「魚醤」と「ナンプラー」の違い!料理の味が激変する使い分け術

「魚醤」と「ナンプラー」、どちらも魚を発酵させた調味料ですが、実は「カテゴリの大きさ」が決定的に違います。

レシピに「ナンプラー」と書いてあるのに、手元にある日本の「しょっつる」を使ってしまい、思っていたエスニックな味にならなかった経験はありませんか?

この記事を読めば、それぞれの定義や特徴を正しく理解して、タイ料理から和食まで、旨味たっぷりの料理を自在に作れるようになります。

それでは、まずその決定的な違いから詳しく見ていきましょう。

結論|魚醤とナンプラーの違いを一言でまとめる

【要点】

「魚醤(ぎょしょう)」は魚介類を発酵させて作る液体調味料の「総称」です。「ナンプラー」はその一種で、「タイで作られる魚醤」を指します。つまり、ナンプラーは魚醤に含まれますが、すべての魚醤がナンプラーというわけではありません。

まず結論から言うと、この二つは「全体」と「一部」の関係にあります。

「魚醤」という大きなカテゴリの中に、「ナンプラー(タイ)」「ニョクマム(ベトナム)」「しょっつる(日本)」などが含まれているイメージですね。

「麺類」というカテゴリの中に「ラーメン」や「うどん」があるのと同じです。

最も重要な違いと関係性を一覧表にまとめましたので、まずはここを押さえておきましょう。

項目魚醤(総称)ナンプラー(タイの魚醤)
定義魚介類を塩漬け発酵させた調味料全般タイ発祥のカタクチイワシ等を原料とした魚醤
主な種類ナンプラー、ニョクマム、しょっつる、いしる等(商品名として多数存在)
主な原料魚介類(イワシ、イカ、ハタハタ等)+塩カタクチイワシ+塩(+砂糖)
味の傾向原料や産地により様々(旨味が強い)塩味が強く、独特の発酵臭とコクがある
主な用途各国の郷土料理、隠し味ガパオ、カレー、パッタイ、炒め物

僕も以前は「全部同じような味だろう」と思って、和風の煮物にナンプラーを入れてしまったことがあります。

結果は……出汁の香りがナンプラーの独特な匂いに負けてしまい、なんとも言えない無国籍料理になってしまいました。

魚醤は産地によって香りや塩気が全く異なるため、「作る料理の国籍に合わせて選ぶ」のが失敗しないコツです。

定義と分類の違い|「総称」か「タイの調味料」か

【要点】

魚醤は、魚介類のタンパク質が自身の酵素で分解されてできるアミノ酸豊富な液体調味料のことです。世界中に存在し、その土地で獲れる魚を原料としています。ナンプラーはその代表格であるタイの調味料です。

言葉の定義をもう少し掘り下げてみましょう。

「魚醤(ぎょしょう)」とは、魚介類を主な原料として、塩と共に漬け込み、自己消化・発酵させて得られる液体調味料のことです。

醤油が大豆を発酵させて作るのに対し、魚醤は魚を発酵させて作ります。

そのため、動物性タンパク質由来の濃厚な旨味(アミノ酸)が含まれているのが最大の特徴です。

一方、「ナンプラー(Nam Pla)」はタイ語で「魚(Pla)の水(Nam)」を意味します。

タイ料理には欠かせない調味料で、主にカタクチイワシなどの小魚を塩漬けにして熟成させ、上澄み液を濾過して作られます。

つまり、「ナンプラーは魚醤である」は正解ですが、「魚醤はナンプラーである」は間違い(他の魚醤も含むため)ということになりますね。

世界と日本の魚醤|ナンプラー・ニョクマム・しょっつる

【要点】

アジアには多くの魚醤が存在します。ベトナムの「ニョクマム」は発酵度合いがナンプラーと近く似ていますが、日本の「しょっつる(秋田)」や「いしる(石川)」は原料魚が異なり、和食に合う独自の風味を持っています。

魚醤の世界は広く、アジアを中心に様々な種類があります。

それぞれの違いを知っておくと、料理のレパートリーが広がりますよ。

ナンプラー(タイ)

世界で最も有名な魚醤の一つ。

塩味が強く、発酵特有の香りがはっきりしています。

エスニック料理全般に使われ、加熱すると香ばしさが増します。

ニョクマム(ベトナム)

