「梅」と「プラム」、どちらも初夏から夏にかけて店頭に並ぶ、見た目が少し似ている果実ですよね。
でも、「梅酒を作ろうと思って間違えてプラムを買ってしまった」という話はあまり聞きません。なぜなら、この二つは植物学的には近い親戚でありながら、用途や食べ方が全く異なるからです。
最大の違いは、「梅」は生食できず(毒性がある)、加工が必須なのに対し、「プラム」は生食が基本の甘酸っぱいフルーツである点です。
この記事を読めば、梅とプラムの植物学的な関係性から、栄養価の違い、そして梅干しやジャムといった具体的な使い分けまで、スッキリと理解できますよ。
それでは、まず二つの違いを比較表で詳しく見ていきましょう。
結論|「梅」と「プラム」の違いを一言でまとめる
「梅(ウメ)」と「プラム(スモモ)」は、どちらもバラ科サクラ属の果実ですが、植物学的な亜属が異なります。最大の違いは、梅が生では食べられず(青梅に毒性あり)、加熱や塩蔵・アルコール漬けなどの加工が必須であるのに対し、プラムは生食できるフルーツである点です。梅はクエン酸、プラムは食物繊維が特徴的です。
梅は「加工用の素材」、プラムは「果物(フルーツ)」と覚えるのが一番簡単ですね。
この二つの違いを、項目別に詳しく比較した一覧表がこちらです。
| 項目 | 梅(ウメ) | プラム(スモモ) |
|---|---|---|
| 植物分類 | バラ科 サクラ属 ウメ亜属 | バラ科 サクラ属 スモモ亜属 |
| 生食の可否 | 不可(特に青梅は毒性あり) | 可能(フルーツとして生食) |
| 主な品種例 | 南高梅、白加賀、豊後 | 大石早生、太陽、貴陽、ソルダム |
| 主な見た目 | 緑色~黄色。表面に産毛がある。 | 赤色、紫色、黄色など。表面は滑らか。 |
| 主な味 | 強い酸味・苦味・渋み(生) | 甘酸っぱい、ジューシー(生) |
| 主な用途 | 加工品(梅干し、梅酒、梅シロップ) | 生食、ジャム、コンポート、ドライフルーツ |
| 主な栄養素 | クエン酸、リンゴ酸(有機酸) | 食物繊維、カリウム、ソルビトール |
| 日本での旬 | 5月下旬~7月上旬 | 6月中旬~9月頃 |
決定的な違い:「生食できるか」と「加工の必要性」
梅、特に未熟な「青梅」の種や果肉には「アミグダリン」という青酸配糖体が含まれており、生で食べると中毒を起こす危険性があるため生食は絶対にできません。一方、プラム(すもも)にはそのような毒性分は含まれておらず、フルーツとして安全に生食できます。
これが二つを分ける最も重要な違いです。
梅(ウメ)
未熟な青梅には、種子や果肉に「アミグダリン」という成分が含まれています。これが体内で分解されると青酸(シアン化水素)を発生させ、頭痛、めまい、吐き気などの中毒症状を引き起こす可能性があります。そのため、梅は生では食べられません。
私たちが梅を安全に食べられるのは、梅干し(塩漬け)、梅酒(アルコール漬け)、梅シロップ(砂糖漬け)、加熱(ジャムなど)といった「加工」によって、アミグダリンが分解・無毒化されるからです。また、完熟した梅はアミグダリンが減少しますが、それでも生食はせず加工するのが一般的です。
プラム(スモモ)
プラムにはアミグダリンのような有毒成分は含まれていません。完熟したものは皮ごと安全に生食できる「フルーツ」です。もちろん、加熱してジャムやソースにすることもできます。
「梅」と「プラム」の定義と植物学的な分類
どちらも「バラ科サクラ属」の仲間ですが、亜属レベルで分類が異なります。梅は「ウメ亜属(Prunus subg. Prunus)」、プラムは「スモモ亜属(Prunus subg. Prunus)」に分類されます(分類体系により諸説あり)。「プラム」は「すもも」の英語名であり、日本では主に「日本すもも」を指します。
梅(ウメ)とは?
