欧風カレーと日本カレー、どちらも「カレーライス」としておなじみですが、その明確な違いをご存知ですか?
ホテルのレストランで食べるような濃厚なカレーと、家庭で食べるゴロゴロ野菜のカレー。同じ「カレー」でも、全く異なる魅力がありますよね。
この2つの最大の違いは、欧風カレーが「フォン(だし)やデミグラスソース、乳製品をベースにじっくり煮込んだリッチな味」であるのに対し、日本カレーは「カレールウを使い、家庭で手軽に作れるとろみの強い味」である点です。
実は「欧風カレー」も、インドからヨーロッパを経由して伝わったカレーが、日本で独自に発展した「日本の洋食カレー」の一ジャンルなんです。
この記事を読めば、その歴史的背景、調理法、味の違いが明確にわかり、カレーの奥深い世界をもっと楽しめるようになります。
まずは、結論の比較表から見ていきましょう。
| 項目 | 欧風カレー | 日本カレー(家庭のカレー) |
|---|---|---|
| 主な発祥地 | 日本(フランス料理の技法がベース) | 日本(イギリス海軍のカレーがベース) |
| 味のベース | フォン、デミグラスソース、ブイヨン | カレールウ(固形) |
| 主な具材 | 牛肉(煮込み用)、マッシュルーム、玉ねぎ(溶け込む) | 豚肉・鶏肉、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ(ゴロゴロ) |
| 調理法 | じっくり煮込む(ソース作りがメイン) | 具材を炒めてからルウと煮込む(手軽) |
| とろみ | やや強め(小麦粉、乳製品、野菜) | 非常に強い(カレールウの小麦粉) |
| 風味・味わい | 濃厚、リッチ、まろやか、深いコク | 家庭的、甘口〜辛口まで多様 |
| 付け合わせ | ライス、チャツネ、福神漬け、らっきょう | ライス、福神漬け、らっきょう |
驚くべきことに、どちらも発祥は「日本」なんですね。ただし、そのルーツとなる「ベース」が全く異なります。それでは、この違いがどのように生まれたのか、詳しく掘り下げていきましょう。
「欧風カレー」と「日本カレー」の定義・起源・発祥の違い
「日本カレー」は、明治時代にイギリス海軍経由で伝わった「とろみのあるカレー」が原型で、大正時代に「カレールウ」が発明され家庭に普及しました。「欧風カレー」は、それとは別に、1980年代頃の東京で、フランス料理の技法(フォン、デミグラスソース)を用いて作られた、比較的新しい「日本の洋食カレー」の一ジャンルです。
欧風カレーとは【フランス料理技法で洗練】
「欧風カレー」は、インドからイギリスを経由してヨーロッパ大陸に伝わったカレーが、フランス料理の高級なソース作りの技法と融合し、それをベースに日本で洗練されたカレーを指します。
その特徴は、フォン・ド・ヴォー(仔牛のだし)やデミグラスソース、ブイヨンといった西洋料理のだしをベースに、大量の玉ねぎや野菜、果物、そしてスパイスを加えてじっくりと煮込む点にあります。
仕上げにバターや生クリーム、時にはチーズなども加えられ、非常に濃厚でまろやか、コク深い味わいに仕上げられます。1980年代に東京・神保町の「ボンディ」などがこのスタイルを広め、「欧風カレー」というジャンルが確立されたと言われています。まさに「ホテルのレストランで食べるカレー」のイメージですね。
日本カレーとは【家庭で進化した国民食】
「日本カレー」は、私たちが一般的に「カレーライス」や「家庭のカレー」として認識しているものです。
そのルーツは、明治時代にあります。インドのスパイス料理がイギリスに伝わり、そこで小麦粉を使ってとろみをつけたシチューのような「カレード・シチュー」に変化しました。これがイギリス海軍の食事として採用され、日本の海軍にも伝わったのが始まりです。
当初は高級な洋食でしたが、大正時代に「カレールウ(固形ルウ)」が発明されたことで、調理が一気に手軽になりました。戦後、このカレールウが一般家庭に爆発的に普及し、「じゃがいも・玉ねぎ・ニンジン」という日本の食卓におなじみの野菜と共に煮込む、日本独自の「カレーライス」として国民食の地位を確立しました。
主な材料と調理法(ベース)の違い
欧風カレーは、フォン(だし)やデミグラスソースを一から作るため、調理に膨大な時間と手間がかかります。一方、日本カレーは、油脂、小麦粉、スパイスが一体となった「カレールウ」を使うため、誰でも簡単に、短時間で安定した味を作ることができます。
