キンカンノアールと普通のキンカンの違いとは?ブランド金柑の甘さの秘密

「キンカン(金柑)」と聞くと、皮ごと甘露煮にしたり、ハチミツ漬けにする、酸味の強い果物をイメージする方が多いかもしれません。

しかし、最近スーパーやデパートで「キンカンノアール」という名前の商品を見かけるようになりました。これは一体、従来のキンカンと何が違うのでしょうか?

最も決定的な違いは、「キンカンノアール」が「生で皮ごと食べる」ことを前提とした高糖度のブランド品種(登録商標) であるのに対し、「普通のキンカン」は酸味や苦味が強く「加工用」が主体の従来種の総称である点です。

この記事を読めば、キンカンノアールの正体から、従来のキンカンや、有名なライバル「たまたま」との違いまで、スッキリと理解できます。

それでは、まずその違いを一覧で比較してみましょう。

結論|「キンカンノアール」と「普通のキンカン」の違いを一言で

【要点】

「キンカンノアール」と「普通のキンカン」の最大の違いは、「糖度」と「食べ方」です。「キンカンノアール」は、鹿児島県のJA南さつまの登録商標 で、糖度16度以上 を保証された完熟金柑です。酸味や苦味が少なく、皮ごと「生食」するために出荷される、フルーツ(スイーツ)のような存在です。

「普通のキンカン」は、従来からある品種(在来種)を指すことが多く、酸味や皮の苦味が強いのが特徴です。そのため、生食には向かず、甘露煮やジャムなど「加工用」として使われるのが一般的です。

【徹底比較】キンカンノアール vs 普通のキンカン vs たまたま 違い一覧表

【要点】

キンカンノアールは鹿児島産のブランド金柑です。宮崎産の「たまたま」とは産地が違いますが、どちらも糖度16度以上の基準を持つ「完熟・生食」タイプ で、酸っぱい「普通のキンカン(加工用)」とは全く異なるものです。

キンカンノアールを語る上で欠かせないライバル「たまたま」も加えて、3者の違いを比較してみましょう。

項目 キンカンノアール 普通のキンカン(従来種) たまたま(宮崎産)
分類 ブランド金柑(登録商標) 一般名称(従来品種) ブランド金柑(登録商標)
主な産地 鹿児島県(JA南さつま) 宮崎県、鹿児島県など 宮崎県(JAみやざき)
主な品種 ぷちまる(完熟) ニンポウ、ナガミなど ぷちまる(完熟)
糖度基準 16度以上 特に規定なし(低い) 16度以上(エクセレントは18度以上)
主な食べ方 生食(皮ごと) 加工(甘露煮、ジャム) 生食(皮ごと)
食感・味 非常に甘く、酸味少ない 酸味と苦味が強い 非常に甘く、酸味少ない
旬の時期 冬(1月下旬~3月頃) 冬(11月~2月頃) 冬(1月~3月頃)

キンカンノアール(KINKAN NOIR)とは?

【要点】

キンカンノアールは、鹿児島県南九州市のJA南さつまが商標登録するブランド金柑です。品種「ぷちまる」 を完熟させ、糖度16度以上・サイズL以上という厳格な基準をクリアしたものだけが名乗れます。

特徴:糖度16度以上、鹿児島生まれのブランド金柑

「キンカンノアール」は、特定の品種名ではなく、鹿児島県のJA南さつまが定める厳しい基準をクリアした完熟金柑だけに与えられるブランド名(登録商標)です。

主な品種は「ぷちまる」というタネが少ない(または無い)品種が使われています。

最大の特徴はその甘さ。樹上で完熟させることで、糖度が16度以上、かつサイズがL玉以上という規格を満たしたものだけが「キンカンノアール」として出荷されます。これは一般的なメロンやブドウに匹敵する甘さです。

普通のキンカン(一般的な金柑)とは?

【要点】

一般的に「キンカン」と呼ばれるものは、ニンポウ(寧波)などの在来種を指すことが多いです。これらは酸味と皮の苦味が強く、生食にはあまり向かないため、砂糖で甘く煮る「甘露煮」などの加工用原料として使われるのが主流です。

特徴:酸味と苦味が強く、主に加工用

私たちが「キンカン」と聞いて昔からイメージするものは、多くが「ニンポウ(寧波金柑)」などの在来種です。

これらは完熟する前に収穫されることも多く、果肉の酸味が非常に強く、皮にも独特の苦味があります。そのため、そのまま生で食べるのは厳しく、砂糖で長時間煮込んで甘露煮にしたり、ジャムやハチミツ漬けにしたりと、加工するのが一般的な食べ方でした。

【核心】「ブランド完熟金柑」と「従来品種」の決定的な違い

【要点】

キンカンノアールと従来のキンカンの違いは、「スイーツ」と「食材」の違いと言えます。キンカンノアールは糖度が高く、そのまま「生」で皮ごと食べるデザートフルーツです。従来のキンカンは酸味が強く、砂糖を加えて「加工」する料理の材料です。