ナンプラーと非常によく似ていますが、ベトナム料理に使われます。

ナンプラーよりも発酵期間が短いものが多く、魚の香りが少しマイルドで、塩味も若干控えめな傾向があると言われます(製品によります)。

フォーや生春巻きのつけダレ(ヌクチャム)に欠かせません。

しょっつる(日本・秋田県)

主にハタハタやイワシを原料とした日本の代表的な魚醤です。

「しょっつる鍋」が有名ですね。

ナンプラーに比べてクセが少なく、上品な旨味があり、白身魚や淡白な鍋料理によく合います。

いしる/よしる(日本・石川県)

能登半島で作られる魚醤で、イカの内臓を使った「いしる」と、イワシを使った「よしる」があります。

非常に濃厚な旨味があり、煮物や貝焼きなどの郷土料理に使われます。

これらは農林水産省の「うちの郷土料理」でも紹介されている伝統的な調味料です。

味・香り・塩分の違い|強烈なエスニック感vs和の旨味

【要点】

ナンプラーは「塩辛さ」と「独特の発酵臭(アンモニア臭に近い)」が強く、エスニック料理の輪郭を作ります。日本の魚醤は比較的マイルドで、醤油に近い感覚で使いやすく、素材の味を引き立てる「隠し味」としての側面が強いです。

味と香りの違いは、料理の仕上がりを左右する重要なポイントです。

ナンプラーは、蓋を開けた瞬間に「うっ」となるような強烈な発酵臭がします。

この香りが加熱することで食欲をそそる香ばしさに変わるのですが、慣れていない人には少しハードルが高いかもしれません。

味は塩味が鋭く、旨味も濃厚です。

一方、日本の魚醤(しょっつる等)は、ナンプラーに比べると香りが穏やかです。

もちろん魚の発酵臭はありますが、醤油や出汁の文化に馴染んでいる日本人にとっては受け入れやすい香りでしょう。

塩分濃度はいずれも高い(醤油と同等かそれ以上)ので、使いすぎには注意が必要です。

料理での使い分け・相性の良い食材|ガパオから鍋物まで

【要点】

ナンプラーはガパオライス、グリーンカレー、パッタイなどのタイ料理や、チャーハンの隠し味に最適です。日本の魚醤は鍋物、うどんの出汁、煮物、お吸い物など、和風の出汁と合わせる料理で真価を発揮します。

それぞれの個性を活かした使い分けをご紹介します。

ナンプラーが合う料理

エスニックな香りを立たせたい料理に使いましょう。

  • ガパオライス(バジル炒め)
  • グリーンカレー、トムヤムクン
  • パッタイ(タイ風焼きそば)
  • エスニック風チャーハン
  • 唐揚げの下味(意外と合います!)

日本の魚醤(しょっつる・いしる)が合う料理

和食に深みを出したい時に、醤油の一部を置き換えてみてください。

  • しょっつる鍋、海鮮鍋
  • お吸い物、うどんのつゆ(数滴垂らすだけでプロの味に)
  • 煮物、炊き込みご飯
  • パスタ(アンチョビの代わりとして)
  • ラーメンのスープ(隠し味として)

特に、日本の魚醤は「加熱」することで生臭さが消え、香ばしい旨味だけが残るので、鍋物や汁物には最適です。

栄養面・健康効果の違い|アミノ酸の宝庫

【要点】

魚醤は魚のタンパク質が分解されたアミノ酸(グルタミン酸やリジンなど)やペプチドを豊富に含んでおり、栄養価の高い調味料です。ただし、塩分濃度が20%近くなることもあるため、健康のためには少量を使うのが基本です。

魚醤はただしょっぱいだけではありません。

発酵の過程で生成されるアミノ酸が非常に豊富です。

これらは「旨味成分」であると同時に、体を作る大切な栄養素でもあります。

特に必須アミノ酸が多く含まれているのが特徴です。

また、タウリンやビタミン類、ミネラルも含まれています。

ただし、保存性を高めるために大量の塩を使っているため、塩分は非常に高いです。

健康効果を期待してガブガブ飲むものではなく、あくまで少量を効かせる調味料として活用しましょう。

減塩醤油の代わりに少し使うことで、塩分を抑えつつ満足感のある味付けにすることも可能です。

歴史・地域・文化的背景の違い|アジア全域に広がる発酵文化

【要点】

魚醤の文化は東南アジアから東アジアにかけて広く分布しています。暑い地域では魚の保存方法として塩漬け発酵が発達し、ナンプラーやニョクマムが生まれました。日本でも古くから醤(ひしお)の文化があり、地域ごとに独自の魚醤が受け継がれてきました。

