このことこのわたの違い!日本三大珍味、ナマコの「卵巣」と「腸」

高級な珍味として知られる「このこ」と「このわた」。

どちらも名前が似ており、同じ「ナマコ(海鼠)」から作られるため、混同している方も多いのではないでしょうか。

実はこの二つ、原料となるナマコの「部位」が全く異なります。

「このわた」はナマコの「腸(はらわた)」で作る塩辛です。一方、「このこ」はナマコの「卵巣」を指し、これを塩辛にした「生くちこ」や、乾燥させた「干しくちこ(ばちこ)」という製品になります。

この記事では、この二つの高級珍味の根本的な違いから、製法、味、価格、そして日本三大珍味としての位置づけまで、専門的に徹底比較します。

結論:このことこのわたの違いが一目でわかる比較表

【要点】

「このこ」と「このわた」の決定的な違いは、原料となるナマコの「部位」です。「このわた」は「腸(はらわた)」の塩辛です。一方、「このこ」は「卵巣」のことで、これを塩辛にしたもの(生くちこ)や乾燥させたもの(干しくちこ、ばちこ)を指します。どちらも日本三大珍味に数えられる高級食材です。

まずは、この二つの珍味の主な違いを、一覧表で比較してみましょう。

項目このこ(海鼠子)このわた(海鼠腸)
原料の部位ナマコの「卵巣」ナマコの「腸(内臓)」
別名・製品名生くちこ、干しくちこ、ばちこ(特になし)
主な製法塩蔵(塩辛)、乾燥塩蔵(塩辛)、発酵熟成
形状(生)粒状、紐状の集合体
(干)三味線のバチ状の板状
紐状(腸のまま)
味わい濃厚な旨味、独特の風味強い磯の香り、濃厚な旨味と塩気
食感(生)粒感、ねっとり
(干)硬い、炙ると香ばしい
ねっとり、とろりとしている
希少性非常に希少(このわたより貴重)希少(ナマコ1匹から少量)
価格極めて高価非常に高価
日本三大珍味含まれる(諸説あり)含まれる

「このこ」と「このわた」の定義と「原料(部位)」の根本的な違い

【要点】

どちらもナマコの古い呼び名「こ」から来ています。「このわた」はナマコ(こ)の「わた(腸)」、「このこ」はナマコ(こ)の「こ(子=卵巣)」を意味します。腸か卵巣か、というのが根本的な違いです。

どちらも語源は同じ「ナマコ(こ)」に由来します。

このわた(海鼠腸)とは?

「このわた」は、ナマコの「腸(はらわた)」、すなわち内臓(主に小腸)を指します。

ナマコの腹を割いて腸を取り出し、内部にある泥や砂を丁寧にしごき出し、海水で洗い清め、塩を加えて熟成させた塩辛です。

1匹のナマコから取れる腸はわずか1本であり、5kgのナマコから100g程度しか作れない、非常に貴重な珍味です。

このこ(海鼠子)とは?

「このこ」は、ナマコの「卵巣」を指します。「海鼠子」と書くこともあります。

ナマコの卵巣はオレンジ色(または黄色)の細い糸状のものが束になっており、この卵巣を取り出して塩蔵(塩辛)にしたものが「生くちこ」、または単に「このこ」と呼ばれることがあります。

この「生くちこ」を、糸状の卵巣を丁寧にほぐしながら竹などに掛けて乾燥させたものが、「干しくちこ(ほしくちこ)」または「ばちこ」と呼ばれます。

【最重要】製法・見た目・食べ方の違い

【要点】

「このわた」は腸の塩辛で、トロリとした紐状の見た目をしており、そのまま酒の肴として食べます。「このこ(ばちこ)」は卵巣を乾燥させたもので、三味線のバチのような硬い板状です。食べる際は軽く炙って香ばしさを出して食べます。

製法の違い(塩辛 vs 乾燥)

