春に美しい花を咲かせる桜の木。花が散ったあと、小さな赤い実がなっているのを見て、「これってさくらんぼ?食べられるのかな?」と疑問に思ったことはありませんか。
見た目が似ているため混同されがちですが、実は私たちが普段目にする観賞用の桜の木になる「桜の実」と、商品として売られている「さくらんぼ」は、根本的に異なるものなんです。
結論から言うと、公園や街路樹の桜(ソメイヨシノなど)の実は、食用には適しません。美味しくないだけでなく、種には注意すべき成分も含まれています。
この記事を読めば、桜の実とさくらんぼの明確な違い、なぜ桜の実が食べられないのか、その理由や見分け方まで、すべての疑問がスッキリ解決しますよ。
それでは、まず両者の決定的な違いから見ていきましょう。
桜の実とさくらんぼの違いとは?結論を一覧表で比較
「さくらんぼ」は食用に品種改良された「セイヨウミザクラ」などの実であり、甘くて美味しいのが特徴です。一方、「桜の実」は観賞用の「ソメイヨシノ」などがつける実の通称で、非常に小さく、苦味や酸味が強いため食用には適しません。植物としての目的が根本的に異なります。
「桜の実」と「さくらんぼ」。この二つの最も重要な違いを一覧表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な見分けは完璧です。
| 項目 | さくらんぼ(食用品種) | 桜の実(観賞用品種) |
|---|---|---|
| 主な品種 | セイヨウミザクラ(佐藤錦、ナポレオンなど) | ソメイヨシノ、ヤマザクラ、カンザンなど |
| 栽培目的 | 食用(果実の収穫) | 観賞用(花の観賞) |
| 見た目・大きさ | 直径2~3cm程度。大きく丸い。赤く艶がある。 | 直径1cm未満。小さく、黒紫色に近い赤色。 |
| 果肉 | 多く、甘みと酸味のバランスが良い。 | ほとんどなく、硬い種が大部分を占める。 |
| 味・食感 | 甘くてジューシー | 非常に酸っぱい、苦い、渋い |
| 食用 | できる(生食、加工) | できない(食用不適) |
| 毒性の注意 | 種子にアミグダリン(少量) | 種子にアミグダリン(多量摂取は危険) |
このように、私たちが「さくらんぼ」として美味しく食べているのは、果実を大きく甘くするために長年かけて品種改良された、特別な桜の実なんです。
一方、公園などで見かける「桜の実」は、花を楽しむために改良された桜がつけた実。食べることを想定していないため、全く別物と考えるのが正しいですね。
桜の実とさくらんぼの定義・分類・品種の違い
「さくらんぼ」はバラ科サクラ属の「桜桃(おうとう)」と呼ばれる果実で、主に「セイヨウミザクラ」や「スミミザクラ」といった食用に特化した品種の実を指します。一方、「桜の実」は「ソメイヨシノ」など花を観賞するために育てられるサクラの木がつける実の総称です。
どちらも同じバラ科サクラ属の植物ですが、そのルーツと育てられてきた目的が全く異なります。
「さくらんぼ」の定義と分類(食用ミザクラ)
私たちが果物として食べている「さくらんぼ」は、専門的には「桜桃(おうとう)」と呼ばれます。
これは、サクラ属の中でも特に果実を食用とする「実桜(ミザクラ)」と呼ばれるグループの木になる実です。日本で栽培されている品種の多くは、ヨーロッパ原産の「セイヨウミザクラ(西洋実桜)」です。
代表的な品種には「佐藤錦(さとうにしき)」や「ナポレオン」、「紅秀峰(べにしゅうほう)」などがあり、これらはすべて、より甘く、より大きく、より美味しい実をつけるように品種改良が重ねられてきました。
「桜の実」の定義と分類(観賞用サクラ)
