秋の果物売り場を彩る、大粒で黒紫色のブドウ。
「シナノパープル」と「ナガノパープル」、名前がとてもよく似ていて、どちらも長野県生まれのようですが、一体何が違うのでしょうか?
見た目もそっくりで、どちらを選べばいいか迷ってしまいますよね。
結論から言うと、この二つは「親子」のような関係です。「シナノパープル」という品種があり、そこから特に優れた系統を選抜して育成・品種登録されたのが「ナガノパープル」なんです。
最大の違いは、「ナガノパープル」が「種なし・皮ごと食べられる」ように栽培管理されているのに対し、「シナノパープル」は「種あり」で流通することが多い点です。
この記事を読めば、二つのブドウの正確な関係性、味や価格の違い、そしてどちらを選ぶべきかがスッキリと理解できますよ。
それでは、まず両者の違いを比較表で見ていきましょう。
結論|「シナノパープル」と「ナガノパープル」の違いが一目でわかる比較表
「シナノパープル」と「ナガノパープル」は、「巨峰」と「リザマート」を親に持つ、生物学的に非常に近い関係です。「ナガノパープル」は、その「シナノパープル」から選抜・育成され、長野県が品種登録したブランド品種です。最大の違いは、ナガノパープルが「種なし・皮ごと食べられる」のに対し、シナノパープルは「種あり」で流通することが多い点です。
まずは、「シナノパープル」と「ナガノパープル」の核心的な違いを一覧表にまとめました。
| 項目 | シナノパープル | ナガノパープル |
|---|---|---|
| 親の組み合わせ | 巨峰 × リザマート | |
| 関係性 | 交配種(親品種の一つ) | シナノパープルから選抜された品種 |
| 主な特徴 | 種あり(種なし処理も可能だが少ない) | 種なし(ジベレリン処理が必須) |
| 皮 | やや硬め・渋みを感じることも(剥くのが一般的) | 薄く、皮ごと食べられる |
| 糖度(目安) | 17~18度 | 18~20度(より甘い傾向) |
| 主な用途 | 生食(種を出す必要あり) | 生食(皮ごと・種なしで手軽に) |
| 価格帯 | ナガノパープルより手頃な傾向 | ブランド価値・手間(種なし処理)により高価な傾向 |
| 主な産地 | 長野県 | |
| 旬の時期 | 8月下旬~9月頃 | 9月上旬~9月下旬 |
このように、ルーツは同じでも、選抜と栽培方法によって明確な違いが生まれています。次に、この関係性について詳しく解説します。
「シナノパープル」と「ナガノパープル」の定義と関係性の違い
どちらも「巨峰」と「リザマート」という品種を交配して生まれたブドウです。「シナノパープル」がその交配種の一つであり、「ナガノパープル」は、そのシナノパープルの中から特に優れた系統を選び出し、長野県がブランドとして品種登録したものです。
「シナノパープル」とは?(巨峰×リザマート)
「シナノパープル」は、長野県須坂市の育種家(池田準氏)によって、「巨峰(きょほう)」に「リザマート」という品種を交配させて育成されたブドウです。
巨峰の甘みと、リザマートの食感を受け継いだ品種として誕生しました。
「ナガノパープル」とは?(シナノパープルから選抜された品種)
「ナガノパープル」は、長野県果樹試験場(須坂市)が、同じく「巨峰」と「リザマート」の交配から育成したブドウです。より正確には、「シナノパープル」と呼ばれる交配種群の中から、特に種が無く皮ごと食べられる特性を持つ優良な系統を選抜・育成したものが「ナガノパープル」です。
2004年(平成16年)に品種登録された、長野県オリジナルのブランド品種です。「シャインマスカット」や「クイーンルージュ」と並び、長野県の「ぶどう三姉妹®」としてPRされています。
「ナガノパープル」は「シナノパープル」から生まれたエリート
つまり、関係性を整理すると以下のようになります。
- 「巨峰」と「リザマート」を交配して「シナノパープル」という品種群が誕生した。
- その中から、特に優れた特性(種なし・皮ごとOK)を持つ系統を長野県が選び抜き、「ナガノパープル」として品種登録した。
したがって、「ナガノパープル」は「シナノパープル」から選抜されたエリート品種であり、生物学的には非常に近い関係(親子や兄弟に近い)と言えます。
味・香り・食感・見た目の違い
