カプート小麦粉と日本の小麦粉の違いとは?「00粉」の秘密

ピザやパスタのレシピを調べると、必ずと言っていいほど目にする「カプート(Caputo)」の小麦粉。

なぜ、プロのピザ職人(ピッツァイオーロ)たちは、こぞってこのイタリアの小麦粉を使うのでしょうか?日本の「強力粉」とは何が違うのでしょうか?

結論から言うと、「カプート小麦粉」と「日本の小麦粉」の最大の違いは、「分類の基準」と「グルテンの質」にあります。

日本の小麦粉がタンパク質の「量」で分類されるのに対し、イタリアの小麦粉(カプート)は「精製度(灰分)」で分類されます。

そして、日本の強力粉が「もちもち」とした強い弾力を持つのに対し、カプートの小麦粉は「よく伸びる(伸展性)」が「弾力は強すぎない」という、ピザ生地に最適なグルテンの質を持っているのです。

この記事では、カプート小麦粉が選ばれる理由、代表的な種類(赤と青)の違い、そして日本の小麦粉との使い分けまで、スッキリと解説しますね。

まずは、両者の核心的な違いを一覧表で比較してみましょう。

結論|「カプート小麦粉」と「日本の小麦粉」の違いを一言でまとめる

【要点】

「カプート小麦粉」と「日本の小麦粉」の最大の違いは「分類基準」です。日本の小麦粉はタンパク質の含有量(量)で強力粉・中力粉・薄力粉に分類されます。一方、カプート(イタリア粉)は精製度(灰分=ミネラルの量)で「00粉」「0粉」「1粉」などに分類されます。また、同じ高タンパクの粉でも、日本の強力粉が「弾力」が強いのに対し、カプートは「伸展性(伸び)」に優れるグルテンの質の違いがあります。

このグルテンの質の違いこそが、本場ナポリピッツァの「薄く伸ばせて、モチっとしながらも軽い食感」を生み出す秘密なんですね。

項目カプート(イタリア小麦粉)日本の小麦粉
分類基準精製度(灰分)
(例:00粉、0粉、1粉)
タンパク質の量
(例:強力粉、中力粉、薄力粉)
分類名(例)TIPO “00”(ティーポ ゼロゼロ)強力粉
グルテンの質伸展性(伸び)に優れる弾力(コシ)が強い
主な用途(例)ピッツァ、パスタ、パン、お菓子パン、麺類、お菓子、天ぷら
風味(傾向)灰分が多く、小麦の風味が強い精製度が高く、クリアな味わい

「カプート小麦粉」とは?ピザの本場ナポリのトップブランド

【要点】

「カプート(Caputo)」とは、イタリア・ナポリで1924年に創業した老舗製粉会社の名前です。特にナポリピッツァ用の小麦粉メーカーとして世界的に有名で、ナポリのピッツェリア(ピザ屋)で約70%という圧倒的なシェアを誇ります。まさに「ピザ用小麦粉の代名詞」とも言えるブランドです。

カプート社は、ピッツァ発祥の地ナポリで、何世代にもわたってピッツァ職人たちの厚い信頼を勝ち得てきました。良質なタンパク質を壊さないようゆっくりと製粉する など、独自のノウハウとブレンド技術により、ピッツァに最適な小麦粉を製造しています。

決定的な違い:「分類基準」と「グルテンの質」

【要点】

日本とイタリアでは、小麦粉を分類する「物差し」が根本的に異なります。日本は「タンパク質の量」、イタリアは「灰分の量(精製度)」です。

日本の小麦粉:タンパク質の「量」で分類(強力粉・薄力粉)

日本では、小麦粉に含まれるタンパク質(こねるとグルテンになる成分)の「量」で分類するのが一般的です。

  • 強力粉:タンパク質が多い(約12%以上)。パン向き。
  • 薄力粉:タンパク質が少ない(約8.5%以下)。お菓子・天ぷら向き。
  • 中力粉:中間。うどん向き。

カプート(イタリア):精製度(灰分)で分類(00粉・0粉など)

一方、イタリアの小麦粉は「TIPO(ティーポ)」という分類が使われます。これは「灰分(かいぶん)」の含有量で決まります。

「灰分」とは、小麦粉を燃やした後に残る灰=ミネラル分のことです。これは主に外皮(ふすま)や胚芽に多く含まれています。

  • TIPO “00”(00粉):最も精製度が高く、灰分が少ない(=白い)。小麦の中心部だけを使っている。
  • TIPO “0”(0粉):00粉より精製度が低い。
  • TIPO “1”(1粉):さらに精製度が低く、灰分が多い。
  • TIPO “2”(2粉):最も精製度が低く、全粒粉に近い。

