ナポリピッツァの代表格、「マリナーラ」と「マルゲリータ」。
どちらもトマトベースのピッツァですが、名前が似ていることもあり、その違いについて迷ってしまうことはありませんか?僕も昔は「安いほうがマリナーラ?」くらいの認識でした。
実はこの二つ、最も決定的な違いは「チーズ」の有無にあります。
この記事を読めば、マリナーラとマルゲリータの明確な違いから、それぞれの発祥、味の特徴、そして通な楽しみ方までスッキリと理解できます。もうピッツェリアのメニューの前で悩むことはありませんよ。
それではまず、二つの違いがひと目でわかる比較表から見ていきましょう。
結論|マリナーラとマルゲリータの違いが一目でわかる比較表
マリナーラとマルゲリータの決定的な違いは「チーズの有無」です。マリナーラはチーズを一切使わず、トマトソース、ニンニク、オレガノ、オリーブオイルで仕上げるシンプルなピッツァです。一方、マルゲリータは「モッツァレラチーズ」が必須で、トマトソース、モッツァレラチーズ、バジルでイタリア国旗の色合いを表現したピッツァです。
二つのピッツァの主な違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | マリナーラ (Marinara) | マルゲリータ (Margherita) |
|---|---|---|
| チーズの有無 | なし | あり(モッツァレラ) |
| 主な具材 | トマトソース、ニンニク、オレガノ | トマトソース、モッツァレラ、バジル |
| 発祥・由来 | ナポリの「船乗り風」 | イタリアの「マルゲリータ王妃」 |
| 色合い | 赤(トマトソース)が基調 | 赤・白・緑(イタリア国旗) |
| 味の印象 | トマトの酸味とニンニクの香りが際立つ | チーズのコクとバジルの香りが調和 |
マリナーラとマルゲリータの定義と起源
マリナーラは「船乗り風」という意味で、チーズが不要なシンプルなピッツァとして誕生しました。マルゲリータは1889年、イタリアのマルゲリータ王妃に捧げるために、イタリア国旗を模して作られたとされています。
この二つのピッツァ、実はその生まれ育ち(起源)が名前の由来に大きく関係しています。
マリナーラ(Marinara)とは?
「マリナーラ」はイタリア語で「船乗り風(alla marinara)」という意味を持ちます。
その名の通り、ナポリの船乗りたちが食べていたピッツァが原型とされています。船の上でも長期保存がきく食材、すなわちトマト、ニンニク、オレガノ(乾燥ハーブ)、オリーブオイルだけで作られていました。
当時、チーズ(特にモッツァレラ)は高価で、何より傷みやすい食材でした。そのため、日持ちする食材だけで構成されたマリナーラは、船乗りたちにとって合理的で安価な食事だったのです。
マルゲリータ(Margherita)とは?
「マルゲリータ」は、イタリア王妃の名前に由来します。
最も有名な説は、1889年にイタリアのウンベルト1世国王とマルゲリータ王妃がナポリを訪れた際、当代随一のピッツァ職人ラファエレ・エスポジトが献上したというものです。
彼は、イタリアの国旗(トリコローレ)を表現するため、「赤(トマトソース)、白(モッツァレラチーズ)、緑(バジル)」を使ったピッツァを作りました。王妃がこのピッツァを大変気に入ったことから、職人は王妃の名前にちなんで「ピッツァ・マルゲリータ」と名付けたとされています。
決定的な違い|チーズの有無と基本トッピング
マリナーラはチーズを一切使わず、トマトソースの酸味とニンニクの香りが主役です。マルゲリータはモッツァレラチーズのコクと、バジルの爽やかな香りが命であり、この組み合わせが王道とされています。
起源が異なる二つのピッツァは、当然ながら使う食材(トッピング)も明確に異なります。これが味の違いを生む最大の要因ですね。
マリナーラ:「チーズなし」トマト・ニンニク・オレガノ
マリナーラのトッピングは、チーズを一切使用しません。
生地の上に塗るのはトマトソース。その上にスライスまたはみじん切りにしたニンニクと、乾燥オレガノを散らし、最後にオリーブオイルを回しかけて焼き上げます。
非常にシンプルだからこそ、ピッツァ生地そのものの味、トマトソースの品質、そしてニンニクとオレガノの香りがダイレクトに問われる、奥深いピッツァです。
マルゲリータ:「チーズあり」トマト・モッツァレラ・バジル
マルゲリータにモッツァレラチーズは不可欠です。
トマトソースを塗った生地の上に、モッツァレラチーズ(伝統的には水牛の乳から作られる「モッツァレラ・ディ・ブーファラ」が最上とされます)とバジルの葉を乗せ、オリーブオイルをかけて焼き上げます。
チーズが加わることで、マリナーラにはない濃厚なコクとミルキーな風味が生まれます。