梅(ウメ)は、バラ科サクラ属ウメ亜属の落葉高木、またはその果実を指します。原産地は中国とされ、日本には奈良時代以前に薬用として伝わったとされています。
花を観賞する「花梅(はなうめ)」と、実を収穫する「実梅(みうめ)」に大別されます。私たちが食用に加工するのは、もちろん「実梅」の果実ですね。「南高梅(なんこううめ)」や「白加賀(しらかが)」などが有名です。
プラム(スモモ)とは?
プラム(Plum)は、バラ科サクラ属スモモ亜属の植物、またはその果実を指します。こちらも原産地は中国とされています。
プラムは英語名であり、日本語では「すもも(李)」と呼ばれます。「すもも」の語源は、桃に似ているが酸味が強かったことから「酸っぱい桃」→「すもも」となったという説が有力です。
日本で古くから栽培されてきた品種群を「日本すもも(Japanese Plum)」、ヨーロッパやアメリカで栽培される品種群を「西洋すもも(European Plum)」と呼び、これらを総称して「プラム」と呼ぶことが多いです。
プルーンやすももとの関係は?
ここで少し混乱するのが「すもも」や「プルーン」との関係ですよね。
- すもも:プラムの日本語名です。基本的には同じものを指します。
- プラム:「すもも」の英語名であり、日本では「すもも」全体の総称として使われます。
- プルーン:プラムの一種である「西洋すもも」の中で、特に乾燥(ドライフルーツ)に適した品種群を指します。つまり、「プルーンはプラムの仲間」ということになります。
味・香り・食感・見た目の違い
梅は硬く、強烈な酸味と苦み・渋みがあり、生では食べられません。香りは非常に爽やかです。プラムはジューシーで、品種によりますが強い甘みと適度な酸味があり、生食で美味しく食べられます。皮は滑らかで、果肉は柔らかいです。
梅(ウメ)の見た目と味
見た目:青梅は硬く、鮮やかな緑色をしています。表面には細かい産毛(うぶげ)が生えているのが特徴です。完熟すると黄色っぽく(時に赤く)色づき、柔らかくなります。
味・香り:生の青梅は、強烈な酸味と苦み、渋みがあり、美味しいとは言えません。しかし、香りは非常にフルーティーで爽やかです。この香りが梅酒や梅シロップの魅力になります。
プラム(スモモ)の見た目と味
見た目:品種によりますが、鮮やかな赤色(大石早生など)から、濃い紫色(ソルダムなど)、黄色いものまで様々です。表面は産毛がなく滑らかでツルツルしています。
味・香り:完熟したプラムは、強い甘みと爽やかな酸味が調和しており、非常にジューシーです。皮の近くは特に酸味が強く、果肉は甘いという品種も多いですね。香りは梅に比べると穏やかですが、甘いフルーツ特有の香りがします。
栄養・成分・健康面の違い
梅は「クエン酸」などの有機酸が非常に豊富で、疲労回復や食欲増進効果が期待されます。プラム(特にプルーン)は「食物繊維」や、糖アルコールの一種である「ソルビトール」を多く含み、お通じの改善に役立つとされています。
どちらも健康に良い成分を含んでいますが、その内容は大きく異なります。
梅(ウメ)の主な栄養と成分
梅の酸味の主体は「クエン酸」や「リンゴ酸」といった有機酸です。これらはエネルギー代謝を活発にし、疲労回復を助ける効果が期待されています。
梅干しを見るだけで唾液が出るのは、このクエン酸が消化酵素の分泌を促すためで、食欲増進にも繋がります。また、アミグダリン(青梅に含まれる毒素)は加工過程で分解されます。
プラム(スモモ)の主な栄養と成分
プラム(特にドライフルーツであるプルーン)は、「食物繊維」が非常に豊富です。水溶性・不溶性の両方を含み、腸内環境を整えるのに役立ちます。</p
