テネシーウイスキーとバーボンの違いとは?製法・味・香りを徹底比較

テネシーウイスキーとバーボン、どちらもアメリカを代表するウイスキー(アメリカンウイスキー)ですよね。

どちらも美しい琥珀色で、甘い香りがするため、バーの棚に並んでいると「この二つ、何が違うの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。

結論から言うと、テネシーウイスキーは「バーボンの一種」です。法律上、テネシーウイスキーはバーボンウイスキーの定義をすべて満たしています。

最大の違いは、テネシーウイスキーが「テネシー州で造られ」、かつ「チャコール・メローイング」という木炭ろ過の工程を熟成前に“追加”している点です。

この記事を読めば、その微妙で決定的な違いから、味わいの差、飲み方までスッキリと理解できますよ。

結論|テネシーウイスキーとバーボンの違いを一言でまとめる

【要点】

テネシーウイスキーとバーボンの違いは、「チャコール・メローイング」製法の有無です。テネシーウイスキーは、法的にバーボンウイスキーの一種ですが、テネシー州で造られ、かつ「サトウカエデの木炭」で蒸留液をろ過する「チャコール・メローイング」という追加工程が法律で義務付けられています。これにより、味わいがよりまろやかになります。

まずは、この二つの違いを表で比較してみましょう。

項目バーボン (Bourbon)テネシーウイスキー (Tennessee)
分類アメリカンウイスキーアメリカンウイスキー(バーボンの一種)
主な産地アメリカ全土(主にケンタッキー州)テネシー州限定
主な原材料トウモロコシ51%以上トウモロコシ51%以上
熟成樽内側を焦がしたオークの新樽内側を焦がしたオークの新樽
特徴的な製法特になしチャコール・メローイング(熟成前の木炭ろ過)が必須
味・香り甘く香ばしい、バニラ、カラメルバーボンの甘さ + まろやかさ、スムーズさ
代表銘柄ジムビーム、メーカーズマーク、ワイルドターキージャックダニエル、ジョージ・ディッケル

決定的な違い:「チャコール・メローイング」製法の有無

【要点】

二つのウイスキーの味わいを決定づけるのが「チャコール・メローイング」です。これは、蒸留したてのウイスキー(ニューポット)を、熟成樽に入れる「前」に、サトウカエデの木炭(チャコール)で一滴一滴ゆっくりとろ過する製法です。

この工程は、テネシーウイスキーの代名詞であり、「リンカーン・カウンティ・プロセス」とも呼ばれます。

バーボンは、このチャコール・メローイングを行いません(一部例外を除く)。

この「熟成前のひと手間」こそが、テネシーウイスキーを法的にバーボンと区別する(テネシー州法による)唯一の大きな違いなのです。

バーボンとは?(アメリカンウイスキーの王道)

【要点】

バーボンとは、アメリカの連邦アルコール法(FAA Act)によって厳格に定義されたウイスキーです。その主な定義は「アメリカ国内で製造」「主原料の51%以上がトウモロコシ」「内側を焦がしたオークの新樽で熟成」などです。

「バーボン」と名乗るためには、以下の厳しい条件をクリアする必要があります。

  • アメリカ国内で製造されていること
  • 原材料の穀物のうちトウモロコシを51%以上使用すること
  • アルコール度数80%(160プルーフ)以下で蒸留すること
  • 内側を焦がしたオークの「新樽」に、アルコール度数62.5%(125プルーフ)以下で詰めて熟成すること
  • アルコール度数40%(80プルーフ)以上で瓶詰めすること

(※「ストレートバーボン」を名乗るには、さらに2年以上の熟成が必要です)

テネシーウイスキーとは?(バーボン + “ひと手間”)

【要点】

テネシーウイスキーは、上記のバーボンの定義をすべて満たした上で、さらに追加の条件を満たしたウイスキーです。2013年に制定されたテネシー州法により、その定義が明確化されました。

「テネシーウイスキー」と名乗るための追加条件は以下の通りです。

  • テネシー州内で蒸留・貯蔵されていること
  • バーボンの定義(原料、樽など)をすべて満たしていること
  • 熟成(樽詰め)の前に、サトウカエデの木炭でろ過する「チャコール・メローイング」を行うこと

