パン屋さんで「ロデブ」と「リュスティック」という名前を見て、どちらも似たようなハード系のパンだな、と違いに迷ったことはありませんか?
どちらもフランスにルーツを持ち、シンプルな材料で作られる人気のパンですが、実は「加水率(水分量)」と「製法」に決定的な違いがあります。
最大の違いは、ロデブが南フランス・ロデヴ発祥の「超・高加水パン」の代表格であるのに対し、リュスティックは「切りっぱなし」製法が特徴の「高加水パン」である点です。
この記事を読めば、二つのパンの明確な違いから、名前の由来、美味しい食べ方までスッキリ理解でき、パン選びがもっと楽しくなりますよ。
それではまず、二つの違いを比較表で見ていきましょう。
結論|ロデブとリュスティックの違いが一目でわかる比較表
ロデブとリュスティックの最大の違いは「加水率」と「形状」です。ロデブは加水率80%~100%超の「超高加水」パンで、大きく焼いて切り分けるのが特徴です。一方、リュスティックは加水率70%~80%程度の「高加水」パンで、生地を成形せず「切りっぱなし」で焼くため不揃いな形になります。
どちらも「リーン」と呼ばれる小麦粉・水・塩・酵母といったシンプルな材料で作られますが、その個性は異なります。
| 比較項目 | ロデブ (Pain de Lodève) | リュスティック (Rustique) |
|---|---|---|
| 発祥地 | 南フランス・ロデヴ(Lodève) | 日本(フランスの製法がベース) |
| 名前の意味 | ロデヴのパン | 田舎風、素朴な(フランス語) |
| 加水率(目安) | 80% ~ 100%超(超高加水) | 70% ~ 80%程度(高加水) |
| 製法・成形 | 生地が非常に緩く、成形は困難。 大きく焼くのが伝統。 | 生地を分割し、成形せず「切りっぱなし」で焼く。 |
| 形状 | 大きな円形や楕円形(を切り分ける) | 小さめで不揃い(四角、ナマコ形など) |
| クラム(中身) | みずみずしく、非常にしっとり・もっちり | しっとり、もっちり、気泡が不揃い |
| クラフト(皮) | 薄めでパリッとしている | パリッと香ばしい |
ロデブとリュスティックの定義と起源・発祥の違い
ロデブは南フランス・ロデヴの町で生まれた伝統的なパンです。一方、リュスティックはフランス語で「田舎風」を意味しますが、パン自体はフランスの伝統製法をベースに日本で広まったパンとされています。
名前はどちらもフランス語由来ですが、パンとしてのルーツは異なります。
ロデブ (Pain de Lodève) とは?
「ロデブ(パン・ド・ロデヴ)」は、その名の通り、南フランスのロデヴ(Lodève)という町が発祥のパンです。
もともとは地元のパン職人たちが作っていたパンですが、フランスのパン職人ジル・ルヴァ氏がその製法を確立し、広めたことで有名になりました。
伝統的にルヴァン種(自然発酵種)を使い、非常に多くの水分を含ませて大きく焼き上げるのが特徴で、「超高加水パン」の代名詞的存在となっています。
リュスティック (Rustique) とは?