最大の違いは食べやすさです。「ナガノパープル」は種なしで皮も薄く、そのまま食べられます。一方、「シナノパープル」は基本的に種があり、皮もやや硬く渋みを感じることがあるため、皮をむいて種を出すのが一般的です。味はナガノパープルの方が糖度が高い傾向にあります。
ルーツは同じでも、選抜されたことで消費者にとって重要な違いが生まれています。
見た目(色・形)
どちらも大粒で、色は濃い黒紫色をしており、見た目は非常によく似ています。房の形や粒の大きさも「巨峰」に似ています。
最大の違いは「種」と「皮」(種なし・皮ごと食べられるか)
これが両者を分ける決定的な違いです。
ナガノパープル:
最大の特徴は、「種なし」で、かつ「皮が薄い」ことです。栽培段階でジベレリン処理(植物ホルモンによる種なし化処理)が必須とされており、皮には渋みがほとんどないため、皮ごとパリッと食べられます。シャインマスカットの黒ブドウ版、と考えると分かりやすいですね。
シナノパープル:
流通しているものの多くは「種あり」です。また、皮がナガノパープルに比べてやや硬く、渋みを感じることがあるため、皮をむいて食べるのが一般的です。巨峰と同じような食べ方になります。
味・糖度・香りの違い
どちらも巨峰系のしっかりとした甘みと、さわやかな酸味を持っています。
ただし、糖度は「ナガノパープル」が18~20度程度であるのに対し、「シナノパープル」は17~18度程度とされており、ナガノパープル(無核)の方が甘みを強く感じやすい傾向があります。
香りはどちらも巨峰に似た芳醇な香り(フォクシー香)を持っています。
栄養・成分・健康面の違い(皮ごと食べられるメリット)
どちらもブドウ糖やポリフェノールを豊富に含みます。特に大きな違いは、「ナガノパープル」は皮ごと食べられる点です。ブドウの皮にはレスベラトロールなどの抗酸化物質(ポリフェノール)が多く含まれるため、ナガノパープルはそれらの栄養素を効率よく摂取できます。
ブドウとしての基本的な栄養成分(ブドウ糖、ビタミン、ミネラル)に大きな差はありません。
注目すべきは、紫色の皮に含まれるポリフェノールの一種「アントシアニン」や「レスベラトロール」です。これらのは強い抗酸化作用を持つことで知られています。
「シナノパープル」は皮をむいて食べることが多いため、これらの栄養素を摂取しにくいです。一方、「ナガノパープル」は皮ごと食べるのが基本なので、皮に含まれる栄養素を丸ごと摂取できるという大きな健康上のメリットがあります。
使い方・料理での扱い方の違い
使い方の違いは「手軽さ」です。「ナガノパープル」は種も皮もないため、そのまま洗ってすぐに食べられ、デザートやタルトの飾り付けにも最適です。「シナノパープル」は種と皮を取り除く必要があるため、一手間かかりますが、ブドウ本来の味をじっくり楽しむのに向いています。
ナガノパープル(種なし・皮ごと):
最大の魅力はその手軽さです。房から外してサッと洗えば、そのまま食べられます。お弁当のデザート、子どものおやつ、ケーキやタルト、パフェのトッピングなど、皮をむいたり種を出したりする手間が一切ないため、あらゆるシーンで活躍します。
シナノパープル(種あり・皮むき):
巨峰やピオーネのように、皮をむき、種を出して食べるのが基本です。手間はかかりますが、ブドウの果肉そのもののジューシーな食感をじっくりと味わうのに適しています。加工してジュースやジャムにする場合にも使われます。
旬・産地・価格の違い
どちらも主な産地は長野県です。旬は8月下旬から9月頃でほぼ重なります。価格は、「ナガノパープル」の方が種なし処理の手間や、長野県オリジナル品種としてのブランド価値があるため、シナノパープルよりも高価になる傾向があります。
主な産地と旬の時期
どちらも名前(シナノ=信濃)の通り、長野県が主な産地です。
旬の時期もほぼ同じで、夏の終わりから秋にかけて収穫されます。「シナノパープル」が8月下旬頃から、「ナガノパープル」が9月上旬から9月下旬頃までと、最盛期は9月になります。
価格帯の傾向
市場価格は、「ナガノパープル」の方が高価になるのが一般的です。
理由は、「ナガノパープル」が長野県のブランド品種であることに加え、種なしにするための「ジベレリン処理」という栽培の手間がかかっているためです。
一方、「シナノパープル」は種あり栽培が基本で、ブランド品種でもないため、比較的リーズナブルな価格で見かけることがあります。
起源・歴史・文化的背景