カプートのピザ用小麦粉の多くは、この「TIPO “00”(ティーポ ゼロゼロ)」に分類されます。

※注意点:「00粉=タンパク質が少ない(薄力粉)」と誤解されがちですが、これは間違いです。カプートの「00粉」の中には、タンパク質が13%を超える「強力粉」タイプも多く存在します。「00粉」は、あくまで「精製度が高い(灰分が少ない)」ことを示す分類名なのです。

グルテンの質の違い:「伸展性」 vs 「弾力」

これが、ピザ職人がカプートを選ぶ最大の理由です。

日本の強力粉
日本の強力粉(主に北米産小麦)は、グルテンが非常に強く、「弾力(コシ)」が際立っています。そのため、食パンのように縦に膨らむ力や、もちもちとした食感を生み出すのに適しています。

カプートの小麦粉
カプートの小麦粉(ヨーロッパ産小麦のブレンド)は、タンパク質量は多くても、グルテンの質が異なります。「弾力」は強すぎず、非常に「伸展性(しんてんせい=伸びやすさ)」に優れています。

ピザ生地は、手で薄く円形に伸ばす必要があります。この時、日本の強力粉のように弾力が強すぎると、生地がすぐに縮んでしまい(いわゆる「キックバック」が強い)、薄く伸ばすのが困難です。
カプートの粉は、しなやかにスーッと伸びるため、ピザ職人はストレスなく生地を薄く伸ばすことができます。これが、縁(コルニチョーネ)はふっくら、中央は薄いナポリピッツァの理想的な形を作るのに最適な理由です。

カプート小麦粉の代表的な種類と違い

【要点】

カプートブランドの中でも、特に有名なのが「サッコロッソ(赤い袋)」と「ピッツェリア(青い袋)」です。この二つの主な違いは「タンパク質の量」「推奨される発酵時間」です。

日本でよく見かける二つの代表的なカプート製品の違いを解説します。

サッコロッソ(赤):長時間発酵・高タンパク

  • 通称赤袋(サッコ・ロッソ)。正式名は「クオーコ(料理人)」。
  • タンパク質多い(約13%)。日本の強力粉に相当します。
  • 特徴:グルテンが強く、生地の強度と安定性に優れます。そのため、長時間の発酵(12時間以上)にも耐えられます。
  • 用途:ナポリピッツァはもちろん、フォカッチャ、デニッシュ、パン、生パスタ など、強い生地が求められる様々な用途に適した万能粉です。

ピッツェリア(青):短時間発酵・ナポリピッツァの定番

  • 通称青袋(ピッツェリア)
  • タンパク質中程度(約12.5%)
  • 特徴:サッコロッソよりタンパク質がやや少なく、グルテンが柔らかめです。比較的短時間の発酵(12時間以内) で最高のパフォーマンスを発揮するように設計されています。
  • 用途:まさに「ナポリピッツァ専用粉」として、多くのピッツェリアで愛用されています。

味・香り・食感(仕上がり)の違い

【要点】

日本の小麦粉(特等粉)は精製度が高く、クリアで雑味のない味わいになりやすいです。一方、カプートの小麦粉(特に00粉)は、日本の粉に比べると灰分(ミネラル分)が多く、小麦本来の「風味」や「旨味」が強く感じられるのが特徴です。

日本の小麦粉(強力粉)
日本で流通する小麦粉は「特等粉」が主流で、これはイタリアの「00粉」よりもさらに精製度が高い(灰分が少ない)ものです。そのため、色は白く、雑味のないクリアな味わいで、パンにした時は「もっちり」とした食感が際立ちます。

カプートの小麦粉
カプートの「00粉」は、日本の基準では1等粉や2等粉の間に相当する灰分を含んでいます。この豊富な灰分(ミネラル)が、小麦本来の豊かな風味と旨味を生み出します。

ピザにした時の食感は、優れた伸展性により「サクッ」と歯切れが良く、中は「もちっ」としながらも、日本の強力粉パンのような重たい弾力ではなく、「軽い」口当たりに仕上がります。

栄養・成分・健康面の違い

【要点】

カプートの小麦粉(例:サッコロッソ)も日本の強力粉も、タンパク質が豊富な高タンパク食材です。カロリーも100gあたり約350kcal前後と大きな差はありません。ただし、カプートの粉は日本の特等粉に比べて灰分(ミネラル分)を多く含む という特徴があります。

