カスタードクリームを作るとき、レシピによって「全卵」を使うものと「卵黄のみ」を使うものがあって、迷った経験はありませんか?
どちらも美味しいカスタードクリームになりますが、実は仕上がりに大きな違いが生まれます。
最大の違いは、卵黄のみで作るカスタードは「濃厚でなめらかな食感」になるのに対し、全卵(卵白を含む)で作ると「あっさりした味で弾力のある食感」に仕上がることです。
卵白の有無が、味、色、食感、そして作りやすさにまで影響するんですね。
この記事では、全卵カスタードと卵黄カスタードの具体的な違いから、シーン別の使い分け、保存方法まで詳しく解説します。もうレシピ選びで迷うことはありませんよ。
結論|カスタードクリームの「全卵」と「卵黄」の違いが一目でわかる比較表
カスタードクリーム作りに「卵黄」のみを使うと、濃厚でコクがあり、なめらかな口当たりになります。一方、「全卵」を使うと、卵白の影響で色が薄く、あっさりした味わいで弾力のある仕上がりになります。
まずは、両者の違いが一目でわかる比較表をご覧ください。作りたいお菓子に合わせてどちらを選ぶべきか、イメージしてみてください。
| 項目 | 全卵カスタード (卵白+卵黄) | 卵黄カスタード (卵黄のみ) |
|---|---|---|
| 味・風味 | あっさり、卵の風味は穏やか | 濃厚、まったりとしたコクと風味 |
| 食感・固さ | 弾力があり、固めの仕上がり | なめらかな口当たり、とろっとした食感 |
| 色(見た目) | 白っぽく、色が薄い | 鮮やかな黄色 |
| 作りやすさ | 卵白の影響で分離しやすい傾向がある | 卵黄の乳化力で分離しにくく、作りやすい |
| コスト | 卵を無駄なく使え、経済的 | 卵白が余るため、コストはやや割高 |
| おすすめの用途 | クリームパン、菓子パン、トライフル | シュークリーム、タルト、ミルフィーユ |
「全卵カスタード」と「卵黄カスタード」の定義・特徴
カスタードクリームは卵、牛乳、砂糖、小麦粉(またはコーンスターチ)を加熱して作るクリームです。使用する卵が「全卵」か「卵黄のみ」かで、その特性が大きく変わります。
カスタードクリーム(フランス語で「クレーム・パティシエール」)は、お菓子作りの基本となるクリームですよね。
基本材料は「卵・牛乳・砂糖・粉類(小麦粉やコーンスターチ)」で、これらを加熱してとろみをつけます。この「卵」の部分をどうするかが、最大の違いを生むポイントです。
全卵カスタードクリームとは?
全卵カスタードクリームは、その名の通り卵黄と卵白の両方(全卵)を使って作るカスタードクリームです。
卵白は成分の約90%が水分であり、加熱すると固まる(熱凝固性)タンパク質でできています。この卵白が加わることで、クリーム全体に弾力が生まれ、固めの食感になります。
また、卵黄に比べて脂肪分がなく風味が淡白なため、仕上がりもあっさりとした味わいになります。
卵黄カスタードクリームとは?
