大麦粉とはったい粉の違いとは?製法・香り・使い方を徹底比較

「大麦粉」と「はったい粉」、どちらも大麦から作られた粉ですが、どう使い分ければ良いか迷ったことはありませんか?

スーパーでは、大麦粉はパンケーキミックスなどのコーナーに、はったい粉はきな粉などの和の食材コーナーに並んでいることが多いですよね。

結論から言うと、この二つの決定的な違いは「焙煎(ロースト)しているかどうか」です。

「大麦粉」は生のまま粉にしたもので、加熱調理(パンやお菓子作り)が必須なのに対し、「はったい粉」は深く焙煎してから粉にしたもので、香ばしく、そのままお湯や砂糖と混ぜて食べることができます。

この記事を読めば、製法から風味、栄養価、そして正しい使い分けまで、二つの粉の違いがスッキリと理解できます。もう迷うことはありません。それでは、詳しく見ていきましょう。

結論|大麦粉とはったい粉の違いが一言でわかる比較表

【要点】

大麦粉とはったい粉の最も重要な違いは「焙煎(ロースト)の有無」です。「大麦粉」は生のまま粉にしたもので、料理や製菓の「材料」として加熱調理が必要です。一方、「はったい粉」は強く焙煎してから粉にしたもので、香ばしく、そのまま「食品」として食べられます。

まずは、二つの粉の主な違いを一覧表で比較してみましょう。

項目大麦粉(一般的なもの)はったい粉(麦こがし)
加工法大麦を粉砕(大麦を焙煎(ロースト)してから粉砕
別名Barley Flour麦こがし、香煎(こうせん)
香り・風味生の穀物の香り、風味は弱い強い香ばしさ、ナッツのような風味
淡黄色、白っぽい褐色、きな粉より濃い茶色
食感(生では)粉っぽいしっとり、滑らか
加熱の必要性必須(パン、お菓子、料理に使う)不要(そのまま食べられる)
主な用途パン、クッキー、パンケーキ、スープのとろみ付けお湯や砂糖と練る、和菓子、飲み物、きな粉の代用
消化性生(βデンプン)のため、加熱が必要加熱済み(αデンプン)のため、消化が良い

大麦粉とはったい粉の定義と「焙煎(ロースト)」の違い

【要点】

「大麦粉」は、主にパンや菓子用に生のまま粉砕した「小麦粉の代替材料」としての側面が強いです。一方、「はったい粉」は、大麦を深く煎る(焙煎する)ことで香ばしさを引き出し、それ自体を「食品」として食べるために加工された、日本の伝統的な保存食・健康食です。

大麦粉とは?(一般的な大麦の粉)

「大麦粉(おおむぎこ)」とは、その名の通り、大麦の粒を粉砕して粉状にしたものです。

一般的に「大麦粉」として製菓・製パン材料コーナーで販売されているものの多くは、生の(焙煎していない)大麦を使用しています。小麦粉と同じように、パンケーキやクッキー、パン生地に混ぜ込んだり、スープのとろみ付けに使ったりします。

小麦粉に比べてグルテン(粘りや弾力を生むタンパク質)が少ない(あるいは含まない)ため、パンなどに使う際は小麦粉(強力粉など)と混ぜて使うのが一般的ですね。

はったい粉とは?(焙煎した大麦の粉)

「はったい粉」は、大麦をじっくりと深く焙煎(ロースト)し、それを粉砕して粉にしたものです。「香煎(こうせん)」や「麦こがし(むぎこがし)」という別名でも広く知られています。

最大の特徴は、焙煎によって生まれる非常に強い香ばしさです。

すでに加熱処理(焙煎)が済んでいるため、大麦粉と違って再度の加熱なしでそのまま食べられるのが決定的な違いです。古くから、お湯や砂糖と練って団子のようにしたり、飲み物として楽しむための「食品」として親しまれてきました。

大麦粉とはったい粉の味・香り・食感の違い

【要点】

はったい粉は、きな粉(焙煎大豆)よりもさらに強く、焦げたような香ばしい風味がします。色は褐色で、しっとりとした粉質です。大麦粉は、生の穀物特有の青臭さや粉っぽさがあり、風味は弱いです。色は淡い黄色やクリーム色をしています。

香りと風味の違い

この二つをスプーンですくって香りを嗅いでみると、その違いは一目瞭然です。

はったい粉は、封を開けた瞬間に、焙煎された穀物の力強い香ばしさが広がります。きな粉の香りを、さらに深く、強く、少しビターにしたようなイメージですね。味わいも香ばしさの中にほのかな甘みを感じます。

