スーパーの棚に並ぶ「本つゆ」と「めんつゆ」。どちらも万能調味料として便利ですが、実は「商品名か総称か」と「濃縮倍率」が決定的に違います。
レシピに「めんつゆ(3倍濃縮)」と書いてあるのに、手元の「本つゆ(4倍濃縮)」を同じ分量で入れてしまい、料理が塩辛くなってしまった経験はありませんか?
この記事を読めば、それぞれの特徴を正しく理解して、煮物や麺料理の味付けをピタリと決められるようになります。
それでは、まずその決定的な違いから詳しく見ていきましょう。
結論|本つゆとめんつゆの違いを一言でまとめる
「本つゆ」はキッコーマンが販売する「4倍濃縮」の特定商品名であり、濃厚なだしと醤油感が特徴です。一方、「めんつゆ」はだしと醤油などを合わせた調味料の総称で、一般的には「2倍〜3倍濃縮」のものが多く流通しています。
まず結論から言うと、この二つは比較するレイヤーが少し異なります。
「めんつゆ」が「スポーツカー」というカテゴリー名だとしたら、「本つゆ」は「ポルシェ」という具体的な車種名のような関係です。
ただし、一般的に「めんつゆ」として売られている他社製品(ヤマキやミツカンなど)と、キッコーマンの「本つゆ」を比較すると、明確なスペックの違いがあります。
最も重要な違いを一覧表にまとめましたので、まずはここを押さえておきましょう。
| 項目 | 本つゆ(キッコーマン) | 一般的なめんつゆ |
|---|---|---|
| 定義 | キッコーマンの商品名 | 調味料のカテゴリー名 |
| 濃縮倍率 | 基本的に4倍濃縮 | 2倍、3倍、ストレートが多い |
| だしの特徴 | かつお・宗田かつお・いわし・まぐろ | かつお節、昆布がメイン |
| 味の傾向 | 醤油感とだしのコクが強い | 甘みと香りのバランス型 |
| おすすめ料理 | 煮物、炒め物、丼もの | そうめん、うどん、天つゆ |
僕も以前は「どっちも同じだし醤油だろう」と思って適当に使っていたのですが、肉じゃがを作った時に「本つゆ」をドボドボ入れたら、味が濃すぎて驚いたことがあります。
これは「本つゆ」が一般的なめんつゆよりも「濃縮倍率が高い(4倍)」からなんですね。
つまり、「少量で味が決まるコスパの本つゆ、そのまま手軽に使えるめんつゆ」と覚えておくと、買い物で迷わなくなりますよ。
定義の違い|「キッコーマンの商品名」か「調味料の総称」か
「本つゆ」はキッコーマン食品株式会社の登録商標であり、固有の商品ブランドです。「めんつゆ」は、だし、醤油、みりん、砂糖などを調合した液体調味料全般を指す一般名称です。
まず言葉の定義をはっきりさせておきましょう。
「めんつゆ」は、うどんやそばを食べるためのつゆ、またはそれを濃縮した調味料全般を指す言葉です。
ヤマキの「めんつゆ」、ミツカンの「追いがつおつゆ」、にんべんの「つゆの素」など、各社から様々な「めんつゆ」が発売されています。
一方、「本つゆ」というのは、醤油メーカー大手であるキッコーマンの商品名(濃いだし 本つゆ)です。
あまりにも有名で普及しているため、「ホッチキス」や「宅急便」のように一般名詞のように使われがちですが、あくまで一つの商品ブランドなんですね。
ですから、「本つゆとめんつゆの違い」というのは、実質的には「キッコーマンの本つゆと、その他の一般的なめんつゆの違い」を比較することになります。
濃縮倍率の違い|「4倍」の濃さとコスパの秘密