卵黄カスタードクリームは、卵黄のみを使い、卵白は加えないで作るカスタードクリームです。
卵黄は水分が約50%であるのに対し、脂質(約30%)とタンパク質(約15%)を豊富に含みます。
この脂質がクリームに濃厚なコクとまったりとした風味を与え、さらに卵黄に含まれる「レシチン」という成分の乳化作用(水と油を繋げる働き)により、非常になめらかな口当たりに仕上がります。
多くのお菓子屋さん(パティスリー)では、このリッチな風味と口溶けの良さから、卵黄のみのレシピが主流とされています。
味・食感・色(見た目)の決定的な違い
卵黄のみで作るカスタードは、色が濃く、濃厚でなめらかな「リッチ系」です。一方、全卵で作るカスタードは、色が薄く、弾力がありあっさりした「さっぱり系」に仕上がります。
両者を食べ比べると、味、食感、色のすべてが明確に異なります。どちらが良い・悪いではなく、完全に好みの問題であり、用途によって使い分けるべきものですね。
味と風味の違い
最も分かりやすいのが味の違いです。
- 全卵カスタード:卵白が加わることで全体の風味がマイルドになり、あっさりとした素朴な味わいになります。牛乳やバニラの香りが引き立ちやすく、甘さも控えめに感じられることが多いです。
- 卵黄カスタード:卵黄の脂質とコクが前面に出ます。濃厚でまったりとしたリッチな風味が特徴で、「卵の味」をしっかり感じたい場合に適しています。
食感と固さ(弾力)の違い
食感は、お菓子全体の印象を左右する重要なポイントです。
- 全卵カスタード:卵白のタンパク質が加熱によってしっかり固まるため、プリンのような弾力が生まれます。冷やすとムースやババロアに近い、少し「ぷるん」とした固めの食感になります。
- 卵黄カスタード:卵黄の乳化作用と適度な脂肪分により、非常になめらかで、とろりとした口当たりになります。デリケートでクリーミーな食感が特徴です。
色の違い
見た目の印象も大きく変わります。
- 全卵カスタード:卵白の水分で全体が薄まり、白っぽい、淡いクリーム色に仕上がります。
- 卵黄カスタード:卵黄に含まれるカロテノイド色素により、鮮やかで濃い黄色に仕上がります。見た目からも濃厚さが伝わってきますね。
製法・コスト・日持ちの違い
作りやすさでは、卵黄のみの方が分離しにくく失敗が少ないです。一方、コスト面では、卵を無駄なく使える全卵カスタードにメリットがあります。
実際に作るとなると、味や食感だけでなく、「作りやすさ」や「経済性」も気になるところです。
作りやすさと分離のリスク
カスタードクリーム作りの一番の失敗は、加熱中に卵が固まって「ダマ」になったり、水分と油分が「分離」したりすることではないでしょうか。
実は、この点で両者には差があります。
全卵カスタードは、卵白のタンパク質が卵黄よりも低い温度で固まり始めるため、火加減が難しく、分離しやすい傾向があります。
一方、卵黄カスタードは、卵黄の乳化作用がクリーム全体を安定させてくれるため、分離しにくく、なめらかに仕上げやすいのがメリットです。初心者の方には卵黄のみのレシピがおすすめかもしれませんね。
コストと材料の無駄
経済的な観点では、全卵カスタードに明確なメリットがあります。
全卵カスタードは、卵を丸ごと使うため、卵白が余らず、材料を無駄なく使い切れます。
卵黄カスタードは、必ず卵白が余ってしまいます。もちろん、余った卵白はメレンゲや他のお菓子(フィナンシェなど)に使えますが、カスタードクリームだけを作る場合は、コストが割高になると言えるでしょう。
保存と日持ちの違い
カスタードクリームは、卵と牛乳という生ものを加熱して作っているため、非常に傷みやすいデリケートなクリームです。全卵でも卵黄のみでも、日持ちは基本的に冷蔵庫で「当日中〜翌日」までと考えるのが安全です。
特に全卵(卵白)を使ったカスタードは、卵黄のみのものに比べて水分量が多いため、より傷みやすい傾向にあるとも言われます。どちらの場合も、作ったらすぐにバットなどに広げてラップを密着させ、氷水で急冷し、冷蔵庫で保存しましょう。
歴史・文化的背景|伝統的なのはどっち?
