果実酒とリキュール、どちらも果実を使ったフルーティーなお酒というイメージがありますよね。
梅酒やカシスオレンジなど、甘くて飲みやすいお酒を想像する方も多いかもしれません。
しかし、この二つ、日本の法律(酒税法)上では、全く異なるカテゴリーに分類されていることをご存知でしたか?
最大の違いは、「果実酒」が主に果実を「発酵」させて造るお酒(例:ワイン)であるのに対し、「リキュール」はベースとなるお酒(蒸留酒など)に果実や糖類を「漬け込んで」造るお酒(例:梅酒、カシス)である点です。
この記事を読めば、二つの明確な定義、製法、そして私たちが大好きな「梅酒」がどちらに分類されるのか、その理由までスッキリと理解できますよ。
それでは、両者の違いを詳しく見ていきましょう。
結論|果実酒とリキュールの決定的な違いとは?
最も決定的な違いは「お酒の分類」と「製造方法」です。果実酒は、酒税法上「醸造酒類」に分類され、主に果実(ブドウなど)を原料として「発酵」させて造るお酒(例:ワイン)を指します。一方、リキュールは「混成酒類」に分類され、ベースとなるお酒(スピリッツなど)に果実、ハーブ、糖類などを「漬け込んで(浸漬)」風味を付けたお酒(例:梅酒、カシスリキュール)を指します。
つまり、「果実そのものがアルコールになるのが果実酒」で、「既にあるお酒に果実の風味を移したのがリキュール」と覚えると分かりやすいですね。
ただし、この分類には少しややこしい点(特に梅酒の扱い)があるので、詳しく解説していきます。
果実酒とリキュールの法律(酒税法)上の定義
日本の酒税法では、お酒は「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」「発泡性酒類」の4つに分類されます。「果実酒」は「醸造酒類」(の一部)に、「リキュール」は「混成酒類」に分類され、法律上のカテゴリーが根本的に異なります。
この法律上の定義の違いが、二つを理解する上で最も重要です。
「果実酒」とは?(ワインなどの醸造酒)
酒税法において「果実酒」とは、以下の2つを指します。
- 果実を原料として発酵させたもの(=ワインなど)
- 果実酒に糖類(砂糖、ぶどう糖など)を加えたもの
ポイントは、ベースが「果実の発酵」によって生まれた醸造酒であることです。
代表的なお酒は、もちろん「ワイン」です。ブドウを発酵させて造るワインは、果実酒の典型ですね。
(※ただし、ブランデーなどの蒸留酒を添加した酒精強化ワイン(シェリーなど)も含まれる場合があります。)
「リキュール」とは?(梅酒などの混成酒)
酒税法において「リキュール」とは、「酒類と糖類その他の物品(果実やハーブなど)を原料とした酒類」で、エキス分(糖やその他の成分)が2度以上のものを指します。
これは「混成酒類」に分類されます。
簡単に言えば、「ベースとなるお酒」があり、それに「果実・ハーブ・香辛料・糖類」などを加えて、新たな風味を付けたお酒のことです。
「梅酒」(スピリッツやブランデーに梅と氷砂糖を漬け込む)や、「カシスリキュール」(スピリッツにカシスと砂糖を漬け込む)は、まさにこの定義に当てはまるため、法律上は「リキュール」なのです。
最大の違い:製法(発酵 vs 漬け込み)
果実酒(ワイン)は、ブドウの糖分を酵母がアルコールに変える「発酵」が製造の核です。リキュール(梅酒など)は、ベースとなるアルコールに梅などの成分を溶け出させる「浸漬(しんし=漬け込み)」が製造の核となります。
果実酒の製造工程(発酵)
ワインを例にとると、収穫したブドウを潰し、ブドウの果皮に付いている天然酵母や培養酵母の力で、果汁に含まれる糖分をアルコールと二酸化炭素に分解させます。
この「発酵」という化学変化によって、アルコールが生まれます。
その後、熟成やろ過を経て製品となります。
リキュールの製造工程(浸漬)