「ふじ」(りんご)の成功体験を持つ長野県が、「シャインマスカット」に続く次世代のブドウとして開発したのが「ナガノパープル」です。「巨峰」と「リザマート」という優れた品種を交配し、その中から「種なし・皮ごと」という現代のニーズに合う系統を選抜した、戦略的な品種です。
「ナガノパープル」は、りんごの「ふじ」を世界ブランドにした長野県が、ブドウにおいても「長野県オリジナル」のヒット品種を生み出そうという強い思いから開発されました。
当時、人気の「巨峰」は「種があり皮をむく」必要があり、「リザマート」は「皮ごと食べられるが種があり、裂果しやすい(実が割れやすい)」という欠点がありました。
長野県果樹試験場は、この二つを交配して両方の良いとこ取りを目指し、1990年(平成2年)に交配を開始。その結果生まれた多くの「シナノパープル」の系統の中から、栽培しやすく、かつ消費者のニーズ(種なし・皮ごと)に最も合う優良な系統を選び抜き、2004年(平成16年)に「ナガノパープル」として品種登録しました。
「種なし・皮ごと」という付加価値が市場に受け入れられ、今や長野県を代表する人気品種の一つとなっています。
【体験談】「皮ごと・種なし」の手軽さが食卓を変えた
僕にとって、ブドウ、特に巨峰やピオーネは「美味しいけれど、手が汚れる果物」の代表でした。皮をむくと果汁で手がベタベタになるし、種を出すのも少し面倒ですよね。美味しいのは分かっていても、食卓に出すのをためらうことがありました。
そんな時、シャインマスカットの登場で「皮ごと・種なし」の便利さを知りました。そして、「あの便利なのが黒ブドウにもある」と知人に勧められたのが「ナガノパープル」でした。
初めて食べた時の衝撃は今でも覚えています。見た目は立派な巨峰なのに、洗ってそのまま口に入れると、パリッとした皮が弾け、種を気にせず濃厚な甘みと果汁だけが口に広がるんです。
一方、その翌年に「シナノパープル」という名前で安く売られているものを見つけ、「ナガノパープルに似てる!」と思って買ってみました。しかし、食べてみると皮が口に残り、何より「種」がありました。
この経験で、「パープル」という名前が同じでも、「ナガノ」が付くのと付かないのとでは、手軽さ=体験価値が全く違うことを痛感しました。手軽さを求める時は「ナガノパープル」、手間をかけても良い時は他の種ありブドウ、と明確に使い分けるきっかけになりましたね。
シナノパープルとナガノパープルの違いに関するよくある質問(FAQ)
Q1. シナノパープルとナガノパープルは、結局どっちが美味しいですか?
A. どちらも美味しいですが、好みによります。手軽に皮ごと・種なしで、強い甘みを楽しみたいなら「ナガノパープル」がおすすめです。種を出す手間を惜しまず、ブドウ本来のしっかりした甘みと酸味のバランスを楽しみたいなら「シナノパープル」も良い選択です。
Q2. シナノパープルは皮ごと食べられますか?
A. 食べられなくはありませんが、あまりおすすめしません。「ナガノパープル」に比べて皮が硬く、渋みを感じることがあるため、一般的には皮をむいて食べるのが主流です。
Q3. ナガノパープルに似た、他の皮ごと食べられる黒ブドウはありますか?
A. はい、最近では「ブラックビート」や「富士の輝(ふじのかがやき)」(通称:ブラックシャインマスカット)など、皮ごと・種なしで食べられる黒ブドウの品種が増えていますよ。
まとめ|どちらを選ぶべきか?(手軽さ vs 伝統的な味わい)
「シナノパープル」と「ナガノパープル」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
どちらも「巨峰×リザマート」という優れた親から生まれた、長野県生まれのブドウです。しかし、その個性は明確に異なります。
- ナガノパープル(選抜品種):
「皮ごと・種なし」の手軽さが最大の特徴。糖度も非常に高く、濃厚な甘みをストレスフリーで楽しみたい方、贈答用におすすめです。 - シナノパープル(親品種の一つ):
「種あり・皮むき」が基本。昔ながらのブドウの食べ方で、しっかりとした甘みと酸味を味わいたい方、ナガノパープルより手頃な価格で巨峰系の味を楽しみたい方に向いています。
シーンや食べる人(特に小さなお子様がいるかなど)に合わせて、賢く使い分けてみてくださいね。
当サイト「違いラボ」では、他にも「ピオーネと巨峰の違い」など、様々な食材・素材の違いについて詳しく解説しています。ぜひチェックしてみてください。