つまり、法的には「テネシーウイスキーは、テネシー州で造られる、特定の製法(チャコール・メローイング)を経たバーボンウイスキー」ということになります。

製造工程の違い(チャコール・メローイング)

【要点】

バーボンは「穀物の糖化→発酵→蒸留→新樽で熟成」という流れで造られます。テネシーウイスキーは、「蒸留」と「新樽で熟成」の“間”に「チャコール・メローイング」という工程が加わります。

ウイスキーの製造工程

一般的なバーボンウイスキーの製造工程は以下の通りです。

穀物の糖化・発酵 → 蒸留 → 新樽で熟成 → 瓶詰め

テネシーウイスキー独自の工程「チャコール・メローイング」

テネシーウイスキーは、この流れが少し異なります。

穀物の糖化・発酵 → 蒸留 → チャコール・メローイング(木炭ろ過) → 新樽で熟成 → 瓶詰め

この「チャコール・メローイング」とは、蒸留したての無色透明なウイスキー(ニューポット)を、高さ3メートルにもなる大きな槽に敷き詰められた「サトウカエデの木炭」の層に、一滴一滴ゆっくりと滴下させ、ろ過する伝統的な製法です。

この工程は非常に時間がかかり、一説には10日ほどかけてゆっくりとろ過されると言われています。このろ過によって、蒸留液に含まれる雑味や荒々しさが取り除かれ、ウイスキーが樽で熟成される「前」に、まろやかでスムーズな酒質になるのです。

味・香り・アルコール度数の違い(甘さと“まろやかさ”)

【要点】

どちらもトウモロコシと焦がした新樽に由来する「甘く香ばしい香り」が特徴です。テネシーウイスキーは、チャコール・メローイング製法によって雑味が取り除かれるため、バーボンよりも「まろやか(メロー)」で「スムーズ」な口当たりに仕上がります。

バーボンの味と香り(甘く香ばしい)

主原料のトウモロコシ(51%以上)と、内側を焦がした新樽から、バニラやカラメルのような濃厚な甘さと、香ばしい樽の香りがダイレクトに感じられます。味わいはパワフルで、荒々しさやスパイシーさを特徴とする銘柄も多くあります。

テネシーウイスキーの味と香り(まろやか・スムーズ)

バーボンと同様の甘く香ばしい香りがベースにありますが、チャコール・メローイングの効果で、非常にスムーズでまろやかな口当たりが最大の特徴です。アルコールの刺激(荒々しさ)が抑えられ、ほのかに甘い風味が感じられるため、ウイスキー初心者にも飲みやすいと評価されています。

代表的なジャックダニエルは、この製法によって「バランスが良く、まろやかな口当たり」を実現しています。(「ジェントルマン・ジャック」という銘柄は、熟成前と後の2回チャコール・メローイングを行っています)

アルコール度数と健康面(糖質・プリン体)

アルコール度数は、どちらも最低40%以上と定められており、市販品は40%~45%程度が主流です。この点に大きな違いはありません。

健康面では、どちらも「蒸留酒」であるため、製造工程で糖質やプリン体は除去されます。そのため、糖質・プリン体はほぼゼロです。ただし、アルコール自体のカロリーは含まれます。

飲み方・シーン別の楽しみ方

【要点】

どちらもストレート、ロック、ハイボール(ソーダ割り)など、幅広い飲み方で楽しめます。バーボンはその強い甘みからコーラ割り(バーボン・コーク)も人気です。テネシーウイスキーは、そのまろやかさを活かしてストレートやロックで、あるいはハイボールでスムーズな喉ごしを楽しむのがおすすめです。

バーボン
そのパワフルな甘さを活かし、コーラで割る「バーボン・コーク」や、ミントと砂糖を加える「ミントジュレップ」といったカクテルも人気です。ロックやハイボールでも、力強い味わいを楽しめます。

テネシーウイスキー
チャコール・メローイング製法が生み出す「まろやかさ」を味わうために、ストレートやロックがおすすめです。もちろんハイボール(ソーダ割り)にしても、そのスムーズなのどごしが際立ち、非常に飲みやすくなります。

法律上の区分(テネシー州法)

