「菊菜(きくな)」と「春菊(しゅんぎく)」、鍋物の季節になるとどちらの名前もよく耳にしますよね。
関西のスーパーでは「菊菜」が並び、関東では「春菊」が並ぶ。これらは一体違う野菜なのでしょうか?
結論から言うと、菊菜と春菊は、植物学的には全く同じキク科の野菜です。
最大の違いは「呼び名」であり、主に関東では「春菊」、関西では「菊菜」と呼ばれています。ただし、地域によって好まれる「品種」が異なり、葉の形や食感に違いが見られる場合があります。
この記事では、菊菜と春菊の呼び名の由来から、地域ごとの品種の違い、味、栄養、そして料理での使い分けまで、詳しく解説していきます。
この違いを知れば、鍋やすき焼きの準備がもっと楽しくなりますよ。
結論|菊菜と春菊の違いとは?
「菊菜(きくな)」と「春菊(しゅんぎく)」は、どちらも同じキク科シュンギク属の緑黄色野菜を指します。最大の違いは「呼び名」で、主に関東では「春菊」、関西では「菊菜」と呼ばれるのが一般的です。また、関東では葉の切れ込みが深い「株張り型」が、関西では葉が丸く切れ込みが浅い「株立ち型」が好まれる傾向があり、品種による形状や食感の違いも見られます。
この二つの野菜の関係は、関東と関西の食文化の違いを象徴する面白い例の一つです。
基本的な違いを一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | 春菊(しゅんぎく) | 菊菜(きくな) |
|---|---|---|
| 分類 | 同じ植物(キク科シュンギク属) | |
| 主な呼び方 | 関東での呼び名 | 関西での呼び名 |
| 主流の品種(傾向) | 株張り型(葉の切れ込みが深い) | 株立ち型(葉の切れ込みが浅い・丸い) |
| 香り | 独特の強い香り | 香りが比較的穏やか(品種による) |
| 食感 | 繊維がしっかりめ | 葉が柔らかく、茎も食べやすい |
| 主な用途 | すき焼き、鍋物(葉を摘む) | すき焼き、鍋物(株ごと入れる)、おひたし、和え物 |
同じ植物でありながら、地域によって呼び名だけでなく、好まれる品種(葉の形)にも違いがあるのが興味深いですね。
「菊菜」と「春菊」は同じ植物(呼び名の違い)
「春菊」も「菊菜」も、地中海沿岸が原産のキク科の野菜です。春に菊に似た黄色い花を咲かせ、葉の形も菊に似ていることから、これらの名前が付きました。関東では「春菊」、関西では「菊菜」と呼ばれる地域性の違いが主です。
なぜ同じ野菜が二つの名前で呼ばれるようになったのでしょうか。それぞれの言葉の背景を見ていきましょう。
春菊(しゅんぎく)とは?
「春菊」は、「春に菊に似た花が咲く」ことから名付けられました。また、葉の形が菊に似ていることも由来の一つです。
この呼び名は、主に関東地方で定着しています。江戸時代に中国から伝わり、栽培が広まる過程でこの名前が一般的になったと考えられています。
菊菜(きくな)とは?
「菊菜」は、「菊の葉に似た菜(なっぱ)」という意味合いが強い呼び名です。
こちらは主に関西地方で使われます。関西では、春菊がより古くから食されており、「菊菜」という呼び名が生活に根付いてきました。九州の一部でも菊菜と呼ばれることがあります。
【地域別】品種・見た目・葉の形状の違い
関東で主流の「春菊」は、株が横に広がる「株張り型」で、葉の切れ込みが深いのが特徴です。一方、関西で主流の「菊菜」は、株が上に伸びる「株立ち型」で、葉の切れ込みが浅く、丸みを帯びた「中葉種」や「大葉種」が多いのが特徴です。
呼び名の違いだけでなく、関東と関西では伝統的に好まれてきた品種(タイプ)にも違いがあります。これが食感や香りの違いにもつながっています。
関東の「春菊」(株張り型・切れ葉)
関東地方で一般的に「春菊」として流通しているのは、「株張り型(かぶはりがた)」と呼ばれるタイプです。
これは、根元から茎が横に這うように広がり、葉が密集して株を張るのが特徴です。葉は切れ込みが深く、ギザギザしています。香りが強く、葉が柔らかいため、葉を摘み取って利用するのに適しています。
関西の「菊菜」(株立ち型・中葉/大葉)
関西地方で「菊菜」として好まれるのは、「株立ち型(かぶだちがた)」と呼ばれるタイプです。
こちらは茎が横に広がらず、まっすぐ上に伸びるのが特徴です。葉の切れ込みは浅く、全体的に丸みを帯びている「中葉種」や「大葉種」が多く見られます。
