スプマンテとプロセッコの違いとは?「総称」か「特定ワイン」か

イタリアンレストランやバルでよく目にする「スプマンテ」と「プロセッコ」。

どちらもイタリア産のスパークリングワイン(泡モノ)として知られていますが、この二つの関係性を正確に説明するのは難しいかもしれませんね。

「とりあえず泡モノだからプロセッコを頼む」という方も多いのではないでしょうか。

実はこの二つ、「スプマンテ」はイタリアのスパークリングワイン全体の「総称」であり、「プロセッコ」はそのスプマンテの中の「特定のD.O.C.ワイン名(銘柄)」を指します。

つまり、すべてのプロセッコはスプマンテですが、すべてのスプマンテがプロセッコというわけではないのです。

この記事を読めば、二つの明確な関係性から、味わい、製法、そして選び方までスッキリと理解できます。あなたもイタリアの泡モノ通になれますよ。

それでは、両者の違いを詳しく見ていきましょう。

結論|スプマンテとプロセッコの違いを一言でまとめる

【要点】

最も決定的な違いは、その「言葉の範囲」です。スプマンテ(Spumante)は、イタリア語で「スパークリングワイン」を意味する「総称」であり、製法やブドウ品種を問わず、イタリア産の泡モノ全般を指します。一方、プロセッコ(Prosecco)は、イタリアの特定の地域(ヴェネト州など)で、「グレラ」というブドウ品種を主原料に、特定の製法(シャルマ方式)で造られた「D.O.C.ワインの固有名詞」です。

例えるなら、「ウイスキー」という総称(スプマンテ)の中に、「バーボン」という特定のカテゴリ(プロセッコ)があるのと同じ関係性ですね。

プロセッコはスプマンテという大きな枠組みの中の、最も有名で、最も生産量が多い銘柄の一つなのです。

原材料・製造工程の違い

【要点】

スプマンテは総称なので、原材料や製法は様々です。シャンパンと同じ瓶内二次発酵(メトド・クラシコ)もあれば、安価なタンク式もあります。一方、プロセッコは厳格に定義されており、主原料ブドウは「グレラ種」を85%以上使用し、製法は「シャルマ方式(タンク内二次発酵)」が主流です。

スプマンテとは「イタリアのスパークリングワイン」の総称

「スプマンテ」は、イタリア語で「泡の立つ」という意味の形容詞 “spumante” に由来します。

法律上、ガス圧が3.0バール(bar)以上のイタリア産スパークリングワインを指します。

ブドウ品種は問われず、製法も様々です。

  • メトド・クラシコ(Metodo Classico):
    シャンパンと同じ、瓶の中で二次発酵させる伝統的な製法。非常に手間がかかり、高価です。泡が細かく、酵母由来のトーストやナッツのような複雑な香りが生まれます。(例:フランチャコルタ、トレントDOC)
  • シャルマ方式(Metodo Martinotti / Charmat):
    密閉された大きなステンレスタンクの中で二次発酵させる製法。短期間で大量に生産でき、コストを抑えられます。ブドウ本来のフレッシュでフルーティーな香りを保つのに適しています。(例:プロセッコ、アスティ・スプマンテ)

つまり、「スプマンテ」と言っても、高級で複雑なものから、手頃でフレッシュなものまで、ピンからキリまで含まれるのです。

プロセッコとは「特定の産地・ブドウ・製法」のD.O.C.ワイン

「プロセッコ」は、スプマンテの中でも特定の基準を満たしたワインだけが名乗れる、法律で保護された原産地呼称(D.O.C. または D.O.C.G.)です。

以下の条件を満たす必要があります。

  • 産地:イタリア北東部のヴェネト州およびフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の特定の地域。
  • ブドウ品種:「グレラ(Glera)種」を85%以上使用すること。
  • 製法:多くの場合、シャルマ方式(タンク方式)で造られること。

決定的な違い:ブドウ品種(グレラ種)と製法(シャルマ方式)