梅酒を例にとると、まずベースとなるお酒(アルコール度数35%のホワイトリカーなど)を用意します。
このお酒に、青梅と氷砂糖を一緒に「漬け込み(浸漬)」ます。
数ヶ月〜数年かけて、アルコールの力と浸透圧によって梅のエキス(酸味や香り)と砂糖の甘みがお酒に溶け出し、梅酒が完成します。
ここではアルコールを新たに造る「発酵」は行われていません(ベースの酒は既に完成品)。
味・香り・アルコール度数の違いを徹底比較
果実酒(ワイン)は、発酵・熟成由来の複雑な香りと、ブドウ本来の甘みや酸味、渋みが特徴で、糖質は辛口なら少ないです。リキュール(梅酒など)は、漬け込んだ素材(梅など)の香りと砂糖の直接的な甘みが特徴で、糖質は非常に高くなります。
比較表|果実酒とリキュールの違い一覧
| 項目 | 果実酒(代表例:ワイン) | リキュール(代表例:梅酒) |
|---|---|---|
| 酒税法の分類 | 醸造酒類 | 混成酒類 |
| 主な製法 | 発酵 | 浸漬(漬け込み) |
| 主な原料 | 果実(ブドウなど)、酵母 | ベースの酒、香味原料(梅など)、糖類 |
| 味わい | 果実の甘み・酸味、渋み(赤)、複雑 | 素材の風味+糖類の甘み、甘酸っぱい |
| 香り | 発酵・熟成由来の複雑な香り、果実香 | 漬け込んだ素材の香り(梅、ハーブ等) |
| アルコール度数 | 約10~15% | 様々(梅酒は10~15%、カシスは20%など) |
| 糖質 | 少ない(辛口)~多い(甘口) | 非常に多い(砂糖を加えるため) |
味わいと香りの違い
果実酒(ワイン)は、ブドウの品種、産地、熟成方法によって香りが千差万別です。
フルーティーな香りはもちろん、発酵や樽熟成によって生まれるトースト、バニラ、キノコのような複雑な香りが楽しめます。味わいも、甘口から辛口、渋み(タンニン)の強弱まで幅広いです。
リキュールは、漬け込んだ素材の香りがストレートに現れます。
梅酒なら梅の香り、カシスリキュールならカシスの香り、カンパリならハーブの香り、といった具合です。味わいは、製造工程で糖類を加えるため、基本的(例外を除く)に甘いのが特徴です。
アルコール度数と糖質の違い
果実酒(ワイン)のアルコール度数は、発酵によって決まり、大体10%〜15%の間に収まります。
リキュールは、ベースとなるお酒の度数や割り方次第ですが、梅酒は10%〜15%程度、カシスリキュールは20%前後と、製品によって様々です。
健康面で大きな違いは「糖質」です。
果実酒(辛口ワイン)は、ブドウの糖分がほぼ全てアルコールに変わるため、糖質は非常に少なくなります。
一方、リキュールは、製造工程で意図的に砂糖やシロップを大量に加えるため、梅酒やカシスリキュールなどは糖質が非常に高くなります。
なぜ梅酒は「果実酒」と呼ばれるのか?(混乱の理由)
最大の混乱理由は「梅酒」の扱いです。梅酒は酒税法上は「リキュール」に分類されますが、家庭で造る梅酒(ホワイトリカー使用)が「自家製果実酒」と呼ばれるなど、一般呼称として「果実酒」という言葉が広く使われているため、混同が生じています。
この混乱には、酒税法の歴史も関係しています。
家庭でお酒を造ることは基本的に禁止されていますが、例外として「自家醸造(自家製梅酒など)」が一定の条件(アルコール度数20度以上の酒を使うなど)のもとで認められています。
この自家製のお酒を指す言葉として「果実酒」という呼称が広く使われてきました。
(例:「果実酒用のホワイトリカー」「果実酒びん」)
そのため、多くの人にとって「果実酒 = 梅酒やカリン酒のように、果物を漬け込んだお酒」というイメージが定着しています。
しかし、これはあくまで一般名詞としての使い方です。
法律(酒税法)上の厳密な分類では、梅酒は「リキュール」であり、果実酒(ワインなど)とは別物なのです。
体験談|梅酒は「リキュール」だと知った日
僕も昔は、この二つを完全に混同していました。
