ウイキョウとフェンネルの違いとは?スパイスとハーブの使い分け

ウイキョウとフェンネルは、どちらも同じ植物を指す言葉ですが、日本語の文脈では使われる部位やニュアンスが異なることが一般的です。

結論|ウイキョウとフェンネルの違いが一目でわかる比較表

最もシンプルな違いは、「ウイキョウ」が主にスパイス(種子)として使われるのに対し、「フェンネル」はハーブ(葉)や野菜(株元)として使われることが多い点です。

まずは、この二つの言葉が指す主な対象と特徴を、一覧表で比較してみましょう。

項目ウイキョウ(茴香)フェンネル(Fennel)
植物学的な分類同じ(セリ科ウイキョウ属)同じ(学名:Foeniculum vulgare)
主な呼び方和名英名
日本語での主な使われ方スパイス(種子・果実)ハーブ(葉)、野菜(株元)
主な香り甘くスパイシー(アネトール由来)アニスやセロリに似た爽やかな香り
主な用途スパイス(カレー、パン、リキュール)ハーブ(魚料理、サラダ)、野菜(スープ、グリル)
別名(日本)小茴香(しょうういきょう)、茴香(ういきょう)フェンネル、フローレンス・フェンネル

このように、植物としては同じでも、どの部位を利用するか、どのような文脈(スパイス、ハーブ、野菜)で語るかによって、呼び名が変わってくるのが少しややこしい点ですね。

ウイキョウとフェンネルの正体|実は「同じ植物」

【要点】

ウイキョウとフェンネルは、植物学的には同一の植物(学名:Foeniculum vulgare)を指します。「ウイキョウ(茴香)」は日本語の和名、「フェンネル」は英語名(Fennel)です。

多くの方が混乱する最大のポイントですが、ウイキョウとフェンネルは、植物学的には全く同じ植物です。

スーパーの野菜売り場で「フェンネル」として売られている株も、スパイスコーナーで「ウイキョウ」として売られている種子も、元をたどれば同じ植物に行き着きます。

植物学的な分類

ウイキョウ(フェンネル)は、セリ科ウイキョウ属に分類される多年草(または二年草)です。学名は Foeniculum vulgare といいます。

ニンジンやセロリ、パセリ、コリアンダー(パクチー)、ディルなどと同じセリ科の仲間で、独特の強い香りを持つのが特徴です。

和名と英名、その他の呼び名

この二つの言葉の違いは、単純に「言語の違い」です。

  • ウイキョウ(茴香):日本語の標準和名です。漢方薬として中国から伝わった歴史があり、漢字表記が使われることも多いです。
  • フェンネル(Fennel):英語名です。ヨーロッパ(地中海沿岸)が原産とされ、西洋料理の世界ではハーブや野菜として「フェンネル」と呼ばれるのが一般的です。

他にも、フランス語では「フヌイユ(Fenouil)」、漢方では種子を「小茴香(しょうういきょう)」と呼ぶこともあります。

部位ごとの特徴と使い分け(香り・味・食感)

【要点】

同じ植物ですが、利用する部位によって香りや使い方が全く異なります。「種子(ウイキョウ)」はスパイスとして、「葉(フェンネル)」はハーブとして、「株元(フローレンス・フェンネル)」は野菜として扱われます。

「ウイキョウ」と「フェンネル」がややこしいのは、この植物が「種子」「葉」「株元」のすべてを利用できる万能ハーブであり、それぞれ用途が異なるためです。

フェンネルシード(種子・果実)

一般的に「ウイキョウ」と呼ばれることが多いのが、この種子(正確には果実)を乾燥させた部分です。

  • 分類:スパイス
  • 香り・味:アニスによく似た、甘くスパイシーで独特な強い香り(主成分はアネトール)。噛むと清涼感と甘みがあります。
  • 用途:カレー粉の原料、パンやお菓子の香りづけ、リキュール(アブサンなど)の原料、魚料理の臭み消し、漢方薬など。

フローレンス・フェンネル(株元・鱗茎)

私たちが野菜売り場で「フェンネル」として見かけるのが、この白く太った株元の部分です。これは特に野菜として利用するために品種改良されたもので、「フローレンス・フェンネル」または「スイート・フェンネル」と呼ばれます。

  • 分類:野菜(ハーブ野菜)
  • 香り・味:種子よりも穏やかで、爽やかなアニス香とセロリに似た風味があります。
  • 食感:生だとシャキシャキとした歯触り。加熱すると柔らかくなり、甘みが増します。
  • 用途:生でスライスしてサラダに。または、グリル、ソテー、スープ、煮込み料理などに使われます。

