チキンコルマとバターチキンの違いとは?味のベースと調理法でわかる決定的差

チキンコルマとバターチキン、どちらもインドカレーの定番メニューですが、見た目も味もクリーミーで、その違いに迷ったことはありませんか?

どちらも辛さがマイルドで食べやすいため、日本でも非常に人気がありますよね。僕もインド料理店に行くと、この二つの前でよく悩みます。

実はこの二つ、最も決定的な違いは「味のベース」にあります。簡単に言えば、チキンコルマは「ナッツとヨーグルト」がベースの白いカレー、バターチキンは「トマトとバター」がベースの赤いカレーなんです。

この記事を読めば、二つのカレーの明確な違いから、その背景にある歴史、調理法までスッキリと理解できます。もうメニュー選びで迷うことはありませんよ。まずは、その違いが一目でわかる比較表からご覧ください。

結論|チキンコルマとバターチキンの違いが一目でわかる比較表

【要点】

チキンコルマとバターチキンの決定的な違いは「味のベース」と「色」です。チキンコルマは、ナッツ類のペースト、ヨーグルト、生クリームをベースにした、白っぽくクリーミーな北インドの宮廷料理です。一方、バターチキンは、トマトとバターをベースにし、同じく生クリームやカシューナッツでコクを出した、オレンジ色(赤色)のカレーです。

二つの料理の主な違いを表にまとめました。

項目チキンコルマ (Korma)バターチキン (Butter Chicken)
発祥北インド・ムガル帝国の宮廷料理1950年代 インド・デリーのレストラン
現地名コルマ (Korma)ムルグ・マッカニ (Murgh Makhani)
味のベースナッツペースト、ヨーグルト、生クリームトマトバター、生クリーム
色合い白、クリーム色オレンジ色、赤色
味わいマイルド、クリーミー、ナッツのコク、酸味なしマイルド、クリーミー、トマトの酸味と甘み
鶏肉の調理スパイスと炒めてから煮込むことが多いヨーグルト等でマリネしタンドールで焼く
主なスパイスカルダモン、クローブなど(香りが爽やか)ガラムマサラ、フェヌグリークなど(香ばしい)

「チキンコルマ」と「バターチキン」定義と起源の違い

【要点】

チキンコルマは、ムガル帝国時代(16世紀〜)に生まれた北インドの伝統的な宮廷料理です。一方、バターチキンは比較的歴史が浅く、1950年代にデリーのレストラン「Moti Mahal」で考案された現代的なインド料理です。

チキンコルマ (Chicken Korma) とは?

コルマ(Korma)は、北インドのムガル地方で生まれた、非常にリッチでクリーミーなカレー(煮込み料理)を指します。その起源はムガル帝国の宮廷料理にあり、歴史は古いです。

「コルマ」とは「リッチな」という意味を持つとも言われ、その名の通り、ヨーグルト、生クリーム、そしてカシューナッツやアーモンドといったナッツ類のペーストをふんだんに使って作られるのが最大の特徴です。

トマトは使用しないか、使用してもごく少量なため、色は白っぽく仕上がります。インドの宮廷料理らしく、カルダモンなどの爽やかなスパイスが香り、非常にマイルドで上品な味わいです。

バターチキン (Butter Chicken) とは?

バターチキン(Butter Chicken)は、今や世界中で最も有名なインドカレーの一つですが、その歴史はチキンコルマに比べて浅いです。

1950年代に、インドのデリーにある「Moti Mahal(モティ・マハル)」というレストランで考案されました。現地での正式名称は「ムルグ・マッカニ(Murgh Makhani)」と言い、「ムルグ」が鶏、「マッカニ」がバターを意味します。

この料理は、タンドリーチキンの残り物を再利用するために生まれたと言われています。タンドリーチキンを、たっぷりのバターとトマト、生クリーム(またはカシューナッツペースト)で煮込んだソースと和えたのが始まりです。