欧風カレーのベース(フォン・デミグラス)
欧風カレーの調理は、まさに西洋料理のソース作りそのものです。
牛骨やスジ肉、香味野菜を長時間煮込んで作るフォン(だし)や、それをさらに煮詰めて作るデミグラスソースが味の土台となります。あめ色になるまで炒めた玉ねぎや、すりおろした果物・野菜の甘みも加わります。
スパイスももちろん使いますが、それ以上にこの「ソース自体の深い旨味」が欧風カレーの味わいの核となっています。家庭で作るのが非常に難しいのは、このベース作りに膨大な手間がかかるからです。
日本カレーのベース(カレールウ)
日本カレーの最大の特徴は、「カレールウ」という発明品にあります。
カレールウは、牛脂や豚脂などの油脂と小麦粉を炒めたものに、カレー粉や調味料、旨味成分を加えて固形(またはフレーク状)にしたものです。
家庭では、肉や野菜を炒めて水で煮込み、最後にこのルウを割り入れて溶かすだけで、とろみと味付けが同時に完成します。この圧倒的な手軽さこそが、日本カレーが国民食となった最大の理由です。
味付け・とろみ・具材・見た目の違い
欧風カレーは、乳製品や果物による「リッチでまろやかなコク」が特徴で、具材は煮込まれてソースと一体化し、色は濃い茶色です。日本カレーは、ルウ由来の「強いとろみ」と「ゴロゴロした具材」が特徴で、色は黄色から茶色まで様々です。
味付けと風味(欧風=リッチ、日本=家庭的)
欧風カレーは、ベースのフォンやデミグラスソースに加え、仕上げにバター、生クリーム、牛乳、時には粉チーズなどをふんだんに使います。これにより、スパイスの刺激は抑えられ、非常に濃厚でリッチ、まろやかな味わいになります。チャツネ(果物のペースト)などで複雑な甘みを加えることも多いですね。
日本カレーの味は、使用するカレールウによって決まります。メーカー各社が研究を重ねた、スパイスの香りと旨味成分(アミノ酸など)がバランス良く配合されています。「甘口・中辛・辛口」と辛さが明確に分かれているのも日本カレーならではの特徴です。
とろみと具材(欧風=煮込む、日本=ゴロゴロ)
とろみ(粘度)にも明確な違いがあります。
欧風カレーは、煮込む過程で溶け出した野菜や小麦粉、乳製品によって、ポタージュのような自然で重厚なとろみがつきます。具材(特に牛肉)は、ソースの一部になるほどトロトロに煮込まれているか、マッシュルームなど風味付けのものが中心です。色はデミグラスソース由来の濃い茶色(こげ茶色)です。
日本カレーは、カレールウに含まれる小麦粉による「強いとろみ」が最大の特徴です。このとろみこそが、ご飯(日本米)とよく絡む秘訣です。具材は「じゃがいも・玉ねぎ・ニンジン・肉」が定番で、煮崩れる手前で火を止め、具材がゴロゴロと形を残しているのが日本の家庭的なスタイルですね。
栄養・カロリー・健康面の違い
欧風カレーは、フォン、デミグラスソース、バター、生クリーム、牛肉など、脂質を多く含む食材を多用するため、一般的にカロリーと脂質が非常に高くなる傾向があります。日本カレーもカレールウに脂質(牛脂、豚脂など)が多く含まれるため高カロリーですが、使う肉の部位(鶏むね肉など)や野菜の量で調整が可能です。
どちらも「カレーライス」として食べる場合、炭水化物が中心の食事になりますが、カロリーと脂質には注意が必要です。
欧風カレーは、その「リッチで濃厚なコク」の源泉が、フォン、デミグラスソース、バター、生クリーム、牛肉(バラ肉やスネ肉)といった脂質を多く含む食材にあります。そのため、外食メニューの中でもカロリーと脂質はトップクラスに高くなりがちです。
日本カレーも、カレールウの約半分は油脂と小麦粉でできているため、決して低カロリーではありません。しかし、家庭で作る場合は、使用する肉を鶏むね肉やササミに変えたり、野菜を多くしたりと、ヘルシーに調整することが可能です。
文化的背景と使われ方|「おふくろの味」と「贅沢な味」
日本カレーは、カレールウの普及により「家庭の味・おふくろの味」として定着し、給食やキャンプの定番でもある「国民食」です。一方、欧風カレーは、専門店やホテルで食べる「贅沢な外食」「ハレの日のごちそう」としての位置づけが強いです。
