スーパーの鮮魚コーナーでよく見かける「銀鮭」と「紅鮭」。
どちらも人気の鮭ですが、値段も色も違うため、「お弁当にはどっち？」「塩焼きならどっちが美味しいの？」と迷ってしまうことはありませんか？
銀鮭と紅鮭の最も大きな違いは、「脂ノリ」と「身の締まり（旨味）」です。
銀鮭は養殖が主流で脂ノリが良くふっくらしており、紅鮭は天然物が主流で脂が少なく身が締まり、鮭本来の濃い旨味があります。
この記事を読めば、それぞれの特徴を深く理解でき、見た目の見分け方から、味、価格、栄養、そして最適な調理法まで、もう迷うことはありません。
まずは、両者の違いを一覧表で比較してみましょう。
銀鮭と紅鮭の違いとは？結論（比較一覧表）
銀鮭と紅鮭の最も大きな違いは「脂ノリ」と「身の締まり」です。銀鮭は養殖主流で脂ノリが良くふっくらしており、お弁当やムニエルなど加熱調理に向いています。一方、紅鮭は天然主流で脂が少なく身が締まり、鮭本来の濃い旨味があるため、塩焼きやスモークサーモンで美味しくいただけます。
まずは、銀鮭と紅鮭の核心的な違いを比較表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けは完璧ですね。
| 項目 | 銀鮭（ギンザケ） | 紅鮭（ベニザケ） |
|---|---|---|
| 主な流通 | 養殖（チリ産が多数） | 天然（ロシア・アラスカ産が多数） |
| 身の色 | 比較的淡いオレンジピンク | 鮮やかな濃い赤色（紅色） |
| 脂ノリ | 非常に多い | 少ない（あっさり） |
| 味・食感 | ふっくらと柔らかい、脂の甘みが強い | 身が締まっている、鮭本来の濃い旨味 |
| 価格 | 安価な傾向（安定供給） | 高価な傾向（天然物が主体） |
| 主な用途 | 塩焼き、ムニエル、お弁当、おにぎり | 塩鮭（特に辛口）、スモークサーモン、お茶漬け |
銀鮭と紅鮭の定義と生息地の違い
銀鮭と紅鮭は、どちらもサケ科サケ属（太平洋サケ属）の魚です。銀鮭はチリでの養殖が盛んで流通の大半を占めます。紅鮭は「サケの王様」とも呼ばれ、ロシアやアラスカ産の天然物が主流で、プランクトンを食べることで身が赤くなります。
どちらも「鮭」と呼ばれていますが、その生態や日本に入ってくるルートは大きく異なります。
銀鮭（ぎんざけ）とは？
銀鮭（学名：Oncorhynchus kisutch）は、その名の通り銀色に輝く美しい魚体が特徴です。「コーホーサーモン」とも呼ばれますね。
もともとは北太平洋に生息する天然魚ですが、現在日本で流通している銀鮭のほとんどは、チリで養殖されたものです。養殖技術が確立されており、脂ノリが良く、安定した品質と価格で供給されるため、日本の食卓で非常に人気があります。
紅鮭（べにざけ）とは？
紅鮭（学名：Oncorhynchus nerka）は、「ベニザケ」または「ソッカイサーモン」とも呼ばれます。産卵期になると体が真っ赤に染まることから、その名が付きました。
銀鮭とは対照的に、流通しているものの多くが天然物で、主な産地はロシアやアラスカ、カナダです。紅鮭はプランクトン（オキアミなど）を主食とするため、その色素（アスタキサンチン）が身に蓄積され、非常に鮮やかな赤色になるのが最大の特徴です。
【見た目】銀鮭と紅鮭の見分け方
最も簡単な見分け方は「身の色」です。紅鮭は色素アスタキサンチンにより、燃えるような鮮やかな赤色をしています。一方、銀鮭は比較的淡い、きれいなオレンジピンク色をしています。
スーパーの切り身でこの2つを見分けるのは、実はとても簡単です。
身の色（鮮やかな赤 vs 淡いオレンジ）
店頭で並んでいれば、その色の違いは一目瞭然でしょう。
- 紅鮭：身の色が非常に鮮やかで濃い赤色（紅色）をしています。これは、天然の餌であるオキアミなどに含まれるアスタキサンチンという赤い色素によるものです。「鮭は赤い」というイメージは、この紅鮭によるところが大きいですね。
- 銀鮭：紅鮭と比べると、色は淡く、きれいなオレンジピンク色をしています。養殖では餌を調整して色味をコントロールしていますが、天然の紅鮭の赤みには及びません。
