「baggage」は主にアメリカ英語で使われ、「心の重荷」という比喩的な意味も持ちますが、「luggage」は主にイギリス英語で使われ、単に「旅行カバン」を指すという点が決定的な違い。
なぜなら、「baggage」は軍隊の装備を束ねた(bag)ことに由来し、中身を含めた全体や精神的な負担を指すのに対し、「luggage」は重いものを引きずる(lug)動作に由来し、カバンそのものに焦点が当たっているからです。
この記事を読めば、旅行先でどちらを使うべきか迷わなくなり、「数えられない名詞」としての正しい使い方もマスターできるようになります。
それでは、まず二つの違いを整理した一覧表から詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「baggage」と「luggage」の最も重要な違い
「baggage」はアメリカ英語で一般的で、比喩的に「精神的な重荷」も意味します。「luggage」はイギリス英語で一般的で、物理的な「旅行カバン」のみを指します。どちらも不可算名詞(数えられない)です。
まずは、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | baggage | luggage |
|---|---|---|
| 主な使用地域 | アメリカ英語(国際的にも広まっている) | イギリス英語 |
| 意味の広がり | 旅行荷物 + 心の重荷(比喩) | 旅行荷物(物理的なカバン類) |
| 語源のイメージ | bag(袋・束)につめる | lug(重いものを引きずる) |
| 文法(数) | 不可算名詞(× baggages) | 不可算名詞(× luggages) |
一番大切なポイントは、「baggage」には「過去のトラウマ」などの比喩的な意味があるが、「luggage」にはないという点ですね。
例えば、恋愛の話で「彼にはいろいろと引きずっている過去がある」と言いたいときは「He has a lot of baggage.」と言います。
ここで「luggage」を使ってしまうと、単に「彼はたくさんの旅行カバンを持っている(これから旅行かな?)」という意味にしかならないわけです。
この「意味の深さ」を理解しておくと、会話での失敗を防げます。
なぜ違う?「地域差」と「語源」からイメージを掴む
「baggage」はフランス語由来で「束ねる」イメージから軍装備や全体的な荷物を指し、「luggage」は「lug(引きずる)」から来ており、移動のために運ぶ重いカバン類を指します。アメリカではbaggage、イギリスではluggageが好まれます。
なぜ同じ「荷物」なのに言葉が違うのか、その背景を紐解くと、理由がよくわかりますよ。
「baggage」のイメージ:装備一式とアメリカ英語
「baggage」は、古フランス語の「bagage(束ねる)」に由来します。
もともとは軍隊の行軍における「装備一式」や「輜重(しちょう:軍の物資)」を指していました。
そこから、「移動に必要なもの全体」というニュアンスが生まれ、アメリカを中心に「旅行者の手荷物」として定着しました。
また、人生の旅路において背負っている「精神的な負担(emotional baggage)」という意味もここから派生しています。
空港の「Baggage Claim(手荷物受取所)」は、アメリカ英語の影響で世界的に使われている表現ですね。
「luggage」のイメージ:引きずる重いカバンとイギリス英語
一方、「luggage」は、英語の動詞「lug(重いものをずるずると引きずる)」に、名詞語尾の「-age」がついた言葉です。
つまり、「苦労して運ぶ重い荷物」というアクションが原点にあります。
イギリスではこの言葉が好まれ、旅行用のスーツケースやトランク類を総称して「luggage」と呼びます。
こちらは物理的な「カバンそのもの(容器)」を指す傾向が強く、中身や精神的な意味合いは含みません。
具体的な例文で使い方をマスターする
空港では「Baggage Claim」が一般的ですが、日常会話では地域に合わせて使い分けます。「emotional baggage」は決まり文句です。どちらも不可算名詞なので「a baggage」や「two luggages」とは言いません。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
旅行・空港での使い分け
基本的には相手(地域)に合わせますが、空港用語としては「baggage」が優勢です。
【OK例文:アメリカ的・空港】
- Where is the baggage claim area?
(手荷物受取所はどこですか?) - I checked two pieces of baggage.
(私は荷物を2つ預けました。)
【OK例文:イギリス的・日常】
- Do you have much luggage?
(荷物は多いですか?) - Please leave your luggage in the hotel room.
(荷物はホテルの部屋に置いておいてください。)
比喩的な使い分け(重要!)
ここが「baggage」の独壇場です。
【OK例文:比喩(baggageのみ)】
- He carries a lot of emotional baggage from his previous relationship.
(彼は前の恋愛による心の重荷をたくさん背負っている。) - Let go of your baggage and move on.
(過去のしがらみを捨てて、前に進もう。)
※ここで「luggage」を使うと、物理的なカバンの話になってしまいます。
これはNG!間違えやすい使い方
日本人学習者が最もやりがちな文法ミスです。
- 【NG】I have a baggage. / I have two luggages.
(荷物が1つあります / 2つあります) - 【OK】I have a piece of baggage. / I have two pieces of luggage.
(荷物が1つあります / 2つあります)
「baggage」も「luggage」も、家具(furniture)と同じ「不可算名詞(数えられない名詞)」です。
「荷物という概念・集合体」を指すので、1つ2つと数えるときは「piece of」や「item of」を使って単位をつけなければなりません。
「bags」や「suitcases」と言い換えれば、普通に数えることができますよ。
【応用編】「Carry-on」や「Suitcase」との違いは?
