「across」は「〜を横切って」という状態や経路を表す前置詞、「cross」は「横切る」という動作そのものを表す動詞、これが決定的な違いです。
なぜなら、「across」は「a(〜へ)」+「cross(十字)」から成り立ち、動きの方向や位置関係を示す言葉であるのに対し、「cross」は「十字を切る」「交差する」というアクションを指す言葉だからです。
この記事を読めば、文法用語に頼らずに「イメージ」で直感的に使い分けられるようになり、道案内や日常会話で迷うことがなくなります。
それでは、まず二つの違いを整理した一覧表から詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「across」と「cross」の最も重要な違い
「across」は前置詞・副詞として「〜の向こう側へ」「〜を横切って」という位置や経路を表します。「cross」は動詞として「横切る」「渡る」という動作そのものを表します。品詞が違うため、文の中での使われ方が根本的に異なります。
まずは、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | across | cross |
|---|---|---|
| 品詞 | 前置詞・副詞 | 動詞・名詞・形容詞 |
| 中心的な意味 | 〜を横切って、〜の向こう側に(位置・経路) | 横切る、渡る、交差させる(動作・形) |
| 文の中での役割 | 動詞を修飾する(例:walk across) | 主語の動作となる(例:I cross) |
| イメージ | 平面を横切る「線(→)」や「向こう側の点」 | 境界を越える「アクション」や「十字(✝)」 |
一番大切なポイントは、「across」は単体で動詞として使えない、「cross」は動詞として使えるという点ですね。
例えば、「道路を渡る」と言いたいとき。
動詞の「cross」を使えば、「Cross the street.」の一言で済みます。
一方、「across」を使う場合は、「歩いて(walk)」+「横切って(across)」のように動詞とセットにする必要があり、「Walk across the street.」となります。
この「品詞の役割」さえ理解しておけば、もう迷うことはありません。
なぜ違う?語源とコアイメージから「across」と「cross」を掴む
「cross」の語源はラテン語の「crux(十字架)」で、十字の形や交差する動作が原点です。「across」は「a(〜へ・〜の状態)」+「cross」で、「十字に交差している状態へ」という意味から、「〜を横切って」「向こう側へ」という位置関係を表す言葉になりました。
なぜこの二つの言葉が似ているのに使い方が違うのか、その語源とコアイメージを紐解くと、理由がよくわかりますよ。
「cross」のイメージ:十字架と交差するアクション
「cross」の語源は、ラテン語の「crux(十字架)」です。
そこから「十字形」という名詞、「十字に交差させる」「線を越えて向こうへ行く」という動詞の意味が生まれました。
「足を組む(cross one’s legs)」や「指を交差させて祈る(cross one’s fingers)」のように、何かが交わったり、境界線を越えたりする「動作そのもの」をイメージしてください。
「across」のイメージ:横切っている状態・経路
「across」は、「a(〜へ、〜の状態)」と「cross(十字)」がくっついた言葉です。
つまり、「十字に交わっている状態にある」や「横切る方向へ」という意味を表します。
動作そのものではなく、「A地点からB地点へ横切っていく経路」や「何かの向こう側にある位置」を指し示すイメージです。
だからこそ、「どこどこに(ある・いる)」と言いたいときに、「He is across the street.(彼は通りの向こう側にいる)」のように使えるのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
「道路を渡る」場面では、「Cross the road」か「Walk across the road」のどちらも使えます。静止した位置関係を表す「〜の向かい側に」は「across from」を使います。NG例として「I across the street」のようにacrossを動詞として使うミスに注意しましょう。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
日常会話での使い分け:動きを表す場合
「動き」を表す場合、どちらも使えますが、文の構造が変わります。
【OK例文:cross(動詞)】
- Be careful when you cross the street.
(通りを渡るときは気をつけて。) - Let’s cross the bridge.
(あの橋を渡ろう。)
【OK例文:across(前置詞)】
- Be careful when you walk across the street.
(通りを横切って歩くときは気をつけて。) - Let’s go across the bridge.
(あの橋を渡って行こう。)
「どうやって(歩いて、走って、泳いで)」渡るのかを具体的に言いたいときは、「swim across」や「run across」のように「across」を使うと便利です。
日常会話での使い分け:位置を表す場合
「〜の向こう側に」「〜の向かいに」という静止した位置を表すときは、「across」を使います。
【OK例文:across(位置)】
- My house is across the street.
(私の家は通りの向かい側です。) - There is a convenience store across from the station.
(駅の向かいにコンビニがあります。)
※「across from」は「〜の真向かいに」という意味でよく使われるセットフレーズです。
これはNG!間違えやすい使い方
最も多い間違いは、「across」を動詞として使ってしまうことです。
- 【NG】I across the river.
(私は川を渡る。) - 【OK】I crossed the river. / I swam across the river.