このわたは、一貫して「塩辛」です。腸を塩漬けにし、発酵・熟成させて作られます。

このこは、製法によって2種類に分かれます。

  1. 生くちこ(このこ):卵巣を塩漬けにした「塩辛」。
  2. 干しくちこ(ばちこ):卵巣を塩漬けにした後、乾燥させた「乾物」。

「このこ」という言葉は、卵巣そのものを指す場合と、塩辛である「生くちこ」を指す場合があるため、少し紛らわしいかもしれません。

見た目と食感の違い

このわたは、ナマコの腸そのものなので、茶褐色~黒褐色で、細長い紐状のものがトロリとした粘液に浸かっています。食感はねっとり、とろりとしています。

このこ(生くちこ)は、オレンジ色の粒々(卵)が集合した塩辛です。食感は粒感があり、ねっとりしています。

このこ(ばちこ・干しくちこ)は、乾燥させているため、三味線のバチのような形の硬い板状です。色は濃いオレンジ色から飴色。そのままでは非常に硬いですが、炙ると柔らかくなり、香ばしさが出ます。

「日本三大珍味」としての位置づけ

【要点】

「このわた」は、ウニ(塩うに)、カラスミ(ボラの卵巣)と並んで「日本三大珍味」の一つとして広く知られています。ただし、ウニの代わりに「このこ(くちこ)」が三大珍味の一つとして挙げられる説もあります。

日本三大珍味として最も一般的な組み合わせは以下の3つです。

  • このわた(ナマコの腸の塩辛)
  • カラスミ(ボラの卵巣の塩漬け乾燥品)
  • ウニ(塩ウニ、ウニの塩辛)

このわたは、江戸時代から徳川将軍家にも献上されていた歴史があり、古くから珍重されてきました。

ただし、諸説あり、ウニの代わりにナマコの卵巣である「このこ(くちこ)」が三大珍味の一つとして紹介されることもあります。

味・香り・旬の違い

【要点】

旬はどちらもナマコの産卵期にあたる真冬です。「このわた」強烈な磯の香りと塩気、濃厚な旨味が特徴です。「このこ(ばちこ)」は、炙ることで香ばしさが増し、噛むほどに凝縮された旨味とほのかな甘みが出てきます。

このわたの味わい

旬:原料となるナマコの旬は、産卵期を控え、腸が太く肉厚になる真冬(11月〜3月頃)です。

味わい:口に入れた瞬間に広がる芳醇な磯の香りと、強い塩気、そしてその奥にある非常に濃厚な旨味が特徴です。まさに「海の珍味」といった味わいで、日本酒との相性は抜群です。

このこ(くちこ・ばちこ)の味わい

旬:卵巣が最も肥大する産卵期の真冬に作られます。

味わい:
「生くちこ(塩辛)」は、このわたに似た磯の香りと塩気の中に、卵巣特有の粒感とまろやかな旨味があります。

「干しくちこ(ばちこ)」は、乾燥によって旨味が凝縮されています。そのまま食べると硬いですが、軽く炙ることで香ばしさが一気に増し、噛みしめるごとに凝縮された旨味とほのかな甘みが溢れ出します。

栄養・成分の違い

【要点】

どちらも塩分濃度が非常に高い「塩蔵品」です。栄養素を摂るというよりは、その凝縮された旨味と香りを楽しむ「嗜好品」としての側面が強いです。

このこもこのわたも、タンパク質やアミノ酸(旨味成分)、各種ミネラルを含んでいますが、製法上、塩分濃度が非常に高い(塩辛)のが特徴です。

健康のために積極的に食べるというよりは、その強い塩味と旨味で、お酒やご飯を少量楽しむための「肴(さかな)」と言えます。

価格と希少性の違い

【要点】

どちらも日本三大珍味に数えられる超高級食材です。特に「このこ(卵巣)」はナマコ1匹から取れる量が腸(このわた)よりもさらに少なく、特に乾燥させた「ばちこ」の製造には膨大な手間と大量の卵巣が必要なため、最も高価な珍味の一つとされています。

