きのこ売り場で、「ひらたけ」と「まいたけ」、どちらを選ぶか迷ったことはありませんか?
どちらも人気のきのこですが、見た目、食感、そして香りに明確な違いがあり、適した料理も異なります。
実はこの二つ、植物学的に全く異なる分類のきのこです。最大の違いは、ひらたけが滑らかで柔らかい食感を持つのに対し、まいたけはシャキシャキとした歯ごたえと強い香りを持つ点にあります。
この記事を読めば、ひらたけとまいたけの分類から、栄養価の違い、そして「まいたけを料理に使う際の注意点」まで、スッキリと理解できますよ。
それでは、まずこの二つの違いを比較表で見ていきましょう。
結論|「ひらたけ」と「まいたけ」の違いを一言でまとめる
「ひらたけ」と「まいたけ」の最も大きな違いは「食感」と「香り」です。ひらたけは滑らかで柔らかく、しっとりした食感で香りは穏やかです。一方、まいたけはシャキシャキ、コリコリとした歯ごたえがあり、非常に強い独特の芳香を持っています。植物学的な分類も全く異なります。
この二つの違いを、項目別に詳しく比較した一覧表がこちらです。
| 項目 | ひらたけ(平茸) | まいたけ(舞茸) |
|---|---|---|
| 植物分類 | ヒラタケ科 ヒラタケ属 | トンビマイタケ科 マイタケ属 |
| 見た目 | カサは平たい扇形、色は灰色~薄茶色 茎は短く、根元で束になっている | 小さなカサが多数重なり合う(サンゴ状) 色は黒褐色~茶褐色 |
| 主な食感 | 柔らかい、滑らか、しっとり | シャキシャキ、コリコリ、歯ごたえがある |
| 香り | 穏やか、クセがない | 非常に強い、独特の芳香 |
| 主な栄養素 | ビタミンB群、ナイアシン、食物繊維 | ビタミンD、β-グルカン(MD-fraction) |
| 調理時の注意点 | 特になし(火が通りやすい) | タンパク質分解酵素を含む(※後述) |
| 主な用途 | 鍋物、スープ、炒め物、パスタ | 炒め物、天ぷら、炊き込みご飯 |
「ひらたけ」と「まいたけ」の定義と植物学的な分類
ひらたけとまいたけは、名前は似ていますが植物学的には全くの別物です。ひらたけは「ヒラタケ科ヒラタケ属」、まいたけは「トンビマイタケ科マイタケ属」に分類されます。ひらたけは「しめじ」と混同されがちですが、本来は異なるきのこです。
ひらたけ(平茸)とは?
ひらたけ(学名: *Pleurotus ostreatus*)は、ヒラタケ科ヒラタケ属のきのこです。その名の通り、カサが平たい扇形をしているのが特徴で、英語では「Oyster Mushroom(牡蠣きのこ)」と呼ばれます。
日本では古くから食用にされてきましたが、天然ものは少なく、現在流通しているもののほとんどは菌床(きんしょう)栽培によるものです。
まいたけ(舞茸)とは?
