シャワルマとケバブ、どちらも中東や地中海地域を代表する肉料理ですよね。
特に、大きな肉の塊が垂直の串で回転しながら焼かれている屋台を見ると、「あれはシャワルマ?それともケバブ?」と混同してしまう方も非常に多いのではないでしょうか。
この2つの言葉の最大の違いは、「ケバブ」がトルコやペルシャ起源の「焼き肉料理の総称」であるのに対し、「シャワルマ」はそのケバブの調理法がレバント(中東)地域に伝わり、独自の進化を遂げた「特定の料理名」である点です。
私たちが「ケバブ」と聞いてイメージするあの回転肉は、正確には「ドネルケバブ」と言い、ケバブの一種に過ぎません。
この記事を読めば、「ケバブ」という言葉の広い意味、そして私たちが混同しがちな「シャワルマ」と「ドネルケバブ」の具体的な違い(スパイス・ソース・食べ方)まで、すべてがスッキリと理解できます。
まずは、その根本的な違いを一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | シャワルマ(Shawarma) | ケバブ(Kebab) |
|---|---|---|
| 言葉の意味 | 「回転」(アラビア語) | 「焼き肉」(ペルシャ語・トルコ語) |
| 分類 | 特定の料理名 | 料理の総称(焼き肉料理全般) |
| 起源 | レバント地方(シリア、レバノンなど) | トルコ、ペルシャ(イラン)など広範囲 |
| 代表的な料理 | シャワルマ(ラップサンド) | ドネルケバブ(回転肉)、シシカバブ(串焼き)など |
| 調理法 | 垂直の回転串で肉を焼き、削ぎ落とす | 多岐にわたる(串焼き、網焼き、回転焼きなど) |
| 主なソース | タヒニ(ゴマ)、フムス、ガーリックソース | ヨーグルトソース、チリソース(ドネルケバブの場合) |
つまり、「ケバブ」という大きなカテゴリの中に、「ドネルケバブ」という種類があり、そのドネルケバブと「シャワルマ」が非常に似ている、というのが混乱の真相です。
それでは、この複雑な関係を一つずつ解き明かしていきましょう。
「シャワルマ」と「ケバブ」の定義・起源・発祥の違い
「ケバブ」はペルシャ語やトルコ語で「焼き肉」を意味する広範な言葉(総称)です。一方、「シャワルマ」はアラビア語で「回転」を意味し、レバント地方で発展した「垂直の回転串で焼いた肉料理」という特定の料理を指します。
ケバブ(Kebab)とは【トルコ・ペルシャの「焼き肉」の総称】
「ケバブ」は、トルコやペルシャ(現在のイラン)など、中東の広い地域で生まれた肉料理の「総称」です。その語源は「焼く」「炒める」といった意味を持ちます。
「ケバブ」は一種類の料理ではありません。非常に多くの種類が存在します。
- ドネルケバブ(Döner Kebab):私たちが最もよく目にする、垂直の串にスライスした肉を重ねて回転させながら焼くスタイル。「Döner」はトルコ語で「回転する」を意味します。
- シシカバブ(Shish Kebab):「シシュ(Şiş)」=「串」の意味。肉(主に羊肉)や野菜を串に刺して、炭火などで水平に焼く、日本の「串焼き」や「バーベキュー」に最も近いスタイルです。
- コフタケバブ(Kofta Kebab):スパイスで味付けしたひき肉を、串に巻き付けたり、団子状にしたりして焼くものです。
このように、ケバブは「焼いた肉料理」全般を指す、非常に広い言葉なのです。
シャワルマ(Shawarma)とは【レバント地方の「削ぎ切り肉」料理】
「シャワルマ」は、アラビア語で「回転する」という意味を持ち、トルコの「ドネルケバブ」の調理法が、レバント地方(シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナなど)に伝わり、独自の発展を遂げた料理を指します。
調理法はドネルケバブとほぼ同じ(垂直の回転串で肉を削ぎ落とす)ですが、味付けや食べ方が異なります。
シャワルマは「料理の総称」ではなく、「ドネルケバブ」と並ぶ、ひとつの確立された「料理名」として認識されています。
主な材料と調理法(焼き方)の違い
ケバブは調理法が多様で、「串に刺して水平に焼く(シシカバブ)」、「ひき肉を焼く(コフタ)」、「垂直に回転させて焼く(ドネルケバブ)」など様々です。シャワルマは「垂直に回転させて焼く」という調理法にほぼ限定されます。
ケバブの調理法:「焼く」調理法の総称