一方、私たちが春にお花見で楽しむ桜の多くは、観賞用の品種です。代表格は「ソメイヨシノ(染井吉野)」ですよね。
ほかにも「ヤマザクラ」「オオシマザクラ」「カンザン」など多くの品種がありますが、これらは美しい花を咲かせることを目的に選抜・交配されてきました。
これらの観賞用サクラも、花が咲き終わった後に受粉すれば実をつけます。この「観賞用の桜がつけた実」こそが、一般的に「桜の実」と呼ばれるものの正体です。
ソメイヨシノは自家不和合性(自分の花粉では受粉しにくい)という性質が強いですが、他の桜(オオシマザクラなど)の花粉が運ばれてくれば受粉し、実をつけることがあります。これが、公園のソメイヨシノに実がなっている理由です。
桜の実とさくらんぼの味・香り・食感・見た目の違い
見た目は、さくらんぼが直径2cm以上になるのに対し、桜の実は1cmにも満たないほど小さいです。味は決定的に異なり、さくらんぼは甘くジューシーですが、桜の実は果肉がほぼ無く、強烈な酸味と苦味、渋みがあり食用にはなりません。
もし公園で桜の実を見つけたら、お店のさくらんぼと見比べてみてください。その違いは一目瞭然です。
見た目と大きさ
さくらんぼ:
品種にもよりますが、直径は2~3cmほどあり、中には500円玉大になるものもあります。形は丸くふっくらとしており、色は鮮やかな赤色や濃い赤紫色で、表面にはツヤがあります。
桜の実:
ソメイヨシノの実は非常に小さく、直径1cmにも満たないビー玉よりも小さいサイズがほとんどです。色は熟すにつれて赤から黒紫色へと変化し、あまりツヤはありません。
味と食感(糖度と酸味)
ここが最も決定的な違いです。
さくらんぼ:
品種改良により糖度が非常に高く(佐藤錦で糖度15~20度ほど)、豊かな甘みとバランスの良い酸味が特徴です。果肉が厚く、噛むとジューシーな果汁が口いっぱいに広がります。
桜の実:
食用には全く適しません。果肉はほとんどなく、薄い皮のすぐ下に大きな種があります。味は強烈な酸味と苦味、渋みだけで、甘みはほとんど感じられません。美味しいと感じることはまずないでしょう。
桜の実とさくらんぼの栄養・成分・毒性の違い
さくらんぼはビタミンCやカリウム、アントシアニンなどを含み栄養価が高い果物です。一方、桜の実(さくらんぼも含む)の「種子」や「未熟な果実」には、アミグダリンという青酸配糖体(シアン化合物)が含まれています。観賞用の桜の実は果肉が少なく種が大きいため、誤って種を大量に食べると中毒の危険があり、絶対に食べてはいけません。
食べることを目的としたさくらんぼと、そうでない桜の実では、私たちが注目すべき点も異なります。
さくらんぼの栄養成分
さくらんぼは栄養価の高い果物です。主な栄養素には以下のようなものがあります。
- ビタミンC: 抗酸化作用があり、免疫機能の維持に役立ちます。
- カリウム: 体内の余分なナトリウムを排出するのを助け、むくみ予防や血圧調整に役立ちます。
- アントシアニン: 赤紫色の色素成分で、強い抗酸化作用を持つポリフェノールの一種です。
- ソルビトール: 糖アルコールの一種で、便通を改善する効果が期待されます。
桜の実に含まれる毒性(アミグダリン)
これは非常に重要な注意点です。
「桜の実」だけでなく「さくらんぼ」も同様ですが、バラ科の植物(梅、杏、桃、ビワなど)の種子や未熟な果実には、「アミグダリン」という青酸配糖体(シアン化合物)が含まれています。
このアミグダリン自体は無毒ですが、体内で酵素によって分解されると有毒な「シアン化水素(青酸)」を発生させる可能性があります。
