酒粕と練り粕の違いとは?形状と使い方を比較

寒い季節になると、粕汁や甘酒が恋しくなりますよね。

そんな時、スーパーの棚で「酒粕」と「練り粕」を見かけて、「この二つ、何が違うんだろう?」と手が止まってしまった経験はありませんか。

見た目が板状のものとペースト状のものがあって、どちらを選べば良いか迷ってしまいますよね。

実はこの二つ、「酒粕」が日本酒を絞った後の固形物全般を指すのに対し、「練り粕」はその酒粕を使いやすくペースト状に加工した製品、という明確な違いがあります。「練り粕」は「酒粕」の一種(形態)なのです。

この記事を読めば、それぞれの製法や風味の違い、そして粕汁や粕漬けにどちらが向いているのかまで、スッキリと理解できます。

もう売り場で迷うことはありません。それでは、詳しく見ていきましょう。

結論|酒粕と練り粕の違いを一覧表で比較

【要点】

最大の違いは「酒粕」が日本酒の副産物(固形物)全般を指すのに対し、「練り粕」は酒粕をペースト状に加工した製品である点です。「酒粕」には板状の「板粕」などがありフレッシュな風味、「練り粕」はペースト状で熟成が進み旨味が強い傾向があります。

「酒粕」と「練り粕」の主な違いを、一目で分かるように一覧表にまとめました。

項目酒粕(さけかす)練り粕(ねりかす)
定義日本酒のもろみを圧搾した後に残る固形物全般酒粕(板粕やばら粕)をペースト状に練った加工品
主な形状板状(板粕)、バラバラ(ばら粕)ペースト状(練り状)
状態固形(硬い)半固形(柔らかい)
製法圧搾してそのまま(または軽く熟成)酒粕を練る、または熟成させて柔らかくする(調味料を加える場合もある)
味・風味フレッシュな酒の香り、すっきりした旨味熟成した深い旨味とコク、まろやかな香り
主な用途粕汁、甘酒、粕漬け(下処理が必要)粕漬け(そのまま使える)、和え物、調味料
価格帯比較的安価板粕よりやや高価な傾向

このように、「練り粕」は「酒粕」という大きなカテゴリの中の一つの形態なんですね。スーパーなどでよく見る「酒粕」は、その中でも「板粕」であることが多いです。

酒粕と練り粕の定義と関係性(「練り粕」は「酒粕」の一種)

【要点】

「酒粕」は、日本酒を製造する際のもろみを絞った後に残る固形物の「総称」です。これには板状の「板粕」やペースト状の「練り粕」など、様々な種類が含まれます。つまり、練り粕は酒粕という大きな分類の中の一つです。

この二つの言葉の関係性を理解することが、違いを知る第一歩です。

まず「酒粕(さけかす)」とは、日本酒を造る工程で、「もろみ」(米、米こうじ、水を酵母で発酵させたもの)を圧搾機(あっさくき)にかけて液体(日本酒)を絞り出した後に残る、白い固形物のことです。これは日本酒の副産物であり、栄養価が非常に高い発酵食品です。

この「酒粕」には、その形状や状態によっていくつかの種類があります。

  • 板粕(いたかす):圧搾機から板状になって出てきたもの。スーパーでよく見かけるタイプです。
  • ばら粕:板状にならず、バラバラになったもの。
  • 練り粕(ねりかす):酒粕をペースト状に練り上げたもの。
  • 踏込粕(ふみこみかす):酒粕をタンクなどで熟成させたもの。アミノ酸が増えて旨味が増し、色も褐色に変化します。

つまり、「練り粕」は「酒粕」という大きなグループの中の一つの製品形態を指す言葉なのです。私たちが「酒粕」と呼んでいるものの多くは、実際には「板粕」を指していることが多いんですね。

形状と製法の違い(圧搾したまま vs ペースト状に加工)

【要点】

「板粕」は、もろみを絞った後、そのまま板状で出荷されます。一方「練り粕」は、その板粕やばら粕を機械で練り合わせたり、熟成させて柔らかくしたりして、使いやすいペースト状に加工したものです。

では、最も一般的な「板粕」と「練り粕」は、どのように作られ、どのような形状をしているのでしょうか。

酒粕(板粕・ばら粕)

板粕(いたかす)は、もろみを機械で圧搾した際に、圧力によって板状に固まった酒粕を、そのまま剥がして製品としたものです。表面には布の跡が残っていることもあります。

形状は硬い板状で、白く、フレッシュな日本酒の香りがするのが特徴です。使う際には、水や酒でふやかしたり、手で細かくちぎったりする必要があります。

ばら粕は、板状にならずにポロポロと崩れたもので、板粕よりも安価な場合があります。

練り粕

練り粕(ねりかす)は、その板粕やばら粕を、使いやすいようにペースト状(練り状)に加工したものです。

製造方法としては、酒粕をタンクで数ヶ月間熟成させて柔らかくし(この場合、旨味が増し褐色になります)、それを練る方法や、フレッシュな酒粕に水や焼酎、調味料(塩や砂糖)を加えて機械で練り合わせる方法があります。