まいたけ(学名: *Grifola frondosa*)は、トンビマイタケ科マイタケ属のきのこです。多数の小さなカサが重なり合って、サンゴや花のような大きな株を形成します。
「舞茸」という名前の由来は、見つけた人が舞い上がるほど喜んだから、あるいはその形が舞っているように見えるから、など諸説あります。天然ものは非常に希少で高価ですが、こちらも菌床栽培技術が確立され、一年中安定して供給されています。
「しめじ」との混同に注意
少しややこしい点として、「ひらたけ」と「しめじ」の混同があります。
かつてスーパーで「しめじ」として売られていたきのこの多くは、実は栽培された「ひらたけ」でした。しかし、現在「しめじ」として一般的に流通しているのは、「ブナシメジ」や「ブナピー」といった別の種類のきのこです。
本来の「ひらたけ」は、現在の「しめじ(ブナシメジ)」とは異なる、カサが大きく肉厚なきのこです。
見た目・食感・香りの違い
ひらたけはカサが大きく平たい扇形で、色は灰色がかった褐色、食感は滑らかで柔らかく、しっとりしています。香りは穏やかです。まいたけは、小さなカサが無数に集まった株状で、食感はシャキシャキ、コリコリと歯切れが良く、非常に強い芳香を持っています。
ひらたけ(平茸)
見た目
カサは直径5~10cmほどの平たい扇形や半円形をしています。色は灰色から薄い褐色です。茎は短く、根元で数本が束になって生えています。
食感・香り
食感は非常に柔らかく、しっとりとして滑らかです。「シコシコ」とした弾力もあります。香りは穏やかでクセがなく、他の食材の風味を邪魔しません。
まいたけ(舞茸)
見た目
根本の太い茎から、小さなカサがサンゴのように無数に分岐して重なり合い、大きな株(クラスター)を形成しています。カサの色は黒褐色や茶褐色で、縁は白っぽいことが多いです。
食感・香り
食感が最大の特徴です。「シャキシャキ」「コリコリ」とした歯切れの良さがあります。また、香りが非常に強く、加熱すると独特の芳醇な香りが立ち上ります。この香りがまいたけの旨味の源とも言われています。
栄養・成分・健康面の違い
どちらも低カロリーで食物繊維が豊富ですが、含まれる特徴的な栄養素が異なります。ひらたけはビタミンB群やナイアシンを多く含みます。まいたけは、免疫機能への関与が研究されている独自のβ-グルカン「MD-フラクション」や「MX-フラクション」を含む点が最大の特徴です。
どちらもヘルシーなきのこですが、注目すべき栄養素に違いがあります。
ひらたけ(平茸)
ビタミンB1、B2、ナイアシンといったビタミンB群を豊富に含んでいます。これらはエネルギー代謝を助ける働きがあるため、疲労回復などに役立つとされています。また、不溶性食物繊維も豊富です。
まいたけ(舞茸)
まいたけの最大の栄養的特徴は、「MD-フラクション」および「MX-フラクション」と呼ばれる、まいたけ特有のβ-グルカン(食物繊維の一種)を含むことです。これらは免疫機能のサポートや生活習慣病に関連する研究で注目されています。
また、きのこ類の中でもビタミンDの含有量が多く、カルシウムの吸収を助ける働きが期待できます。
使い方・料理での扱い方の違い
ひらたけは香りが穏やかで柔らかいため、鍋物やスープ、煮物など、他の食材の味を吸わせる料理に向いています。まいたけは香りと食感が強いため、天ぷらや炒め物、炊き込みご飯など、まいたけ自体を主役にする料理に最適です。
ひらたけ(平茸)のおすすめ調理
ひらたけは、その柔らかい食感とクセのない味わいを活かします。
- 鍋物・スープ:味が染み込みやすく、つるんとした食感が楽しめます。味噌汁やクリームスープにも合います。
- 炒め物:バター醤油炒めや野菜炒めなど。火が通りやすいのも特徴です。
- パスタ:クリームパスタや和風パスタの具材として。
まいたけ(舞茸)のおすすめ調理
まいたけは、その強い香りとシャキシャキした食感を活かします。
- 天ぷら:香りと食感が最も引き立ちます。
- 炊き込みご飯:まいたけから出る濃い出汁と香りがご飯に移り、絶品です。
- 炒め物:豚肉やバターとの相性が抜群。シンプルな味付けでも主役になります。
【まいたけの注意点】
まいたけには「プロテアーゼ」というタンパク質分解酵素が非常に多く含まれています。このため、生のまいたけを茶碗蒸しに入れると、卵が固まらなくなってしまいます。
また、肉と一緒に調理すると、この酵素が肉を柔らかくする効果があります(例:生のまいたけと牛肉を和えておく)。この酵素は加熱によって失活するため、茶碗蒸しにどうしても使いたい場合は、一度さっと茹でるなどの下処理が必要です。
旬・産地・保存・価格の違い