魚醤のルーツは古く、アジア全域に広がる「魚の発酵文化」の一端を担っています。

タイやベトナムなどの高温多湿な地域では、魚を腐らせずに保存するために大量の塩を使う技術が発達しました。

そこから染み出した液体が、旨味たっぷりの調味料として定着したのです。

日本でも、万葉集の時代から「醤(ひしお)」と呼ばれる発酵調味料が存在していました。

醤油が普及する前は、魚醤がもっと身近な調味料だったと言われています。

現在、秋田や石川などで伝統的な魚醤が残っているのは、その土地の気候や獲れる魚(ハタハタやイカ)を無駄なく活用しようとした先人たちの知恵の結晶なんですね。

文化庁の食文化に関する資料でも、こうした地域固有の発酵食品の重要性が語られています。

体験談・ナンプラーで卵かけご飯を作ってみた結果

ナンプラー好きの知人から「卵かけご飯にかけると絶品だよ」と教わり、半信半疑で試してみたことがあります。

熱々のご飯に生卵を割り入れ、醤油の代わりにナンプラーを小さじ一杯。

恐る恐る食べてみると……これが驚くほど美味しいんです!

醤油のような「和」の安心感とは違いますが、卵のまろやかさがナンプラーの尖った塩気と香りを包み込み、濃厚な旨味爆弾に変わっていました。

少しごま油を足すと、さらに風味が良くなりました。

「これは新しい朝食の定番になるかも」と感動しましたね。

ただ、調子に乗って入れすぎると、部屋中がエスニックな香りになり、家族から「朝から何食べてるの?」と怪訝な顔をされたので、分量と換気には注意が必要です。

また、逆に「しょっつる」でガパオライスを作ってみたこともあります。

こちらは……悪くはないのですが、やはり「パンチ不足」を感じました。

優しすぎるというか、あのガツンとくる現地の味にはなりませんでした。

この経験から、「アレンジは可能だが、本場の味を求めるなら専用の魚醤を使うべき」ということを学びました。

FAQ(よくある質問)

Q. ナンプラーがない時、何で代用できますか?

A. 完全に同じ味にはなりませんが、「薄口醤油+レモン汁+鶏ガラスープの素」や、「オイスターソース+醤油」などで雰囲気を近づけることは可能です。アンチョビペーストを少し混ぜると、魚の発酵感が加わりよりリアルになります。

Q. 開封後の保存方法は?

A. ナンプラーや魚醤は塩分濃度が高いので常温でも腐りにくいですが、酸化して色が黒ずんだり風味が落ちたりします。開封後は冷蔵庫で保存し、なるべく早めに使い切ることをおすすめします。

Q. ナンプラーとニョクマムの違いは?

A. 基本的には同じ魚醤ですが、ナンプラー(タイ)の方が塩味が強く発酵臭もしっかりしている傾向があります。ニョクマム(ベトナム)は少し発酵期間が短く、マイルドなものが多いです。家庭料理レベルでは代用しても大きな問題はありません。

まとめ|料理に合わせて最適な一本を選んでみよう

ここまで魚醤とナンプラーの違いについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

最後に、それぞれの使い分けを改めて整理しておきます。

  • エスニック料理で本場の味と香りを出したいなら「ナンプラー」
  • 和食に深みを与え、上品な旨味を足したいなら「日本の魚醤(しょっつる等)」

この二つを使い分けることで、あなたの料理の幅はグッと広がります。

スーパーの調味料売り場に行ったら、ぜひ産地や原材料を見比べて、あなたの好みに合いそうな魚醤を手に取ってみてください。

いつもの料理に数滴垂らすだけで、驚くような美味しさに出会えるかもしれませんよ。

調味料や食材についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

調味料の違いまとめ|料理の味を決める基本の使い分け