じゃじゃ麺とジャージャー麺、名前がとてもよく似ていますよね。
どちらも麺の上に肉味噌が乗っていて、「何が違うの？」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。僕も盛岡で初めてじゃじゃ麺を食べた時、知っているジャージャー麺との違いに驚いた経験があります。
実はこの二つ、発祥地、麺の種類、肉味噌の味付け、そして「食べ方」に至るまで、全く異なる魅力を持つ麺料理なんです。
この記事を読めば、二つの違いが明確になり、好みや気分に合わせて正しく選べるようになりますよ。まずは結論から見ていきましょう。
結論｜じゃじゃ麺とジャージャー麺の違いが一目でわかる比較表
じゃじゃ麺（盛岡じゃじゃ麺）とジャージャー麺の決定的な違いは、「発祥地」「麺」「味付け」「食べ方」です。じゃじゃ麺は岩手県盛岡市発祥で、平たいうどんに塩味ベースの肉味噌を乗せ、自分でラー油や酢を加えて味を完成させます。最後にスープを注ぐ「チータンタン」でシメるのが最大の特徴です。一方、ジャージャー麺は中国発祥で、中華麺に甜麺醤などで甘辛く味付けされた肉味噌を乗せた料理で、混ぜれば味が完成しています。
二つの料理の主な違いを比較表にまとめました。
| 項目 | じゃじゃ麺（盛岡じゃじゃ麺） | ジャージャー麺（炸醤麺） |
|---|---|---|
| 発祥地 | 日本（岩手県盛岡市） | 中国（山東省などがルーツ） |
| 麺の種類 | 平たいうどん（きしめんに近い） | 中華麺（細麺～太麺まで様々） |
| 肉味噌（タレ）の味 | 塩味やしょっぱさがベース（甘さ控えめ） | 甘辛い（甜麺醤ベースが主流） |
| 主な具材 | 肉味噌、キュウリ、ネギ、紅ショウガなど | 肉味噌、キュウリ、ネギ、タケノコ、シイタケなど |
| 食べ方 | 自分で味変（酢・ラー油・ニンニク）する | 全体をよく混ぜてそのまま食べる |
| シメ | チータンタン（鶏蛋湯）がある | 特になし |
このように、名前は似ていても、中身は全くの別物であることがわかりますね。
じゃじゃ麺とジャージャー麺の定義と発祥の違い
じゃじゃ麺は、中国の炸醤麺をベースに戦後岩手県盛岡市で誕生した郷土料理です。一方、ジャージャー麺は中国北部発祥の「炸醤麺（ジャージアンミエン）」がルーツで、日本の中華料理店で広く普及したものです。
じゃじゃ麺（盛岡じゃじゃ麺）とは？
じゃじゃ麺（盛岡じゃじゃ麺）は、わんこそば、盛岡冷麺と並ぶ「盛岡三大麺」の一つに数えられる、岩手県盛岡市の郷土料理です。
そのルーツは、戦前に満州（現在の中国東北部）で食べられていた「炸醤麺（ジャージャー麺）」にあります。終戦後、盛岡に戻った創業者が、その味を再現しようと試行錯誤する中で、盛岡の人の口に合うよう独自に進化したのが「じゃじゃ麺」の始まりとされています。
最大の特徴は、中華麺ではなく、平たいうどん（またはきしめん）を使う点です。この麺の上に、特製の肉味噌、キュウリ、ネギなどが乗せられています。
ジャージャー麺（炸醤麺）とは？
ジャージャー麺は、中国語で「炸醤麺（ジャージアンミエン）」と呼ばれる料理がルーツです。「炸」は油で炒める、「醤」は味噌、「麺」は麺類を意味します。
中国北部、特に北京や山東省の家庭料理として親しまれてきました。これが日本に伝わり、中華料理店のメニューとして普及する中で、日本人好みの甘辛い味付けにアレンジされていきました。
麺は、じゃじゃ麺とは異なり、中華麺を使用するのが基本です。日本以外にも、後述する韓国などで独自の進化を遂げています。
調理法・味・具材（肉味噌）の決定的違い
最も分かりやすい違いは「味」です。ジャージャー麺は甜麺醤（テンメンジャン）などを使った「甘辛い味」で、それだけで味が完成しています。対して、じゃじゃ麺の肉味噌は「塩味ベース（甘さ控えめ）」で、そのまま食べると少し物足りなく感じることも。ラー油や酢を加えて好みの味に「育てる」のが前提です。
肉味噌（タレ）の違い
じゃじゃ麺
肉味噌は、ひき肉、しいたけ、ゴマ、味噌などをベースに作られますが、ジャージャー麺と比べて甘味が少なく、塩味やしょっぱさが際立っているのが特徴です。
そのまま食べただけでは味が完成しておらず、テーブルに置かれた酢、ラー油、おろしニンニク、ショウガなどを自分で加えて、好みの味に調整しながら食べるのが前提となっています。
ジャージャー麺
日本のジャージャー麺の多くは、甜麺醤（テンメンジャン）という中国の甘い味噌をベースにしています。そこに豆板醤（トウバンジャン）や醤油などを加え、豚ひき肉、タケノコ、シイタケのみじん切りなどと炒め合わせます。
とろみがつけられていることも多く、甘辛く濃厚な味わいが特徴で、それ自体で味が完成しています。
麺と具材の違い
じゃじゃ麺
麺は、じゃじゃ麺専用の「平たいうどん」が使われます。きしめんや稲庭うどんにも似た、コシの少ない柔らかめの麺が、塩味の肉味噌とよく絡みます。