このわたは、1匹のナマコから1本しか取れない腸を、職人が手作業で丁寧に洗浄・加工するため、非常に高価です。商品によっては20gで4,000円近くする、まさに高級珍味です。

このこ(くちこ・ばちこ)は、このわた以上に希少です。特に「ばちこ」は、数多くのナマコの卵巣を集め、それを丁寧に干し上げるという大変な手間がかかります。そのため価格も非常に高価で、「小ばちこ1枚」で1万円を超えることもあります。

体験談:高級珍味「このこ」と「このわた」の衝撃

僕が初めて「このわた」を体験したのは、北陸の小料理屋でのことでした。日本酒を頼むと、店主が「良いものがあるよ」と小鉢を出してくれました。中には、黒褐色のトロリとした紐状のもの。

「これは『このわた』。ナマコの腸の塩辛だよ」と教えられ、恐る恐る爪楊枝の先に少しだけつけて口に運びました。

その瞬間、口の中に強烈な磯の香りが爆発しました。塩気も強いのですが、それ以上に濃厚な旨味が舌に絡みつき、すぐに日本酒を流し込むと、酒の甘みとわたの旨味が混ざり合い、まさに至福の味わいでした。「これが日本三大珍味か…」と感動したのを覚えています。

一方で「このこ(ばちこ)」は、また別の機会に知りました。三味線のバチのような形の、飴色の板状のもの。これを七輪で軽く炙って手で裂いて食べるのですが、今度は磯の香りというより、凝縮された魚卵のような香ばしさと、噛むほどにじみ出る深い旨味に驚きました。

「このわた」が海の香りをそのまま閉じ込めた「生」の珍味なら、「ばちこ(このこ)」は旨味を乾燥・熟成させた「乾」の珍味。

どちらも同じナマコから作られるとは信じられないほど、全く異なる個性を持つ「究極の酒肴」だと実感した体験です。

このことこのわたの違いに関するよくある質問(FAQ)

Q1. 結局、「このこ」と「このわた」はどっちがどっちですか?

A1. 「このわた」が「腸(わた)」の塩辛「このこ」が「卵巣(こ)」の塩辛(生くちこ)や乾物(ばちこ)です。ナマコの古い呼び名「こ」を覚えておくと、「こ・の・わた(腸)」「こ・の・こ(子=卵巣)」と区別しやすいですね。

Q2. 「くちこ」や「ばちこ」と「このこ」の関係は?

A2. 「このこ」はナマコの卵巣そのものを指す言葉です。その卵巣(このこ)を塩辛にしたものが「生くちこ」、乾燥させたものが「干しくちこ(ばちこ)」と呼ばれます。

Q3. なぜ「このわた」は日本三大珍味なのですか?

A3. ウニ(塩うに)、カラスミ(ボラの卵巣)と並び称されるのは、その独特の風味と濃厚な旨味、そしてナマコ1匹から少量しか取れない希少価値、さらに江戸時代から将軍家に献上されていたという歴史的背景があるためです。

まとめ|このことこのわた、賢い使い分け術

「このこ」と「このわた」、どちらもナマコから作られる日本最高峰の珍味ですが、その違いは明確です。

  • このわた(海鼠腸):
    ナマコの「腸」の塩辛。トロリとした食感と、強烈な磯の香りが特徴。そのまま酒の肴に。
  • このこ(海鼠子):
    ナマコの「卵巣」のこと。塩辛(生くちこ)や、乾燥させた乾物(ばちこ)がある。「ばちこ」は軽く炙って食べる。

どちらも非常に高価で希少な食材ですが、特に「このこ(ばちこ)」は、このわた以上に貴重な珍味中の珍味と言えるでしょう。

日本酒を深く愛する方なら、一度は試してみたい食材ですね。その際は、ぜひ「腸」と「卵巣」の違いを意識して味わってみてください。

当サイト「違いラボ」では、他にも様々な食材・素材の違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。