【要点】

アメリカの連邦法上、テネシーウイスキーは「バーボン」に分類されます。しかし、2013年にテネシー州の法律で、テネシーウイスキーと名乗るための独自の定義(チャコール・メローイングの義務化など)が定められました。このため、生産者は「バーボンとは異なるテネシーウイスキーである」という強い誇りを持っています。

この「法律上のねじれ」が、二つの違いを分かりにくくしている原因です。

  • アメリカ連邦法:「テネシーウイスキーは、バーボンの条件をすべて満たしている」→ だから、テネシーウイスキーはバーボンである
  • テネシー州法(2013年):「テネシーウイスキーと名乗るには、バーボンの条件に加え、州内での製造とチャコール・メローイングが必須」→ だから、テネシーウイスキーはバーボンとは区別されるべき特別なものである

ジャックダニエル社が「IT’S NOT BOURBON. IT’S JACK.(これはバーボンではない。ジャックだ。)」というスローガンを掲げているのは、このテネシー州独自の製法と伝統への強いプライドの表れなのです。

体験談|ジャックダニエルとメーカーズマークを飲み比べて

僕もウイスキーを飲み始めた頃、この二つの違いがよく分からず、バーで飲み比べさせてもらったことがあります。

頼んだのは、テネシーウイスキーの代表「ジャックダニエル(Old No.7)」と、バーボンの代表格「メーカーズマーク」です。どちらもロックでお願いしました。

先に飲んだ「メーカーズマーク」(バーボン)は、グラスを近づけた瞬間に、バニラと焦がした樽の甘く香ばしい香りがガツンと来ました。口に含むと、トウモロコシ由来のしっかりとした甘みと、アルコールの力強さが感じられました。「これがバーボンの甘さか!」と分かりやすい美味しさでした。

次に飲んだ「ジャックダニエル」(テネシーウイスキー)。香りはメーカーズマークと似ていますが、どこかスッキリしています。そして、口に含んだ瞬間に違いが分かりました。

「あれ、まろやかだ…!」

メーカーズマークで感じたアルコールの刺激的な角(カド)が、ジャックダニエルでは見事に丸くなっていて、まるでシルクのようにスムーズに喉を通っていく感覚でした。甘さや香ばしさはあるのに、荒々しさが全くないのです。

この「チャコール・メローイング」という、たった一つの工程が、これほどまでに口当たりを変えるのかと衝撃を受けました。初心者にも飲みやすい、と言われる理由がよく分かりましたね。

テネシーウイスキーとバーボンに関するよくある質問

結局、テネシーウイスキーはバーボンの一種なんですか?

はい、アメリカの連邦法上は「バーボンウイスキー」に分類されます。ただし、テネシー州の法律では「チャコール・メローイング」が義務付けられているため、生産者は「バーボンとは区別される、特別なテネシーウイスキー」であると主張しています。

どっちが初心者におすすめですか?

テネシーウイスキーの方が初心者におすすめと言われることが多いです。チャコール・メローイング製法によって、アルコールの刺激が少なく、非常にまろやかでスムーズな口当たりになっているためです。

チャコール・メローイングって何ですか?

サトウカエデ(シュガーメイプル)の木炭を敷き詰めた大きな槽(そう)を使い、蒸留したてのウイスキーを、樽で熟成させる「前」に、一滴一滴ゆっくりとろ過する製法です。これにより、雑味が取り除かれ、味わいがまろやかになります。

まとめ|テネシーウイスキーとバーボン、どちらを選ぶべきか?

テネシーウイスキーとバーボンの違い、スッキリ整理できたでしょうか。

どちらも「アメリカ産・トウモロコシ主原料・新樽熟成」という共通点を持つ、甘く香ばしいウイスキーです。

トウモロコシと焦がし樽がもたらす、ガツンとした甘みと香ばしさ、力強い味わいを楽しみたい時は「バーボン」。

バーボンの甘く香ばしい風味は好きだけど、アルコールの刺激が少なく、まろやかでスムーズな口当たりが好みなら「テネシーウイスキー」。

このように覚えておけば、気分やシーンに合わせて最適なお酒を選べますよ。

どちらも奥深い飲み物・ドリンクの世界です。ぜひ様々なアルコール類を試して、あなた好みの一杯を見つけてみてください。