韓国料理店で「辛くないキムチ」を頼みたい時、「白キムチ」と「水キムチ」という二つのメニューを見て、迷ったことはありませんか?
どちらも唐辛子を使わないため赤くなく、辛くないことは共通しています。しかし、この二つは「料理の目的」と「汁の量」が全く異なる、似て非なる料理なんです。
最大の違いは、「白キムチ」が白菜などの具材をメインに食べる「発酵漬け物(おかず)」であるのに対し、「水キムチ」は具材と一緒に「汁(スープ)を飲む」ことを目的とした「発酵飲料(お口直し)」である点です。
この記事を読めば、二つのキムチの明確な違いから、材料、健康効果、文化的な背景までスッキリと理解できますよ。
それではまず、二つの決定的な違いを比較表で見ていきましょう。
結論|白キムチと水キムチの違いが一目でわかる比較表
白キムチと水キムチの最大の違いは「汁の量」と「食べ方」です。白キムチは「漬け物」であり、汁は少なめで主に具材(白菜など)を食べます。一方、水キムチは「スープ(飲料)」の側面が強く、たっぷりの汁ごと具材(大根など)を楽しみます。どちらも唐辛子を使わないため辛くありません。
どちらも「辛くないキムチ」の代表格ですが、その個性は全く異なります。
| 比較項目 | 白キムチ(ペッキムチ) | 水キムチ(ムルキムチ) |
|---|---|---|
| 料理分類 | 漬け物(おかず) | スープ、飲料(お口直し) |
| 汁の量 | 少ない(具材が浸る程度) | 非常に多い(スープが主役) |
| 主な材料 | 白菜、大根、栗、ナツメ、梨 | 大根、キュウリ、白菜、梨、リンゴ |
| 見た目 | 具材がメイン、汁はやや白濁 | 汁がメイン、透明~半透明 |
| 味わい | しっかりした塩味、旨味、ほのかな甘み | 清涼感のある爽やかな酸味、微炭酸感 |
| 食べ方 | おかず、箸休めとして具材を食べる | 汁をスプーンで飲む、具材も食べる |
| 辛さ | なし(装飾で糸唐辛子を使うことも) | なし |
白キムチと水キムチの定義と起源の違い
「白キムチ(ペッキムチ)」は、唐辛子が伝わる以前から存在したとされる、白菜などの具材を食べる伝統的な漬け物です。一方、「水キムチ(ムルキムチ)」は「水のキムチ」という意味で、汁(スープ)を飲むために作られる発酵飲料のような一品です。
名前は「キムチ」と共通していますが、その成り立ちと目的が異なります。
白キムチ(ペッキムチ)とは?
「白キムチ(백김치、ペッキムチ)」は、その名の通り「白いキムチ」を意味します。
唐辛子が朝鮮半島に伝わる以前(16世紀以前)から存在していたキムチの原型とも言われ、宮廷料理としても発展した上品な漬け物です。
塩漬けにした白菜の葉の間に、千切りにした大根、ニンニク、生姜、ネギ、そして栗やナツメ、梨といった果物などを挟み込みます。これを米のとぎ汁や果汁、塩水などを合わせた漬け汁に漬け込み、発酵させます。
あくまで主役は「白菜」であり、おかずや箸休めとして具材を食べるのがメインです。
水キムチ(ムルキムチ)とは?