また、銀鮭は脂が多いため、身の間に白い脂肪の筋（サシ）がくっきりと見えることが多いのも特徴です。
魚体の色（銀色 vs 産卵期の紅色）
もし丸ごと一匹の状態で見る機会があれば、魚体の色でも見分けられます。
- 銀鮭：海にいる間は、名前の通り美しい銀色をしています。
- 紅鮭：海にいる間は銀色ですが、産卵のために川を遡上する際、オスもメスも真っ赤な婚姻色に変わります。この姿が「紅鮭」の名の由来です。
ただし、日本で流通する紅鮭は、海で漁獲された銀色の状態のものですので、店頭で真っ赤な魚体の紅鮭を見かけることはありませんね。
【味・食感】銀鮭と紅鮭はどっちが美味しい？
美味しさは好みによります。こってりとした脂の旨味と、ふっくら柔らかい食感が好きなら「銀鮭」がおすすめです。反対に、脂が少なくあっさりしていながら、鮭本来の濃い旨味と締まった身を楽しみたいなら「紅鮭」が最適です。
「美味しい」の基準が「脂ノリ」なのか「旨味」なのかによって、選ぶべき鮭は変わってきます。
銀鮭の味：ふっくら柔らかく、脂ノリ抜群
銀鮭の最大の魅力は、その豊富な脂ノリです。養殖によって脂の量が調整されており、非常にこってりとした味わいが楽しめます。
加熱しても身が硬くなりにくく、ふっくらと柔らかい食感が保たれるため、特に日本の家庭料理で人気があります。脂の甘みとジューシーさを楽しみたい方には、銀鮭がぴったりでしょう。
紅鮭の味：身が締まり、鮭本来の濃い旨味
紅鮭は、天然の環境で育つため、脂は銀鮭に比べてずっと少ないです。その代わり、身がキュッと引き締まっており、鮭本来の風味が非常に濃厚です。
口に入れると、脂の甘みというよりは、鮭そのものの強い旨味と香りが感じられます。あっさりとした味わいと、しっかりとした歯ごたえを楽しみたい方には、紅鮭がおすすめです。昔ながらの「辛口の塩鮭」には、この紅鮭がよく使われますね。
【栄養・成分】銀鮭と紅鮭の違い
どちらもDHA、EPA、タンパク質が豊富です。大きな違いは、紅鮭は身の赤色の素であるアスタキサンチンの含有量が非常に多いことです。一方、銀鮭（養殖）は脂質が紅鮭の2倍以上含まれることが多く、カロリーも高めです。
どちらも栄養価の高い魚ですが、その成分には特徴的な違いがあります。文部科学省の「日本食品標準成分表（八訂）」を基に、可食部100gあたりの成分を比較してみましょう。
| 栄養素（100gあたり） | 銀鮭（養殖・生） | 紅鮭（天然・生） |
|---|---|---|
| カロリー | 188 kcal | 127 kcal |
| タンパク質 | 20.3 g | 22.5 g |
| 脂質 | 12.5 g | 4.5 g |
| DHA | 890 mg | 490 mg |
| EPA | 490 mg | 210 mg |
| アスタキサンチン | 微量 | 非常に多い |
（出典：日本食品標準成分表2020年版（八訂）ほか）
まず目につくのは脂質量の違いです。養殖の銀鮭は脂が豊富で、それに伴いDHAやEPAといった良質な脂質の含有量も多く、カロリーも高めです。
一方、紅鮭は低脂質・高タンパク質でヘルシーです。そして、表の数値には現れにくいですが、抗酸化作用が非常に強いアスタキサンチンの含有量が、他の鮭と比べて群を抜いて多いのが最大の特徴です。身の鮮やかな赤色は、その証拠なんですね。
【食べ方】おすすめの調理法・使い分け
脂が多く冷めても柔らかい銀鮭は、お弁当のおかず、おにぎりの具、ムニエル、ホイル焼きに最適です。味が濃く身が締まった紅鮭は、シンプルな塩焼き（特に辛口）、スモークサーモン、お茶漬けにすると、そのものの味を堪能できます。
それぞれの長所を活かすことで、料理の美味しさが格段にアップしますよ。
銀鮭に合う料理（加熱調理向き）
脂が多く、加熱してもパサつきにくいのが銀鮭の強みです。特に冷めても柔らかさを保ちやすいため、お弁当との相性は抜群です。
- お弁当のおかず・おにぎりの具：冷めてもふっくら感が続きます。
- ムニエル・ホイル焼き：バターや油との相性が良く、ジューシーに仕上がります。
