ショソン・オ・ポムとアップルパイの違いとは?形・食べ方で徹底比較

サクサクのパイ生地とりんごの組み合わせが美味しい「アップルパイ」。

でも、パン屋さんやパティスリーで「ショソン・オ・ポム」という名前のお菓子を見かけたことはありませんか?見た目はアップルパイに似ていますが、何が違うのでしょうか。

結論から言うと、「ショソン・オ・ポム」はフランス語で「りんごのスリッパ」を意味する、半月型のパイ菓子です。一方、「アップルパイ」はより広義で、特にアメリカやイギリスで発展した、型を使ってホール状に焼くものを指すことが多いです。

この記事を読めば、二つのりんご菓子のルーツや文化的な違い、そして味わいの特徴までスッキリと理解できますよ。

それでは、二つの違いを詳しく見ていきましょう。

結論|ショソン・オ・ポムとアップルパイの違いが一目でわかる比較表

【要点】

「ショソン・オ・ポム」と「アップルパイ」は、どちらも「りんごをパイ生地で包んで焼いたお菓子」という点では共通しています。しかし、「ショソン・オ・ポム」はフランス発祥で「半月型(スリッパ型)」のものを指すのに対し、「アップルパイ」はイギリスやアメリカ発祥で、一般的に「ホール型」で焼かれるものを指すという違いがあります。

この二つのりんご菓子の違いを、一覧表にまとめました。

項目 ショソン・オ・ポム アップルパイ
語源・意味 フランス語で「りんごのスリッパ 英語で「りんごのパイ
発祥・主な国 フランス イギリス、アメリカ
形状 半月型(スリッパ型) ホール型(円形)が主流
中身 りんごのコンポート 砂糖煮にしたりんご(生のりんごを使う場合も)
パイ生地 折りパイ生地(パート・フィユテ) 折りパイ生地または練りパイ生地
文化的位置づけ 菓子パン(ヴィエノワズリー) 家庭的なデザート、国民食(特にアメリカ)

簡単に言えば、ショソン・オ・ポムは「フランス版のアップルパイ」であり、特に形状に定義がある、ということですね。

ショソン・オ・ポムとアップルパイの定義と語源

【要点】

「ショソン・オ・ポム(Chausson aux pommes)」はフランス語で、「Chausson(ショソン)」がスリッパ、「pommes(ポム)」がりんごを意味します。一方、「アップルパイ(Apple Pie)」は英語で、そのまま「りんごのパイ」を意味します。

ショソン・オ・ポム(Chausson aux pommes)とは?

「ショソン・オ・ポム」は、フランス語の「Chausson(ショソン)」と「pommes(ポム)」を組み合わせた言葉です。

  • Chausson(ショソン):スリッパ、または靴下を意味します。
  • pommes(ポム):りんご(複数形)を意味します。

直訳すると「りんごのスリッパ」。その名の通り、生地を二つ折りにして作る半月型が、スリッパのつま先部分に似ていることから名付けられました。

アップルパイ(Apple Pie)とは?

「アップルパイ」は英語で、非常にストレートな名前です。

  • Apple(アップル):りんご
  • Pie(パイ):パイ(生地で具材を包んだり、皿型の生地に具材を詰めたりして焼いた料理・菓子)

その名の通り「りんごのパイ」を指す言葉です。その歴史は古く、中世ヨーロッパ、特にイギリスで発展したとされています。その後、17世紀頃に移民によってアメリカ大陸に伝わり、アメリカの国民的デザートとして文化的に定着しました。

形状・製法・生地の決定的な違い

【要点】

ショソン・オ・ポムは、折りパイ生地(パート・フィユテ)でりんごのコンポートを包み、半月型に成形して焼くのが伝統的な製法です。一方、アップルパイは、パイ皿(型)に生地を敷き、中にりんごのフィリングを詰め、上からも生地を被せてホール状に焼くスタイルが一般的です。

二つのりんご菓子は、その作り方と最終的な形が大きく異なります。

形状と包み方:「半月型(スリッパ型)」 vs 「ホール型」

ショソン・オ・ポムの最大の特徴は、その「半月型(スリッパ型)」の形状です。円形に伸ばしたパイ生地の半分にりんごのコンポートを乗せ、もう半分の生地を折り返してかぶせ、縁をしっかりと閉じます。表面には葉っぱなどの模様(レイエ)が描かれることもあります。

アップルパイは、円形のパイ皿(型)を使って「ホール型」で作るのが主流です。底にパイ生地を敷き、中にたっぷりのりんごのフィリングを詰め、上から格子状(ラティス)または一枚のパイ生地で蓋をして焼き上げます。

ショソン・オ・ポムは、いわば「個包装」のアップルパイとも言えますね。

生地(パート・フィユテ)と中身(コンポート)

ショソン・オ・ポムに使われる生地は、フランス菓子で基本となる「パート・フィユテ(Pâte feuilletée)」、すなわち折りパイ生地です。バターと生地を何度も折りたたんで層を作ることで、焼いた時にサクサク、ハラハラとした軽い食感が生まれます。