二つの違いは、単なる品種の違い以上に、「食べ方」そのものが異なります。

糖度と食べ方:「生食」のノアール vs 「加工」の従来種

キンカンノアールは、品種改良と完熟栽培技術によって、従来のキンカンの弱点であった「酸味」と「苦味」を劇的に抑え、「糖度(甘み)」を極限まで高めたものです。

そのため、加工する必要が一切なく、皮ごと生のままフルーツとして食べられます。まさに「食べる宝石」とも言えるデザートフルーツなのです。

一方、従来のキンカンは、その強い酸味と苦味ゆえに、砂糖の力を借りて「加工」しなければ美味しく食べることが難しい「食材」としての側面が強い果物でした。

品種の違い:「ぷちまる」と在来種

キンカンノアールのベースとなっている「ぷちまる」 は、生食しやすいように開発された比較的新しい品種です。

従来の「ニンポウ」などの在来種と比べてタネが少なく、皮が柔らかいのが特徴です。この「ぷちまる」のポテンシャルを、完熟栽培によって最大限に引き出したのが「キンカンノアール」と言えますね。

【ライバル比較】「キンカンノアール」と「たまたま」の違い

【要点】

「キンカンノアール」(鹿児島)と「たまたま」(宮崎)は、どちらも糖度16度以上 の基準を持つ、完熟・生食用のブランド金柑です。産地とブランド名が異なる、良きライバル関係と言えます。

生食用の完熟金柑として、キンカンノアールよりも知名度が高いかもしれないのが、宮崎県産の「たまたま」です。この二つは、何が違うのでしょうか?

産地:鹿児島 vs 宮崎

最も大きな違いは「産地(ブランド)」です。

  • キンカンノアール鹿児島県(JA南さつま)のブランド
  • たまたま宮崎県(JAみやざき)のブランド

九州を代表する二大産地が、それぞれ威信をかけてブランド展開しているんですね。

糖度と規格:ほぼ同等

中身の違いはほとんどありません。どちらも「ぷちまる」などの完熟品種を使用し、糖度基準も「16度以上」で共通しています。

ちなみに、宮崎の「たまたま」には、さらに上位規格として糖度18度以上、直径2.8cm以上の「たまたまエクセレント」というブランドもあります。

旬の時期・価格・保存方法の違い

旬の時期
キンカンノアールの旬は冬の終わり、1月下旬から3月上旬頃までと、非常に短いです。従来のキンカン(11月頃から)より遅いのは、樹上で完熟させるためですね。「たまたま」の旬もほぼ同じ時期です。

価格
加工用の従来のキンカンに比べ、「キンカンノアール」や「たまたま」は、糖度やサイズの選別基準が厳しく、栽培にも手間がかかるため、価格は数倍高くなります。まさに高級フルーツ(スイーツ)と言える価格帯です。

保存方法
従来のキンカンは常温でも日持ちしますが、キンカンノアールは完熟しているため、デリケートです。購入後は冷蔵庫の野菜室で保存し、なるべく早く(1週間程度を目安に)食べきるのがおすすめです。

【体験談】初めての「キンカンノアール」、想像を超えた甘さ

僕にとって「キンカン」とは、子供の頃に風邪をひくと祖母が作ってくれた、あの甘ったるい「甘露煮」の記憶そのものでした。

一度だけ、庭になっていたキンカンを興味本位でかじってみて、その強烈な酸っぱさと皮の苦さに「これは食べ物じゃない!」と吐き出してしまったトラウマがあります。

ですから、数年前に「キンカンノアール」を頂き物で貰った時も、「どうせ加工しないと食べられないんだろう」と半信半疑でした。しかし、説明書きに「生で皮ごとどうぞ」とあり、恐る恐る口に入れてみたんです。

衝撃でした。酸っぱさや苦味がほとんどないんです。代わりに、皮の芳醇な香りと、果肉のジューシーな甘さが口いっぱいに広がりました。これは僕が知っているキンカンではありません。完全に「スイーツ」でした。

それ以来、キンカンノアール(や、たまたま)は、僕の中で「酸っぱい加工材料」から「冬のご褒美フルーツ」へと認識が完全に変わりました。旬の時期 になると、自分でも購入して楽しんでいます。

キンカンノアールに関するよくある質問(FAQ)

キンカンノアールと「たまたま」は、結局どっちが美味しいですか?

どちらも糖度16度以上という高い基準をクリアした、日本トップクラスの完熟金柑です。味や甘さに大きな差はなく、どちらも非常に美味しいです。ブランドや産地(鹿児島か宮崎か)の好みで選んでしまって問題ないでしょう。

キンカンノアールは、どうやって食べるのが一番おすすめですか?

水でさっと洗って、そのまま皮ごと丸かじりするのが一番です。皮に苦味がなく、むしろ皮と果肉の間に甘みが凝縮されています。種も少ない品種(ぷちまる) ですが、気になる場合は半分に切って取り除いても良いでしょう。

なぜ「ノアール(Noir=黒)」という名前なんですか?

これは、南九州(鹿児島)の「黒」文化(黒豚、黒酢、黒糖焼酎など)にちなみ、「黒」=「本物・一級品」という意味を込めて名付けられたそうです。黒いパッケージで高級感を演出していますね。

まとめ|キンカンノアールと普通のキンカンの違い

「キンカンノアール」と「普通のキンカン」の違い、もう迷うことはありませんね。

二つの違いを最後にシンプルにまとめます。

  • キンカンノアール「ブランド品(鹿児島産)」。糖度16度以上 で非常に甘く、皮ごと「生食」するデザートフルーツ。
  • 普通のキンカン「従来種」。酸味と苦味が強く、甘露煮やジャムなど「加工」して食べるのが一般的。

キンカンのイメージが「酸っぱいもの」で止まっている方こそ、ぜひ一度「キンカンノアール」や「たまたま」を試してみてください。その甘さと香りに、きっと衝撃を受けるはずです。

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