最初から柔らかいペースト状なので、水などで溶かす手間がなく、そのまま食材と和えたり、漬け床として使えたりするのが最大のメリットです。

味・風味・熟成度の違い(フレッシュ vs 濃厚な旨味)

【要点】

板粕などのフレッシュな酒粕は、アルコールの香りが立ち、すっきりとした米の旨味が特徴です。一方、練り粕(特に熟成させたもの)は、アルコールの角が取れ、アミノ酸が増加することで、非常に濃厚な旨味と深いコク、まろやかな風味を持ちます。

製法が異なるため、味や風味にも特徴が出ます。

酒粕(板粕)は、圧搾したばかりのものは日本酒のフレッシュな香り(吟醸香など)が強く、アルコールの風味も感じられます。味わいは比較的すっきりとしており、米由来のやさしい甘みと旨味があります。

練り粕は、製造工程で熟成を経ているものが多くあります(踏込粕を原料にすることもあるため)。

酒粕は熟成が進むと、たんぱく質がアミノ酸(旨味成分)に分解されます。そのため、フレッシュな板粕よりも濃厚な旨味と深いコクが生まれます。アルコールの刺激的な香りは和らぎ、まろやかで芳醇な風味に変化します。色は熟成が進むと白からクリーム色、さらに褐色へと変わっていきます。

ただし、フレッシュな酒粕をペースト状にしただけの練り粕もあり、その場合は板粕と風味は大きく変わりません。

栄養・成分の違い(基本は同じだが熟成度に差)

【要点】

どちらも元は同じ酒粕であるため、たんぱく質、ビタミンB群、食物繊維、酵母、レジスタントプロテインなどの豊富な栄養素を基本的に含んでいます。練り粕は熟成によりアミノ酸が増加している可能性があります。

元は同じ「酒粕」なので、含まれる基本的な栄養成分は共通しています。

酒粕は「百薬の長」とも言われる日本酒の栄養が凝縮されたスーパーフードです。

  • たんぱく質(アミノ酸)
  • ビタミンB群(B1, B2, B6など)
  • 食物繊維
  • 酵母や麹菌由来の酵素
  • レジスタントプロテイン(消化されにくいタンパク質)

これらの栄養素が豊富に含まれています(出典:文部科学省「日本食品標準成分表」)。

違いが出るとすれば、熟成度合いです。前述の通り、熟成させた練り粕は、フレッシュな板粕よりもアミノ酸(旨味成分)が増加していると考えられます。また、練り粕は製造時に塩や砂糖などの調味料が加えられている場合があるため、その分の塩分や糖質が含まれます。

料理での使い分け・用途の違い

【要点】

フレッシュな香りを活かす「粕汁」「甘酒」には板粕が向いています(溶かす手間はかかります)。一方、「粕漬け」や「和え物」など、酒粕を調味料として手軽に使いたい場合は、ペースト状で味が調っている「練り粕」が圧倒的に便利です。

形状と風味が違うため、得意な料理も異なります。

酒粕(板粕・ばら粕)が向いている料理

板粕は、水や酒で溶かして柔らかくする一手間が必要ですが、フレッシュな酒の香りを活かしたい料理に向いています。

  • 粕汁:酒粕を溶かし込み、鮭や根菜と一緒に煮込むと、体が温まる定番料理になります。
  • 甘酒(酒粕ベース):砂糖や生姜とともにお湯で溶かせば、手軽な甘酒が作れます。
  • 魚や肉を焼く前の下味:酒粕に漬け込むことで、素材を柔らかくし、風味を付けることができます。(いわゆる簡易的な粕漬け)

練り粕が向いている料理

練り粕の最大のメリットは、ペースト状でそのまま使える手軽さと、熟成された深い旨味です。

  • 粕漬け(漬け床)これが最も代表的な使い方です。野菜(きゅうり、大根、人参)や魚(鮭、サワラ)をそのまま漬け込むだけで、本格的な粕漬けが作れます。味噌と混ぜて「粕味噌漬け」にするのも良いですね。
  • 和え物:野菜や魚介とそのまま和えるだけで、コクのある一品になります。
  • 調味料として:炒め物や煮物の隠し味に少量加えるだけで、味に深みとコクが出ます。