前述の通り、「ケバブ」という言葉が指す調理法は一つではありません。
- シシカバブ: 炭火やグリルで水平に串焼きにする。
- ドネルケバブ: 専用の機械で垂直に回転焼きにする。
「ケバブ」と聞いた場合、このどちらの可能性もあります。
シャワルマの調理法:「垂直の串で回転させ、削ぎ落とす」
「シャワルマ」の調理法は、ドネルケバブと同様、垂直の回転串(ロティサリー)を使うスタイルにほぼ限定されます。
薄くスライスした肉(鶏肉、羊肉、牛肉、七面鳥など)をスパイスでマリネし、何層にも重ねて串に刺し、外側からじっくりと焼き上げ、焼けた部分からナイフで削ぎ落として提供されます。
最大の混乱ポイント「ドネルケバブ」と「シャワルマ」の違い
最も混同されやすい「ドネルケバブ」と「シャワルマ」の違いは、起源と味付けです。ドネルケバブはトルコ起源で、ヨーグルトベースのソースが特徴。シャワルマはレバント起源で、タヒニ(ゴマ)ベースのソースが特徴です。
私たちが「ケバブ」と呼んでいるものの多くは、トルコ式の「ドネルケバブ」です。このドネルケバブとシャワルマは、調理法が同じため、非常によく似ています。
この2つを明確に区別するポイントは「地域(文化圏)」と「味付け(スパイスとソース)」です。
| 項目 | ドネルケバブ(Kebabの一種) | シャワルマ(Shawarma) |
|---|---|---|
| 地域・文化圏 | トルコ(およびドイツなど) | アラブ・レバント地方 |
| 主なスパイス | オレガノ、クミン、パプリカ、チリ | カルダモン、ターメリック、シナモン |
| 主なソース | ヨーグルトソース、ガーリックソース、チリソース | タヒニソース(ゴマ)、フムス(ひよこ豆) |
| 付け合わせ | レタス、トマト、玉ねぎ、赤キャベツ | ピクルス(キュウリ、カブ)、フライドポテト |
簡単に言えば、ヨーグルトソースで食べるのがトルコ式の「ドネルケバブ」、ゴマのソース(タヒニ)やピクルスと食べるのがアラブ式の「シャワルマ」と覚えると分かりやすいでしょう。
味付け・スパイス・ソースの違い
シャワルマは、タヒニ(ゴマペースト)ソースのナッティな風味と、ピクルスの酸味が特徴です。ケバブ(ドネルケバブ)は、ヨーグルトベースのガーリックソースによる爽やかな酸味と、チリソースの辛味が特徴です。
シャワルマの味付け(タヒニ・カルダモン)
シャワルマの肉は、カルダモン、ターメリック、シナモン、クローブなどのエキゾチックで甘い香りのスパイスでマリネされることが多いです。
最大の特徴はソースです。「タヒニ」と呼ばれるゴマペーストをベースにした、ナッティで濃厚なソースが使われます。また、フムス(ひよこ豆のペースト)や、強めのガーリックソース(トゥーム)が使われることもあります。
具材としてキュウリやカブのピクルスが多用されるため、全体として酸味が効いた複雑な味わいになります。
ケバブの味付け(ヨーグルト・オレガノ)
ケバブ(ドネルケバブ)の肉は、ヨーグルト、レモン汁、オレガノ、クミン、パプリカなどでマリネされ、よりハーブ感と爽やかな風味が特徴です。
ソースも、ヨーグルトベースの白いソース(ニンニクやミントが入ることも)と、トマトベースの赤いチリソースの2種類をかけるのが一般的です。
具材にはピクルスではなく、生のレタス、トマト、玉ねぎ、赤キャベツの千切りなどが使われ、シャワルマよりもサラダ感覚でさっぱりと食べられる傾向があります。
食べ方(提供スタイル)と文化的な違い
シャワルマは、薄いピタパンやサジュブレッドで具材を「細く巻いたラップサンド」が主流です。一方、ドネルケバブは、「厚めのパンに挟むサンドイッチ(ケバブサンド)」、「薄いパンで巻くラップ(デュリュム)」、そして「皿盛り(イスケンデルケバブ)」と、食べ方が多様です。
シャワルマの提供方法は、ほぼ「ラップサンド」に特化しています。薄いピタパンや、さらに薄いサジュブレッド(マークック)に、削いだ肉、ピクルス、野菜、フライドポテト(パンの中に!)、タヒニソースを乗せ、細くタイトに巻くのが特徴です。
ケバブ(ドネルケバブ)の提供方法は、はるかに多様です。
- ケバブサンド: 最も一般的なスタイル。厚みのあるピタパン(ピデ)や食パンのようなパンに切り込みを入れ、具材を詰め込みます。