どちらも主成分は炭水化物とタンパク質です。

カプート サッコロッソ(赤袋)の栄養成分(100gあたり目安)は、タンパク質 13.0g、脂質 1.2g、炭水化物 71.3g、灰分 0.5g となっています。

日本の強力粉(1等)は、タンパク質 11.7g、脂質 1.5g、炭水化物 71.9g、灰分 0.38g(※文部科学省「日本食品標準成分表」)であり、大きな差はありません。

ただし、カプートの粉(灰分0.5g)は日本の強力粉(灰分0.38g)に比べ、灰分(ミネラル)を多く含んでいることがわかります。このミネラル分が、風味の豊かさにつながっています。

体験談|僕が「カプート」でピザを焼いて驚いたこと

僕も趣味でピザを焼くのですが、ずっと日本の強力粉と薄力粉をブレンドして作っていました。それでも美味しくできるのですが、一つだけ悩みがありました。それは「生地を薄く伸ばせない」ことです。

麺棒で伸ばしても、手で伸ばそうとしても、日本の強力粉の強い「弾力(キックバック)」で、生地がすぐに縮んでしまうんです。無理に伸ばすと破れてしまい、結果として分厚いパンピザのようになっていました。

ある時、奮発して「カプート ピッツェリア(青袋)」を買ってみました。同じレシピで生地をこねて、休ませて、いざ伸ばす段階になって驚きました。

「…生地が、伸びる! 縮まない!」

まるで粘土細工のように、生地が手の動きに素直についてきて、スーッと薄く広がっていくんです。これがイタリア粉の「伸展性」か、と。弾力は強すぎないのに、生地はしっかり繋がっていて破れません。

焼き上がりも、いつもの「もっちり重いピザ」とは全く違う、縁はサクッと香ばしく、中はモチッとしているのに「軽い」、まさにお店のナポリピッツァの食感でした。小麦の風味も強く、トマトソースとチーズだけでもご馳走になる理由が分かりました。

ピザを作るなら、もうカプート以外は考えられない、と痛感した体験でしたね。

「カプート小麦粉」に関するよくある質問

最後に、カプート小麦粉に関するよくある疑問にお答えしますね。

Q: 「TIPO “00”(00粉)」とは、薄力粉のことですか?

A: いいえ、違います。これはイタリアの分類法で、タンパク質の量ではなく「精製度(灰分の少なさ)」を示します。「00粉」は「最も白く精製された粉」という意味です。カプートの「00粉」の中には、サッコロッソのようにタンパク質13%を超える「強力粉」タイプも多く存在します。

Q: カプートの「サッコロッソ(赤)」と「ピッツェリア(青)」は、どっちを使えばいいですか?

A: 作るピザの発酵時間によります。「ピッツェリア(青)」は短時間発酵(12時間以内)向け のナポリピッツァ定番の粉です。「サッコロッソ(赤)」はタンパク質が多く生地が強いため、長時間発酵(12時間以上) に耐えられます。家庭で手軽に作るなら「ピッツェリア(青)」、パンやフォカッチャにも使うなら万能な「サッコロッソ(赤)」がおすすめです。

Q: カプート小麦粉はパン作りに使えますか?

A: はい、使えます。特にタンパク質の多い「サッコロッソ(赤)」 や、パン専用のブレンド粉が適しています。ただし、日本の強力粉とはグルテンの質が違うため、日本の食パンのような「もっちり・しっとり」とは少し異なり、「サクッ」とした歯切れの良い、風味豊かなパンに仕上がります。

まとめ|カプートと日本の小麦粉、どちらを選ぶべきか?

「カプート小麦粉」と「日本の小麦粉」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。

どちらも優れた小麦粉ですが、その個性は全く異なります。

  • 日本の小麦粉(強力粉)タンパク質の「量」で分類。「弾力」が非常に強い。「もっちり」食感のパン(食パンなど)に最適。
  • カプート小麦粉(00粉)精製度(灰分)で分類。「伸展性(伸び)」に優れる。「サクッ・もちっ・軽い」食感のナポリピッツァに最適。小麦の風味が豊か。

この違いを知れば、作りたい料理によって最適な粉を選ぶことができますね。

「もっちりとした食パンやベーグル」を作りたいなら「日本の強力粉」を、「本格的なナポリピッツァやフォカッチャ、歯切れの良いパン」を作りたいなら「カプート」を選ぶのがおすすめです。

当サイト「違いラボ」では、他にも様々な食材・素材の違いについて詳しく解説しています。ぜひ他の記事も参考にしてみてください。