子どもの頃、祖母が大きなガラス瓶で梅を漬けているのを見て、「うちの“果実酒”だ」と教えられて育ちましたから、「梅酒=果実酒」と刷り込まれていたんです。
バーでカクテルを飲むようになり、メニューに「リキュール」というカテゴリがあるのを知りました。
そこには「カシス」や「カンパリ」など、カラフルなお酒が並んでいます。僕は「リキュールって、こういう海外のオシャレな混成酒のことなんだな」と思っていました。
ある日、バーテンダーの方に「おすすめのリキュールは?」と尋ねたところ、「でしたら、こちらの梅酒はいかがですか?ブランデーベースでとても美味しいですよ」と勧められたんです。
「え? 梅酒って、リキュールなんですか!?」
思わず聞き返してしまいました。
そこで初めて、「梅酒は、ホワイトリカーやブランデー(酒類)に、梅(香味原料)と砂糖(糖類)を加えて造るから、法律上はリキュールなんですよ」と教えてもらいました。
果実(ブドウ)そのものが発酵してできるワイン(果実酒)とは、生まれからして違うんだと。
僕の中で「果実酒」と「リキュール」が明確に分かれた瞬間でした。
一般名詞としての「果実酒」と、法律上の「果実酒」、そして「リキュール」の違いを理解するのは、お酒の楽しみを深める上でとても重要だと感じた体験です。
果実酒とリキュールに関するよくある質問
果実酒とリキュールについて、よくある疑問をまとめました。
結局、梅酒は果実酒ですか?リキュールですか?
酒税法上は「リキュール(混成酒)」です。
ただし、家庭で造る梅酒や、そのイメージから、一般呼称として「果実酒」と呼ばれることも非常に多いです。どちらの呼び方も間違いではありませんが、法律上の分類はリキュールである、と覚えておくとスッキリします。
ワインもリキュールの一種ですか?
いいえ、違います。
ワインはブドウを「発酵」させて造る「醸造酒」であり、酒税法上は「果実酒」に分類されます。
リキュールは、ベースとなるお酒に風味を「漬け込んで(浸漬)」造る「混成酒」です。分類が根本的に異なります。
糖質が低いのはどちらですか?
「辛口の果実酒(ワイン)」の方が低いです。
リキュール(梅酒、カシスなど)は、製造工程で砂糖やシロップを意図的に加えるため、基本的に糖質は非常に高くなります。
一方、果実酒であるワインは、辛口(Brut / Dry)タイプであれば、発酵によってブドウの糖分がアルコールに変わっているため、糖質はごくわずかです。(※甘口のデザートワインなどは糖質が高いです)
まとめ|果実酒とリキュール、どう選ぶべきか?
果実酒とリキュールの違い、明確にご理解いただけたでしょうか。
・果実酒 = 醸造酒。果実が「発酵」してできる。(例:ワイン)
・リキュール = 混成酒。お酒に果実や糖類を「漬け込んで」できる。(例:梅酒、カシス)
この二つは、お酒としての生まれ(分類)が全く異なるものでした。
あなたの好みや飲むシーンに合わせて、以下のように選ぶのがおすすめです。
- 食事(特に肉料理や魚料理)と合わせ、ブドウの発酵・熟成による複雑な香りや渋みを楽しみたい時:
「果実酒」(ワイン)を選びましょう。 - 食前酒や食後酒として、またはソーダ割りなどで、果実のストレートな香りと分かりやすい甘みを楽しみたい時:
「リキュール」(梅酒やカシスなど)が最適です。
お酒の分類について詳しく知りたい場合は、国税庁の「酒類のしおり」などが、酒税法に基づいた正確な定義を知る上で非常に参考になります。
お酒は適量を守ることが大切です。厚生労働省の示す栄養・食生活に関する情報なども参考に、健康的に楽しみましょう。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な飲み物・ドリンクの違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。