大麦粉は、生の穀物特有の香り、少し粉っぽい香りや、ほのかな青臭さを感じます。風味自体は弱く、そのまま食べても香ばしさはありません。

色と食感の違い

見た目の色も全く異なります。

はったい粉は、深く焙煎されているため、褐色(茶色)をしています。粉質は非常に細かく、少し油分を含んだようにしっとりとしています。

大麦粉は、焙煎していないため、小麦粉や米粉に近い淡い黄色やクリーム色です。粉質はサラサラとしています(挽き方によります)。

大麦粉とはったい粉の栄養・成分・健康面の違い

【要点】

基本的な栄養価、特に食物繊維(β-グルカン)の豊富さはどちらも共通しています。ただし、はったい粉は焙煎(加熱)によってデンプンがα化(アルファ化)しているため、生の大麦粉(βデンプン)と比べて消化・吸収が良いという大きな違いがあります。

基本的な栄養価(食物繊維など)

原料が同じ大麦であるため、基本的な栄養素は共通しています。

どちらも食物繊維(特に水溶性食物繊維のβ-グルカン)が非常に豊富で、これは白米や小麦粉(薄力粉)よりもはるかに多い数値です。また、ビタミンB群やミネラルも含まれています。

ただし、はったい粉は高温で焙煎する過程で、一部の熱に弱いビタミン(ビタミンB1など)が失われている可能性はあります。

消化吸収性の違い

健康面で最も大きな違いが出るのが「消化吸収性」です。

大麦粉は、生のデンプン(βデンプン)の状態です。これは人間がそのまま消化するのが難しく、必ず加熱して「αデンプン(アルファデンプン)」に変える必要があります。生の大麦粉を食べると、お腹を壊す原因になります。

はったい粉は、製造工程ですでに焙煎(加熱)されているため、デンプンがα化しています。これは、炊いたご飯や焼いたパンと同じ状態で、消化・吸収されやすいことを意味します。お湯で溶いてすぐに飲めるのは、このためですね。

使い方・料理での扱い方(加熱の必要性)の違い

【要点】

大麦粉は「加熱用」の製菓・料理材料です。パンケーキやクッキーの生地に混ぜ込み、必ず焼くか加熱します。はったい粉は「そのまま食べる用」の食品です。お湯や砂糖と練って食べたり、きな粉のように牛乳やヨーグルトにかけたりします。用途の互換性は全くありません。

この二つは、製法が異なるため、料理での使い方は全く異なります。絶対に間違えてはいけません。

大麦粉のおすすめの使い方(パン・お菓子作り)

大麦粉は、小麦粉の代替、あるいは一部を置き換える「製菓・製パン材料」として使います。必ず加熱が必要です。

  • パンケーキ・クッキー:小麦粉の一部を大麦粉に置き換えることで、食物繊維をプラスし、香ばしく素朴な風味に仕上げます。
  • パン:グルテンがないため、強力粉に10〜20%ほど混ぜて使います。ほのかな大麦の香りがするパンになります。
  • スープのとろみ付け:小麦粉の代わりにシチューやスープのとろみ付けにも使えます。

はったい粉のおすすめの使い方(そのまま食べる)

はったい粉は、その香ばしさを活かし、加熱せずにそのまま食べます。

  • はったい粉湯:最も伝統的な食べ方。はったい粉に砂糖と少々の塩を加え、熱湯を注いで練るように混ぜます。冬の温かい飲み物や、おしるこの代わりになります。
  • 和菓子:「ねじり」や「麦落雁(むぎらくがん)」など、伝統的な和菓子の原料になります。
  • トッピング:きな粉と全く同じように使えます。牛乳や豆乳に溶かして「はったい粉ドリンク」にしたり、ヨーグルトやアイスクリームにかけたりするのも美味しいですね。

【NG例】はったい粉を使ってパンを焼こうとしても、すでに焙煎されてデンプンやタンパク質が変性しているため、生地は膨らみません。逆に、大麦粉をお湯で溶いて飲もうとすると、生の粉っぽくて非常にまずい(そして消化に悪い)ものが出来上がります。

産地・価格・保存方法の違い

【要点】

大麦粉はオーストラリア産などの輸入原料を使ったものが多く、製パン材料として流通しています。はったい粉は国産(主に六条大麦)原料を使ったものが多く、伝統食品としてきな粉などと同じコーナーで販売されています。価格はどちらも比較的安価ですが、保存は密閉して冷蔵庫が基本です。

産地について、大麦粉は製パン・製菓用として、オーストラリア産やアメリカ産の原料を使ったものが多く流通しています。はったい粉は、国内の伝統食であるため、国産(特に西日本)の六条大麦(裸麦)を原料にしたものが多いのが特徴です。

価格は、どちらも比較的安価で手に入りますが、国産原料にこだわったものや、製パン用に細かく製粉された大麦粉は高価になる傾向があります。

保存方法は、どちらも粉類であるため共通です。特に大麦は湿気を吸いやすく、虫もつきやすい食材です。開封後は必ず密閉容器(ジップロックなど)に入れ、冷蔵庫で保存し、早めに使い切るようにしましょう。