【最大の違い】味のベースと調理法

【要点】

二つのカレーは、調理工程と味のベースが全く異なります。チキンコルマはナッツとヨーグルトをベースに使い、白く仕上げるのが伝統です。バターチキンはトマトとバターをベースに使い、赤く(オレンジ色)仕上げます。また、バターチキンは鶏肉をタンドールで焼いてから加えるのが特徴です。

チキンコルマ:ナッツとヨーグルトがベースの「白い」カレー

チキンコルマの調理法は、玉ねぎやスパイスを炒めた後、ヨーグルトやナッツペースト(主にカシューナッツやアーモンド)を加えて煮込みます。

トマトは使わないのが伝統的なスタイルで、生クリームやヨーグルト、ナッツによって、色は白くクリーム色に仕上がります。

鶏肉は、スパイスで下味をつけて(マリネして)から、他のスパイスと共に炒め、そのままソースで煮込むレシピが多いです。

バターチキン:トマトとバターがベースの「赤い」カレー

バターチキンの調理法は、まず主役となる鶏肉の下ごしらえから始まります。

鶏肉をヨーグルトとスパイス(ガラムマサラ、ショウガ、ニンニクなど)に数時間漬け込み(マリネ)、これをタンドール(窯)で香ばしく焼きます(家庭ではグリルやフライパンで代用されます)。

ソースは、たっぷりのバターで玉ねぎやスパイスを炒め、トマト(トマトピューレやペースト)を加えて煮込みます。最後に生クリームやカシューナッツペースト を加えてまろやかさを出し、先に焼いておいた鶏肉を加えて和える、という工程で作られます。

味・辛さ・見た目の違い

【要点】

チキンコルマはナッツのコクとヨーグルトのまろやかさが特徴の「甘口(微辛口)」カレーです。バターチキンはトマトの「酸味と甘み」、そしてバターの「濃厚なコク」が特徴の、同じくマイルドなカレーです。見た目はコルマが「白」、バターチキンが「オレンジ」と対照的です。

味と辛さ(クリーミーな甘口 vs トマトの酸味と甘み)

チキンコルマ

トマトを使わないため酸味はほとんどなく、ナッツペーストと生クリーム、ヨーグルトが織りなす、非常にマイルドでクリーミー、リッチな味わいが特徴です。辛さは「微辛口」程度で、カルダモンなどのスパイスが爽やかに香る、上品な甘口カレーと言えます。

バターチキン

トマトの爽やかな酸味と甘みが、バターと生クリームの濃厚なコクと一体となっています。タンドールで焼いた鶏肉の香ばしさも加わり、コルマとは異なる、複雑で食欲をそそる味わいです。辛さは同じくマイルドで、子供から大人まで食べやすいのが特徴です。

見た目(白・クリーム色 vs オレンジ・赤色)

この二つのカレーは、お皿に盛られた時の色が全く異なります。

チキンコルマは、ヨーグルトやナッツがベースのため、白や明るいクリーム色をしています。

一方、バターチキンは、トマトとチリパウダーがベースのため、鮮やかなオレンジ色や赤色をしています。

地域・文化・人気度の違い

【要点】

「コルマ」はインド全域でバリエーションがあり、特に南インドでは生クリームの代わりにココナッツミルクを使った「チキンクルマ」という、よりサッパリしたタイプが存在します。バターチキンはデリー発祥ですが、今や世界中のインド料理店で提供される最もポピュラーなカレーの一つとなっています。

コルマの地域差(北インドと南インド)

「コルマ」という料理名はインドで広く使われていますが、地域によってスタイルが異なります。

私たちが一般的に「チキンコルマ」として認識しているのは、生クリームやナッツでコッテリ仕上げる北インド風です。

一方、南インドでは「チキンクルマ(Kurma)」と呼ばれ、生クリームやヨーグルトの代わりにココナッツミルクを使い、カレーリーフなどのスパイスを効かせた、よりサッパリとした味わいのものが多いです。

