チャバタとフォカッチャ、どちらもイタリア生まれのおしゃれな食事パンですよね。
カフェやベーカリーで並んでいると、どちらも平たくて美味しそうで、何が違うんだろう?と迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。
この2つのパンの最大の違いは、チャバタが「水分量が非常に多く、気泡が粗い(もちもち食感)」パンであるのに対し、フォカッチャは「オリーブオイルをたっぷり使い、指で穴を開けて焼く(ふわふわ・しっとり食感)」パンである点です。
実は、チャバタは1980年代に生まれた比較的新しいパンで、フォカッチャは古代ローマ時代から続く非常に歴史の古いパンという、ルーツの違いもあります。
この記事を読めば、チャバタとフォカッチャの製法、食感、そして美味しい食べ方の違いが明確になり、パン屋さんで自信を持って選べるようになりますよ。
まずは、両者の特徴を一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | チャバタ(Ciabatta) | フォカッチャ(Focaccia) |
|---|---|---|
| 主な発祥地 | イタリア北部(ヴェネト州) | イタリア(リグーリア州など) |
| 歴史 | 新しい(1982年開発) | 古い(古代ローマ時代) |
| 意味(語源) | スリッパ、草履(形状から) | 火床、かまど(焼き方から) |
| 主な特徴 | 高加水(水分が非常に多い)、大きな気泡 | オリーブオイルを多用、指で穴を開ける |
| 食感 | 皮はパリッ、中はもちもち・しっとり | ふわふわ・しっとり(オイル感) |
| オリーブオイル | 生地に少量(または不使用) | 生地に練り込み、表面にも塗る |
| 主な食べ方 | サンドイッチ(パニーニ)、スープと | 食前パン、おやつ、サンドイッチ |
チャバタは「水分」、フォカッチャは「油分」が個性を決める鍵となっているんですね。それでは、この違いがどこから来るのか、それぞれのパンの定義を詳しく見ていきましょう。
チャバタとフォカッチャの定義・起源・発祥の違い
チャバタは1982年にイタリア北部でフランスのバゲットに対抗するために開発された「新しい」パンです。一方、フォカッチャは古代ローマ時代から食べられている「古い」歴史を持つパンです。
この2つのパン、実は親子ほどの年齢差があるんです。
チャバタ(Ciabatta)とは【1980年代生まれの新しいパン】
チャバタ(チャバッタとも)は、イタリア語で「スリッパ」や「草履(ぞうり)」を意味します。その名の通り、平たくて少し長い、スリッパのような形をしているのが特徴です。
意外かもしれませんが、チャバタの歴史は非常に浅く、1982年にイタリア北部ヴェネト州のパン職人によって開発されました。
当時、イタリアではフランスから輸入されるバゲットがサンドイッチ用パンとして大流行していました。それに危機感を覚えた職人が、「バゲットに対抗できるイタリア独自のパンを」という思いで生み出したのがチャバタだと言われています。比較的新しい、近代イタリアのパンなんですね。
フォカッチャ(Focaccia)とは【古代ローマが起源の古いパン】
フォカッチャの歴史は非常に古く、その起源は古代ローマ時代にまで遡ります。
名前の由来はラテン語の「Focus(フォクス=火床、かまど)」で、「かまどで焼いたもの」といった意味があります。ピザの原型とも言われていますね。
イタリア全土で食べられていますが、特に港町ジェノヴァがあるリグーリア州のものが有名です。地域によって厚みや食感が異なり、ジェノヴァ風は比較的ふんわり、ローマ風は薄くカリッと仕上げるなど、多様性があります。
主な材料と製法の決定的な違い
チャバタは、小麦粉に対する水の割合(加水率)が80%~100%と非常に高い「高加水」パンです。一方、フォカッチャは加水率も高めですが、それ以上に「オリーブオイル」を生地に練り込み、さらに表面にも塗って焼くことが最大の特徴です。
どちらも材料は小麦粉、水、酵母、塩とシンプルですが、その「配合」と「製法」が決定的な食感の違いを生み出します。