プロセッコの個性を決定づけているのが、「グレラ種」のブドウ「シャルマ方式」の組み合わせです。

グレラ種は、リンゴや洋ナシ、白い花のような、非常にアロマティックでフレッシュな香りを持つブドウです。

このブドウの魅力を最大限に活かすため、プロセッコはあえてシャルマ方式を採用しています。

瓶内で長期間熟成させるメトド・クラシコ(例:シャンパンやフランチャコルタ)は、ブドウの香りよりも酵母由来のパンのような複雑な香りが強くなります。

一方、シャルマ方式なら、ブドウのフレッシュな果実味と香りをそのまま瓶に閉じ込めることができるのです。

この「フレッシュ&フルーティー」さこそが、プロセッコが世界中で愛される理由ですね。

味・香り・泡立ち・度数の違い

【要点】

プロセッコは、グレラ種とシャルマ方式により、青リンゴや洋ナシのような爽やかでフルーティーな香りと、軽快な味わいが特徴です。スプマンテは総称であるため、味わいは多様です。例えば「フランチャコルタ」のような高級スプマンテは、シャンパンに似た複雑でトーストのような香りを持ちます。

比較表|スプマンテとプロセッコの違い一覧

項目 スプマンテ (Spumante) プロセッコ (Prosecco)
分類 総称(イタリアのスパークリングワイン) 固有名詞(スプマンテの一種 / D.O.C.)
主な産地 イタリア全土 ヴェネト州、フリウリ州(特定地域)
主なブドウ 様々(ピノ・ノワール、シャルドネ、モスカートなど) グレラ種(85%以上)
主な製法 シャルマ方式、メトド・クラシコなど多様 シャルマ方式(タンク方式)が主流
主な香り フルーティーなものから、トーストのように複雑なものまで様々 青リンゴ、洋ナシ、白い花(フレッシュ&フルーティー)
主な味わい 辛口(Brut)から甘口(Dolce)まで多様 辛口(Brut)〜 やや甘口(Extra Dry)が主流
泡の強さ 3.0バール以上 3.0バール以上(※別にフリッツァンテもある)
価格帯 手頃なものから超高級品まで幅広い 比較的手頃なものが多い

味わいと香り(フルーティー vs 多様性)

前述の通り、プロセッコの魅力は一貫して「フレッシュ、フルーティー、アロマティック」です。

青リンゴ、洋ナシ、白桃、アカシアの花のような爽やかな香りが特徴で、味わいも軽快でクリーン。ゴクゴクと飲みたくなるような親しみやすさがあります。

一方、「スプマンテ」という括りでは、味わいは一言では表せません。

  • プロセッコ:フルーティーで爽快。
  • アスティ・スプマンテ:マスカット種で造る、非常に甘口でアロマティックなスプマンテ。アルコール度数も低め。
  • フランチャコルタ:シャンパンと同じ製法(メトド・クラシコ)で造られる高級スプマンテ。酵母由来のパンやナッツのような複雑な香りと、きめ細かく持続性のある泡が特徴。

「スプマンテ」を注文する際は、「プロセッコ」なのか、それとも「フランチャコルタ」のようなメトド・クラシコなのかを確認しないと、全く違うものが出てくる可能性があるわけですね。

泡の強さ(スプマンテ vs フリッツァンテ)

イタリアのスパークリングには、泡の強さで2つの分類があります。

  • スプマンテ(Spumante):ガス圧が3.0バール以上の「スパークリングワイン」。コルクはシャンパン同様のキノコ型。
  • フリッツァンテ(Frizzante):ガス圧が1.0〜2.5バールの「微発泡ワイン」。泡が弱めで、コルクも通常のワインと同じものが使われることがあります。

プロセッコは、一般的に輸出されるのは泡がしっかりした「スプマンテ」タイプですが、イタリア本国では「フリッツァンテ」タイプも日常的に楽しまれています。

飲み方・温度・シーン別の楽しみ方

【要点】

プロセッコは、そのフレッシュな果実味から、食前酒(アペリティーボ)として最適です。また、ヴェネツィア発祥の「スプリッツ」「ベリーニ」といったカクテルのベースとしても欠かせません。よく冷やして(6〜8℃)飲むのが基本です。