関東の春菊に比べると香りが穏やかで、葉だけでなく茎も柔らかく食べやすいため、根元から刈り取って株ごと利用するのに適しています。
味・香り・食感の違い
どちらもキク科特有の爽やかな香りとほのかな苦味がありますが、一般的に関西の「菊菜」(丸葉)の方が、関東の「春菊」(切れ葉)よりも香りが穏やかで、えぐみや苦味が少なく、葉も柔らかいとされています。
品種の違いは、味や香り、食感にも影響を与えます。
春菊(菊菜)の最大の魅力は、その独特の爽やかな香りですよね。この香りはキク科の植物に共通するもので、食欲を増進させたり、肉や魚の臭みを和らげたりする効果があります。
一般的に、葉の切れ込みが深い関東の「春菊」の方が香りが強く、やや繊維質な食感です。
一方、葉が丸い関西の「菊菜」は、香りが比較的穏やかで、えぐみや苦味が少なく、葉肉が厚くて柔らかい傾向があります。
ただし、最近は品種改良や物流の発達により、関東でも関西の品種が「大葉春菊」として売られたり、その逆もあるため、地域による差は以前ほど絶対的ではなくなっています。
栄養・成分・健康面(共通)
菊菜(春菊)は非常に栄養価の高い緑黄色野菜です。特に、体内でビタミンAに変換される「β-カロテン」の含有量は、野菜の中でもトップクラスです。その他、骨の健康に必要なビタミンK、抗酸化作用のあるビタミンCやE、高血圧予防に役立つカリウム、貧血予防の鉄分なども豊富に含んでいます。
菊菜(春菊)は、呼び名や品種に関わらず、非常に栄養価の高い野菜です。
文部科学省の「日本食品標準成分表」によると、「しゅんぎく(生)」の可食部100gあたり、以下の栄養素が豊富に含まれています。
- β-カロテン(4,500μg):皮膚や粘膜の健康を維持し、抗酸化作用が期待できます。その含有量は、ほうれん草(4,200μg)や小松菜(3,100μg)を上回るほどです。
- ビタミンK(250μg):血液の凝固や骨の形成に関わる重要なビタミンです。
- カリウム(460mg):体内の余分なナトリウムを排出するのを助けます。
- ビタミンC(19mg):抗酸化作用があり、コラーゲンの生成を助けます。
独特の香り成分(α-ピネン、ペリルアルデヒドなど)には、胃腸の働きを助けたり、リラックス効果をもたらしたりするとも言われています。
使い方・料理での扱い方の違い(すき焼き・鍋物)
関東の「春菊」(切れ葉)は葉が柔らかいため、すき焼きや鍋物では葉を摘んで使い、火を通しすぎないのがコツです。関西の「菊菜」(丸葉)は茎まで柔らかいため、根元を切り落として株ごと(またはざく切りにして)鍋に入れ、茎の食感も楽しみます。どちらも生食用の品種(サラダ春菊)は、サラダや和え物で美味しく食べられます。
地域によって好まれる品種が違うため、伝統的な食べ方にも少し違いが見られます。
春菊(関東風)のおすすめの食べ方
葉の切れ込みが深い「株張り型」の春菊は、葉が柔らかく、茎が硬めな傾向があります。
- すき焼き・鍋物:柔らかい葉先だけを摘み取って使います。香りが強いため、肉の臭み消しにもなります。火を通しすぎると香りが飛び、食感も悪くなるため、さっと煮る(くぐらせる)程度がおすすめです。
- おひたし・胡麻和え:さっと茹でてアクを抜き、水気を絞って使います。
菊菜(関西風)のおすすめの食べ方
茎まで柔らかい「株立ち型」の菊菜は、株ごと豪快に使います。
- すき焼き・鍋物:根元を切り落とし、茎や葉をざく切りにして、株ごと鍋に投入します。関東の春菊よりも香りが穏やかなため、たっぷりと入れてもくどくなりません。柔らかい茎の食感も楽しめます。
- おひたし・和え物:クセが少ないため、おひたしや和え物にも最適です。
- サラダ:最近は「サラダ春菊」など、生食専用に改良された品種も人気があります。これらはえぐみがほとんどなく、シャキシャキした食感が楽しめます。
旬・産地・保存・価格の違い
菊菜(春菊)の旬は、霜が降りる冬(11月〜3月頃)です。寒さに当たると葉が柔らかく、香りが良くなります。価格は比較的安価で安定していますが、天候不順で高騰することもあります。保存は、湿らせたキッチンペーパーで根元を包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫で「立てて」保存するのが長持ちのコツです。