「リュスティック(Rustique)」は、フランス語で「田舎風の」「素朴な」といった意味を持つ言葉です。
フランスに古くからある製法(高加水で成形しない)をベースにしていますが、「リュスティック」という名前のパン自体は、日本のパン職人が開発した、あるいは日本でその名が広まったという説が有力です。フランスのパンの神様と呼ばれるレイモン・カルヴェル氏の指導を受けた日本の職人たちが、その技術と思想を受け継いで生み出したとも言われています。
決定的な違いは「加水率」と「製法」
どちらも高加水ですが、ロデブは加水率80%超えが当たり前の「超高加水」で、生地が液体に近くなります。一方、リュスティックは加水率70~80%程度の「高加水」です。製法も、ロデブは大きく焼くのに対し、リュスティックは生地を切りっぱなしで焼くのが特徴です。
二つのパンの食感を決めているのが、水分量と作り方です。
共通点:シンプルな材料と「高加水」
ロデブもリュスティックも、「リーン(Lean)」なパンに分類されます。これは、砂糖やバター、卵などの副材料をほとんど使わず、小麦粉、水、塩、酵母(イーストやルヴァン種)というシンプルな材料で作るパンのことです。
そして、どちらも「高加水(たかすい)」、つまり小麦粉に対する水の割合が非常に高いのが共通した特徴です。(一般的なフランスパンの加水率が65%~70%程度)
違い①:ロデブは「超高加水」、リュスティックは「高加水」
高加水という点は共通していますが、そのレベルが異なります。
リュスティックの加水率は、一般的に70%~80%程度です。これでも十分に高加水で、生地はベタベタとして扱いにくくなります。
ロデブはそれをさらに上回り、加水率は80%~100%、時には100%を超えるレシピも珍しくありません。加水率100%とは、小麦粉と水の重さが同じということで、生地はもはや固体ではなく、液体(ペースト状)に近くなります。これが「超高加水」と呼ばれる理由です。
違い②:ロデブは「大きく焼く」、リュスティックは「切りっぱなし」
加水率の違いが、製法と形状の違いを生みます。
リュスティックは、高加水で生地が緩いため、バゲットのように丸めたり、細長く伸ばしたりといった成形(形を整えること)をしません。発酵させた生地を四角やナマコ形に分割し、そのままオーブンに入れる「切りっぱなし」製法が特徴です。これにより、素朴で不揃いな形に焼き上がります。
ロデブは、加水率がさらに高いため、生地がデロデロで成形はほぼ不可能です。伝統的に、大きな円形や楕円形にどっしりと大きく焼き上げ、お店ではそれをスライスしたり、量り売りしたりするのが一般的です。
味・食感・見た目(形状)の違い
ロデブは、水分が非常に多いため、クラム(中身)が驚くほどみずみずしく、しっとり、もっちりしています。リュスティックは、クラフト(皮)がパリッと香ばしく、クラムは大小の気泡が特徴のもっちり食感です。
加水率と製法の違いは、そのまま味と食感の違いに直結します。
ロデブ:究極のみずみずしさ・もっちり感
ロデブの最大の特徴は、そのクラム(中身)のみずみずしさです。超高加水で焼き上げられるため、水分が蒸発しきらずにパン内部に留まります。
そのため、クラムは気泡が大きく(ボコボコと穴が開いている)、驚くほどしっとり、もっちり、ねっとりとした独特の食感を生み出します。クラフト(皮)は比較的薄めで、パリッとしていますが、主役はあくまで中の水分豊かなクラムです。
リュスティック:不揃いな形と、パリ・もち食感のバランス
リュスティックは、前述の通り「切りっぱなし」で焼くため、形が不揃いなのが見た目の特徴です。
加水率が高いため、クラムは大小さまざまな気泡が入り、しっとり・もっちりとしています。ロデブほどの極端なみずみずしさはありませんが、その分、クラフト(皮)はパリッと香ばしく焼き上がり、クラムのもっちり感とのバランスが良いのが特徴です。
主な食べ方・相性の良い食材
どちらも小麦の風味を活かした食事パンです。ロデブはみずみずしさを活かしてサンドイッチやタルティーヌに最適です。リュスティックは、スープやシチューに添えたり、チーズやハムと合わせたりするのに万能です。
