昔あげと油揚げの違い:「浮かし揚げ」か「二度揚げ」か?

煮物や味噌汁、いなり寿司など、和食に欠かせない「油揚げ」。

スーパーの豆腐売り場に行くと、「油揚げ」と並んで「昔あげ」という商品を見かけることはありませんか?

「どちらも同じ油揚げじゃないの?」と思うかもしれませんが、実はこの二つ、製法と食感、そして得意な料理が全く違います

「油揚げ」は薄く、中が空洞で袋状に開きやすいのに対し、「昔あげ」は肉厚で、中に豆腐の食感がしっかり残っているのが大きな違いです。

この記事を読めば、その明確な違いから、製法、味しみ、そして「いなり寿司にはどっち?」という疑問までスッキリと理解できます。

それでは、詳しく見ていきましょう。

結論|昔あげと油揚げの違いを一覧表で比較

【要点】

最大の違いは「形状」と「製法」です。「油揚げ」は薄切り豆腐を二度揚げして作られることが多く、中が空洞で袋状に開きやすいのが特徴です。一方、「昔あげ」は「浮かし揚げ製法」などで作られ、肉厚で豆腐質が中にしっかり残っているのが特徴です。

「一般的な油揚げ(薄揚げ)」と「昔あげ」の主な違いを、一目で分かるように一覧表にまとめました。

項目油揚げ(一般的な薄揚げ)昔あげ
定義薄切り豆腐を揚げた食品の総称油揚げの一種。「浮かし揚げ」などで作られる肉厚タイプ(または特定の商品名)
主な製法低温と高温での二度揚げ(一般的)浮かし揚げ製法(手揚げ風)
形状・食感薄い、中が空洞、ふんわり、しっとり肉厚豆腐質が詰まっている、しっとり、やわらか
袋状に開けるか開きやすい開きにくい(豆腐が詰まっているため)
味・風味比較的淡白豆腐の旨みと油のコクが凝縮
味しみの良さ良い非常に良い(肉厚な生地が煮汁をよく含む)
主な用途いなり寿司餅巾着、きつねうどん煮物味噌汁の具、炒め物、トッピング

「油揚げ」と「昔あげ」:定義と関係性(「昔あげ」は「油揚げ」の一種)

【要点】

「油揚げ」は、薄切り豆腐を油で揚げた食品全般を指す「総称」です。その中には様々な種類があり、「昔あげ」は、特定の製法(浮かし揚げ)によって作られた「肉厚で豆腐感が強い」タイプの一種を指します。

まず、この二つの言葉の関係性を整理しましょう。

油揚げ(あぶらあげ)とは?

「油揚げ」は、薄切りにした豆腐を油で揚げた食品の「総称」です。「厚揚げ(生揚げ)」が豆腐の内部の白さを残すのに対し、油揚げは中まで火が通っているのが特徴です。

この「油揚げ」というカテゴリーの中には、非常に多くの種類が存在します。

  • 薄揚げ(うすあげ):一般的ないなり寿司や味噌汁に使われるタイプ。
  • 寿司揚げ(すしあげ):いなり寿司用に味付けしやすいよう、正方形などにされたもの。
  • 大判揚げ・厚揚げ:新潟の「栃尾揚げ」や福井の「竹田の油揚げ」のように、地域性があり、分厚く食べ応えのあるもの。
  • 昔あげ:この記事で解説する、肉厚で豆腐感が残ったタイプ。

昔あげ(むかしあげ)とは?