旬の時期と主な産地
菊菜(春菊)は冷涼な気候を好むため、最も美味しくなる旬は冬(11月〜3月頃)です。
霜に当たると葉が柔らかくなり、香りが一層引き立ちます。夏場はハウス栽培や高冷地栽培のものが出回りますが、やや葉が硬く、香りが強い傾向があります。
主な産地は、千葉県、大阪府、茨城県、福岡県、群馬県など、全国で栽培されています。
正しい保存方法
菊菜(春菊)は葉物野菜なので、乾燥に非常に弱いです。
根元を湿らせたキッチンペーパーで包み、全体をポリ袋(または新聞紙)でふんわりと覆います。そして、冷蔵庫の野菜室に「立てて」保存するのが長持ちさせる最大のコツです。
葉を摘んで使う場合も、洗わずにそのままの状態で保存し、使う直前に洗いましょう。
価格の傾向
価格は、ほうれん草や小松菜などと同様に、比較的安価で安定している野菜の一つです。一袋(束)100円〜200円程度で販売されることが多いですが、台風や長雨などの天候不順が続くと、一時的に高騰することもあります。
体験談|関西と関東のすき焼きで食感の違いに驚き
僕は関東出身なので、実家ですき焼きを食べる時、春菊は「葉っぱを数枚ちぎって、さっと煮る」のが当たり前だと思っていました。あの強い香りが、甘辛い割り下と牛肉の脂に負けないアクセントになって大好きでした。
大学で関西に移り住み、友人の家ですき焼きをご馳走になった時、カルチャーショックを受けました。
友人がスーパーで買ってきたのは、葉が丸くて茎が太い「菊菜」。
彼はその菊菜の根元を切り落としただけで、ザクザクと大きな束のまま鍋に投入したんです。「えっ、そんなに!?」と驚いていると、「菊菜はこれが美味いんや」と。
恐る恐る食べてみると、関東の春菊とは全く違いました。香りがとてもマイルドで、葉も茎も驚くほど柔らかい。煮汁が染み込んだ茎の部分がシャキシャキとして、これまた絶品でした。
「春菊」と「菊菜」が、単なる呼び名の違いだけでなく、好まれる品種や食べ方まで違うことを実感した瞬間でしたね。今ではすっかり、あの茎まで美味しい関西風の菊菜のファンです。
菊菜と春菊に関するFAQ(よくある質問)
菊菜と春菊に関して、よくある疑問にお答えします。
結局、菊菜と春菊は本当に同じものですか?
はい、植物学的には「同じキク科シュンギク属の植物」です。
主な違いは、関東(春菊)と関西(菊菜)での「呼び名」の違いです。ただし、地域によって好まれる品種(葉の形)が異なるため、食感や香りに違いがある場合が多いです。
サラダ用の春菊(サラダ春菊)との違いは何ですか?
サラダ春菊は、生食用に品種改良された春菊です。
従来の春菊(菊菜)よりも、香りが非常に穏やかで、えぐみや苦味がほとんどなく、葉が柔らかいのが特徴です。アク抜き(茹でる)必要がなく、そのまま生のサラダとして食べられるように作られています。
春菊の独特の香りが苦手なのですが、どうすれば食べやすくなりますか?
香りを和らげる方法はいくつかあります。
まず、さっと茹でて(おひたし)冷水にさらすと、アクと一緒に香りも少し抜けます。また、油で炒めたり(炒め物)、揚げたり(天ぷら)すると、香り成分が油に溶け出し、マイルドになります。
それでも苦手な場合は、葉の丸い関西風の「菊菜」や、「サラダ春菊」から試してみるのがおすすめですよ。
まとめ|呼び名は違えど同じ春菊。好みで使い分けよう
「菊菜」と「春菊」、長年の疑問は解決したでしょうか?
どちらも日本の食卓、特に鍋物やすき焼きには欠かせない、独特の魅力を持った香味野菜です。
- 同じ植物:キク科シュンギク属の野菜。
- 呼び名の違い:主に関東では「春菊」、関西では「菊菜」。
- 品種の違い(傾向):関東は葉の切れ込みが深い「株張り型」、関西は葉が丸く柔らかい「株立ち型」が好まれる。
- 栄養が豊富:β-カロテン、ビタミンK、カリウムなどが豊富な緑黄色野菜。
最近では地域に関わらず様々な品種が流通しています。農林水産省が推進する食育の観点からも、こうした地域による食文化の違いを知るのは面白いですよね。
葉の形で「香りが強そうか、穏やかそうか」を見分け、料理によって使い分けてみてください。
食の世界には、このように似ているようで異なる野菜・果物の違いがたくさんあります。それぞれの個性を知って、日々の食卓をもっと楽しんでいきましょう。