日本カレー(カレーライス)は、間違いなく日本の「国民食」です。「おふくろの味」ランキングで常に上位に入り、学校給食やキャンプ(飯盒炊さん)の定番メニューでもあります。ココ壱番屋に代表されるカレーチェーン店も、この日本カレーのスタイルをベースにしていますね。
欧風カレーは、同じ日本発祥のカレーでありながら、立ち位置が異なります。その調理の手間とコストから、家庭で作られることは稀であり、「専門店の味」「ホテルのカレー」「ちょっと贅沢な外食」という「ハレの日」のイメージが強い料理です。
体験談|ホテルで食べた欧風カレーと家のカレー
僕にとって、この2つのカレーの違いは、子供の頃の鮮烈な記憶と結びついています。
我が家で「カレー」といえば、当然、母が作る日本カレーでした。ジャガイモが少し煮崩れて、ニンジンは甘く、豚肉が入った、あの黄色っぽいとろみのあるカレーです。それが僕にとってのスタンダードでした。
ある日、家族で少し良いホテルのレストランに行った時、お子様ランチではなく、大人と同じ「ビーフカレー」を注文してもらったことがあります。
運ばれてきたのは、衝撃的なものでした。色は濃いこげ茶色で、ご飯とは別に、銀色の器(ソースポット)に入っています。そして何より、ジャガイモもニンジンも一切入っていないのです。
一口食べると、家のカレーの「スパイシーさ」とは全く違う、「バターの香り」と「何かが煮詰まったような深いコクと甘み」が口に広がりました。具はトロトロに煮込まれた牛肉だけ。「これが大人のカレーか!」と子供心に感動したのを覚えています。
大人になって、あれがフランス料理の技法(フォンやソース・リュ(小麦粉とバター))をベースにした「欧風カレー」であり、家のカレーとはルーツも製法も全く異なる料理だと知りました。
家のカレー(日本カレー)は「具材とルウを一緒に楽しむ煮込み料理」、欧風カレーは「完成されたソースをご飯と共に味わう料理」なのだと、僕は解釈しています。
焼き飯・チャーハン・ピラフに関するよくある質問
欧風カレーと日本カレーの違いについて、よくある質問をまとめました。
質問1:結局、欧風カレーは日本のカレーなんですか?
回答: はい、日本で独自の進化を遂げた「日本の洋食カレー」の一ジャンルです。
フランス料理の技法をベースにしていますが、フランス本国に「欧風カレー」という料理は基本的にありません。インドカレー、日本カレー(家庭風)、スープカレーなどと並ぶ、日本独自のカレーカテゴリの一つです。
質問2:インドカレーと欧風カレー、日本カレーの違いは?
回答: インドカレーは「とろみ」の付け方が根本的に違います。
インドカレーは、小麦粉(ルウ)を使わず、大量の玉ねぎやトマト、ヨーグルト、スパイスなどを煮込むことで自然なとろみをつけます(またはサラサラのまま)。欧風カレーと日本カレーは、どちらもイギリス経由で伝わった「小麦粉でとろみをつける」スタイルをベースにしている点で共通しています。
質問3:スープカレーとの違いは何ですか?
回答: スープカレーも「とろみ」が違います。
スープカレーは、日本カレーや欧風カレーとは異なり、小麦粉(ルウ)をほとんど使わないサラサラのスープ状のカレーです。ご飯とスープが別々に提供され、大きな具材が特徴の、札幌発祥の料理です。
まとめ|今日の気分はどれ?目的別おすすめの使い分け
欧風カレーと日本カレーの違い、明確にご理解いただけたでしょうか。
どちらも「日本のカレーライス」ですが、そのルーツと製法、そして味わいは全く異なるものでした。
- 欧風カレー: フランス料理の技法(フォン、デミグラス、乳製品)がベース。濃厚でリッチ、まろやかな「ソース」を味わう、贅沢な外食・専門店の味。
- 日本カレー: イギリス海軍のカレーと「カレールウ」がベース。とろみが強く、具材がゴロゴロした「煮込み料理」で、家庭の味・国民食。
この違いを知れば、その日の気分やシーンに合わせてカレーを選ぶ楽しみが広がります。
- 「今日は贅沢に、深いコクと旨味のソースに溺れたい」 → 欧風カレー
- 「ゴロゴロのジャガイモと豚肉、あの安心するいつもの味が食べたい」 → 日本カレー
日本のカレー文化の多様性は、農林水産省の「aff(あふ)」などの広報誌でも時折特集されています。ぜひ、奥深いカレーの世界を探求してみてくださいね。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な料理・メニューの違いに関する記事を掲載しています。ぜひそちらもご覧ください。