然です。
アトランティックサーモンは、口に入れた瞬間に、本当に脂が「じゅわ〜」っと溶け出す感覚。醤油を弾くほどの脂のりで、濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。「これは白米が欲しくなる!」と、すぐさま寿司飯を用意したくなるような、王道の「とろサーモン」の味わいでした。
次にトラウトサーモン。こちらは、「ぷりっ」とした強い歯ごたえが印象的でした。脂はアトランティックサーモンほど強くなく、さっぱりとしていますが、噛むほどに魚本来の旨味がしっかりと感じられます。この食感は、カルパッチョにしてオリーブオイルやハーブと合わせると、より引き立ちそうだと感じました。
さらに、それぞれを加熱(ソテー)しても試してみました。トラウトサーモンは身が崩れず、皮はパリパリ、中はふっくらと完璧なムニエルになりました。一方、アトランティックサーモンは加熱すると非常に柔らかくなり、ほろほろと崩れやすかったため、ソテーよりはホイル焼きなどに向いていると実感しましたね。
この経験から、「生で贅沢に脂を楽しむならアトランティック、食感や加熱調理も楽しむならトラウト」というのが、僕の中での明確な使い分けの基準になりました。
アトランティックサーモンとトラウトサーモンに関するFAQ(よくある質問)
ここでは、アトランティックサーモンとトラウトサーモンの違いに関して、よく寄せられる質問にお答えしていきますね。
お寿司屋さんでよく使われるのはどちらですか?
これはお店によりますが、「とろけるような脂のり」を特徴とする回転寿司や一般的な寿司店では、アトランティックサーモンが使われることが多いです。あの上質な脂の甘みが、酢飯と非常に良く合いますからね。一方、トラウトサーモンも、そのさっぱりとした味わいとコストパフォーマンスの良さから、広く使われています。
「サーモントラウト」という名前も聞きますが、違いは?
「トラウトサーモン」と「サーモントラウト」は、基本的に同じもの(海水養殖されたニジマス)を指していると考えて問題ありません。呼び方が違うだけで、生物学的な違いはありません。どちらも商品名として定着しています。
生で食べても安全なのはどちらですか?
現在、日本で流通している「アトランティックサーモン」も「トラウトサーモン」も、そのほとんどが養殖です。これらの養殖サーモンは、寄生虫(アニサキスなど)のリスクがない安全な飼料で育てられ、急速冷凍などの処理が施されているため、どちらも生食(刺身や寿司)で安全に食べることができます。
ただし、天然のサケ・マス類(日本の天然のサケなど)はアニサキスがいる可能性が非常に高いため、生食は絶対に避け、必ず加熱するか、一度冷凍(−20℃で24時間以上)する必要があります。スーパーで「生食用」「刺身用」と表示されている養殖サーモンを選ぶのが最も安全ですね。
まとめ|アトランティックサーモンとトラウトサーモン、どちらを選ぶべきか?
アトランティックサーモンとトラウトサーモンの違い、スッキリ整理できたでしょうか。
どちらも美味しいサーモンであることに違いはありませんが、その特徴は全く異なります。
とろけるような濃厚な脂の甘みと、柔らかい食感を求めるなら、アトランティックサーモンがおすすめです。お寿司やお刺身で、その贅沢な味わいを堪能してください。
一方で、さっぱりとした脂と、ぷりぷりとした身の食感を楽しみたいなら、トラウトサーモンがぴったりです。生食はもちろん、ムニエルやソテーなど、加熱調理にも幅広く活躍してくれます。
これからは、ぜひ「今日はどんな風に食べたいか?」という目的に合わせて、二つのサーモンを賢く使い分けてみてくださいね。それぞれの違いを知ることで、食卓がさらに豊かになるはずです。
この他にも、様々な食材・素材の違いについて解説していますので、ぜひご覧ください。