バターチキンの人気

バターチキンは、デリーのレストランで生まれてまだ70年ほどですが、その分かりやすい美味しさで瞬く間にインド全土、そして世界中に広まりました。今では、日本のインド料理店はもちろん、欧米やアジア各国でも「Butter Chicken」としてメニューに載る、最も有名なインドカレーの一つとなっています。

【体験談】インド料理店で迷ったら「色」で判断する

僕もインド料理店に通い始めた頃は、この二つの違いが全く分からず、メニューの前でいつも固まっていました。「どっちもクリーミーって書いてあるし…」と。

ある日、インド人の店員さんに思い切って「コルマとバターチキンの違いって何ですか?」と聞いてみたんです。

すると彼はにこやかにこう教えてくれました。「コルマは『ホワイト』、バターチキンは『レッド』。簡単でしょ?」

その一言で、僕の中のモヤモヤが全て晴れました。

確かに、チキンコルマはナッツとクリームがベースだから「白い」。バターチキンはトマトとバターがベースだから「赤い」。

その日、僕は「ホワイト」のチキンコルマを注文しました。出てきたのは本当に白っぽいカレーで、一口食べると、トマトの酸味が一切ない、ナッツとカルダモンの上品な香りが広がる、まさに「宮廷料理」という言葉がふさわしいリッチな味わいでした。

「トマトの酸味が欲しい気分ならバターチキン、ナッツのまろやかな甘みが欲しい気分ならチキンコルマ」。この明確な基準ができてから、インド料理店での楽しみが倍増しましたね。

チキンコルマとバターチキンに関するよくある質問

結局、どっちが甘口ですか?

どちらもインドカレーの中では非常に甘口でマイルドな部類に入ります。

チキンコルマはナッツや生クリームのまろやかな甘さが特徴です。バターチキンはトマトの甘みに加え、調理の過程で砂糖やハチミツが加えられることもあり、こちらも甘口です。辛いのが苦手な方でも、どちらも美味しく食べられることが多いですよ。

チキンティッカマサラとは違うのですか?

はい、バターチキンとよく似ていますが異なります。

チキンティッカマサラも、タンドールで焼いた鶏肉(チキンティッカ)を使いますが、バターチキンよりも多くのスパイス(特に玉ねぎやピーマンなど)を加えて炒め煮にし、よりスパイシーで濃厚なグレイビー(ソース)に仕上げることが多いです。発祥もイギリスという説が有力で、バターチキンとはルーツが異なります。

チキンコルマにトマトは絶対に入らないのですか?

伝統的な北インドの宮廷料理としてのコルマは、白く仕上げるためにトマトを使わないのが基本です。

ただし、現代のレシピや、地域(特に南インドのクルマなど)によっては、味のベースとしてトマトを加えることもあります。お店や家庭によってバリエーションがある、と考えるのが良いでしょう。

まとめ|クリーミーな甘口か、トマトのコクか

チキンコルマとバターチキンの違い、これでスッキリと使い分けられそうでしょうか。

最後に、二つのカレーの決定的な違いをまとめておきます。

  1. チキンコルマムガル宮廷料理がルーツ。ナッツとヨーグルトがベースの「白い」カレー。味わいは非常にマイルドでクリーミー。
  2. バターチキンデリーのレストラン発祥の現代料理。トマトとバターがベースの「赤い(オレンジ色)」カレー。トマトの酸味と甘みが特徴。
  3. 鶏肉の違い:バターチキンはタンドールで焼いた鶏肉を使うのが伝統的なスタイル。

どちらも辛さが控えめで、濃厚なコクを楽しめるインドカレーの傑作です。

ナッツの香りとまろやかさを楽しみたい気分なら「チキンコルマ」、トマトの酸味とバターのコクを味わいたい気分なら「バターチキン」。ぜひ、その日の気分で選んでみてくださいね。

当サイトでは、このほかにも様々な料理・メニューの違いについて詳しく解説しています。ぜひチェックしてみてください。