(私は川を渡った。/ 私は川を泳いで渡った。)
「across」には「渡る」という動作の意味は含まれていません。「〜を横切って」という方向を示すだけなので、必ず動詞(go, walk, swimなど)が必要です。
【応用編】「come across」などの重要熟語
「across」を使った熟語には、偶然の出会いを表す「come across」があります。「cross」を使った熟語には、線を引いて消す「cross out」や、頭をよぎる「cross one’s mind」などがあります。それぞれのコアイメージ(経路 vs 交差動作)が反映されています。
基本の意味を押さえたら、よく使われる熟語も見てみましょう。
それぞれのコアイメージが活きていますよ。
acrossを使った熟語
- come across …:〜に偶然出くわす、〜をふと見つける
(自分の移動経路の向こう側から何かがやってくるイメージ) - get across …:(考えなどが)〜に伝わる、理解される
(自分の考えが相手側の領域へ横切って届くイメージ)
crossを使った熟語
- cross out …:〜を(線を引いて)消す
(文字の上にバツ印や横線を「交差」させて消す動作) - cross one’s mind:(考えが)頭をよぎる
(思考が脳裏を一瞬「横切る」動作) - cross one’s arms/legs:腕/足を組む
(体の一部を「交差」させる動作)
「across」と「cross」の違いを認知言語学的に解説
認知言語学の視点では、「across」は「経路(Path)」を表し、平面上の移動の軌跡や、到達した先にある位置関係に焦点を当てます。一方、「cross」は「動作(Action)」であり、境界線を越えるプロセスそのものに焦点を当てます。
少し専門的な視点から、この違いを深掘りしてみましょう。
認知言語学では、空間をどのように認識するかが鍵になります。
「across」は、「経路(Path)」の概念を持っています。
ある平面(道路や川など)があり、そこを端から端まで横断する「見えない線」をイメージしてください。
「He walked across the park.」と言うとき、彼が公園に残した「移動の軌跡」に焦点が当たっています。
また、視線がその軌跡をたどった先にある「ゴール地点(向こう側)」を表すこともできるため、「across the street(通りの向こう側)」という位置表現にもなるのです。
一方、「cross」は、「境界を超える動作」に焦点があります。
A地点からB地点へ、境界線(道路の縁石や川岸)をまたいで移動するという「変化」や「アクション」そのものを捉えています。
「Cross the line(一線を超える)」と言うように、ある領域から別の領域へ移る決定的瞬間のニュアンスが強いのです。
「移動の軌跡(across)」なのか、「越えるアクション(cross)」なのか。
この感覚の違いが、使い分けの根底に流れています。
「Don’t across!」と叫んで恥をかいた僕の体験談
僕がまだ英語に不慣れだった頃、海外で恥ずかしい失敗をしたことがあります。
友人と街を歩いていたときのことです。
信号が赤なのに、友人が気づかずに道路を渡りそうになりました。
僕はとっさに止めようとして、大声で叫びました。
「Hey! Don’t across!(おい!渡るな!)」
友人は驚いて止まりましたが、近くにいた現地の人がクスッと笑っているのに気づきました。
その時は「あー、危なかった」としか思いませんでしたが、後で冷静になって顔から火が出るほど恥ずかしくなりました。
「across」は前置詞です。
「Don’t across」というのは、日本語で言えば「〜の向こう側へ、するな!」と叫んでいるようなものです。
動詞が抜けているので、文として成立していないんですね。
正しくは、「Don’t cross!(渡るな!)」あるいは「Don’t go across!」と言うべきでした。
「Cross」という動詞の力強さと、「Across」という前置詞の役割。
この違いを肌で(というより恥で)感じた瞬間でした。
皆さんは、緊急時こそシンプルな動詞「Cross」を使うようにしてくださいね。
「across」と「cross」に関するよくある質問
「across from」と「opposite」の違いは?
どちらも「〜の向かい側に」という意味で使われますが、ニュアンスにわずかな差があります。「across from」は間に道路や川などの「空間」や「遮るもの」があることを意識させます。「opposite」は単に位置関係として「対面している」ことを指します。日常会話ではほぼ同じように使えます。
「cross」を名詞として使うときはどんな意味?
名詞の「cross」は「十字架」「十字形」「×印」という意味です。また、比喩的に「苦難」や「試練」という意味で使われることもあります(重い十字架を背負う、というイメージですね)。
「across」だけで使うことはできますか?
「across」は副詞としても使えるので、後ろに名詞を置かずに単独で使うこともできます。例えば「Can you swim across?(向こう側まで泳げる?)」のように、「向こう側へ」「横切って」という意味で文末に来ることがあります。
「across」と「cross」の違いのまとめ
「across」と「cross」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 最大のポイント:「across」は前置詞(〜を横切って)、「cross」は動詞(横切る)。
- 使い方の違い:「across」は動詞と一緒に使う(go across)。「cross」はそのまま動詞として使う。
- イメージの違い:「across」は経路や向こう側の位置。「cross」は境界を越える動作や十字の形。
- 熟語:「come across(出くわす)」や「cross out(消す)」など、それぞれのイメージが派生している。
「品詞」という言葉を聞くと難しく感じるかもしれませんが、「動作ならCross、場所や様子ならAcross」と感覚的に捉えてみてください。
これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。
言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、英語由来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
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