フェンネル(葉・茎)

「ハーブ」としてフェンネルが使われる場合、この糸状のフワフワした葉の部分を指します。見た目はディルによく似ています。

  • 分類:ハーブ
  • 香り・味:株元よりもさらに繊細で、爽やかな甘い香りがします。
  • 用途:魚料理との相性が抜群で、「魚のハーブ」とも呼ばれます。料理の飾り(ディル代わり)や、刻んでソースやドレッシングに使われます。茎も香味野菜としてブイヨンなどに使えます。

栄養・成分・健康面の違い

【要点】

ウイキョウ(種子)はスパイスとして、健胃作用や消化促進が期待されます。野菜としてのフェンネル(株元)は、ビタミンCやカリウム、食物繊維が豊富に含まれています。

利用する部位が異なるため、期待できる栄養面での特徴も変わってきます。

ウイキョウ(フェンネルシード)は、古くから健胃薬や去痰薬として漢方(小茴香)に用いられてきました。香り成分の「アネトール」には消化を助け、胃腸の働きを整える作用があるとされています。インド料理店で食後に砂糖でコーティングされたフェンネルシード(ソーンフ)が出てくるのは、この口直しと消化促進のためですね。

フェンネル(株元・葉)は野菜として、栄養価が高いです。特にビタミンCや、体内の余分な塩分を排出するカリウムを豊富に含みます。また、シャキシャキとした食感のもとである食物繊維も多く含まれており、腸内環境を整えるのに役立ちます。

(栄養成分に関する詳細なデータは、文部科学省の「日本食品標準成分表」などで「フェンネル(鱗茎、生)」として確認できます。)

料理での使い方・レシピの違い

【要点】

ウイキョウ(種子)は、カレーや煮込みの「香り付け」に使います。フェンネル(株元)は、「野菜」として生でサラダにしたり、加熱してグリルやスープの具材にします。葉は「ハーブ」として魚料理の臭み消しや飾りに使います。

これまでの説明の通り、部位によって使い方が全く異なります。代表的な使い方を見てみましょう。

ウイキョウ(フェンネルシード)の使い方

「スパイス」としての使い方が基本です。

  • カレー・煮込み:ホール(原型)のまま、調理の最初に油で炒めて香りを引き出します。
  • パン・焼き菓子:生地に練り込んで、甘くスパイシーな香りを付けます。
  • ピクルス液:他のスパイスと一緒にピクルス液に入れ、風味付けに使います。
  • 魚料理:魚の臭み消しとして、焼くときや煮込むときに使います。

注意点として、香りが非常に強いため、入れすぎると他の食材の風味を圧倒してしまいます。少量から試すのがおすすめです。

フローレンス・フェンネル(株元)の使い方

「野菜」としての使い方が基本です。

  • サラダ(生):外側の硬い筋を取り、薄くスライスして水にさらし、サラダに加えます。シャキシャキした食感と爽やかな香りがアクセントになります。特にオレンジやグレープフルーツなどの柑橘類と相性抜群です。
  • グリル・ソテー(加熱):くし形に切り、オリーブオイルをかけてオーブンで焼いたり、フライパンでソテーしたりします。加熱するとトロリと柔らかくなり、甘みが凝縮されます。
  • スープ・煮込み(加熱):玉ねぎやセロリのように、スープのベースとなる香味野菜として使えます。魚介のスープ(ブイヤベースなど)に入れると、最高のマリアージュを楽しめます。

フェンネル(葉)の使い方

「ハーブ(飾り・香りづけ)」としての使い方が基本です。

  • 魚料理:魚のお腹に詰めたり、オーブン焼きの際に魚の上に散らしたりして、臭み消しと香り付けに使います。
  • 飾り(トッピング):見た目がディルに似ているため、スープやサラダ、カルパッチョの彩りとして最後に飾ります。
  • ソース・ドレッシング:細かく刻んでビネグレットソースやヨーグルトソースに混ぜ込みます。

旬・産地・保存・価格の違い

【要点】

ウイキョウ(種子)は乾燥スパイスのため通年流通し、安価です。野菜としてのフェンネルは、長野県や静岡県、愛媛県などで栽培され、旬は秋から春にかけてです。野菜としては比較的高価な部類に入ります。

ウイキョウ(フェンネルシード)は、乾燥スパイスとして流通しているため、旬は特にありません。世界中で栽培されており、インドや中国、エジプトなどが主な産地です。価格は他のスパイスと同様、比較的手頃な価格で入手できます。