最大の違いは「水分量(加水率)」
チャバタをチャバタたらしめている最大の要因は、その異常なまでの水分量(高加水)です。
一般的なパンの加水率(小麦粉に対する水の割合)が60%~70%なのに対し、チャバタは80%~100%以上にもなります。小麦粉100gに対して水が100g入る、つまりドロドロの生地だということです。
この多量の水分が、焼成時に蒸発することで、生地の内部に大小さまざまの大きな気泡(すだち)を作ります。これが、チャバタ特有のもちもち・しっとり食感の源です。
フォカッチャも水分は多め(70%前後)ですが、チャバタほど極端ではありません。
もう一つの違いは「オリーブオイルの使い方」
フォカッチャの個性を決めるのは、間違いなく「オリーブオイル」です。
フォカッチャは、生地をこねる段階でオリーブオイルを練り込み、さらに焼き上げる直前、表面に指でくぼみをつけ、その穴にオリーブオイルを垂らしてから焼きます。
この製法により、オリーブオイルの豊かな風味がパン全体に行き渡り、生地はしっとり、表面は部分的にカリッとした食感に仕上がります。
一方、チャバタは生地にオリーブオイルを少量加えるレシピもありますが、基本的には加水による「もちもち感」が主役であり、オイルの風味はフォカッチャほど強くありません。
見た目・食感・味の違い
チャバタは断面の気泡が大きくボコボコしており、食感は「皮はパリッ、中はもちもち・しっとり」です。フォカッチャは表面に指で押した穴があり、食感は「全体的にふわふわ・しっとり」で、オリーブオイルの風味が豊かです。
見た目(チャバタ=気泡、フォカッチャ=指の穴)
パン屋さんで見分ける最も簡単なポイントは、表面と断面です。
- チャバタ: 全体に打ち粉(小麦粉)がまぶされて白っぽく、形は平たく無骨です。カットしてみると、大小さまざまな気泡がボコボコと空いているのが最大の特徴です。
- フォカッチャ: 表面はオリーブオイルでツヤツヤしており、指で押したくぼみの跡が均等に残っています。ローズマリーやオリーブの実、トマトなどがトッピングされていることも多いですね。
食感と味(チャバタ=もちもち、フォカッチャ=ふわふわ)
この2つは、食感が全く異なります。
チャバタは、高加水生地特有の「もちもち感」と「しっとり感」が非常に強いです。皮は薄くパリッとしていますが、中の生地は水分が多く、弾力があります。味わいは小麦粉本来の甘みが中心で、非常にシンプルです。
フォカッチャは、オリーブオイルがたっぷり含まれているため、「ふわふわ」で「しっとり」とした、リッチな食感です。表面はオイルで焼かれてカリッとしている部分もあります。味わいは、何よりもオリーブオイルと塩の風味がガツンと前に出てきます。
チャバタとフォカッチャの栄養・カロリーの違い
同じ重量で比較した場合、オリーブオイルを表面にも塗るフォカッチャの方が、チャバタよりも脂質が高く、その分カロリーも高くなる傾向があります。
どちらも主原料は小麦粉(炭水化物)ですが、栄養価で差が出るとすれば「脂質」です。
フォカッチャは、生地に練り込むだけでなく、仕上げに表面にもたっぷりとオリーブオイルをかけて焼きます。このオイルの分、チャバタに比べて脂質が高く、カロリーも高くなりがちです。
チャバタは、製法上オリーブオイルをほとんど使わないか、使っても少量です。そのため、脂質は低く、比較的ヘルシーと言えます。ただし、水分が多いために見た目よりも重く、食べ応えがあるため、食べ過ぎには注意が必要ですね。
食べ方と文化的背景の違い
チャバタは、そのもちもちした食感とシンプルな味わいから、具材を挟む「サンドイッチ(パニーニ)」に最適です。フォカッチャは、オリーブオイルの風味を活かして「食前パン」としてそのまま食べたり、ローズマリーなどを乗せておやつ感覚で食べたりします。
チャバタのおすすめの食べ方(サンドイッチ)
チャバタが開発された目的は「バゲットに対抗するサンドイッチ用のパン」でした。
そのもっちりとした生地は、具材の水分やソースを吸ってもベチャッとなりにくいという大きな利点があります。また、大きな気泡がソースをうまくキャッチしてくれます。
