お寿司屋さんや居酒屋で「つぶ貝」のコリコリした食感を楽しむのは最高ですよね。
そんな中、「石垣貝」という名前を聞いて、つぶ貝の仲間かな?と想像したことはありませんか。
結論から言うと、この二つは全くの別物です。「つぶ貝」は巻貝(カタツムリのような螺旋状の貝)の仲間であるのに対し、「石垣貝」は二枚貝(ホタテやアサリのような2枚の貝殻を持つ貝)なんです。
名前の響きから受ける印象とは裏腹に、生物学的な分類からして全く異なるこの二つの貝。この記事では、その決定的な違いから、味、食感、そして「つぶ貝」を食べる際に絶対に知っておくべき注意点まで、詳しく比較解説します。
結論|石垣貝とつぶ貝の違いを一覧表で確認
「つぶ貝」と「石垣貝」の最大の違いは、「つぶ貝」が巻貝(腹足類)の総称であるのに対し、「石垣貝」が二枚貝(斧足類)である「エゾイシカゲガイ」の市場名である点です。食感も異なり、つぶ貝は「ゴリゴリ・コリコリ」、石垣貝は「シャキシャキ・サクサク」と表現されます。
まずは、両者の核心的な違いを一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | つぶ貝(Tsubu-gai) | 石垣貝(Ishigaki-gai) |
|---|---|---|
| 分類 | 巻貝(腹足類)の総称 (エゾバイ科など) | 二枚貝(斧足類) (エゾイシカゲガイの市場名) |
| 形状 | 螺旋状の貝殻 | 扇形に近い2枚の貝殻 |
| 主な食用部位 | 足(筋肉) | 足(斧足) |
| 食感 | ゴリゴリ、コリコリ(非常に硬い) | シャキシャキ、サクサク(歯切れが良い) |
| 味わい | 強い磯の香り、噛むほどに出る甘み | デリケートな甘み、クセがない |
| 毒性の注意 | 唾液腺に毒(テトラミン)あり(要除去) | 特有の毒はない(一般的な貝毒リスクのみ) |
| 主な産地 | 北海道、東北など(天然物が多い) | 岩手県、宮城県など(養殖物が多い) |
| 主な用途 | 刺身、寿司、煮付け、焼き物 | 刺身、寿司(生食がメイン) |
このように、「貝」という点以外、共通点がほとんどないことがお分かりいただけるかと思います。
石垣貝とつぶ貝の定義と分類の違い(巻貝 vs 二枚貝)
「つぶ貝」は、エゾバイ科などに属する複数の巻貝の「市場での総称」です。一方、「石垣貝」は、ザルガイ科の二枚貝である「エゾイシカゲガイ」の「市場名(ブランド名)」であり、沖縄の石垣島とは関係ありません。
つぶ貝(Tsubu-gai)とは
「つぶ貝」は、生物学的な分類名ではなく、市場で流通する際の「総称」です。一般的に、エゾバイ科に属する中型から大型の巻貝を指します。
代表的なものには「マツブ(エゾボラ)」、「アワビツブ(ヒメエゾボラ)」、「灯台つぶ(クビレバイ)」など、多くの種類が含まれます。これらは主に北海道や東北、日本海側の冷たい海に生息しています。
共通しているのは、あの独特の「ゴリゴリ」「コリコリ」とした硬い食感と、噛むほどに広がる磯の香りと甘みです。
石垣貝(Ishigaki-gai)とは
一方、「石垣貝(イシガキガイ)」も生物学的な分類名ではありません。これは、ザルガイ科の二枚貝である「エゾイシカゲガイ」という貝の市場名(商品名)です。
名前から沖縄県の「石垣島」を連想しがちですが、産地は全く逆で、主に岩手県や宮城県といった三陸地方で養殖されています。名前の由来は、そのゴツゴツした硬い貝殻が「石垣」を思わせることから来ていると言われています。
トリガイ(鳥貝)に似た甘みと食感を持つことから、「白トリガイ」などと呼ばれることもあります。
結論:全くの別物!「巻貝」と「二枚貝」
つまり、この二つの違いは「リンゴとミカン」といったレベルではなく、「巻貝(カタツムリやサザエの仲間)」と「二枚貝(アサリやホタテの仲間)」という、生物として根本的な構造の違いだったのです。
「つぶ貝」は貝殻が一つでグルグルと巻いていますが、「石垣貝」は二枚の貝殻が合わさっています。お寿司屋さんで並んでいても、全くの他人ということですね。
石垣貝とつぶ貝の見た目・食感・味の違い