起源・歴史・文化的背景

【要点】

はったい粉は、日本古来の伝統食であり、平安時代には既に「麦こがし」として存在していました。栄養価が高く保存性も良いため、戦国時代の武士の携帯食(陣中食)としても重宝された歴史があります。大麦粉がパンなどの材料として一般化したのは、比較的近代の食文化の洋風化以降です。

はったい粉(麦こがし)の歴史は非常に古く、日本では平安時代から貴族のおやつや夏バテ防止の飲み物(香煎)として楽しまれていた記録があります。

軽くて栄養価が高く、加熱不要で水やお湯さえあれば食べられるため、戦国時代には武士が携帯する「陣中食」としても非常に重要な役割を果たしました。

一方、大麦粉をパンやクッキーなどの「材料」として使う文化は、食生活が洋風化した近代以降に広まったものです。歴史的な深みで言えば、はったい粉の方が日本の食文化に古くから根付いていると言えますね。

体験談|「大麦粉」で「はったい粉」を作ろうとした日の勘違い

僕がこの二つの違いを痛感したのは、健康志向で「大麦粉パンケーキ」を作っていた時のことです。

使っていたのは、もちろん生の「大麦粉」。ある日、それを見た祖母が「ああ、『はったい粉』だね。懐かしい。お湯と砂糖で練って食べると美味しいんだよ」と言い出しました。

僕は「へえ、そんな食べ方があるんだ」と、いつも料理に使っているその生の「大麦粉」を器に入れ、お湯と砂糖で練ってみました。

一口食べて、「まずい!」と思わず声が出ました。香ばしさは一切なく、ただただ生の穀物の粉っぽさと青臭さが口に広がり、とても食べられたものではありませんでした。

祖母はそれを見て大笑い。「これは『煎ってない』(焙煎していない)ただの粉だよ。『はったい粉』はちゃんと香ばしく煎ってあるから美味しいんだよ」と。

この失敗で、「大麦粉」という名前は同じでも、「生(材料)」と「焙煎済み(食品)」という決定的な違いがあることを学びました。見た目が似ているからといって、同じように使えるわけではない。食材の「加工工程」を理解することは本当に大切だと痛感した出来事です。

大麦粉とはったい粉に関するFAQ(よくある質問)

大麦粉とはったい粉の違いについて、よくある質問をまとめました。

大麦粉をフライパンで煎ったら、はったい粉になりますか?

風味は近くなりますが、厳密には別物です。

はったい粉は、粒のままじっくりと均一に焙煎してから粉にします。一方、大麦粉(粉)をフライパンで煎ると、火加減が難しく焦げやすいため、はったい粉特有の均一で深い香ばしさを再現するのは困難です。ただ、香ばしい風味を料理に加えたい場合には有効な手段です。

はったい粉ときな粉の違いは何ですか?

原料が全く違います。

はったい粉「焙煎した大麦」から作られます。きな粉「焙煎した大豆」から作られます。どちらも焙煎して粉にしたものなので、使い方は似ていますが、風味(穀物の香ばしさか、大豆の香ばしさか)と栄養価(大豆由来のタンパク質やイソフラボン)が異なります。

大麦粉はグルテンフリーですか?

いいえ、グルテンフリーではありません。

大麦には、小麦ほど多くはありませんが、グルテンを形成するタンパク質(ホルデイン)が含まれています。そのため、小麦アレルギーの方や、グルテンフリーの食事(セリアック病など)を実践している方は、大麦粉もはったい粉も避ける必要があります。

まとめ|料理用なら「大麦粉」、そのまま食べるなら「はったい粉」

大麦粉とはったい粉の違い、スッキリ整理できたでしょうか。

どちらも原料は「大麦」ですが、「焙煎しているかどうか」という製造工程の違いによって、全く別の食材になっています。

あなたの目的に合わせて、正しく使い分けましょう。

  • 大麦粉(生)がおすすめな人
    • パンやパンケーキ、クッキーの材料として使いたい人
    • 小麦粉の代わりに、食物繊維をプラスする粉を探している人
    • 必ず加熱調理する人
  • はったい粉(焙煎済み)がおすすめな人
    • お湯や砂糖と練ったり、牛乳に溶かすなど、そのまま食べたい
    • きな粉とは違う、穀物の強い香ばしさが好きな人
    • 日本の伝統的なお菓子や飲み物を楽しみたい人

この違いを知れば、もうスーパーで迷うことはありませんね。それぞれの個性を活かして、大麦の豊かな風味と栄養を楽しんでください。

穀物や粉類の違いについてもっと知りたい方は、穀物・豆類の違いのカテゴリもぜひご覧ください。

また、大麦の栄養価については農林水産省の食育関連ページも参考にすると、より知識が深まりますよ。