サシと霜降りの違いを徹底解説!牛肉の「A5」ランクの秘密と選び方

焼肉店や精肉店で、「見事なサシだね」とか「綺麗な霜降り肉だ」といった言葉を聞くことがありますよね。

どちらも美味しい牛肉を指す言葉のようですが、この「サシ」と「霜降り」、厳密には何が違うのでしょうか。

結論から言うと、「サシ」は赤身の筋肉の中に入り込んだ「脂肪(筋肉内脂肪)」そのものを指す専門用語であり、「霜降り」はそのサシが細かく網の目のように入っている「状態」や「見た目」を指す一般的な表現です。

本質的には同じものを指していますが、「サシ」は脂肪そのもの、「霜降り」はその結果として霜が降りたように見える美しい状態を指す、というニュアンスの違いがあります。この記事では、この二つの言葉の正確な関係性から、牛肉の格付け(A5など)との関連、部位による違い、美味しい食べ方まで詳しく比較解説します。

結論|サシと霜降りの違いを一覧表で確認

【要点】

「サシ」と「霜降り」は、ほぼ同義で使われますが、厳密には異なります。「サシ」は赤身の筋肉繊維の間に入り込んだ脂肪(筋肉内脂肪)そのものを指す専門的な用語です。一方、「霜降り」はそのサシが細かく入った結果、まるで霜が降りたように見える「状態」を指す、より一般的な表現・呼称です。

まずは、サシと霜降りの核心的な違いと関係性を一覧表で整理しましょう。

項目サシ霜降り
分類専門用語・技術用語一般用語・状態表現
指すもの赤身肉中の「脂肪」そのもの(筋肉内脂肪)サシが網目状に入った「状態」やその肉
主な使われ方格付け時、生産・流通の現場(例:「サシが入る」)消費者、飲食店(例:「霜降り肉」「霜降り和牛」)
格付けとの関係脂肪交雑の度合い(B.M.S.)を評価する基準B.M.S.の評価が高い状態(例:等級5)

このように、「サシ」という脂肪が細かく入った結果、「霜降り」という状態になる、という関係性ですね。

サシと霜降りの定義と関係性の違い

【要点】

「サシ」は、牛肉の赤身(筋肉)の繊維間に細かく入り込んだ脂肪(筋肉内脂肪)を指す言葉です。一方、「霜降り」は、そのサシが細かく、美しく、網の目のように広がっている状態を指す視覚的な表現です。つまり、「サシ」は成分、「霜降り」は見た目の状態を表します。

サシとは(脂肪の交雑)

「サシ」とは、牛肉の赤身(筋肉)の中に、網の目のように細かく入り込んでいる脂肪のことを指します。これは専門的には「筋肉内脂肪(きんにくないしぼう)」と呼ばれます。

牛肉の格付けでは、このサシの入り具合を「脂肪交雑(しぼうこうざつ)」と呼び、肉質を評価する上で非常に重要な基準となっています。良質な和牛ほど、このサシがキメ細かく均一に入っている傾向があります。

霜降りとは(サシが入った状態の呼称)

「霜降り」とは、その名の通り、赤身肉にサシが細かく入り、まるで白い霜が降りたように見える「状態」を指す言葉です。

主に消費者や飲食店のメニューで使われる一般的な表現で、「霜降り肉」や「霜降り和牛」といった形で使われます。サシが多ければ多いほど、見た目は白っぽく、美しい霜降り模様になります。

結論:ほぼ同じ意味だが「指す対象」が違う

結局のところ、両者はほぼ同じものを指しています。

  • サシ:脂肪そのもの(成分・要素)
  • 霜降り:サシがたくさん入った状態(見た目・結果)

「良質なサシが均一に入った結果、見事な霜降り肉になる」という関係性ですね。焼肉店で「このカルビ、サシがすごいね!」と言うのも、「このカルビ、見事な霜降りだね!」と言うのも、伝わる意味はほとんど同じというわけです。

牛肉の格付け(A5など)とサシの関係

【要点】

牛肉の格付け「A5」などの数字部分は「肉質等級」を示し、その評価項目の一つに「脂肪交雑(サシ)」があります。サシの入り具合は「B.M.S.(ビーフ・マーブリング・スタンダード)」という12段階の基準で評価され、B.M.S. No.8~12の最高ランクが肉質等級「5」と評価されます。