- デュリュム(Dürüm): トルティーヤに似た薄いラヴァッシュ(Lavaş)生地で巻くラップスタイル。シャワルマより太めに巻かれることが多いです。
- 皿盛り: ご飯(ピラウ)やパンの上に乗せて、フォークとナイフで食べるスタイル。特に「イスケンデル・ケバブ」は、パンの上にケバブを乗せ、トマトソースと溶かしバターをかけた豪華な一皿です。
また、シシカバブやコフタケバブは、串に刺したまま提供されるか、串から外してご飯やパンと共に皿盛りで提供されます。
体験談|イスタンブールとベイルート、それぞれの「削ぎ切り肉」
僕は仕事でトルコのイスタンブールと、レバノンのベイルートの両方を訪れたことがあります。どちらの街角にも、あの「回転肉」の屋台がありました。
イスタンブールで「ケバブ!」と注文して出てきたのは、分厚いパン(ピデ)に、これでもかと削ぎ切り肉(ドネルケバブ)を詰め込んだサンドイッチでした。味の決め手は、爽やかなヨーグルトソースと、ピリ辛のチリソース。シャキシャキの玉ねぎとレタスが、肉の脂っぽさを見事に中和してくれます。まさに「豪快な肉サンド」という印象でした。
一方、ベイルートの屋台で「シャワルマ!」と頼んで出てきたのは、全くの別物でした。
まず、パンが非常に薄い(ピタパン)。そこに削いだ鶏肉、そして驚いたことにフライドポテトと強烈な酸味のキュウリのピクルスが乗せられました。そして仕上げにかけるのは、ヨーグルトではなく、濃厚なゴマのソース(タヒニ)。それをクルクルと細く巻いて渡されます。
一口食べると、ヨーグルトの酸味とは全く違う、ピクルスの酸味とゴマの香ばしさが口いっぱいに広がりました。フライドポテトの食感もアクセントになっています。同じ「回転肉」なのに、国が違うとソースと付け合わせがこんなに変わるのか、と衝撃を受けましたね。
シャワルマとケバブに関するよくある質問
シャワルマとケバブの違いについて、よくある質問をまとめました。
質問1:結局、日本で「ケバブ」として売られているのは何ですか?
回答: そのほとんどが「ドネルケバブ」です。
垂直の回転串で肉を焼き、ヨーグルトベースのソースやチリソースをかけ、ピタパンに挟んで提供するスタイルは、トルコ式のドネルケバブの特徴です。店員さんがトルコ出身の方が多いのも、そのためですね。
質問2:シャワルマとシシカバブの違いは何ですか?
回答: 調理法が全く違います。
シャワルマは、肉を「垂直」の回転串で焼き、「削ぎ切り」にします。シシカバブは、肉を「水平」の串(シシュ)に刺し、「炭火などで焼く」ものです。シシカバブは「ケバブ」という広いカテゴリの中の一つです。
質問3:ギリシャの「ギロ(ジャイロ)」とは違いますか?
回答: ギロ(Gyro)も、ドネルケバブやシャワルマと同じく、垂直の回転串で焼く料理です。トルコのドネルケバブがギリシャに伝わって発展したものと言われています。
違いは、ギリシャでは豚肉が使われることが多い点や、ソースに「ザジキ」(ヨーグルト、キュウリ、ニンニクのソース)が使われる点、そしてフライドポテトを一緒に挟むことが一般的である点(シャワルマと共通)などがあります。
まとめ|シャワルマとケバブ どちらを選ぶ?
シャワルマとケバブの違い、これで明確になりましたね。
- ケバブ(Kebab): 「焼き肉」の総称。串焼き(シシカバブ)や回転焼き(ドネルケバブ)など、様々な種類を含む。
- シャワルマ(Shawarma): 特定の料理名。レバント地方の垂直回転焼き。タヒニ(ゴマ)ソースとピクルスが特徴。
- ドネルケバブ(Döner Kebab): ケバブの一種。トルコの垂直回転焼き。ヨーグルトソースと生野菜が特徴。
つまり、私たちが混同していたのは、主に「シャワルマ」と「ドネルケバブ」の2つだったのです。どちらも「ケバブ」という大きな文化圏から派生した、魅力的な料理です。
今日の気分に合わせて、こう選んでみてはいかがでしょうか。
- 「さっぱりしたヨーグルトソースと生野菜で食べたい」 → ケバブ(ドネルケバブ)
- 「濃厚なゴマの風味とピクルスの酸味を楽しみたい」 → シャワルマ
- 「串に刺さった香ばしい肉が食べたい」 → ケバブ(シシカバブ)
ぜひ、この違いを意識して、奥深い中東の食文化を楽しんでみてくださいね。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な料理・メニューの違いに関する記事を掲載しています。ぜひそちらもご覧ください。