「本つゆ」の最大の特徴は「4倍濃縮」である点です。一般的なめんつゆ(2倍・3倍濃縮)に比べて少ない量で同じ味が出せるため、1本あたりの使用回数が多く、コストパフォーマンスに優れています。
スーパーで成分表示を見ると分かりますが、濃縮倍率が違います。
一般的なめんつゆは「2倍濃縮」や「3倍濃縮」が主流です。
これは、麺のつけつゆとして使う時に、水で2倍(つゆ1:水1)や3倍(つゆ1:水2)に薄めるという意味ですね。
対して、キッコーマンの「本つゆ」は「4倍濃縮」です。
つけつゆなら「つゆ1:水3〜4」で薄めます。
これはどういうことかと言うと、「本つゆの方が濃い」ということです。
同じ容量のボトルを買った場合、4倍濃縮の本つゆの方が、よりたくさんの料理を作ることができます。
買い物袋も重くなりませんし、収納スペースも取らない。
非常に合理的で経済的な設計になっているのが「本つゆ」の強みですね。
味・だしの違い|4種のだしvsかつおの香り
「本つゆ」はかつお・宗田かつお・いわし・まぐろの4種のだしを合わせ、醤油のコクを引き立たせた濃厚な味わいです。一般的な「めんつゆ」は、かつお一番だしなどの香りを重視し、麺に絡んだ時にふわっと香る上品さを目指しているものが多いです。
味の方向性にもメーカーのこだわりが出ています。
キッコーマンの「本つゆ」は、醤油メーカーらしく「醤油のキレとだしの厚み」が特徴です。
公式情報によると、「かつお節」「宗田かつお節」「いわし節」「まぐろ節」の4種類の魚介だしを使用しています。
これにより、煮物や炒め物に使っても味がぼやけず、しっかりとしたコクが出ます。
一方、ヤマキなどの「めんつゆ」は、削り節メーカーとしての強みを活かし、「だしの香り」を最優先にしている傾向があります。
蓋を開けた瞬間の華やかなかつおの香りは、冷たいそうめんやざるそばを食べる時に最高のアクセントになります。
「本つゆ」は料理のベースとしての力強さ、「めんつゆ」は食材を引き立てる香りの良さ、という違いがあると言えるでしょう。
料理での使い分け|煮物に強い本つゆ、麺に合うめんつゆ
濃厚で水っぽくならない「本つゆ」は、煮物、炒め物、丼ものなど、味をしっかり染み込ませたい料理に最適です。香りが良く希釈しやすい「めんつゆ」は、そうめん、うどん、おひたしなど、だしの風味をダイレクトに味わう料理に向いています。
それぞれの特徴を活かした使い分けをご紹介します。
本つゆが合う料理:しっかり味付け系
本つゆは濃度が高いので、水分をあまり入れたくない料理に最適です。
- 肉じゃが、筑前煮(少ない調味料で味が決まる)
- 親子丼、カツ丼(割下が水っぽくならない)
- 野菜炒め、きんぴらごぼう(仕上げに回しかけるだけで味が絡む)
- 炊き込みご飯(お米と一緒に炊いても味が薄まらない)
醤油の代わりに使う感覚で、旨みをプラスできるのが便利ですね。
めんつゆが合う料理:さっぱり・香り系
めんつゆはだしの香りが豊かで甘みもあるので、素材の味を活かす料理に向いています。
- そうめん、ざるそば、うどん(つけつゆとして最高)
- おひたし、冷奴(そのままかけても辛すぎない)
- 天つゆ(大根おろしと合う)
- 和風パスタ(だしの風味が麺に合う)
希釈倍率が低い分、ドボドボと使いやすく、味の微調整もしやすいのがメリットです。
塩分・栄養面の違い|濃縮度が高いぶん塩分も高め?