「つぶ貝」は硬く締まった身質で、「ゴリゴリ」「コリコリ」とした非常に強い歯ごたえと、独特の磯の香りが特徴です。一方、「石垣貝」は「シャキシャキ」「サクサク」とした歯切れの良い食感で、クセがなく非常に強い甘みが特徴です。
見た目の違い
お寿司や刺身の「むき身」の状態でも、両者は簡単に見分けられます。
- つぶ貝:巻貝の足の部分を取り出すため、身は白っぽく、厚みがあり、硬く締まっているのが特徴です。形状は、種類やカットの仕方によって様々です。
- 石垣貝:二枚貝から取り出した「足(斧足)」と呼ばれる部分がメインです。見た目はトリガイに似ており、生の状態では白っぽいですが、湯通ししたり、握ったりすると先端が鮮やかなオレンジ色や朱色になることがあります。
食感と味の違い
食感と味は、この二つの貝の最大の違いであり、それぞれの魅力です。
つぶ貝の魅力は、なんといってもその圧倒的な歯ごたえ。前歯では噛み切れないほどの弾力があり、「ゴリゴリ」「コリコリ」という音がするほどです。噛みしめると、独特の磯の香りと共に、じわじわと甘みが広がります。
石垣貝の魅力は、「シャキシャキ」「サクサク」とした軽快な歯切れの良さと、非常に強い甘みです。つぶ貝のような硬さや磯臭さはなく、上品でデリケートな味わいが特徴です。寿司屋では、注文が入ってから殻をむき、活きたまま提供されることも多く、その新鮮な食感が珍重されます。
石垣貝とつぶ貝の「毒性」と調理上の注意点
つぶ貝(特にエゾボラなど)は、唾液腺に「テトラミン」という毒を持っています。食べると激しい頭痛やめまいを引き起こすため、調理前に必ず唾液腺(アブラ)を除去しなければなりません。石垣貝にはこの毒はありません。
ここが食材として扱う上で、最も重要な違いです。
つぶ貝の毒(唾液腺)
マツブやアワビツブなど、一部の「つぶ貝」は、唾液腺(だえきせん)に「テトラミン」という有毒成分を含んでいます。この部分は、俗に「アブラ」や「ワタ」と呼ばれることもあります。
テトラミンは、加熱しても分解されません。これを食べると、食後30分~1時間ほどで、激しい頭痛、めまい、船酔いのような症状(視覚障害、吐き気)を引き起こします(命に関わることは稀とされます)。
そのため、つぶ貝を自分で調理する際は、必ずこの唾液腺を除去しなければなりません。スーパーなどで売られている「刺身用つぶ貝」は、この処理が済んでいるものがほとんどです。
石垣貝の安全性
二枚貝である石垣貝には、このテトラミンは含まれていません。
もちろん、他の二枚貝と同様に、海水中のプランクトンに由来する麻痺性貝毒や、ノロウイルスなどを蓄積するリスクはゼロではありませんが、これはつぶ貝のテトラミンとは全く異なるものです。石垣貝は、貝毒の検査基準をクリアした安全な養殖場で育てられています。
旬・産地・価格の違い
「つぶ貝」は北海道や東北が主産地で、旬は種類によりますが、天然物が多いため価格は安定しません。「石垣貝」は岩手県や宮城県での養殖が主流で、旬は春から夏です。養殖の高級二枚貝として、寿司ネタとしては高価な部類に入ります。
旬と産地
つぶ貝は種類が多いため一概には言えませんが、主な産地は北海道や三陸沖など冷たい海域です。天然物がほとんどで、旬も種類によって異なりますが、年間を通して市場には流通しています。
石垣貝(エゾイシカゲガイ)は、前述の通り岩手県や宮城県(三陸海岸)での養殖が主流です。天然物もありますが、市場に「石垣貝」として流通するのはほとんどが養殖ものです。旬は、身が肥える春から夏(5月~8月頃)とされています。
価格の違い
価格は、どちらも高級な寿司ネタとして扱われます。
「つぶ貝」は、種類によって価格がピンキリです。最高級の「マツブ(エゾボラ)」は非常に高価ですが、一般的に回転寿司などで使われる「アヤボラ(灯台つぶ)」などは比較的安価です。
「石垣貝」は、養殖貝として比較的安定して供給されますが、その人気の高まりと養殖の手間から、寿司ネタとしては高級な部類に入ります。活きたまま流通することが多く、その鮮度も価格に反映されています。
石垣貝とつぶ貝の食べ方・料理での使い分け
「つぶ貝」はその硬い食感を活かし、刺身や寿司のほか、煮付けや壺焼きなど加熱しても美味しく食べられます。「石垣貝」は、その繊細な甘みと歯切れの良さを活かすため、ほぼ100%「生食(刺身・寿司)」で消費されます。