「昔あげ」は、上記で分類した「油揚げ」の中の一つの種類(タイプ)を指します。

もともとは、株式会社アサヒコが「昔ながらの浮かし揚げ製法」で製造・販売している大ヒット商品の「商品名」です。この商品が「日本で一番売れている油揚げ」 となるほど普及したため、今ではアサヒコの商品だけでなく、同様の製法で作られた「肉厚で豆腐質が詰まった油揚げ」の一般名称としても使われるようになっています。

【重要】製法・形状・食感の決定的な違い

【要点】

一般的な油揚げ(薄揚げ)は、水分を抜き、低温と高温で二度揚げすることで、中を空洞(袋状)にします。一方、「昔あげ」は「浮かし揚げ製法」でじっくり揚げ、あえて中に豆腐質を残すことで、肉厚でしっとりとした食感を生み出しています。

なぜ二つの食感がこれほど違うのかは、製法に秘密があります。

一般的な油揚げ(薄揚げ)の製法と食感

私たちが「油揚げ」と聞いてイメージする、いなり寿司などに使うふんわりした「薄揚げ」は、特別な工夫がされています。

まず、油揚げ専用の硬い豆腐生地の水分をできる限り抜きます。その後、110〜120℃の低温の油でまずじっくり揚げます。ここで生地が膨張し、内部に空洞が作られます。次に、180〜200℃の高温の油で二度揚げし、表面をカリッとさせ、きれいな揚げ色を付けます。

この「二度揚げ」製法により、中はふんわりと空洞になり、手で簡単に袋状に開くことができるのです。

昔あげ(浮かし揚げ)の製法と食感

一方、「昔あげ」の代表的な製法は「浮かし揚げ製法」と呼ばれます。

これは、かつての職人が手揚げしていた様子を再現したもので、油に生地を浮かせて、何度もひっくり返しながらじっくりと揚げていきます。

この製法では、一般的な薄揚げのように極端な二度揚げで内部を膨張させません。そのため、中まで豆腐質がギュッと詰まった状態に仕上がります。

結果として、食感は「ふんわり」ではなく、「しっとり」「やわらか」で、豆腐の食べ応え(肉厚感)がしっかりと感じられます。

味・風味・「味しみ」の違い

【要点】

「昔あげ」は、豆腐質が詰まっているため、豆腐そのものの旨味と油のコクが凝縮されています。また、その肉厚な生地がスポンジのように煮汁を吸うため、一般的な油揚げよりも「味しみが良い」のが最大の特徴です。

食感が違えば、味わいも変わってきます。

一般的な油揚げ(薄揚げ)は、中が空洞でスポンジ状になっているため、味しみは良いですが、油揚げ自体の味は比較的淡白です。

昔あげは、中に豆腐質がたっぷり残っているため、豆腐(大豆)の旨味と、揚げ油のコクが凝縮されています

さらに、その肉厚でしっとりした生地が、煮物や味噌汁の煮汁をたっぷりと吸い込みます。そのため、一般的な油揚げ以上に「味しみが良い」と評価されています。

相模屋食料の「田舎あげ」(昔あげと同様の浮かし揚げ製法)の商品説明でも、「口に入れた時に、じゅわっと広がる煮汁の旨さ」が特徴として挙げられています。

料理での使い分け・最適な用途の違い

【要点】

中が空洞で袋状に開く「一般的な油揚げ」は、いなり寿司や餅巾着など、中に何かを詰める料理に最適です。一方、豆腐感が強く味しみが良い「昔あげ」は、煮物や味噌汁、うどんの具など、油揚げ自体を具材として味わう料理に最も向いています。

それぞれの長所を活かすことで、料理は格段に美味しくなります。

一般的な油揚げが向いている料理(いなり寿司・巾着)

中が空洞で、手で簡単に開いて袋状にできる「一般的な油揚げ(薄揚げ)」の特性は、「詰める」料理で真価を発揮します。

  • いなり寿司(すし揚げ)
  • 餅巾着(おでんの具)
  • きつねうどん
  • 信田巻き(野菜などを巻く)

昔あげが向いている料理(煮物・味噌汁の具)

豆腐の食感が残り、袋状に開きにくい「昔あげ」は、「具材そのもの」として味わう料理に最適です。

  • 煮物(ひじきの煮物、筑前煮など)
  • 味噌汁の具
  • うどんや鍋の具
  • 炒め物(野菜炒め、チャンプルーなど)
  • トースターで焼く(醤油やネギをかけて、おつまみに)