現在流通しているひらたけとまいたけは、そのほとんどが菌床栽培(工場栽培)であり、一年中安定して入手可能です。天然ものの旬はどちらも秋ですが、市場に出回ることは稀です。どちらも水分に弱いため、冷蔵庫で保存し、早めに使い切るのが基本です。
旬と栽培
かつては天然ものが秋(9月~10月頃)の味覚でしたが、現在スーパーに並ぶひらたけとまいたけは、ほぼ100%が菌床栽培によるものです。そのため、特定の旬はなく、一年を通じて安定した品質と価格で手に入ります。
主な生産地は、どちらも新潟県や長野県、静岡県など、きのこ栽培が盛んな地域です。
保存方法
どちらも水分に弱く、傷みやすいきのこです。水で洗わずに(汚れはキッチンペーパーで拭き取る)、購入したパックのままか、キッチンペーパーで包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。
特にまいたけは冷凍保存に非常に向いています。冷凍することで細胞壁が壊れ、旨味成分が出やすくなると言われています。使いやすい大きさにほぐして冷凍保存袋に入れ、調理する際は解凍せず凍ったまま加熱するのが美味しく食べるコツです。ひらたけも同様に冷凍保存が可能です。
価格と入手性
どちらも栽培技術が確立されているため、非常に安価で安定して手に入ります。スーパーでは1パック100円前後で売られることも多く、家計の強い味方ですね。(天然のまいたけは、非常に高価で「幻のきのこ」と呼ばれることもあります。)
体験談|鍋料理と炒め物での食感の違い
僕にとって、ひらたけとまいたけは使い分けが明確なきのこです。
寒い季節の「鍋料理」や「すき焼き」には、絶対に「ひらたけ」(またはブナシメジ)を選びます。ひらたけは、煮込むほどに他の具材や出汁の旨味をスポンジのように吸い込んで、柔らかく、つるんとした食感になります。主張しすぎず、全体の調和を保ってくれる名脇役だと思っています。
以前、鍋にまいたけを入れてみたことがあるのですが、まいたけの香りが強すぎて、出汁の繊細な風味が全て「まいたけ味」になってしまった苦い経験があります…
逆に、「きのこのバター醤油炒め」を作るときは、「まいたけ」が主役です。フライパンでまいたけを炒め始めると、あの食欲をそそる芳醇な香りが一気に立ち上ります。ひらたけではこの香りは絶対に出せません。そして、火を通しても失われない「シャキシャキ」「コリコリ」とした歯ごたえ。これぞ「まいたけ」を食べている満足感です。
「柔らかく味を吸う」ひらたけと、「硬く香りを放つ」まいたけ。この食感と香りの違いを意識するだけで、料理の仕上がりが格段に変わりますね。
ひらたけとまいたけに関するよくある質問
Q1. ひらたけとまいたけ、どっちが栄養がありますか?
A1. どちらも低カロリーで食物繊維が豊富な健康食材です。栄養の方向性が異なり、ひらたけはビタミンB群が、まいたけはビタミンDや特有のβ-グルカン(MD-フラクション)が豊富です。目的に合わせて選ぶと良いでしょう。
Q2. 茶碗蒸しにまいたけを入れたら固まりませんでした。なぜですか?
A2. それは、まいたけに含まれる「プロテアーゼ」というタンパク質分解酵素が、卵のタンパク質を分解してしまったためです。この酵素は加熱に弱いため、まいたけを茶碗蒸しに使う場合は、一度沸騰したお湯で2~3分下茹でしてから使うと固まりますよ。ひらたけにはこの作用はほとんどありません。
Q3. ひらたけもまいたけも、生で食べられますか?
A3. いいえ、どちらも生食はできません。きのこ類は消化が悪く、加熱することで旨味や香りも増しますので、必ず火を通して食べてください。
まとめ|「ひらたけ」と「まいたけ」目的別おすすめの選び方
「ひらたけ」と「まいたけ」、食感も香りも全く異なる、個性豊かなきのこであることがお分かりいただけたでしょうか。
最後に、目的別にどちらを選ぶべきかをまとめます。
- 鍋物、スープ、煮物など、出汁や他の食材の旨味を吸わせて楽しみたい場合
→ ひらたけ(平茸)が最適です。柔らかく滑らかな食感が楽しめます。 - 天ぷら、炒め物、炊き込みご飯など、きのこ自体の香りと食感を主役にしたい場合
→ まいたけ(舞茸)が最適です。シャキシャキの歯ごたえと芳醇な香りが引き立ちます。 - 肉を柔らかくする下ごしらえに使いたい場合
→ まいたけ(舞茸)のタンパク質分解酵素が役立ちます。
どちらも安価で手に入りやすい便利な食材です。それぞれの個性を活かして、日々の料理に使い分けてみてくださいね。
きのこ類のさらに詳しい情報については、農林水産省の「きのこ類に関する情報」なども参考になります。
当サイト「違いラボ」では、他にも「食材・素材の違い」について詳しく解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。