中身は、りんごを砂糖やバター、シナモンなどで煮詰めた「りんごのコンポート」が一般的です。

アップルパイの生地は、ショソン・オ・ポムと同様の折りパイ生地を使うこともありますが、タルトのようにサクサク・ホロホロとした「練りパイ生地(パート・ブリゼなど)」を使うこともあります。中身もコンポートだけでなく、生のりんごをスライスして砂糖やスパイスと和えたものをそのまま詰めて焼くレシピも多く存在します。

食べ方・文化的背景の違い

【要点】

フランスにおいて、ショソン・オ・ポムは「ヴィエノワズリー(菓子パン)」の一種であり、パン屋(ブーランジェリー)でクロワッサンなどと並んで売られる、朝食やおやつの定番です。一方、アップルパイはアメリカの「母の味」とも称される家庭的なデザートであり、感謝祭などの食卓にも欠かせません。

ショソン・オ・ポム:フランスの「菓子パン(ヴィエノワズリー)」

フランスでは、ショソン・オ・ポムはパティスリー(お菓子屋)よりも、ブーランジェリー(パン屋)に並ぶ「ヴィエノワズリー(菓子パン)」として扱われるのが一般的です。

クロワッサンやパン・オ・ショコラなどと同様に、朝食やおやつとして気軽に食べられる、フランス人にとって非常に身近な存在です。

アップルパイ:アメリカの「国民的デザート」

アップルパイは、イギリスから伝わった後、アメリカで独自の発展を遂げ、「アメリカン・アップルパイ」として国民的なデザートの地位を確立しました。

「アメリカン・ドリームの象徴」とされたり、感謝祭(サンクスギビング)の定番デザートであったりと、単なるお菓子を超えて「アメリカの家庭の味」「母の味」といった文化的な象徴ともなっています。

体験談|パリのパン屋で出会った「りんごのスリッパ」

僕が初めて「ショソン・オ・ポム」を意識したのは、パリでの旅行中のことでした。

朝食を買いに立ち寄った街角のブーランジェリー(パン屋)で、クロワッサンやパン・オ・レザンが並ぶ中、ひときわ大きく、艶やかな半月型のパイが目に留まりました。表面には美しい葉脈のような模様が描かれています。

「アップルパイかな?」と思って店員さんに尋ねると、「セ(これは)、ショソン・オ・ポム」と教えてくれました。

焼きたてを一つ買ってかじりつくと、まず「サクッ!ハラハラ…」という音に驚きました。日本のアップルパイで知っている食感よりも、ずっと軽く、バターの香りが芳醇です。そして中から、甘酸っぱく煮詰められたりんごのコンポートが溢れ出してきました。

日本のホール型アップルパイのように「ズッシリ」とした感じではなく、あくまで軽やか。片手で持って食べられる手軽さも相まって、これが朝食や定番のおやつとして愛されている理由がよく分かりました。「りんごのスリッパ」という可愛らしい名前にも納得の、素朴で完璧な美味しさでしたね。

ショソン・オ・ポムとアップルパイに関するFAQ(よくある質問)

Q1. 日本で「ショソン・オ・ポム」という名前で売っているお店はありますか?

A1. はい、フランス系のブーランジェリー(パン屋)やパティスリー(洋菓子店)でよく見かけます。
特にメゾンカイザーやポール(PAUL)といったフランス発祥のチェーン店や、本格的なフランス菓子を扱うお店では、定番商品として「ショソン・オ・ポム」の名前で販売されています。日本でも伝統的な半月型で作られていることがほとんどですよ。

Q2. ショソン・オ・ポムは温めて食べますか?

A2. どちらでも美味しいですが、温めると格別です。
パン屋で買うと常温のことが多いですが、持ち帰ってからトースターなどで軽くリベイク(温め直し)すると、パイ生地のサクサク感とバターの香りが蘇り、中のコンポートも熱々になって非常に美味しくなります。

Q3. アップルパイの「クラシックスタイル」とは何ですか?

A3. パイ生地を底にだけ敷き、上に生のりんごを花びらのように並べて焼いたタイプです
これはアップルパイの一種で、タルトに近い形状ですね。日本の一般的なアップルパイ(上下を生地で覆う)や、ショソン・オ・ポム(包む)とはまた異なるスタイルです。

まとめ|ショソン・オ・ポムとアップルパイ、どちらを選ぶ?

「ショソン・オ・ポム」と「アップルパイ」、どちらも魅力的なりんごのパイ菓子ですが、その違いは明確でしたね。

語源は同じ「完璧な(Parfait)」ですが、二つは異なる文化で育った、個性豊かなスイーツです。

  • フランスのパン屋の定番。サクサク軽い折りパイ生地と、半月型の手軽さを楽しみたい時 = ショソン・オ・ポム
  • アメリカの家庭の味。ホール型でズッシリと、多様な生地とフィリングの組み合わせを楽しみたい時 = アップルパイ

パン屋さんで見かけたら「りんごのスリッパ(ショソン・オ・ポム)」、カフェで大きなピースを食べたい時は「アップルパイ」。

このように覚えておくと、選ぶのがさらに楽しくなりそうですね。

当サイト「違いラボ」では、他にもたくさんの「スイーツ・お菓子」に関する違いを解説しています。ぜひ、そちらもご覧になってみてくださいね。