肉厚で味が染み込みやすいため、料理の主役級の存在感を出してくれます。

体験談|いなり寿司で知った「開けない」油揚げ

僕も昔、この違いを知らずに大失敗したことがあります。

ある日、急にいなり寿司が食べたくなり、スーパーで一番美味しそうに見えた、少し肉厚な「油揚げ」を買って帰りました。それが、今思えば「昔あげ」タイプの製品だったんです。

レシピ通りに油抜きをして、甘辛く煮付け、いざ酢飯を詰めようと油揚げを半分に切って開こうとしました。ところが……

「開かない!中が全部くっついてる!」

いつも使っていた薄い油揚げのように、中が空洞の袋状になっておらず、豆腐がみっちりと詰まっていたんです。無理やり開こうとすると、ボロボロと破れてしまう始末。

「いなり寿司用じゃなかった……」と愕然としましたね。

結局、その日は酢飯に、破れた油揚げを刻んで混ぜる「混ぜごはん」に変更。それはそれで味が染みて美味しかったのですが、求めていたものとは全く違うものが出来上がりました。

この失敗から、「いなり寿司や巾着には、中が空洞の薄い油揚げ(薄揚げ・すし揚げ)」「煮物や味噌汁の具として豆腐の食感を楽しみたい時は、肉厚な昔あげ」と、明確に使い分けるようになりました。パッケージの見た目だけでなく、何のための油揚げかを知っておくのは大事ですね。

昔あげと油揚げに関するよくある質問(FAQ)

質問1:「昔あげ」という名前は、アサヒコ(相模屋)のオリジナル商品名ですか?

はい、元々は株式会社アサヒコ(旧 相模屋食料の一部門)の特定の商品名です。1991年に発売されたロングセラー商品で、「日本で一番売れている油揚げ」 とも言われるほど普及したため、現在では「浮かし揚げ製法」で作られた肉厚タイプの油揚げの総称(一般名称)としても使われるようになっています。

質問2:「昔あげ」と「栃尾揚げ」の違いは何ですか?

どちらも肉厚な油揚げですが、「栃尾揚げ」は新潟県長岡市(旧 栃尾市)の名産品で、一般的な油揚げの約3倍(長さ約20cm、厚さ約3cm)にもなる「ジャンボサイズ」が特徴です。一方、「昔あげ」は一般的な油揚げと同じくらいのサイズ(長方形)ですが、厚みが肉厚になっています。

質問3:「昔あげ」も「油抜き」は必要ですか?

はい、基本的には油抜きをした方が良いでしょう。油抜きをすることで、油臭さが抜け、味が格段に染み込みやすくなります。ただし、最近はアサヒコの「おだしがしみたきざみあげ」のように、油抜き不要でそのまま使えるよう加工された便利な商品も増えています。

まとめ|昔あげと油揚げ、目的別おすすめの選び方

「昔あげ」と「油揚げ」の違い、明確になりましたでしょうか。

「油揚げ」は総称であり、「昔あげ」はその中でも「肉厚で豆腐感が残り、味しみが良い」という特徴を持つタイプ(または商品名)でした。

最後に、あなたがどちらを選ぶべきか、目的別にまとめます。

  • 一般的な油揚げ(薄揚げ)を選ぶべき人
    「いなり寿司」や「餅巾着」など、中に具材を詰めたい人。きつねうどんのような、ふんわりとした食感を求めている人。
  • 昔あげを選ぶべき人
    「煮物」や「味噌汁の具」として、油揚げ自体の食感と味わいを楽しみたい人。肉厚で、煮汁がじゅわっと染み込む食感が好きな人。

スーパーで選ぶ際は、パッケージに「昔あげ」と書いてあるか、または「いなり寿司用」「すしあげ」と書いてあるかを確認すると、用途を間違えずに済みますよ。

当サイト「違いラボ」では、他にも様々な食材・素材の違いについて詳しく解説しています。