「ナボナ」と「ブッセ」、どちらもフワフワの生地でクリームを挟んだ美味しいお菓子ですよね。
でも、この二つ、何がどう違うのか具体的に説明しようとすると、意外と迷ってしまいませんか。
実はこの二つの最大の違いは、「ナボナ」が特定のお店の「商品名」であるのに対し、「ブッセ」はそうしたお菓子の「一般名称」であるという点にあります。
この記事では、ナボナとブッセの基本的な定義から、製法、食感、そして「お菓子のホームラン王」でおなじみの歴史的背景まで、その違いを詳しく解説します。
読み終わる頃には、二つの違いがスッキリ整理でき、自信を持って使い分けられるようになりますよ。
「ナボナ」と「ブッセ」の違いが一目でわかる比較表
まずは、両者の核心的な違いを表で確認しましょう。
| 項目 | ナボナ | ブッセ |
|---|---|---|
| 分類 | 特定の商品名(登録商標) | 洋菓子の一般名称 |
| 製造元 | 亀屋万年堂(東京・自由が丘) | 様々なメーカー・洋菓子店 |
| 生地の食感 | ふんわり、しっとり、キメ細かい | 表面はサクッ、中はフワッ(店による) |
| 主なクリーム | チーズクリーム、パイナップル、季節限定など多彩 | バタークリーム、ジャム、チーズクリームなど店による |
| 歴史 | 1963年(昭和38年)発売 | フランス語が語源(日本での歴史は諸説あり) |
| キャッチコピー | 「お菓子のホームラン王」 | 特になし(商品ごとに異なる) |
このように、「ナボナ」は「ブッセ」という大きなくくりの中の、ひとつの超有名ブランド、という関係性なんですね。
「ナボナ」と「ブッセ」とは?それぞれの定義
それぞれの言葉の定義をもう少し詳しく見ていきましょう。
ナボナ:亀屋万年堂の商品名(登録商標)
「ナボナ」は、東京の自由が丘に本店を構える老舗和菓子店「亀屋万年堂」が1963年(昭和38年)から製造・販売している看板商品です。
その名前は、イタリア・ローマにある「ナヴォーナ広場(Piazza Navona)」に由来しています。創業者が現地を訪れた際、広場でお菓子を片手に談笑する人々の姿に感銘を受け、「このような広場のように、多くの人に愛されるお菓子になってほしい」という願いを込めて名付けられました。
「ナボナ」は亀屋万年堂の登録商標であり、他の会社がこの名前を使うことはできません。
ブッセ:フランス語由来の洋菓子の一般名称
「ブッセ(Bouchée)」は、フランス語で「一口」または「一口で食べられるもの」を意味する言葉です。
フランス料理の世界では、元々は一口サイズのパイ料理(温かい前菜)などを指すことが多い言葉でした。しかし、日本では、ビスキュイ(スポンジ生地の一種)やダックワーズのような生地でクリームやジャムをサンドした、丸く膨らんだ形の焼き菓子全般を指す一般名称として広く使われています。
そのため、亀屋万年堂以外の多くのお菓子屋さんでも、「〇〇ブッセ」といった名前で同様のお菓子が製造・販売されています。
原材料・製法・食感の違い
ナボナはブッセの一種ではありますが、その食感には独自の特徴があります。
ナボナ:独自の配合による「ふんわり・しっとり」
ナボナの最大の特徴は、その独特の生地にあります。
一般的なブッセ生地とは異なり、和菓子の製法も取り入れた独自の配合と焼き方によって、非常にキメが細かく、ふんわりとしながらもしっとりとした食感を生み出しています。
中のクリームも、定番の「チーズクリーム」や「パイナップル」のほか、季節ごとに様々なフレーバーが登場し、その生地の柔らかさに絶妙にマッチしています。
ブッセ:表面「サクッ」、中「フワッ」
一方、一般的な「ブッセ」として知られるお菓子は、メレンゲ(泡立てた卵白)をベースにした生地で作られることが多いです。
生地の表面に粉糖を振ってから焼くことで、表面がサクッ(あるいはカリッ)と軽い歯触りになり、中はメレンゲの力でフワッと軽い食感に仕上がります。
この表面の「サクッ」とした食感は、ナボナの「ふんわり」とした食感との大きな違いの一つと言えるでしょう。挟まれるクリームも、バタークリームやジャムなど、お店によって様々です。
歴史と文化的背景の違い
ナボナ:「お菓子のホームラン王」としての歩み
ナボナが全国的に有名になった背景には、非常に巧みな広告戦略がありました。
発売当初、亀屋万年堂は当時人気絶頂だったプロ野球・巨人軍のスター選手、王貞治さんをCMに起用します。「ナボナはお菓子のホームラン王です」というキャッチコピーは、王選手の活躍と相まって瞬く間にお茶の間に浸透しました。
これにより、ナボナは単なる「ブッセ」というお菓子の一つではなく、「ナボナ」という一つのブランドとして、東京を代表する銘菓の地位を確立したのです。
ブッセ:フランス料理から来た「一口」のお菓子