フェンネル(フローレンス・フェンネル)は、野菜としての旬があります。主な旬は、涼しい気候を好むため秋から冬、そして春先(おおよそ10月~5月頃)です。夏は品質が落ちやすくなります。

日本国内でも生産されており、長野県、静岡県、愛媛県、千葉県などが主な産地です。価格は、一般的な玉ねぎやセロリと比べると生産量が少ないため、野菜としてはやや高価な部類に入ります。

保存する際は、株元と葉を切り分け、それぞれ乾燥しないようにラップや湿らせたキッチンペーパーで包み、冷蔵庫の野菜室で保存します。葉は特にしおれやすいので早めに使い切りましょう。

体験談|スパイスとしてのウイキョウ活用法

僕が「ウイキョウ(フェンネルシード)」の魅力に目覚めたのは、本格的なインドカレー作りに挑戦した時でした。

それまでは、カレー粉に含まれるスパイスの一つという認識しかありませんでした。しかし、レシピ通りにホールのクミンやコリアンダーと一緒に、フェンネルシードを油で熱してみたんです。

すると、厨房に広がったのは、それまで知っていたカレーの香りとは全く違う、甘く、爽やかで、どこかエキゾチックな香りでした。正直、「こんなに甘い香りでカレーになるのか?」と不安になったほどです。

しかし、玉ねぎを炒め、トマトや他のスパイスと煮込んでいくうちに、その甘い香りが全体の味に深い奥行きを与えていることに気づきました。特に鶏肉や魚介系のカレーと合わせた時の調和は素晴らしく、いつものカレーが一気にお店の味に近づいたんです。

それ以来、僕はウイキョウ(フェンネルシード)の虜です。今ではカレーだけでなく、豚肉のソテーやピクルス作りにも欠かせません。野菜の「フェンネル」が持つセロリのような爽やかさとは全く異なる、スパイス「ウイキョウ」の持つ力強さと甘さ。同じ植物から生まれるとは、本当に奥深い世界ですよね。

ウイキョウとフェンネルに関するよくある質問

ここでは、ウイキョウとフェンネルの違いに関してよく寄せられる質問にお答えしますね。

Q. ディルとフェンネルの葉がそっくりで見分けがつきません。

A. はい、どちらもセリ科で葉が糸状のため非常によく似ていますよね。見分ける一番簡単な方法は「香り」です。フェンネルの葉は甘いアニス系の香りがしますが、ディルの葉はそれよりも清涼感が強く、独特の爽やかな香り(キャラウェイシードにも似た)がします。料理での相性も異なり、フェンネルは魚全般や豚肉、ディルは特にサーモンやジャガイモ、サワークリームと相性が良いとされています。

Q. アニスシードとフェンネルシード(ウイキョウ)も同じものですか?

A. いいえ、これらは別の植物です。アニス(学名:Pimpinella anisum)もセリ科ですが、属が異なります。ただし、香り成分(アネトール)が共通しているため、香りが非常によく似ています。フェンネルシードの方が少し大きく、香りがややマイルドで、アニスシードの方が小さく、より甘く強い香りがすると言われています。リキュール(アブサン、パスティスなど)の香りづけに使われる点も共通していますね。

Q. スターアニス(八角)もウイキョウの仲間ですか?

A. 全くの別物です。スターアニス(八角)は、マツブサ科(またはシキミ科)の植物(学名:Illicium verum)の果実を乾燥させたスパイスです。見た目も星形で全く異なります。ただし、香り成分として同じ「アネトール」を豊富に含むため、香りがウイキョウやアニスと非常によく似ています。主に中華料理(豚の角煮など)に使われることが多いスパイスですね。

まとめ|呼び名の違いと使い分けを理解しよう

ウイキョウとフェンネルの違い、スッキリ整理できたでしょうか。

結論として、ウイキョウとフェンネルは植物学的には同じものですが、日本語の文脈では指し示す部位が異なることが多いと分かりました。

  • ウイキョウ(茴香):主に種子(果実)を乾燥させた「スパイス」を指す。甘くスパイシーな香りが特徴。
  • フェンネル(Fennel):主に葉を「ハーブ」として、また株元(フローレンス・フェンネル)を「野菜」として使う際に呼ばれる。爽やかなアニス香が特徴。

スーパーで「ウイキョウ」を探すならスパイスコーナーへ、「フェンネル」を探すなら野菜・ハーブコーナーへ行くと覚えておけば、もう迷うことはありませんね。

ハーブやスパイスの世界は奥深く、知れば知るほど料理が楽しくなります。こうした食材・素材の違いを理解して、日々の食卓を豊かにしていきましょう。