「baggage/luggage」は荷物の総称です。「Carry-on」は機内持ち込み手荷物、「Suitcase」は具体的なカバンの種類(ハードケースなど)を指します。具体的な形状を言いたいときは「suitcase」や「bag」を使います。
「baggage/luggage」は集合的な「荷物」ですが、具体的なアイテムを指す言葉も覚えておきましょう。
Carry-on(機内持ち込み手荷物)
飛行機の中に持ち込む荷物のことです。イギリス英語では「hand luggage」とも言います。
- I only have a carry-on.
(荷物は機内持ち込みだけです。)
Suitcase(スーツケース)
旅行用の四角いカバン、特にハードケースを指します。これは「可算名詞」なので数えられます。
- I bought a new suitcase.
(新しいスーツケースを買った。)
Baggage Allowance(手荷物許容量)
飛行機に無料で預けられる荷物の重量や個数の制限のことです。
- What is the baggage allowance for this flight?
(この便の手荷物許容量はどれくらいですか?)
「baggage」と「luggage」の違いを文法的に解説
文法的にはどちらも「集合名詞(不可算名詞)」として扱われます。「money(お金)」と同じで、全体的な概念を表すため、単数形扱いとなり、不定冠詞(a/an)や複数形(-s)はつきません。
少し専門的な視点から、この「数えられない」性質を深掘りしてみましょう。
英語には、個別の物体ではなく「種類全体」や「概念」を表す名詞があります。
「baggage/luggage」は、スーツケース、ボストンバッグ、リュックサックなど、色々な形状の荷物をひとまとめにした「荷物類」という概念なのです。
「Money(お金)」もそうですよね。
1円玉や1000円札は数えられますが、「お金」という概念自体は1つ2つとは数えません。
それと同じで、「Bag(カバン)」や「Case(ケース)」は数えられますが、「Baggage(荷物類)」は数えられないのです。
「Much baggage(たくさんの荷物)」とは言えますが、「Many baggages」とは言えない。
このルールは、TOEICなどの試験でも頻出のポイントなので、ぜひ覚えておいてください。
「He has a lot of luggage」と言って微妙な顔をされた僕の体験談
僕がアメリカの友人とカフェで恋愛話をしていた時のことです。
友人が最近知り合った男性について、「彼は魅力的くんだけど、ちょっと複雑な事情があって…」と悩んでいました。
僕は「ああ、彼には過去のしがらみ(心の重荷)がたくさんあるんだね」と言いたくて、こう言いました。
「Ah, I see. He has a lot of luggage.」
すると友人は一瞬キョトンとして、その後少し笑いながらこう言いました。
「Is he moving somewhere? Or is he a bellboy?(彼はどこかに引っ越すの?それともベルボーイなの?)」
僕は顔から火が出るほど恥ずかしくなりました。
「Luggage」を使ってしまったせいで、比喩的な「心の重荷」ではなく、物理的に「大量のスーツケースを持って移動している人」という映像を相手の脳内に再生させてしまったのです。
すぐに「Oh, I meant baggage! Emotional baggage!」と言い直すと、「Yeah, he definitely has baggage.(ええ、間違いなくバゲージ持ちよ)」と話が通じました。
たかが単語一つの違いですが、シリアスな話がコントになってしまう破壊力がありました。
「重荷」の話をするときは、絶対に「Baggage」です。
皆さんは、僕のように友人をベルボーイ扱いしないように気をつけてくださいね。
「baggage」と「luggage」に関するよくある質問
空港で「Luggage Claim」とは言わないのですか?
言いません。世界中のほとんどの空港で、手荷物受取所は「Baggage Claim」と表示されています。イギリスの空港でさえ「Baggage Reclaim」と書かれていることが多いです。空港用語としては「Baggage」が国際標準になっています。
「Bag」と「Baggage」の違いは何ですか?
「Bag」は具体的な「カバン」や「袋」を指す可算名詞で、1つ2つと数えられます。「Baggage」は旅行用の「荷物一式」を指す不可算名詞で、数えられません。「I lost my bag(カバンをなくした)」とは言えますが、「I lost my baggage(荷物一式をなくした=預け入れ荷物全部など)」となるとニュアンスの規模が少し変わります。
「Left luggage」とは何ですか?
イギリス英語で「手荷物預かり所」のことです。駅などでよく見かける表示です。アメリカ英語では「Baggage storage」などが使われます。イギリスを旅行する際は「Left luggage」の看板を探すと良いでしょう。
「baggage」と「luggage」の違いのまとめ
「baggage」と「luggage」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 最大のポイント:アメリカ英語・比喩ありなら「baggage」、イギリス英語・物理的のみなら「luggage」。
- 比喩表現:「心の重荷」は必ず「emotional baggage」。luggageは使わない。
- 共通点:どちらも不可算名詞。「s」はつけず、「piece of」で数える。
- 空港用語:手荷物受取所は世界共通で「Baggage Claim」が多い。
「アメリカと心はBaggage、イギリスと物はLuggage」とイメージしておけば、もう迷うことはありません。
これからは自信を持って、的確な英語を使いこなしていきましょう。
言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、英語由来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
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