また、糖アルコールの一種である「ソルビトール」も多く含んでおり、これは水分を腸に集める働きがあるため、お通じを柔らかくして便秘の改善をサポートすると言われています。
使い方・料理での扱い方の違い
用途は完全に分かれます。梅は生食せず、必ず梅干し(塩蔵)、梅酒(アルコール漬け)、梅シロップ(砂糖漬け)、ジャム(加熱)など、加工してその酸味と香りを楽しみます。プラムは主にフルーツとして生食されますが、ジャムやコンポート、タルトなどの加熱調理にも適しています。
食べられない梅と、食べられるプラム。ここが使い方の分岐点です。
梅:加工が必須(梅干し・梅酒・梅シロップ)
梅は「加工」がすべてです。生のままでは食べません。
- 青梅(硬く緑色の未熟果):カリカリ梅、梅酒、梅シロップ(梅ジュース)に使われます。エキスが出やすく、爽やかな香りが特徴です。
- 完熟梅(黄色く熟した果実):梅干し、梅ジャムに使われます。果肉が柔らかく、フルーティーな香りが強くなります。
プラム:生食がメイン(ジャム・コンポートにも)
プラムは「フルーツ」としての扱いがメインです。
- 生食:完熟したものを冷やして、皮ごと食べるのが一般的です。
- ジャム・コンポート:酸味と甘みのバランスが良いため、砂糖で煮詰めると美味しいジャムやコンポートになります。
- 洋菓子:タルトの具材や、ソースとして使われます。
- ドライフルーツ:西洋すもも(プルーン)は乾燥させて食べられます。
旬・産地・保存・価格の違い
どちらも旬は初夏から夏にかけてです。梅は5月下旬(青梅)から7月上旬(完熟梅)がピーク。プラムは6月中旬から9月頃まで品種リレーで続きます。梅は加工用として大量に出回るため比較的安価ですが、プラムは高級品種になると高価になります。
旬・産地
梅の旬は短く、5月下旬から6月中旬が青梅、6月下旬から7月上旬が完熟梅のピークです。主な産地は和歌山県(特に南高梅)、群馬県などです。
プラムの旬は梅よりもやや長く、6月中旬頃から始まり、品種を変えながら9月頃まで続きます。主な産地は山梨県、長野県、和歌山県などです。
保存
青梅は追熟しないように、すぐに加工(梅酒やシロップ漬け)します。完熟梅はすぐに傷むため、梅干し用に追熟させる以外は早めに加工します。
プラムは、硬いものは常温で追熟させ、柔らかくなったら冷蔵庫の野菜室で保存し、早めに食べきりましょう。
価格
価格は、梅の方が加工用として一度に大量(kg単位)に購入されることが多く、重量あたりの単価は安い傾向にあります。プラムはフルーツとしてパック売りされ、贈答用の高級品種(「貴陽」など)は非常に高価になります。
起源・歴史・文化的背景の違い
どちらも原産地は中国とされていますが、日本への伝来時期と定着の仕方が異なります。梅は奈良時代以前に「薬用」として伝わり、「花見」や「梅干し」として日本の文化に深く根付きました。プラム(すもも)も古くから存在しましたが、現在のようなフルーツとしての本格的な栽培が始まったのは明治時代以降です。
梅(ウメ)
梅は、遣唐使などによって奈良時代以前に中国から薬用として伝来したと考えられています。平安時代には花が観賞されるようになり、和歌にも多く詠まれました。鎌倉時代以降、梅干しが保存食や武士の携帯食として重宝され、日本の食文化に欠かせない存在となりました。「花見」といえば元々は桜ではなく梅であったことからも、文化的な繋がりの深さがわかりますね。
プラム(スモモ)
プラム(日本すもも)も弥生時代など古くに伝わっていたとされますが、現在私たちが食べているような甘い品種が本格的に栽培されるようになったのは、明治時代以降にアメリカなどから新しい品種が導入されてからです。「フルーツ」としての歴史は、梅に比べると比較的新しいと言えます。