具材は非常にシンプルで、肉味噌のほかは、千切りのキュウリとネギ、お好みで紅ショウガやおろしショウガが乗る程度です。
ジャージャー麺
麺は、細麺から太麺まで様々ですが、弾力のある中華麺が使われます。
具材は、甘辛い肉味噌のほかに、千切りのキュウリや白髪ネギが一般的です。お店によっては、錦糸卵、もやし、トマトなどが乗ることもあり、彩り豊かなのが特徴です。
食べ方と「チータンタン」の文化
じゃじゃ麺の最大の独自性は、シメの「チータンタン（鶏蛋湯）」にあります。麺を食べ終えた丼に生卵を割り入れ、店員に渡すと、麺のゆで汁とネギ、肉味噌を加えて熱々の卵スープにして返してくれます。このシメまでが、じゃじゃ麺の醍醐味です。
ジャージャー麺の食べ方
ジャージャー麺は、丼の中で麺と具材、肉味噌をよくかき混ぜて食べます。味が完成しているので、そのまま食べるのが基本です。もちろん、好みでラー油や酢をかけることもありますが、それはあくまで個人のアレンジの範囲内ですね。
じゃじゃ麺の食べ方と「チータンタン」
じゃじゃ麺の食べ方は、一つの料理で何度も味の変化を楽しめる、非常にユニークな文化です。
ステップ1：混ぜる
まずは、麺と肉味噌、キュウリ、ネギをよくかき混ぜて、そのままの味を楽しみます。
ステップ2：味を変える（育てる）
半分ほど食べ進めたら、テーブルに置かれている酢、ラー油、おろしニンニク、おろしショウガなどを加え、自分好みの味に「育てて」いきます。この味変がじゃじゃ麺の醍醐味の一つです。
ステップ3：シメの「チータンタン（鶏蛋湯）」
麺を少し（または全部）食べ終えたら、丼に生卵を割り入れ、箸でよく溶きます。そして、その丼を「チータンタンお願いします」と店員さんに渡します。
すると店員さんは、その丼に麺のゆで汁（湯切りしたお湯）を注ぎ、ネギや少量の肉味噌を加えて、熱々の卵スープにして返してくれます。これが「チータンタン（鶏蛋湯）」です。「鶏蛋」は鶏卵、「湯」はスープを意味します。
麺を食べた後の肉味噌が残った丼で作るからこその、旨味が溶け込んだスープでシメる。これが盛岡じゃじゃ麺の伝統的な作法です。
【応用編】韓国のジャージャー麺（チャジャンミョン）との違い
日本や中国のものとは別に、韓国にも「ジャージャー麺」が存在します。韓国ドラマなどで、真っ黒な麺を食べているシーンを見たことはありませんか？
これは「チャジャンミョン（짜장면）」と呼ばれる韓国式のジャージャー麺です。これも中国の炸醤麺がルーツですが、韓国で独自の進化を遂げました。
最大の特徴は、「チュンジャン（春醤）」という韓国独自の黒味噌を使うことです。カラメルなどが加えられており、非常に甘味が強く、見た目が真っ黒になります。日本のジャージャー麺よりもさらに甘く、タマネギや豚肉がゴロゴロと入っているのが一般的です。これはこれで、じゃじゃ麺や日本のジャージャー麺とは全く異なる、独特の美味しさがありますよ。
じゃじゃ麺とジャージャー麺に関するよくある質問
じゃじゃ麺は盛岡以外で食べられますか？
はい、食べられますよ。
盛岡冷麺と共に全国的に知られるようになり、最近では盛岡じゃじゃ麺の専門店が他の地域に出店したり、アンテナショップや一部の中華料理店で提供されたりしています。スーパーでチルド麺として販売されていることもありますね。
ジャージャー麺は辛いですか？
いいえ、基本的に辛くありません。
日本のジャージャー麺の多くは、甜麺醤の甘味がベースになっています。豆板醤が入っていてもピリ辛程度で、お子様でも食べやすい甘辛い味付けが主流です。辛さを求める場合は、ラー油を足して調整するのが一般的ですね。
チータンタンだけ注文できますか？
基本的にはできません。
チータンタンは、あくまで「じゃじゃ麺を食べた後のシメ」として提供されるサービスです。麺のゆで汁や、丼に残った肉味噌の旨味を利用して作るので、スープ単体での注文はできないお店がほとんどですよ。
まとめ｜発祥も味も食べ方も異なる二つの麺料理
じゃじゃ麺とジャージャー麺、名前は似ていても、その中身は全く異なる料理であることがお分かりいただけたと思います。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- じゃじゃ麺：盛岡発祥。平たいうどんに塩味ベースの味噌。自分で味変を楽しみ、最後は「チータンタン」でシメるのが文化。
- ジャージャー麺：中国発祥。中華麺に甘辛い肉味噌。混ぜれば味が完成しており、そのまま食べるのが基本。
- 韓国式：チャジャンミョンと呼ばれ、チュンジャン（黒味噌）を使った甘い味付けと黒い見た目が特徴。
盛岡で郷土料理の奥深さを味わうなら「じゃじゃ麺」、中華料理店で手軽に甘辛い麺を楽しむなら「ジャージャー麺」。それぞれの魅力を知って、ぜひ食べ比べてみてください。
当サイトでは、他にも様々な料理・メニューの違いについて詳しく解説しています。興味があればぜひご覧ください。