つぶ貝のおすすめの食べ方
つぶ貝の「ゴリゴリ」とした食感は、加熱しても失われにくいのが特徴です。
- 刺身・寿司:唾液腺をしっかり処理した上で、薄くスライスして食べます。強い歯ごたえと磯の香りが楽しめます。
- 煮付け(煮つぶ):醤油、みりん、酒で甘辛く煮付けた「煮つぶ」は、お祭りの屋台や居酒屋の定番メニューです。
- 壺焼き:サザエのように、殻ごと焼く「壺焼き」も人気です。
石垣貝のおすすめの食べ方
石垣貝は、加熱すると身が硬く縮んでしまい、せっかくの繊細な甘みや食感が失われてしまいます。
- 刺身・寿司:ほぼ生食専用と言っても過言ではありません。注文を受けてから殻をむき、活きたままの状態で提供されることが多いです。この鮮度感が命の貝ですね。
石垣貝とつぶ貝の体験談(寿司屋での出会い)
僕が寿司屋でカウンターに座る楽しみの一つが、貝類を食べ比べることです。ある日、いつものように「つぶ貝」を注文しました。出てきたのは、白く輝く、見るからに硬そうな一切れ。口に入れると、期待通りの「ゴリッ!」という強い歯ごたえ。噛みしめるほどに磯の香りと甘みが広がります。「これこれ!」とビールが進みました。
その次に、大将から「今日は良い石垣貝が入ってますよ」と勧められました。名前からてっきりゴツゴツした巻貝(つぶ貝の仲間)だと思い、「じゃあ、それも」と注文。
すると、大将は目の前の水槽から二枚貝を取り出し、手際良く殻をむき始めました。出てきたのは、オレンジがかったみずみずしい身。「あれ?巻貝じゃない…」と驚いていると、握りが差し出されました。
口に入れた瞬間、二度目の衝撃が走りました。「シャキッ!」という軽快な歯触り。つぶ貝の「ゴリッ」とは全く違う、上品な歯切れの良さです。そして何より、噛んだ瞬間に口に広がる、強烈な「甘み」。磯臭さは一切なく、ただただ純粋な貝の甘みが広がります。「これが…石垣貝…」
同じ「貝」として並べられていても、食感も風味も、その正体も全く違う。この二つの貝の違いは、僕にとって「寿司の奥深さ」を象徴するような体験となりました。
石垣貝とつぶ貝のFAQ(よくある質問)
Q1. 石垣貝は沖縄の石垣島で獲れる貝ですか?
A1. いいえ、全く関係ありません。「石垣貝」はエゾイシカゲガイという二枚貝の市場名で、主な産地は岩手県や宮城県などの三陸地方です。名前のイメージとは逆の、北日本の貝なんですね。
Q2. つぶ貝は毒があると聞きましたが、お寿司屋さんで食べても大丈夫ですか?
A2. はい、大丈夫です。つぶ貝の毒は「唾液腺(アブラ)」という特定の部位に含まれています。お寿司屋さんやスーパーで「刺身用」として売られているものは、この有毒な部位が適切に除去・処理されているため、安全に食べることができます。自分で殻付きのつぶ貝を調理する場合のみ、注意が必要です。
Q3. 石垣貝とトリガイ(鳥貝)は似ていますが、違いは何ですか?
A3. どちらもザルガイ科の二枚貝で、寿司ネタとして生(または軽く湯通し)で食べられる足(斧足)が美味しい、という共通点があります。見た目も似ていますが、石垣貝(エゾイシカゲガイ)の方がトリガイよりも殻が硬く、ゴツゴツしています。味わいも、石垣貝の方がより甘みが強く、食感がシャキシャキしている、と評価されることが多いですね。
まとめ|石垣貝とつぶ貝の違いを理解して選ぼう
「石垣貝」と「つぶ貝」の違い、明確にご理解いただけたでしょうか。
この二つは、名前の響きこそ似ていますが、全く異なる種類の貝でした。
- つぶ貝:巻貝の総称。食感は「ゴリゴリ・コリコリ」。唾液腺に毒があるため処理が必要。
- 石垣貝:二枚貝(エゾイシカゲガイ)の市場名。食感は「シャキシャキ・サクサク」で甘みが強い。生食が基本。
どちらも日本の食文化、特に寿司文化において欠かせない素晴らしい食材です。つぶ貝の毒(テトラミン)については、厚生労働省のウェブサイトでも注意喚起がされていますので、知識として知っておくと安心ですね。
今度お寿司屋さんに行ったら、ぜひこの「食感」と「風味」の違いを意識して、食べ比べてみてください。当サイトでは、他にも様々な肉・魚介類の違いについても解説しています。