前述の通り、「ブッセ」はフランス語の「一口」が語源です。フランスではお菓子よりも料理(前菜)を指すことが多い言葉です。
日本でいつからこの形状のお菓子が「ブッセ」と呼ばれるようになったかは定かではありませんが、ナボナの登場(1963年)と同時期、あるいはそのヒットを受けて、全国の洋菓子店や和菓子店が同様のお菓子を「ブッセ」という名前で作り始めた可能性が考えられますね。
価格と入手方法の違い
ナボナ:亀屋万年堂の直営店や公式通販が中心
ナボナは亀屋万年堂の商品であるため、購入できる場所は限られています。
主に、東京・神奈川を中心とした直営店、全国の百貨店内にある店舗、公式オンラインショップでの取り扱いとなります。また、東京駅や羽田空港など、主要な交通機関のターミナルでもお土産として販売されています。
価格は定番の「ナボナ(チーズクリーム/パイナップル)」で1個あたり税込み183円(2025年11月現在)となっており、贈答用としても使われる品質が保たれています。
ブッセ:全国の洋菓子店やメーカーが製造
ブッセは一般名称であるため、全国の様々なお店やメーカーが独自の「ブッセ」を製造しています。
街のケーキ屋さん、老舗の和菓子屋さん、あるいはスーパーやコンビニで袋菓子として売られているものまで、その形態は多岐にわたります。価格も100円程度の手頃なものから、素材にこだわった高級品まで様々です。
【体験談】「ナボナ」と一般的な「ブッセ」を食べ比べてみた
僕にとって「ナボナ」は、まさに「お菓子のホームラン王」のCMと共に育った、子供の頃のご馳走のイメージです。
一方、大人になってから洋菓子店で「ブッセ」という名前で似たお菓子を見つけ、「ナボナと何が違うんだろう?」と不思議に思っていました。
そこで今回、改めて亀屋万年堂の「ナボナ(チーズクリーム)」と、近所の洋菓子店で売られていた「〇〇ブッセ(バタークリーム)」を購入し、食べ比べてみることにしました。
まず驚いたのは、やはり生地の食感です。
洋菓子店のブッセは、表面に粉糖がまぶしてあり、フォークを入れると「サクッ」と軽い音がしました。中はフワフワで、卵とアーモンドの香りが強く感じられます。良くも悪くも「焼き菓子」としての食感が際立っています。
次にナボナ。こちらはフォークが「フワッ…」と沈み込むような、圧倒的な柔らかさ。表面のサクサク感はなく、全体が均一にしっとり、キメ細かく仕上がっています。これはもう、スポンジケーキに近いですね。中のチーズクリームも、甘さとしょっぱさのバランスが絶妙です。
食べ比べてみて、ブッセは「サクふわ食感の焼き菓子」、ナボナは「ブッセの形を借りた、生菓子に近い独自の洋風まんじゅう」という印象を受けました。
どちらも美味しいのは間違いありませんが、ナボナが長年愛され続ける理由は、この独自の「ふんわり・しっとり」食感にあるのだと改めて実感しました。
「ナボナ」と「ブッセ」に関するよくある質問
ナボナとブッセに関する、よくある疑問にお答えしますね。
Q1. ナボナ以外に有名なブッセはありますか?
A. はい、全国の多くの洋菓子店や和菓子店で、その店オリジナルのブッセが販売されています。「〇〇ブッセ」といった地名や店名がついた商品として、地域のお土産や銘菓になっているケースも多いですね。
Q2. ブッセ(Bouchée)の本来の意味は何ですか?
A. フランス語で「一口」または「一口で食べられるもの」という意味です。元々は一口サイズの温かい前菜料理(パイ生地などを使ったもの)を指すことが多い言葉でしたが、日本では「一口サイズの焼き菓子」というお菓子の名称として定着しています。
Q3. ナボナはなぜ「お菓子のホームラン王」と呼ばれているのですか?
A. これは、発売当時に絶大な人気を誇ったプロ野球・巨人軍の王貞治選手をCMに起用した際の有名なキャッチコピーです。「ナボナ」という名前の由来であるローマの「ナヴォーナ広場」と、当時の国民的ヒーローであった王選手のイメージを重ね合わせ、大ヒットにつながりました。
まとめ:「ナボナ」はブッセの一種であり、独自の進化を遂げた東京銘菓
「ナボナ」と「ブッセ」の違い、スッキリしましたでしょうか。
- ブッセ:スポンジ生地でクリームを挟んだ洋菓子の「一般名称」。多くは表面がサクッとしている。
- ナボナ:亀屋万年堂が販売する「商品名」。ブッセの一種だが、独自の製法で「ふんわり・しっとり」した食感が特徴。
結論として、「ナボナ」はブッセというジャンルの中で、圧倒的な知名度と独自の品質を持つ「特定ブランド」ということですね。
「お菓子のホームラン王」として愛され続けるナボナも、旅先で見かける個性豊かなブッセも、それぞれの魅力を知って楽しみたいものです。
この他にも、「スイーツ・お菓子」に関する様々な違いを解説していますので、ぜひご覧ください。