カスタードクリームの原型は古代ローマ時代から存在したと言われていますが、現在の「クレーム・パティシエール(お菓子屋のクリーム)」として確立されたのは17世紀頃のフランスです。
伝統的なフランス菓子の世界では、「卵黄のみ」を使うレシピが基本とされています。リッチな風味と濃厚なコク、なめらかな口当たりを重視するフランス菓子の精神が反映されていると言えますね。
一方、全卵カスタードは、家庭で手軽に作られたり、コストを抑えたいパン屋さんのクリームパンに使われたりするなど、より庶民的で手軽なクリームとして広まった側面があります。
体験談|シュークリームとパンで使い分ける、僕の失敗と発見
僕がお菓子作りにはまっていた頃、最初に挑戦したシュークリームでカスタードクリームを作った時の話です。
当時、僕は「卵白が余るのはもったいない」という理由だけで、深く考えずに「全卵」を使うレシピを選びました。加熱中、少し目を離した隙に鍋底のクリームが固まってしまい、焦って混ぜた結果、ボソボソとした口当たりの悪いクリームになってしまいました…。卵白は分離しやすいという特性を知らなかったんですね。
なんとか出来上がったものの、あっさりした味のクリームは、サクサクのシュー生地に負けてしまい、「なんだか物足りない」と感じたのを覚えています。
その失敗が悔しくて、次に「卵黄のみ」を使うレシピでリベンジしました。
すると、驚くほど簡単になめらかなクリームが炊き上がり、その鮮やかな黄色と濃厚な味わいに感動しました。シュークリームやタルトのような「クリームが主役」のお菓子には、絶対に卵黄カスタードだ、と確信した瞬間です。
では、全卵カスタードはダメなのか?というと、そんなことはありません。
後日、パン教室で習ったクリームパンには、全卵カスタードが使われていました。食べてみると、パン生地のシンプルな甘さと、全卵カスタードのあっさりした風味が絶妙にマッチしていたんです。卵黄だけだと濃厚すぎて、毎日食べるパンには少し重たいかもしれません。
この経験から、僕は「主役級の濃厚さ」が欲しい時は卵黄、「パンなどに合わせる名脇役」が欲しい時は全卵、と使い分けるようになりました。
カスタードクリームの全卵・卵黄に関するFAQ(よくある質問)
最後に、カスタードクリームの卵に関するよくある疑問にお答えします。
卵黄カスタードを作った後、卵白はどうすればいいですか?
余った卵白は、冷凍保存が可能です! 密閉容器に入れて冷凍しておき、メレンゲクッキー、ラング・ド・シャ、フィナンシェ、マカロンなど、卵白を大量に使うお菓子作りに活用するのがおすすめです。無駄なく使い切れますよ。
卵の大きさ(MサイズやLサイズ)で仕上がりは変わりますか?
はい、変わります。特に全卵使用の場合、Lサイズだと卵白の水分量が増えるため、よりあっさり、水っぽくなる可能性があります。卵黄のみの場合も、卵黄の大きさによって濃厚さが変わります。レシピで卵のサイズが指定されている場合は、できるだけ忠実に守るのが成功の秘訣です。
全卵カスタードが分離(ボソボソ)したら、もう直せませんか?
諦めるのはまだ早いです! 加熱しすぎて少し固まり(ダマ)ができてしまった場合は、熱いうちに目の細かいシノワ(裏ごし器)やザルで濾(こ)してみてください。なめらかさが復活することがあります。ただし、完全に分離して水分が出てしまった場合は、元に戻すのは難しいです…。
まとめ|全卵と卵黄、どちらのカスタードを選ぶべき?
全卵カスタードと卵黄カスタードの違い、明確になりましたでしょうか。
どちらもカスタードクリームであることに違いはありませんが、その個性は正反対とも言えます。作りたいお菓子や、求める味わいに合わせて使い分けることが大切ですね。
- 濃厚・なめらか・リッチな味わいが欲しい時(シュークリーム、タルトなど)は、卵黄カスタード
- あっさり・弾力・経済的に作りたい時(クリームパン、家庭のおやつなど)は、全卵カスタード
ぜひ、それぞれの特徴を活かして、お菓子作りを楽しんでみてください。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々なスイーツ・お菓子の違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
スポンサーリンク