保存方法・価格の違い

【要点】

価格は、加工の手間がかかる「練り粕」の方が「板粕」よりも高価な傾向があります。保存はどちらも冷蔵または冷凍が必須です。酒粕は発酵が進むため、冷凍保存が長期保存には最も適しています。

価格:
一般的に、圧搾しただけの酒粕(板粕・ばら粕)に比べ、それを練り直したり熟成させたりする練り粕の方が、加工の手間がかかる分、価格は高くなる傾向があります。

保存方法:
酒粕も練り粕も、酵母菌が生きている「発酵食品」です。常温に置くと発酵が進み、風味が変化したり、品質が劣化したりします。

必ず冷蔵庫で保存してください。表面に白い粉(アミノ酸の結晶)が出ることがありますが、これは旨味成分なので問題ありません。

長期間(数ヶ月)使わない場合は、空気に触れないようにラップでぴったりと包み、ジッパー付きの保存袋に入れて冷凍保存するのが最もおすすめです。板粕は使う分だけ割り、練り粕は小分けにして冷凍すると便利ですよ。

体験談|練り粕で粕漬けに挑戦して気づいた手軽さと旨味

僕も昔、酒粕といえば板粕しか知りませんでした。粕汁を作るために板粕を買っても、いつも中途半端に余らせてしまい、冷蔵庫の奥でカピカピに……なんて失敗を繰り返していました。

ある時、「粕漬け」に挑戦しようと思い立ち、スーパーで「板粕」と、隣にあった「練り粕」を両方買ってみたんです。

まず板粕で挑戦。板粕を適当な大きさに割り、水やみりん、酒でのばして柔らかくする作業が、想像以上に大変でした。ダマが残りやすく、均一なペースト状にするのに一苦労。なんとか作った漬け床でキュウリと鮭を漬けましたが、味はフレッシュで美味しいものの、「これは手間がかかるな」というのが正直な感想でした。

次に「練り粕」。袋を開けると、すでになめらかなペースト状です。ボウルに出して、味噌と砂糖を混ぜるだけで、あっという間に理想的な漬け床が完成しました。

何より驚いたのは、その味です。僕が買った練り粕は少し褐色がかった熟成タイプで、板粕で作った時よりも明らかに旨味とコクが深い。数日漬けた鮭は、まるで料亭で出てくるような濃厚な味わいになりました。

この経験から、「粕漬けや調味料として手軽に使うなら、絶対に練り粕だ!」と確信しましたね。あの手軽さと味の深みを知ってからは、我が家の冷蔵庫には練り粕が常備されています。

酒粕と練り粕に関するよくある質問(FAQ)

質問1:酒粕と練り粕、甘酒に向いているのはどっちですか?

どちらでも作れますが、一般的には「板粕」や「ばら粕」が向いています。フレッシュな酒粕の方が、すっきりとした香りの良い甘酒に仕上がります。熟成が進んだ練り粕を使うと、旨味やコクが強い、濃厚な味わいの甘酒になります。お好みで使い分けても良いですね。

質問2:練り粕は酒粕の代わりになりますか?

はい、なります。特に粕汁などに使う場合、板粕の代わりに練り粕を使っても問題ありません。練り粕は溶けやすいので、調理時間が短縮できるメリットもありますよ。ただし、練り粕は味が濃厚なものや、塩分が加えられているものもあるので、味見をしながら量を調整してください。

質問3:酒粕や練り粕にアルコールは含まれますか?

はい、どちらもアルコール分を含んでいます。日本酒の副産物ですので、製品にもよりますが5〜8%程度のアルコール分が残存していることが一般的です(出典:厚生労働省など)。粕汁や甘酒のように十分に加熱すればアルコールは飛びますが、粕漬けや和え物など非加熱で食べる場合はアルコールが残ります。お子様や妊婦・授乳中の方、車を運転される前は、非加熱での摂取を避けてください。

まとめ|酒粕と練り粕、目的別おすすめの選び方

「酒粕」と「練り粕」の違い、明確になりましたでしょうか。

「酒粕」は日本酒の絞り粕の総称であり、「練り粕」はその酒粕を使いやすくペースト状に加工した製品(酒粕の一種)でした。

最後に、あなたがどちらを選ぶべきか、目的別にまとめます。

  • 酒粕(板粕・ばら粕)を選ぶべき人
    粕汁や甘酒を作りたい人。フレッシュな日本酒の香りやすっきりした風味を楽しみたい人。水や酒でのばす手間を惜しまない人。
  • 練り粕を選ぶべき人
    粕漬けや和え物にすぐ使いたい人。ペースト状の手軽さを重視する人。熟成された深いコクと旨味を料理に加えたい人。

どちらも日本の素晴らしい発酵食品です。それぞれの良さを理解して、ぜひ日々の料理に使い分けてみてくださいね。

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