食用のさくらんぼは果肉が多く、種を誤って飲み込むことも少ないため、普通に食べる分には問題ありません。しかし、観賞用の「桜の実」は果肉がほぼなく、実の大部分を種が占めています。
これを「さくらんぼだ」と勘違いして大量に集め、種ごとジャムにしたり、種を砕いて食べてしまったりすると、健康を害する危険性が非常に高いです。絶対にやめましょう。
桜の実とさくらんぼの用途・食べられるかの違い
用途は明確に分かれます。さくらんぼは生食のほか、ジャム、タルト、コンポート、さくらんぼ酒などに加工されます。桜の実は人間が食用にすることはなく、主にヒヨドリやムクドリなどの野鳥の貴重な食料となります。
栽培目的が違うため、当然ながらその用途も全く異なります。
さくらんぼの用途(食用)
さくらんぼは、その甘さと美味しさから、多様な方法で楽しまれています。
- 生食: 洗ってそのまま食べるのが最もポピュラーです。
- 加工品: ジャム、コンポート、ゼリー、タルトやケーキの材料。
- その他: ブランデーなどに漬け込んで「さくらんぼ酒」にしたり、シロップ漬けの缶詰にされたりします。
桜の実の用途(観賞用・食べられない理由)
一方、ソメイヨシノなどの「桜の実」を人間が利用することは基本的にありません。
まず、前述の通り「美味しくない」ことが最大の理由です。そして「種子に毒性成分が含まれる」リスクもあります。
では、あの実は何のためにあるのかというと、それは「子孫繁栄のため」であり、主に鳥たちの大切な食料となります。
ヒヨドリ、ムクドリ、スズメなどの野鳥は、この実を喜んで食べます。鳥が実を食べ、種子を遠くまで運んでフンとして排出することで、桜は生育範囲を広げていくのです。
桜の実とさくらんぼの旬・産地・価格の違い
さくらんぼの旬は初夏(5月下旬~7月頃)で、山形県が日本一の産地として有名です。価格は品種や等級により高価なものもあります。桜の実は観賞用の桜(ソメイヨシノなど)の花が散った後、5月~6月頃に実をつけ、市場で流通することはありません。
流通している「さくらんぼ」と、自然になっている「桜の実」では、目にする時期や場所も異なります。
さくらんぼ:
旬は初夏の5月下旬から7月頃です。ハウス栽培のものはもっと早い時期から出回ります。日本最大の産地は山形県で、全国生産量の7割以上を占めます。次いで北海道、山梨県などが続きます。価格は品種や贈答用などの等級によって幅広く、高級品は非常に高価です。
桜の実:
ソメイヨシノの場合、4月に花が散った後、5月から6月にかけて実が熟します。日本全国の公園や街路樹で見られますが、商品として市場に出回ることはありません。価格も当然つきません。
桜の実とさくらんぼの起源・歴史・品種改良の背景
さくらんぼ(セイヨウミザクラ)は、ヨーロッパや西アジアで古くから食用として栽培され、明治時代に日本へ導入されました。その後、日本で「佐藤錦」などの優れた品種が生まれました。一方、ソメイヨシノは江戸時代末期に日本で生まれ、花を観賞するためだけに接ぎ木で増やされてきました。
二つがこれほどまでに違うのは、人間がそれぞれに求めてきたものが異なったからです。
さくらんぼの歴史:
食用のさくらんぼ(セイヨウミザクラ)の歴史は古く、原産地のヨーロッパや西アジアでは有史以前から食べられていたとされます。日本には明治時代初期にアメリカやヨーロッパから導入され、主に北海道や東北地方で栽培が始まりました。
大正時代には、山形県で「ナポレオン」と「黄玉」を交配させて、日本のさくらんぼの王様「佐藤錦」が誕生しました。これは、日本の気候でも育てやすく、美味しい実をつけるための品種改良の賜物です。
桜の実(ソメイヨシノ)の歴史:
ソメイヨシノは、江戸時代末期に現在の東京都豊島区駒込付近の植木職人によって、「オオシマザクラ」と「エドヒガン」の交雑で生まれたと考えられています。
その花の美しさと成長の速さから、明治以降、全国の公園や学校、河川敷などに爆発的に植えられました。ソメイヨシノは全て接ぎ木で増やされたクローンであるため、花が一斉に咲き、一斉に散るという特性を持っています。
このように、さくらんぼは「実を食べるため」、ソメイヨシノは「花を見るため」という全く異なる目的で、人間の手によって選ばれ、増やされてきた歴史があるのです。
体験談|公園で「桜の実」を観察して気づいたこと
僕も子供の頃、公園の桜の木に実がなっているのを見つけて、「さくらんぼだ!」と大喜びしたことがあります。
それは6月頃、梅雨入り前の蒸し暑い日でした。ソメイヨシノの木の下に、黒紫色の小さな実がたくさん落ちていたんです。見た目は確かに、アメリカンチェリーの小さい版のようでした。
好奇心から一つ拾って、恐る恐る口に入れてみたんです。その瞬間、「すっぱい!苦い!渋い!」という強烈な味覚が口全体を襲いました。甘みなんて一切ありません。慌てて吐き出して、口をゆすいだのを今でも鮮明に覚えています。
果肉なんてものはほとんどなく、薄い皮のすぐ下は硬い種でした。よく見ると、ヒヨドリやムクドリがその実を盛んについばんでいました。
その時、「ああ、これは人間が食べるものじゃなくて、鳥のご飯なんだな」と身をもって学びました。
スーパーで売られている「さくらんぼ」がいかに甘く、美味しくなるように品種改良されてきたのか。そのありがたみを痛感した出来事でしたね。あの強烈な酸味と苦味は、一度体験すると忘れられません。
桜の実とさくらんぼに関するよくある質問(FAQ)
ソメイヨシノの実は食べられますか?
食べられません。食べても美味しくない(非常に酸っぱく苦い)だけでなく、種子にはアミグダリンという有毒成分が含まれています。鳥にとっては貴重な食料ですが、人間は絶対に食べないでください。
桜の実(さくらんぼ)の種には毒があると聞きましたが本当ですか?
はい、本当です。桜の実、さくらんぼ、梅、杏、桃などのバラ科植物の種子(正確には種の中の「仁」という部分)には、アミグダリンというシアン化合物が含まれます。これが体内で分解されると有毒なシアン化水素(青酸)を生じる可能性があります。食用のさくらんぼでも種を噛み砕いて大量に食べるのは危険です。もちろん、観賞用の桜の実の種は絶対に食べてはいけません。
道に落ちているさくらんぼは食べても大丈夫ですか?
道に落ちている実が、もし本物のさくらんぼ(食用品種)の木から落ちたものだとしても、食べるのは推奨されません。犬や猫の排泄物、土壌の細菌、排気ガスなどで汚染されている可能性が非常に高いからです。落ちているのが観賞用の「桜の実」であれば、なおさら食べてはいけません。
まとめ|桜の実とさくらんぼの違い(ソメイヨシノは食べないで)
桜の実とさくらんぼの違い、これでスッキリしましたね。
「さくらんぼ」は、美味しく食べるために品種改良された「食用の実」です。
「桜の実」は、花を観賞するために育てられた桜(ソメイヨシノなど)がつける「観賞用の実」です。
公園や道端で桜の実を見つけても、「さくらんぼだ!」と勘違いして口に入れないように、特に小さなお子さんには注意してあげてください。
美しい花を楽しませてくれる桜は、実を鳥たちへの贈り物として提供し、春に美味しい実をつけてくれるさくらんぼは、私たち人間への贈り物。それぞれの大切な役割があるんですね。
旬の時期には、ぜひ美味しい山形のさくらんぼを味わい、他の野菜・果物の違いも楽しんでみてください。