よく耳にする「A5ランク」という牛肉の格付けは、まさにこの「サシ」の入り具合と密接に関係しています。

B.M.S.(ビーフ・マーブリング・スタンダード)とは

牛肉の格付けは、(公社)日本食肉格付協会によって行われます。等級は「A」「B」「C」の歩留等級(一頭から取れる肉の量)と、「1」から「5」の肉質等級(肉の質)の組み合わせで決まります。

この肉質等級を決める4つの評価項目のうち、最も重要視されるのが「脂肪交雑(しぼうこうざつ)」、すなわちサシの入り具合です。

このサシの入り具合を評価するために使われる基準が、「B.M.S.(ビーフ・マーブリング・スタンダード)」と呼ばれる脂肪交雑基準です。B.M.S.はNo.1(サシがほとんどない)からNo.12(サシが最も密に入っている)までの12段階に分かれています。

A5ランクの「5」はサシの量を示す

肉質等級は、以下の4項目のうち、最も低い等級に合わせて決定されます。

  1. 脂肪交雑(サシ)
  2. 肉の色沢(色と光沢)
  3. 肉の締まり及びきめ
  4. 脂肪の色沢と質

このうち「脂肪交雑」の等級は、B.M.S.の数値によって以下のように決められています。

  • 等級5(かなり良い):B.M.S. No.8 ~ No.12
  • 等級4(やや良い):B.M.S. No.5 ~ No.7
  • 等級3(標準):B.M.S. No.3 ~ No.4
  • 等級2(標準に準ずる):B.M.S. No.2
  • 等級1(劣る):B.M.S. No.1

つまり、「等級5」の霜降り肉とは、B.M.S. No.8以上という、非常に密にサシが入った牛肉であることを示しているのです。「A5」とは、歩留等級が「A」で、かつ肉質等級が「5」(特に脂肪交雑がNo.8以上)の、最高ランクの牛肉ということになりますね。

サシ(霜降り)が多い部位と少ない部位

【要点】

サシ(霜降り)は、牛の運動量が少ない部位に蓄積されやすいです。特に背中側の「リブロース」「サーロイン」や、腹側の「トモバラ(三角バラ)」はサシが入りやすい代表的な部位です。逆に、運動量が多い「ヒレ」や「モモ」はサシが少ない赤身肉となります。

牛肉は、部位によってサシの入りやすさが全く異なります。これは主に、その筋肉がどれだけ運動に使われるかに関係しています。

サシ(霜降り)が多い代表的な部位

一般的に、あまり運動に使われない背中側や腹側の肉は、筋肉内に脂肪(サシ)を蓄えやすく、霜降りになりやすいです。

  • リブロース:背中の中央部分。最もサシが入りやすく、キメ細かく、風味も豊かです。
  • サーロイン:リブロースの後ろに続く部位。ステーキの王様とも呼ばれ、脂の甘みと赤身の旨味のバランスが絶妙です。
  • トモバラ(三角バラ):腹部のあばら周りの肉。「カルビ」として使われる部位で、特に「三角バラ」は最もサシが入りやすく、「特上カルビ」として提供されます。

サシが少ない(赤身)の代表的な部位

逆に、日常的によく動かす筋肉にはサシが入りにくく、脂肪が少ない赤身肉となります。

  • ヒレ(ヘレ):サーロインの内側にある細長い筋肉。牛の体で最も運動量が少ない部位でありながら、サシはほとんど入らず、非常に柔らかいのが特徴です。
  • モモ(内モモ、シンタマなど):後ろ脚の付け根の部分。大きく分けて4つの部位に分かれますが、いずれも運動量が多いため脂肪が少なく、肉本来の味が濃い赤身部位です。
  • ランプ:腰から尻にかけての部位。モモ肉の一種で、赤身ですが柔らかく風味があります。