「水キムチ(물김치、ムルキムチ)」は、「水(ムル)」のキムチという意味です。
こちらは、具材(主に大根やキュウリ)を食べること以上に、乳酸発酵によって生まれた「汁(スープ)」を飲むことに重きが置かれた料理です。
薄い塩水に、大根、キュウリ、白菜などの野菜や、リンゴ、梨といった果物をカットして入れ、発酵させて作ります。発酵を促すために、米粉を炊いた「糊(のり)」を加えることもあります。
食前のお通しや、脂っこい料理(焼肉など)のお口直しとして、その清涼感のある汁をスプーンですくって飲みます。韓国冷麺(特に平壌冷麺)のスープベースとして使われることでも有名ですね。
決定的な違いは「調理法」と「食べ方」
白キムチは、白菜の葉の間に具材(ヤンニョム)を挟み、比較的少ない汁で「漬け込む」料理です。一方、水キムチは、具材をたっぷりの塩水(スープ)に入れ、汁ごと発酵させる「スープ料理」です。
見た目は似ていても、調理のゴールが全く異なります。
白キムチ:具材(白菜)を「漬け込む」発酵漬け物
白キムチの調理は、一般的な(赤い)キムチ作りに似ています。塩漬けした白菜の葉一枚一枚に、唐辛子粉を使わないヤンニョム(具材)を丁寧に「挟み込み」ます。
これを甕(かめ)や保存容器に詰め、具材がひたひたになる程度の漬け汁(米のとぎ汁や果汁など)を加えて発酵させます。
食べ方は、日本の白菜漬けと同じく、発酵して味が染み込んだ白菜や具材を箸で取り出し、おかずとして食べます。汁を積極的に飲むことはありません。
水キムチ:具材と「汁(スープ)を一緒に楽しむ」発酵飲料
水キムチの調理は、非常にシンプルです。容器にたっぷりの塩水を張り、そこにカットした大根、キュウリ、果物などを入れます。
発酵を促すために、少量の米粉の糊や砂糖、ニンニク、生姜のスライスを加えます。白キムチのように具材を挟み込む手間はありません。
食べ方は、器に具材と汁を一緒によそい、スプーンで汁を「飲む」のがメインです。もちろん、シャキシャキとした食感が残る具材も一緒に楽しみます。まさに「飲むキムチ」ですね。
主な材料・味付け・見た目の違い
白キムチは「白菜」がメインで、栗やナツメなど豪華な具材が入ることもあります。味はしっかりした塩味と旨味です。水キムチは「大根」やキュウリ、果物がメインで、たっぷりの透明な汁が特徴。味は非常にさっぱりした酸味が特徴です。
主役が違うため、味わいや見た目も大きく異なります。
白キムチ:白菜がメイン、汁は少なめで白濁
白キムチの主役は、間違いなく「白菜」です。白菜のシャキシャキとした食感と、甘みが楽しめます。
具材として、大根の千切りやネギのほか、栗、ナツメ、松の実など、宮廷料理の名残を感じさせる豪華な食材が使われることもあります。飾りとして糸唐辛子を少量使うこともありますが、辛味はありません。
味は、発酵による酸味はありますが、水キムチに比べると穏やかで、しっかりとした塩味と野菜や果物から出る旨味、甘みが感じられます。漬け汁は米のとぎ汁などを使うため、やや白濁しています。
水キムチ:大根や果物がメイン、汁がたっぷりで透明感
水キムチの主役は「汁(スープ)」であり、具材としては「大根(カクテキ状)」が最もポピュラーです。他にもキュウリやセロリ、また香り付けと発酵を促すためにリンゴや梨が一緒に漬け込まれることが多いです。
見た目は、透明な汁(米粉の糊を使った場合はやや白濁)に、色とりどりの野菜や果物が浮いている涼しげなものです。
味は、白キムチよりも「酸味」がはっきりしており、非常にさっぱりとした清涼感が特徴です。発酵が進むと、微炭酸のようなシュワっとした感覚が楽しめることもあります。
栄養・健康面での違い(乳酸菌の摂り方)
どちらも唐辛子の刺激がなく、植物性乳酸菌が非常に豊富な発酵食品です。特に水キムチは、乳酸菌やビタミン、ミネラルが溶け出した「汁」を直接飲むため、栄養素を効率よく摂取できると言われています。
どちらも「辛くない」という点で、胃腸への刺激が少なく、お子様や辛いものが苦手な方でも食べられる発酵食品です。
共通するメリット
どちらも発酵の過程で「植物性乳酸菌」が豊富に生まれます。乳酸菌は腸内環境を整える効果が期待できますね。また、低カロリーで食物繊維も摂取できます。
水キムチの特徴
水キムチの最大の健康メリットは、その「汁」を飲む点にあります。野菜や果物から溶け出したビタミンCやミネラル、そして乳酸菌そのものを、汁ごと直接体内に取り込むことができます。
そのため、韓国では古くから夏バテ防止のドリンクや、消化を助ける「お口直し」として愛飲されてきました。
白キムチの特徴
白キムチももちろん乳酸菌は豊富ですが、主に「具材(白菜)」から摂取することになります。漬け物として、しっかりとした食物繊維を摂ることができます。
韓国と日本における食べ方の違い