体験談|6月の青梅仕事と7月のプラムジャム作り
僕にとって、この二つの違いは「初夏の恒例行事」の記憶と強く結びついています。
毎年6月上旬になると、市場に「青梅」が並び始めます。この硬くて酸っぱい実こそが「梅」仕事の主役。大きな袋で購入し、竹串で一つ一つヘタを取り、焼酎で消毒しながら瓶に詰めていく作業は、まさに「加工」そのものです。
生のままでは決して食べられない青梅が、氷砂糖とアルコール(ホワイトリカー)の力で、数ヶ月後、一年後には琥珀色の芳醇な「梅酒」に変わる。この「時間をかけて育てる楽しみ」こそが、梅の醍醐味だと感じています。生の時のあの爽やかな香りが、熟成によって深みを増していく過程は本当に不思議ですよね。
一方、7月に入って梅仕事が一段落すると、今度は「プラム(すもも)」が旬を迎えます。
プラムはまず生で楽しみますが、少し酸味が強いものや、量が多くて食べきれないものはジャムにします。梅と違って、プラムは最初から「フルーツ」です。鍋に入れて砂糖と煮詰め始めると、梅とは全く違う、甘く濃厚なフルーツの香りがキッチンに立ち込めます。
特に種の周りの果肉が鮮やかな赤色に溶け出し、鍋全体がルビー色に染まっていく様子は圧巻です。梅が「酸味と香りを抽出する」作業なら、プラムは「甘みと酸味を凝縮する」作業。同じバラ科サクラ属なのに、これほどまでに用途と完成形が違うのかと、毎年感心させられます。
梅とプラムに関するよくある質問
Q1. 梅は生で食べると本当に危ないのですか?
A1. はい、特に未熟な青梅は危険です。青梅の種や果肉に含まれる「アミグダリン」という成分が、体内で分解されると青酸中毒を引き起こす可能性があります。致死量には個人差がありますが、少量でも体調不良になる恐れがあるため、生食は絶対にやめてください。梅干し、梅酒、砂糖漬け、加熱などで適切に加工すれば安全に食べられます。
Q2. 「すもも」「プラム」「プルーン」はどう違うのですか?
A2. 「すもも」と「プラム」は基本的に同じものを指します(プラムが英語名、すももが和名です)。「プルーン」は、そのプラム(すもも)の仲間である「西洋すもも」の中で、特に乾燥させても品質が変わらない品種群(ドライフルーツ用)のことを指します。つまり、プルーンはプラムの一種ということですね。
Q3. 梅とプラムは交配できますか?
A3. 梅とプラムは同じサクラ属ですが、亜属が異なる(または系統が遠い)ため、一般的に交配は困難とされています。一方で、梅は「アンズ(杏)」とは交雑しやすく、「豊後(ぶんご)」などの梅とアンズの雑種とされる品種も存在します。
まとめ|「梅」と「プラム」目的別おすすめの選び方
「梅」と「プラム」、名前は似ていても、その正体と使い道は全く異なることをご理解いただけたでしょうか。
最後に、目的別にどちらを選ぶべきかをまとめます。
- 梅干し、梅酒、梅シロップを作りたい場合
→ 梅(ウメ)を選びましょう。生食はできませんが、加工することで日本の伝統的な保存食や飲み物が作れます。 - そのままフルーツとして食べたい、またはジャムやタルトを作りたい場合
→ プラム(スモモ)を選びましょう。甘酸っぱくジューシーな味わいを楽しめます。 - お通じの改善などを期待して、手軽に食物繊維を摂りたい場合
→ プルーン(西洋すもも)のドライフルーツが手軽でおすすめです。
旬の時期が重なるため紛らわしいかもしれませんが、それぞれの特性を知って、初夏の味覚を存分に楽しんでくださいね。
梅やプラムのような果実や、その他の「野菜・果物の違い」について興味が湧いた方は、ぜひ他の記事もご覧ください。