サシ(霜降り)の味・食感・風味の違い

【要点】

サシ(霜降り)が多い肉は、脂肪の融点が低いため、口に入れると体温で脂が溶け出し、「とろけるような」柔らかい食感を生み出します。また、この脂が「和牛香(わぎゅうこう)」と呼ばれる独特の甘く芳醇な香りを放ち、濃厚な旨味を感じさせます。

サシ(霜降り)が美味しいとされる理由は、単に「脂が多いから」というだけではありません。

和牛のサシ(脂肪)は、オレイン酸などの不飽和脂肪酸を多く含んでおり、融点(脂が溶け出す温度)が非常に低いのが特徴です。そのため、口に入れると人の体温(36℃前後)でも脂がスッと溶け出し、とろけるような滑らかな食感を生み出します。

さらに、この脂が溶ける際に「和牛香(わぎゅうこう)」と呼ばれる、ココナッツや桃にも似た甘く芳醇な香りが立ち上ります。この香りと脂の甘み、赤身の旨味(イノシン酸など)が一体となることで、霜降り肉ならではの濃厚で奥深い味わいを感じられるのです。

一方、サシが少ない赤身肉は、この脂の甘みやとろける食感はありませんが、その分、肉本来のしっかりとした歯ごたえと、噛みしめるごとに出てくるイノシン酸などの強い旨味をダイレクトに楽しむことができます。

美味しい食べ方・調理法・選び方の違い

【要点】

サシが多い霜降り肉は、脂の旨味ととろける食感を活かす「すき焼き」「しゃぶしゃぶ」が最適です。焼肉では脂が落ちて香ばしくなります。サシが少ない赤身肉は、肉の旨味を閉じ込める「ステーキ(ミディアムレア)」や「ローストビーフ」がおすすめです。

サシの量によって、その肉のポテンシャルを最大限に引き出す調理法は異なります。

霜降り肉(サシが多い肉)の選び方と調理法

A5ランクのサーロインやリブロース、三角バラといった霜降り肉は、脂の旨味が主役です。

  • すき焼き・しゃぶしゃぶ:薄切りにしてサッと火を通すことで、脂が適度に溶け出し、肉の柔らかさと甘みを最大限に楽しめます。野菜やタレとの相性も抜群です。
  • 焼肉:網で焼くことで余分な脂が落ち、香ばしさが加わります。ただし、脂が多いため、少量で満足感を得やすい反面、食べ過ぎると胃もたれしやすい点には注意が必要ですね。

赤身肉(サシが少ない肉)の選び方と調理法

ヒレやモモ、ランプといった赤身肉は、肉本来の味を活かす調理法が向いています。

  • ステーキ:肉汁を閉じ込めるように表面を焼き固め、中はミディアムレアで仕上げるのがおすすめです。噛みしめるたびに赤身の旨味が溢れ出します。
  • ローストビーフ:低温でじっくりと火を入れることで、赤身のしっとりとした柔らかさを保ちつつ、旨味を凝縮させることができます。

サシ(霜降り)文化の歴史的背景

【要点】

日本の「霜降り」文化は、明治時代の肉食解禁と「すき焼き(牛鍋)」の流行と共に発展しました。当初は農耕用の役牛の赤身が主流でしたが、品種改良と飼育技術の進歩により、柔らかく濃厚な味わいを生み出す「サシ」が日本独自の美味しさとして評価されるようになり、世界に誇る「WAGYU」の基準となりました。

牛肉に「サシ(霜降り)」を求める文化は、世界的に見ても日本で特に顕著です。海外では赤身肉が好まれる傾向が強い中、なぜ日本でこれほど霜降りが愛されるようになったのでしょうか。

日本では長らく仏教の影響で肉食が公には禁じられていましたが、明治時代に入り肉食が解禁されると、「牛鍋(すき焼きの原型)」が文明開化の象徴として大流行しました。

当初は、農作業などで使われなくなった農耕用の役牛(赤身が硬い)を、薄切りにして濃いタレで煮込む食べ方が主流でした。しかし、時代とともに食肉専用の牛(和牛)の品種改良や飼育技術が進むと、筋肉内に脂肪(サシ)を蓄えやすい牛が作られるようになります。