ロデブもリュスティックも、バターや砂糖をほとんど使わないリーンなパンなので、料理の味を邪魔しません。どちらも最高の「食事パン」です。
ロデブのおすすめの食べ方
ロデブは大きく焼かれることが多いため、薄くスライスして食べるのが基本です。その究極のしっとり感とみずみずしさは、サンドイッチやタルティーヌ(オープンサンド)にすると最も引き立ちます。具材の水分を吸いすぎず、パン自体が具材と一体化するような食感が楽しめます。もちろん、そのままトーストしてバターを塗るだけでも絶品です。
リュスティックのおすすめの食べ方
リュスティックは、その香ばしい皮とバランスの良いもっちり感で、どんな料理にも合います。ビーフシチューやミネストローネなどのスープや煮込み料理に浸して食べるのは最高ですね。また、チーズや生ハム、オリーブオイルとの相性も抜群です。
体験談|パン職人が語る「ロデブ」と「リュスティック」の生地の違い
僕が以前、ベーカリーで働いていた時の話です。
その店ではリュスティックもロデブも焼いていましたが、パン職人のチーフがいつも生地の扱いで苦労していたのを覚えています。
リュスティックの生地(加水率75%)は、大きな発酵用の箱の中で、濡らした手で優しく「パンチ」(生地を折りたたむ作業)をしていました。それでもベタベタで、「生地を扱うというより、生地に触らせてもらう感じだよ」と笑っていました。
しかし、ロデブ(加水率95%)の日は、厨房の空気がさらにピリッとします。生地は箱の中で、もはや液体のように「デロデロ」になっていました。チーフはそれを大きなカード(スケッパー)で、すくい上げるようにして分割台に移し、最小限のタッチで丸めていました。
「リュスティックはまだ理性で扱えるけど、ロデブは本能で扱うパンだ。少しでも雑に触ると、気泡が全部死んで、ただの重いカタまりになっちまう」
焼き上がったロデブの、信じられないほどみずみずしい断面を見たとき、あのデロデロの生地を操る職人の技術に感動したのを覚えています。
ロデブとリュスティックに関するよくある質問(FAQ)
どっちが作るのが難しいですか?
どちらも高加水パンなので、家庭でのパン作りとしては難易度が高いです。特にロデブは加水率が桁違いに高いため、生地の扱い(パンチや分割・丸め)が非常に難しく、パン職人でも熟練の技術が求められます。
カンパーニュとの違いは何ですか?
カンパーニュもフランス語で「田舎パン」を意味しますが、一般的にライ麦を配合することが多く、香ばしさや軽い酸味が特徴です。加水率はロデブやリュスティックほどは高くない(60%~70%台)ことが一般的です。
バゲットとの違いは何ですか?
バゲットは細長い形状が特徴で、加水率は65%~70%程度と、ロデブやリュスティックより低いです。クラム(中身)のもっちり感よりも、クラフト(皮)のパリパリとした食感と香ばしさを楽しむパンと言えます。
どちらも酸っぱいパンですか?
使用する酵母によります。伝統的な製法でルヴァン種(サワー種)を使っている場合は、特有の穏やかな酸味が出ます。しかし、最近ではパン酵母(イースト)を使って、酸味を抑えて小麦の甘みを引き出したタイプのロデブやリュスティックも多く作られています。
まとめ|ロデブとリュスティック、どちらを選ぶべき?
ロデブとリュスティックの違い、これでパン屋さんでも自信を持って選べそうですね。
どちらもシンプルな材料ながら、職人の技術が光る奥深いパンです。
- ロデブがおすすめな人
パンのクラム(中身)の、みずみずしく、しっとり、もっちりとした究極の食感を味わいたい方。サンドイッチやタルティーヌで、具材とパンの一体感を楽しみたい方。 - リュスティックがおすすめな人
クラフト(皮)のパリッとした香ばしさと、クラムのもっちりした食感のバランスを楽しみたい方。スープやシチューに合わせる万能な食事パンを探している方。
ぜひ、パン屋さんで見かけたら、二つの「高加水パン」の世界を食べ比べてみてください。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な「料理・メニューの違い」について詳しく解説しています。ぜひ他の記事もチェックしてみてください。
パンの基本的な栄養成分については、文部科学省の「日本食品標準成分表」なども参考にされると、より理解が深まりますよ。