韓国では、白キムチは「高級な箸休め(おかず)」として、水キムチは「食前・食中のお口直し(飲料)」として明確に区別されます。日本では、どちらも「辛くないキムチ」として、韓国料理店や焼肉店で前菜やおかずとして提供されることが多いです。
本場・韓国と日本とでは、二つの料理の立ち位置が少し異なります。
韓国での使い分け
韓国では、二つは全く別物として明確に使い分けられます。
- 白キムチ:高級なおかず(パンチャン)の一つ。特に脂っこい料理を食べる際や、お酒の肴として、その上品な味わいが好まれます。
- 水キムチ:食欲がない時の食前や、焼肉(コギ)やチヂミなど脂っこい料理の合間に、お口をリセットするスープ(飲料)として飲みます。家庭でも日常的に作られる、非常にポピュラーな存在です。
日本での立ち位置
日本では、どちらも「辛くないキムチ」という括りで、韓国料理店や焼肉店で提供されることが多いです。
白キムチは、キムチの盛り合わせの一品として、または「白菜の浅漬け」に近い感覚のおかずとして人気です。
水キムチは、その独特の「汁を飲む」文化を知らない人も多いため、提供しているお店は白キムチに比べるとやや専門的かもしれません。しかし、そのさっぱりとした味わいから、本格的な韓国料理店や焼肉店で根強い人気があります。
体験談|焼肉屋で出会った「水キムチ」の衝撃的な美味しさ
僕が「水キムチ」という料理を初めて体験したのは、ある本格的な韓国焼肉のお店でした。
いつものようにカルビやロースを注文し、キムチの盛り合わせを頼んだところ、メニューに「水キムチ」という見慣れない文字が。店員さんに「これは辛いですか?」と聞くと、「いえ、全く辛くありません。スープみたいに飲むキムチです」と言われ、好奇心で注文してみました。</p
運ばれてきたのは、小さなボウルに注がれた、半透明の冷たいスープ。中にはカクテキ(大根の角切り)と、リンゴのようなものが浮いています。</p
「これを…飲む?」
半信半疑でスプーンですくって一口飲むと、衝撃が走りました。冷麺のスープのようでありながら、もっと酸味があって、リンゴジュースのようなほのかな甘みと、シュワっとした微炭酸感…。「何だこれ、めちゃくちゃ美味しい!」と。
そして、脂っこいカルビを食べた後にその水キムチの汁を飲むと、口の中の脂が魔法のように洗い流され、さっぱりとリセットされる感覚に二度驚きました。
その時まで「白キムチ(白菜の漬物)」は知っていましたが、「水キムチ」がこれほどまでに「飲むお口直し」として完成された料理であることに感動しました。それ以来、焼肉屋で水キムチを見かけると、必ず注文するようになりましたね。
白キムチと水キムチに関するよくある質問(FAQ)
結局、どちらも辛くないのですか?
はい、どちらも唐辛子粉(コチュカル)を使わないので、辛味は全くありません。白キムチは、彩りとして糸唐辛子を少量乗せることがありますが、これは辛さを加えるためではありません。
味の最大の違いは何ですか?
「酸味」の質と強さです。水キムチは、汁を飲むために作られており、清涼感のある爽やかな酸味が特徴です。白キムチは、具材を食べる漬け物なので、酸味は水キムチより穏やかで、塩味と旨味がしっかり感じられます。
冷麺に入っているのはどっちですか?
韓国冷麺(特に平壌冷麺)のスープベースとして、「水キムチ(主に大根の水キムチ=トンチミ)」の汁が使われることがよくあります。あの独特のさっぱりとした酸味は、水キムチの発酵から来ています。
家庭で作りやすいのはどちらですか?
どちらも家庭で作れますが、「水キムチ」の方が手軽かもしれません。白キムチは白菜の葉に具を挟む手間がかかりますが、水キムチはカットした野菜や果物を塩水と米粉の糊に漬けるだけなので、比較的簡単に作れます。
まとめ|白キムチと水キムチ、どう使い分ける?
白キムチと水キムチの違い、もう完璧に使い分けられますね。
どちらも辛くない発酵食品ですが、その役割は明確に異なります。
- 白キムチがおすすめな人
辛いものが苦手で、「おかず」や「箸休め」として白菜の漬け物を楽しみたい時。上品な塩味と旨味、シャキシャキした食感を味わいたい時。 - 水キムチがおすすめな人
焼肉や脂っこい料理の合間に、「スープ」や「飲料」としてお口直しをしたい時。清涼感のある爽やかな酸味で、さっぱりとリフレッシュしたい時。
ぜひ、韓国料理店などで見かけたら、この違いを思い出して、その時の気分に合った「辛くないキムチ」を選んでみてください。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な「料理・メニューの違い」について詳しく解説しています。ぜひ他の記事もチェックしてみてください。
発酵食品の健康効果について詳しく知りたい方は、厚生労働省の栄養・食生活に関する情報や、e-ヘルスネット(厚生労働省)も参考にしてみてくださいね。