生ハム、チーズ、トマト、野菜などを挟んだサンドイッチに最適です。イタリア式のホットサンド「パニーニ」のパンとして使われることも非常に多いですね。
フォカッチャのおすすめの食べ方(そのまま・トッピング)
フォカッチャは、その豊かなオリーブオイルの風味を活かし、そのまま食前パンとして食べるのが定番です。メインディッシュのソースをつけて食べるのも美味しいですね。
また、生地にローズマリーやオリーブの実、ドライトマト、玉ねぎなどをトッピングして焼き上げ、おやつや軽食として食べることも一般的です。
もちろん、フォカッチャでサンドイッチを作ることもありますが、チャバタに比べるとパン自体の味がしっかりしている(オイルと塩味)のが特徴です。
体験談|パン屋でサンドイッチを選ぶときの僕の基準
僕もカフェやベーカリーでランチを選ぶとき、この2つのパンでよく迷います。
以前は「どっちも平たいイタリアのパン」くらいにしか思っていませんでしたが、違いを知ってからは明確な基準で選ぶようになりました。
僕の基準は、「挟まっている具材の水分量」です。
例えば、トマトスライスやレタス、ソースがたっぷり入ったサンドイッチを買う時。これがフォカッチャだと、パンが具材の水分を吸ってしまい、持ち帰る頃にはフォカッチャ特有の「ふわふわ感」が失われ、少しベチャッとした食感になってしまうことがありました。
その点、チャバタは高加水パンゆえか、もともとが「もちもち」しているので、具材の水分を吸っても食感の劣化が少ないんです。むしろ、ソースと生地が馴染んで美味しく感じます。
だから、トマトやソースが多い「ジューシーなサンドイッチ」が食べたい時はチャバタを。
逆に、生ハムとチーズだけ、あるいはローストビーフとルッコラだけ、といったシンプルな具材で、パン自体のオリーブオイルの風味も楽しみたい時はフォカッチャを選ぶようになりました。
この使い分け、なかなか便利なのでおすすめですよ。
チャバタとフォカッチャに関するよくある質問
チャバタとフォカッチャの違いについて、よくある質問をまとめました。
質問1:パニーニはチャバタと同じものですか?
回答: 違います。「パニーニ(Panini)」はイタリア語で「サンドイッチ」を意味する言葉です(単数形はパニーノ)。
チャバタは「パンの種類」、パニーニは「料理名」です。チャバタは、パニーニ(サンドイッチ)を作るためによく使われるパンの一つ、ということですね。
質問2:チャバタとフォカッチャ、ピザ生地の違いは何ですか?
回答: フォカッチャの生地はピザ生地に非常に近いです。どちらも小麦粉、水、酵母、塩を使い、オリーブオイルを加えて作ることが多いです。
大きな違いは、フォカッチャは指で穴を開けて生地(パン)そのものを味わうのに対し、ピザは薄く伸ばして具材やソースを乗せて焼く点です。また、チャバタは前述の通り、極端な高加水である点で、他の2つとは明確に異なります。
質問3:チャバタはなぜあんなに穴(気泡)だらけなんですか?
回答: それは、生地に含まれる水分量が非常に多い(高加水)からです。
生地中の多量の水分が、オーブンの高温で焼かれることによって一気に蒸発(気化)します。その水蒸気が生地を内側から押し上げようとする力で、大小さまざまな気泡(すだち)が生まれるのです。
まとめ|今日のランチはどっちのパンにする?
チャバタとフォカッチャの決定的な違い、もうお分かりですね。
- チャバタ: 高加水が生み出す「もちもち・しっとり」食感と大きな気泡が特徴。1980年代生まれの新しいパンで、サンドイッチに最適。
- フォカッチャ: オリーブオイルと指の穴が生み出す「ふわふわ・しっとり」食感が特徴。古代ローマ起源の古いパンで、そのまま食べるか軽食に。
どちらも魅力的なイタリアのパンですが、その個性は全く異なります。シンプルな小麦の味ともちもち感を味わいたいならチャバタ、オリーブオイルの豊かな香りとふわふわ感を味わいたいならフォカッチャ。
ぜひ、その日の気分や合わせる具材によって使い分けて、パン選びを楽しんでくださいね。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な料理・メニューの違いに関する記事を掲載しています。ぜひそちらもご覧ください。