100mlあたりの塩分相当量は、4倍濃縮の「本つゆ」の方が高くなります。しかし、希釈して使う場合(実際に口にする状態)の塩分濃度は、めんつゆも本つゆも大きな差はありません。使用量に注意すればどちらも問題ありません。
健康を気にする方にとって、塩分は気になりますよね。
製品にもよりますが、原液100mlあたりの食塩相当量は以下のイメージです。
- 本つゆ(4倍濃縮):約10〜11g
- めんつゆ(2倍濃縮):約7〜8g
- めんつゆ(3倍濃縮):約8〜9g
一見、本つゆの方が塩分が高いように見えます。
しかし、本つゆは「薄めて使う」ことが前提です。
例えば、つけつゆとして食べる時の塩分濃度(約3%前後)に調整すれば、最終的に摂取する塩分量はどちらも変わりません。
注意すべきは、「本つゆをめんつゆ(ストレートや2倍)の感覚でドバっと使ってしまうこと」です。
これさえ気をつければ、濃縮度が高いことはむしろ「減塩」の調整がしやすいというメリットにもなりますよ。
歴史・開発背景|濃縮つゆの進化と容器の革命
かつては家庭でだしを取るのが当たり前でしたが、高度経済成長期に手軽な「つゆの素」が登場しました。キッコーマンは濃縮技術を進化させ、さらに「押し出し式ボトル(くびれボトル)」を採用することで、使いやすさと鮮度保持に革命を起こしました。
少し歴史の話をしましょう。
昔はどこの家庭でも、かつお節を削ってだしを取っていました。
それが昭和の高度経済成長期に、にんべんなどが「つゆの素」を発売し、一気に家庭に普及しました。
「だしを取る手間がいらない」というのは画期的だったんですね。
その後、各社が競って開発を進める中、キッコーマンは「本つゆ」で「高濃縮」という分野を切り開きました。
さらに近年では、醤油でもおなじみの「やわらか密封ボトル」や、持ちやすい「くびれボトル」を採用しています。
これにより、開栓後も常温保存が可能になったり(一部商品)、一滴ずつ調節して出せるようになったりと、使い勝手が劇的に向上しました。
中身だけでなく、容器の進化も「本つゆ」が選ばれる理由の一つなんですね。
体験談・親子丼を作って味の深みを比較してみた
僕も実際に、休日のランチで親子丼の作り比べをしてみました。
まずは、いつも使っている「2倍濃縮のめんつゆ」で作ったバージョン。
これはこれで美味しいです。
だしの香りがふわっとして、卵の甘みを引き立ててくれます。
ただ、ご飯にかけると少し味が薄まるというか、つゆだくにすると水っぽくなってしまうのが悩みでした。
次に、「キッコーマン 濃いだし 本つゆ」で作ったバージョン。
こちらは希釈の計算が必要なので、少し慎重に水を足しました。
食べてみると、違いは歴然。
醤油のコクがしっかりしていて、鶏肉の旨みに負けない力強さがあります。
ご飯に染みたつゆも濃厚で、まるでお蕎麦屋さんの親子丼のような「プロっぽい味」になりました。
4種のだしを使っているせいか、味に奥行きがあるんですよね。
ただ、うっかり入れすぎるとリカバリーが大変そうだな、とも感じました。
この経験から、「がっつりご飯を食べたい時は本つゆ、さらっと軽く食べたい時はめんつゆ」という使い分けをするようになりました。
FAQ(よくある質問)
Q. レシピの「めんつゆ(3倍濃縮)」を「本つゆ(4倍濃縮)」で代用するには?
A. 本つゆの量をレシピの「3/4(0.75倍)」に減らして使ってください。例えば、レシピで「めんつゆ大さじ4」となっていたら、「本つゆ大さじ3」にするとだいたい同じ濃さになります。水で調整するのもおすすめです。
Q. 本つゆは開封後、常温保存できますか?
A. キッコーマンの「密封ボトル(やわらかいボトル)」タイプなら、開封後も常温で90日間鮮度を保てるとされています。しかし、従来のペットボトルタイプや他社のめんつゆは、開封後は必ず冷蔵庫で保存し、早めに使い切るのが基本です。パッケージの表示を必ず確認しましょう。
Q. 麺を食べる時、ストレートのめんつゆと希釈タイプ、どっちが美味しい?
A. 味のクオリティだけで言えば、一般的に「ストレートタイプ」の方が香りが良く美味しいとされています。濃縮の加熱工程がない分、だしの風味が飛びにくいからです。ただ、コスパや保管場所を考えると希釈タイプ(本つゆ含む)が便利なので、普段は希釈タイプ、特別な日はストレートと使い分けるのが良いでしょう。
まとめ|用途に合わせて賢く選ぼう
ここまで本つゆとめんつゆの違いについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
最後に、それぞれの使い分けを改めて整理しておきます。
- 煮物や丼ものなど、しっかり味を決めたい料理には「本つゆ(4倍)」
- そうめんやうどんなど、だしの香りを楽しみながらたっぷり使いたい時は「めんつゆ(2倍・3倍)」
この法則さえ覚えておけば、毎日の料理がもっとスムーズに、そして美味しくなるはずです。
ぜひ、あなたのキッチンのスペースや料理の好みに合わせて、最適な一本を選んでみてくださいね。
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