プロセッコの楽しみ方(アペリティーボとカクテル)

プロセッコは、その軽快さ、手頃な価格、そしてフルーティーな味わいから、イタリアでは「アペリティーボ(食前酒)」の定番です。

夕食の前に、プロセッコを片手に生ハムやチーズ、オリーブといった軽いおつまみと共に談笑する、というのがイタリアの日常的な風景です。

また、プロセッコはカクテルベースとしても非常に優秀です。

  • スプリッツ(Spritz):プロセッコ、アペロール(またはカンパリ)、ソーダ水で造る、ヴェネツィア発祥の定番カクテル。
  • ベリーニ(Bellini):プロセッコと桃のピューレで造る、甘くフルーティーなカクテル。

もちろん、生ハムや魚介のマリネ、カプレーゼといった前菜との相性も抜群です。

他のスプマンテ(フランチャコルタなど)の楽しみ方

一方、スプマンテの中でも「メトド・クラシコ」で造られるフランチャコルタやトレントDOCは、プロセッコとは楽しみ方が異なります。

これらはシャンパンと同様に、酵母由来の複雑な香りとコクを持つため、食前酒としてだけでなく、魚料理や鶏肉料理などのメインディッシュとも合わせることができます。

お祝いの席など、特別なシーンでじっくりと味わうのに適していますね。

価格と格付け(D.O.C.)の違い

【要点】

プロセッコはタンク方式(シャルマ方式)で効率的に生産されるため、比較的安価なものが多く、日常的に楽しめます。スプマンテの中でも「メトド・クラシコ」で造られるフランチャコルタなどは、瓶内二次発酵という手間のかかる製法のため、非常に高価になります。

プロセッコにはD.O.C.(統制原産地呼称)と、より上級なD.O.C.G.(統制保証原産地呼称)があります。

D.O.C.G.を名乗れるのは、コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ地区やアゾロ地区など、ごく一部の優良な畑で造られたプロセッコのみで、より品質が高く、価格も上がります。

しかし、それでもシャンパンやフランチャコルタといったメトド・クラシコのスプマンテと比較すれば、プロセッコは圧倒的にコストパフォーマンスに優れています。

「スプマンテ」という名前だけで判断せず、それが「プロセッコ(シャルマ方式)」なのか「フランチャコルタ(メトド・クラシコ)」なのかをラベルで確認することが、価格と味わいを理解する上で非常に重要です。

文化・歴史・国ごとの飲み方の違い

【要点】

「スプマンテ」はイタリアのスパークリングワイン文化そのものを示します。「プロセッコ」は、その中でも特に2000年代以降に世界的なブームを巻き起こし、イタリアの「アペリティーボ(食前酒)」文化や「ラ・ドルチェ・ヴィータ(甘い生活)」を象徴するアイコンとなりました。

かつて「イタリアの泡モノ」といえば、甘口のアスティ・スプマンテが有名でした。

しかし、2000年代に入り、辛口でフレッシュなプロセッコが世界的に(特にイギリスやアメリカで)大ブームとなります。

その背景には、シャンパンよりも手頃な価格でありながら、おしゃれで高品質、そして何より「フレッシュ&フルーティー」で分かりやすく美味しい、というプロセッコの個性が時代にマッチしたことがあります。

プロセッコは、もはや単なる一銘柄ではなく、「気取らず、陽気に、人生を楽しむ」というイタリアのライフスタイルを象徴する飲み物として、世界中に受け入れられているのです。

体験談・飲み比べレビュー

僕がイタリアのヴェネツィアを旅した時のことです。

夕方頃になると、街中の「バーカロ」と呼ばれる立ち飲み屋(居酒屋)が、地元の人や観光客で溢れかえります。

そこで誰もが飲んでいるのが、鮮やかなオレンジ色のカクテル。

それが「アペロール・スプリッツ」でした。

バーテンダーに「あれをください」と注文すると、大きなグラスに氷を入れ、アペロール(リキュール)と、大きなボトルから並々と注がれる泡立つワイン、そしてソーダを加えて軽く混ぜて出してくれました。