味・香り・見た目の違い
見た目は、マルゲリータがイタリア国旗の三色(赤・白・緑)で彩り鮮やかなのに対し、マリナーラはトマトの赤一色で非常にシンプルです。味と香りは、マリナーラがニンニクとオレガノの刺激的な香りが特徴なのに対し、マルゲリータはチーズのコクとバジルの爽やかな香りが特徴です。
見た目の違い(シンプルな赤 vs イタリア国旗)
二つのピッツァは、焼き上がりの見た目も対照的です。
マルゲリータ
トマトの「赤」、モッツァレラの「白」、バジルの「緑」が、焼き上がった生地の上で鮮やかなコントラストを描きます。まさにイタリア国旗を象徴する、華やかな見た目と言えるでしょう。
マリナーラ
チーズがないため、全体がトマトソースの「赤」一色に見えます。ところどころにニンニクのスライスやオレガノの黒い粒が散らばる、非常に素朴でシンプルな見た目です。
味と香りの違い(ニンニク vs バジル)
味わいと香りは、それぞれのキーとなる食材が決定づけます。
マルゲリータ
熱でとろけたモッツァレラチーズのミルキーなコクと塩気が、トマトソースの酸味と一体となります。そこに、焼き上がったバジルの爽やかで甘い香りが加わり、王道ともいえる完璧なハーモニーを生み出します。
マリナーラ
チーズがない分、トマトソース本来の酸味と甘みがストレートに感じられます。そして何より、加熱されて香りが出たニンニクのパンチと、オレガノの清涼感あるハーブの香りが、食欲を強く刺激します。
【体験談】ピッツェリアで学んだ「真のナポリピッツァ」の魅力
僕がこの二つの違いを本当に理解したのは、数年前に本格的なナポリピッツァの専門店を訪れた時のことです。
その店のピッツァ職人(ピッツァイオーロ)が、常連客らしき人に「今日はマリナーラで」と注文されているのを見ました。「チーズなしのピザなんて美味しいのかな?」と不思議に思っていたんです。
思い切って僕もマリナーラを注文してみました。運ばれてきた瞬間に、まずニンニクとオレガノの強烈な香りが鼻を抜けました。「これは食欲をそそるぞ…」と。
一口食べて、本当に驚きました。チーズのまろやかさがない分、生地そのものの小麦の甘みや塩気、そしてトマトソースのフレッシュな酸味がダイレクトに伝わってくるんです。
その職人さんが後で教えてくれたのですが、「本当に生地に自信がある店は、マリナーラを食べてみてほしい」とのこと。生地の味をごまかせない、まさに職人の腕が試されるピッツァだそうです。
マルゲリータが華やかな「王妃(主役)」のピッツァなら、マリナーラは生地とソースの旨味をストレートに味わう「船乗り(職人)」のピッツァなんだと、深く納得した体験でした。
マリナーラとマルゲリータに関するよくある質問
マリナーラの方が値段が安いのはなぜですか?
はい、一般的にマリナーラの方がマルゲリータよりも価格が安く設定されています。
これは単純に、原価の高いモッツァレラチーズを使っていないからです。材料がシンプルな分、価格も抑えられているんですね。
マリナーラにチーズをトッピングしたらマルゲリータになりますか?
いいえ、それはマルゲリータにはなりませんね。
マリナーラの基本トッピングである「ニンニク」と「オレガノ」は、マルゲリータの基本トッピング(モッツァレラとバジル)とは異なります。もしマリナーラにチーズをトッピングしたら、それは「ニンニクとオレガノが乗ったチーズピザ」という別の料理になります。
結局、どっちが定番で人気なんですか?
どちらもナポリピッツァの定番中の定番ですが、一般的に人気が高いのはマルゲリータでしょう。
やはりチーズのコクとバジルの香りの組み合わせは万人に愛される王道の味です。一方、マリナーラは、チーズが苦手な方や、生地とトマトの味をシンプルに楽しみたい「通」な方に好まれる傾向があるかもしれませんね。
まとめ|今日の気分はどっち?シンプルなマリナーラ、王道のマルゲリータ
マリナーラとマルゲリータの違い、これで完璧ですね。
最後に、二つのピッツァのポイントをもう一度おさらいしましょう。
- マリナーラ:チーズなし。トマト・ニンニク・オレガノが基本。生地とトマトの味、ニンニクの香りを楽しみたい時に。
- マルゲリータ:チーズあり。トマト・モッツァレラ・バジルが基本。チーズのコクと王道のハーモニーを楽しみたい時に。
どちらもナポリピッツァの歴史を語る上で欠かせない、シンプルかつ完成された料理です。
「今日は王道のマルゲリータにしよう」「明日は通っぽくマリナーラで生地の味を楽しんでみよう」と、その日の気分で選べるようになると、ピッツァの楽しみ方が一層深まるはずですよ。
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