このサシが入った肉は、加熱すると柔らかく、脂の旨味が強いため、すき焼きやしゃぶしゃぶといった日本の伝統的な食べ方に非常にマッチしました。こうして、「霜降り肉=美味しい高級肉」という日本独自の価値観が形成されていったのです。

サシ(霜降り)牛肉の体験談

僕も若い頃は、焼肉といえば「A5ランクのカルビ一択!」という時期がありました。あの口に入れた瞬間に溶けてなくなるような脂の甘みと、香ばしい和牛香がたまらなく好きだったんですね。

ある日、奮発して高級焼肉店で「A5ランク霜降り盛り合わせ」を注文しました。最初の数枚は、まさに至福の味わい。サシが網の目のように入った肉が、舌の上でとろけていきます。

しかし、食べ進めるうちに、だんだんとお腹が重くなってきました。あれほど美味しく感じていた脂の甘みが、急に「しつこさ」に変わってしまったのです。結局、後半は赤身のロースやハラミばかりを追加注文することに…。

この体験から、「等級が高い(サシが多い)=必ずしも自分にとって美味しい」わけではないことを痛感しました。霜降りには霜降りの良さ(とろける食感と脂の甘み)があり、赤身には赤身の良さ(肉の旨味と歯ごたえ)がある。その日の体調や、一緒に食べるお酒、ご飯とのバランスを考えて、サシの量を選ぶことが大切なんだと学びました。

今では、最初の数枚だけ上質な霜降り(サシ)を楽しみ、その後は赤身肉でじっくりと肉の味を堪能するのが、僕にとっての最高の贅沢になっています。

サシと霜降りに関するFAQ(よくある質問)

Q1. A5ランクの牛肉なら必ず美味しいですか?

A1. A5ランクというのは、主に「サシ(脂肪交雑)が非常に多い」ことを示す等級です。そのため、とろけるような脂の甘さが好きな方にとっては最高に美味しいと感じられるでしょう。しかし、赤身肉本来のしっかりした旨味や歯ごたえが好きな方にとっては、逆に「脂っこすぎる」「くどい」と感じる場合もあります。美味しさは個人の好みによりますね。

Q2. 「サシ」と「脂身」の違いは何ですか?

A2. 良い質問ですね。「脂身(あぶらみ)」は、一般的に肉の外側や内臓の周りに塊として付着している脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪)を指します。一方、「サシ」は、赤身肉の筋肉の繊維の間に入り込んでいる脂肪(筋肉内脂肪)を指します。焼肉で取り除かれる白い塊が「脂身」、赤身と一体化している網目模様が「サシ」と考えると分かりやすいです。

Q3: 魚の「トロ」もサシ(霜降り)ですか?

A3. マグロの「トロ」も脂肪(脂)が豊富な部分を指す点で似ていますが、牛肉の「サシ」とはメカニズムが異なります。牛肉のサシは筋肉繊維の「間」に脂肪が入り込んでいるのに対し、魚のトロは筋肉細胞自体が脂肪を蓄えて肥大化したものです。見た目が霜降りに似ているため「霜降り」と表現されることもありますが、一般的に魚の脂肪を「サシ」と呼ぶことはありません。

まとめ|サシと霜降りの違いを理解して牛肉を選ぼう

「サシ」と「霜降り」の違い、そして牛肉の格付けとの関係について、ご理解いただけたでしょうか。

最後にポイントを整理します。

  • サシ:赤身肉に入り込んだ「脂肪」そのもの(専門用語)。
  • 霜降り:サシが細かく入った「状態」や「見た目」(一般用語)。
  • A5等級:サシの入り具合(B.M.S.)が最高ランクであることを示す。
  • 選び方:脂のとろける食感なら「霜降り(サシが多い)」、肉の旨味なら「赤身(サシが少ない)」を選ぶ。

どちらが良い・悪いではなく、それぞれの特徴を知ることで、自分の好みやその日の気分、調理法に合わせて最適な牛肉を選べるようになります。

牛肉の格付けや部位に関するより詳しい情報は、農林水産省や(公社)日本食肉格付協会のウェブサイトでも確認できます。ぜひ、今度の焼肉やスーパーでの買い物に、この知識を役立ててください。当サイトでは、他にも肉・魚介類の違いについても解説しています。