その泡立つワインこそが「プロセッコ」だったのです。

ほろ苦く、ほんのり甘く、そしてプロセッコのフルーティーな香りが鼻に抜ける…。

「ああ、これが本場の食前酒(アペリティーボ)か」と、その美味しさと文化に感動しました。

それまで僕にとって「スプマンテ」は、クリスマスに飲むアスティの甘い記憶か、高級レストランで見るフランチャコルタのどちらかでした。

しかし、ヴェネツィアでプロセッコが水のように(そして非常に安価に)楽しまれているのを見て、「プロセッコは、日常の楽しみのためにある、フレンドリーなスプマンテなんだ」と強く実感しました。

難しく考えず、気軽に楽しめるのがプロセッコの最大の魅力だと、あのスプリッツが教えてくれましたね。

スプマンテとプロセッコに関するよくある質問

スプマンテとプロセッコについて、よくある疑問にお答えします。

シャンパンはスプマンテの一種ですか?

いいえ、違います。

「シャンパン(Champagne)」は、フランスのシャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインの固有名詞です。

「スプマンテ(Spumante)」は、イタリアで造られるスパークリングワインの総称です。

どちらもスパークリングワインですが、国も法律も異なります。スペイン産のものは「カバ(Cava)」と呼ばれますね。

プロセッコとアスティ・スプマンテの違いは何ですか?

ブドウ品種と味わい(甘さ)が全く違います。

プロセッコは「グレラ種」が主体で、味わいは「辛口(Brut)」から「やや甘口(Extra Dry)」が主流です。

アスティ・スプマンテ(Asti Spumante)は、「モスカート(マスカット)種」で造られ、味わいは非常に「甘口(Dolce)」です。アルコール度数もプロセッコ(約11%)より低い(約7〜9%)のが特徴です。

「フリッツァンテ」と「スプマンテ」の違いは何ですか?

「泡の強さ(ガス圧)」が違います。

スプマンテはガス圧が3.0バール以上の「しっかりとした泡立ち」のスパークリングワインです。

フリッツァンテはガス圧が1.0〜2.5バールの「微発泡」ワインです。プロセッコにも、スプマンテタイプとフリッツァンテタイプが存在します。

まとめ|どちらを選ぶべきか(シーン・好み別)

スプマンテとプロセッコの違い、明確にご理解いただけたでしょうか。

「スプマンテ」はイタリアの泡モノ全体の総称であり、「プロセッコ」はその中で最も人気の高い、特定の(フレッシュ&フルーティーな)銘柄である、という関係性でした。

あなたの好みやシーンに合わせて、以下のように選ぶのがおすすめです。

  • 気軽に食前酒として、またはアペロールスプリッツなどのカクテルで楽しみたい時:
    「プロセッコ(Prosecco)」を選べば間違いありません。そのフレッシュな果実味が最適です。
  • お祝いの席で、シャンパンのように複雑でコクのあるイタリアの泡を楽しみたい時:
    スプマンテの中でも「フランチャコルタ(Franciacorta)」「トレントDOC(Trento DOC)」といった、「メトド・クラシコ(Metodo Classico)」と表記された高級スプマンテを選びましょう。
  • デザートに合わせて、甘いスパークリングが飲みたい時:
    スプマンテの中でも「アスティ・スプマンテ(Asti Spumante)」がぴったりです。

これからは「スプマンテ」という言葉を見たら、「どの種類のスプマンテかな?」と一歩踏み込んでラベルを確認してみてください。きっとあなたのワイン選びがもっと豊かになりますよ。

ワインやアルコール飲料に関する公式な情報源として、日本の国税庁の酒類に関する情報なども、国内の分類を理解する上で参考になります。

当サイト「違いラボ」では、他にも様々な飲み物・ドリンクの違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。


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