- シチュー・グラタン：身が柔らかいので、煮込み料理にもよく合います。
- 甘口の塩焼き：脂の甘みを感じる、ふっくらとした塩焼きが好きな方におすすめです。
逆に、味が濃い煮付けなどにすると、脂が多すぎてくどく感じてしまうかもしれませんね。
紅鮭に合う料理（シンプルな調理向き）
身の味が濃く、旨味が強い紅鮭は、その素材の味を活かすシンプルな調理法が一番です。
- 塩焼き（特に辛口）：鮭本来の味をしっかり味わえます。ご飯のお供に最高です。
- スモークサーモン：身が締まっているので加工に適しており、鮮やかな赤色も美しく仕上がります。
- お茶漬け・混ぜごはん：濃い旨味がご飯や出汁によく合います。
- 石狩鍋：煮込んでも身崩れしにくく、良い出汁が出ます。
脂が少ないため、ムニエルやフライにすると少しパサつきを感じるかもしれません。
お弁当に入れるなら？スーパーでの選び方【体験談】
僕も毎日のようにお弁当を作りますが、鮭は本当に頼りになる食材ですよね。以前はあまり意識せず、安い方を選んでいましたが、この違いを知ってからは明確に使い分けています。
ある朝、特売だった紅鮭の辛口を焼いてお弁当に入れたことがあるんです。お昼に食べたところ、身が締まりすぎて少し硬く、塩味も強すぎてご飯が足りなくなってしまいました。もちろん、紅鮭の塩焼き自体は大好きなんですが、「冷めたお弁当」というシーンには合わなかったんですね。
その失敗以来、僕の中では「お弁当用＝銀鮭」というルールが確立しました。
銀鮭（特に甘口や中辛）は、朝焼いてお昼に食べても、ふっくら感が残っていて本当に美味しいです。脂のおかげで、冷めてもパサパサしないのが最大のメリットだと実感しています。
逆に、週末の夕食で「今日は美味しい塩鮭でご飯が食べたい！」という日は、迷わず紅鮭を選びます。皮目をパリッと焼いて、大根おろしを添える…。紅鮭の濃い旨味と塩気が、白いご飯に最高に合いますよね。
「冷めても美味しいふっくら感」を求めるなら銀鮭、「鮭本来の濃い旨味と塩気」を熱々のご飯と楽しむなら紅鮭。この使い分けで、スーパーでの鮭選びが格段に楽しくなりましたよ。
銀鮭と紅鮭の違いに関するよくある質問
質問1：お弁当やおにぎりの具には、銀鮭と紅鮭どっちがいいですか？
回答：断然「銀鮭」がおすすめです。
銀鮭は脂が多く、冷めても身がふっくらと柔らかい状態を保ちやすいからです。紅鮭は脂が少なく身が締まっているので、冷めると少し硬く感じることがありますね。
質問2：色が赤い方が美味しい鮭なんですか？
回答：一概にそうとは言えません。「美味しさ」の基準によりますね。
「紅鮭」の鮮やかな赤色はアスタキサンチンという色素で、これが鮭本来の濃い旨味の元にもなっています。一方、「銀鮭」の美味しさは脂ノリにあるので、赤みの濃さ＝脂ノリとは限りません。旨味重視なら紅鮭、脂ノリ重視なら銀鮭、と選ぶのが良いでしょう。
質問3：「トラウトサーモン」は銀鮭や紅鮭と違うのですか？
回答：はい、種類が違います。
トラウトサーモンは、実は「ニジマス」（淡水魚）を海で養殖したものです。銀鮭や紅鮭が「サケ属」なのに対し、ニジマスは生物学的には近い仲間ですが、厳密には異なります。味わいは銀鮭に似て脂ノリが良く、寿司ネタなど生食用としても人気がありますね。
まとめ：銀鮭と紅鮭 旨味の紅か、脂の銀か
銀鮭と紅鮭の違い、これでスッキリご理解いただけたかと思います。
どちらも美味しい鮭ですが、その個性は全く異なります。
- 銀鮭（ギンザケ）：【脂ノリ・ふっくら】が特徴。養殖が主流で価格は手頃。冷めても美味しいため、お弁当やムニエルに最適。
- 紅鮭（ベニザケ）：【濃い旨味・締まった身】が特徴。天然物が主流で価格は高め。鮭本来の味を楽しむ、塩焼き（辛口）やお茶漬けに最適。
「脂の銀鮭、旨味の紅鮭」と覚えておけば、もうスーパーで迷うことはありません。
農林水産省の解説ページなどでも、それぞれの特徴が紹介されています。ぜひ、食べるシーンや好みに合わせて、賢く使い分けてみてくださいね。
鮭・鱒の仲間には、他にも「サーモンと鮭の違い」など、興味深い違いがたくさんあります。ぜひ食材・素材カテゴリの記事もご覧ください。