「ビカクシダ」と「コウモリラン」の違い!失敗しない選び方

お部屋の壁を彩る、鹿の角のような不思議な形をしたインテリアグリーン。

「ビカクシダ」と「コウモリラン」、園芸店で二つの名前を見かけて、どちらを買うべきか迷った経験はありませんか。

実はこの二つの言葉、全く同じ植物を指しており、図鑑などに載る正式な「和名」か、お店で親しまれる「流通名」かという違いしかないのです。

「同じ植物なら、どっちの名前でもいいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、同じ植物だと知らずに探していると、欲しい品種がなかなか見つからなかったり、気付かずに同じものを二つ買ってしまうなんてことも。

この記事を読めば、言葉のルーツから着生シダとしての特異な生態の秘密までスッキリと理解でき、自信を持って最高のひと株を選べるようになります。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「ビカクシダ」と「コウモリラン」の最も重要な違い

【要点】

「ビカクシダ」と「コウモリラン」は全く同じ植物です。学術的な和名として使われるのが「ビカクシダ」、園芸店などで親しみやすい流通名として使われるのが「コウモリラン」という違いしかありません。

言葉の違いを理解するうえで一番大切なのは、両者が「対立する別々の植物」ではなく、単なる呼び方の違いであるという事実です。

この二つの言葉が持つニュアンスの違いを、以下の表にまとめました。

項目ビカクシダコウモリラン
中心的な意味ウラボシ科ビカクシダ属のシダ植物(和名)ウラボシ科ビカクシダ属のシダ植物(流通名)
言葉の性質学術的な正式名称、植物の総称園芸店や雑貨店で使われる商品名
よく使われる場面愛好家やマニアの会話、植物園、専門書インテリアショップ、初心者向けの雑誌
語源のモチーフヘラジカの角(麋角)羽を広げてぶら下がるコウモリ
花が咲くか咲かない(胞子で増えるシダ植物のため)咲かない(ランの仲間ではないため)

表を見ると一目瞭然ですよね。

ホームセンターの園芸コーナーに行くと、同じ棚に並んでいるのに、ある鉢には「ビカクシダ」、別の鉢には「コウモリラン」というラベルが挿さっていることがよくあります。

これは、生産農家や卸売業者がどちらの名前を採用して出荷したかの違いに過ぎません。

「コウモリランの方がおしゃれで可愛いから好き」という方もいれば、「ビカクシダという響きが格好良くてマニアックで良い」という方もいるでしょう。

指しているものは全く同じなので、ご自身が愛着を持てる呼び方で呼んであげるのが一番です。

なぜ違う?言葉の成り立ちと名付けの背景からイメージを掴む

【要点】

「ビカクシダ」は葉の形をヘラジカの角に見立てた硬派な和名であり、「コウモリラン」は垂れ下がる様子をコウモリに、木に着生する様子をランに見立てた親しみやすい造語です。

全く同じ植物でありながら、なぜこれほどまでに印象の異なる二つの名前が付けられたのでしょうか。

それぞれの名前のルーツを紐解くと、この不思議な植物の魅力を昔の人がどう捉えていたかが見えてきますよ。

「ビカクシダ」の由来:ヘラジカの立派な角に見立てた和名

ビカクシダは、漢字で書くと「麋角羊歯」となります。

非常に難しくて画数の多い漢字ですが、「麋(び)」というのは、北米や北欧の森に住む巨大な鹿「ヘラジカ」のことを指しています。

大きく二股、三股に分かれて広がる独自の葉(胞子葉)のシルエットが、まさにヘラジカの立派な角にそっくりだったのですね。

植物学の世界において、海外から入ってきた未知の植物に日本の名前(和名)をつける際、見た目の特徴を捉えた漢字を当てるのはよくあること。

この威風堂々とした和名が与えられたことで、植物としての格調高さや、マニア心をくすぐる野生味が表現されていると言えます。

「コウモリラン」の由来:羽ばたくコウモリに見立てた園芸の流通名

一方の「コウモリラン」は、園芸業界が一般の消費者に親しみを持ってもらうために生み出した「流通名(商品名)」です。

壁に掛けられた状態から、葉がだらんと下に垂れ下がる様子が、まるで洞窟で羽を休めるコウモリのように見えたことが由来とされています。

そして重要なのが、後ろについている「ラン(蘭)」という言葉。

コウモリランはシダ植物であり、美しい花を咲かせる胡蝶蘭などのラン科の植物とは全くの別物です。

しかし、熱帯雨林のジャングルで樹木の幹に張り付いて育つ「着生(ちゃくせい)植物」としての生態が、胡蝶蘭などの着生ランと非常に似ていました。

そこで、園芸的な育て方の共通点や、エキゾチックなイメージを伝えるために「ラン」という言葉を借りて名付けられたのです。

「オリヅルラン」や「リュウゼツラン」と同じように、名前にランとついてもランの仲間ではない植物の一つですね。

 

具体的な文脈で「ビカクシダ」と「コウモリラン」の使い方をマスターする

【要点】

学術的な話や原種・専門的な品種を語る際には「ビカクシダ」が使われ、インテリアとしての見栄えや初心者向けの話題では「コウモリラン」が使われる傾向にあります。

言葉の語源を理解したところで、実際の会話やSNSの投稿でどのように使い分けられているかを見ていきましょう。

文脈に合わせて的確に言葉を選ぶことで、植物仲間とのコミュニケーションがさらに楽しくなります。

愛好家や学術的な文脈で重宝される「ビカクシダ」

植物を深く愛するマニアや、原種(自然界に自生するオリジナル品種)にこだわる人々の間では、圧倒的に「ビカクシダ」という呼び方が好まれます。

【OK例文:ビカクシダ】

  • 休日はコルク板を使って、ビカクシダの板付け作業に没頭している。
  • 熱帯植物園の温室で、巨大に成長したビカクシダの原種を観察した。
  • ビカクシダ・リドレイの胞子をまいて、小さな苗から育てている。

インスタグラムなどのSNSでも、「#ビカクシダ」のハッシュタグには、温度や湿度を徹底管理して育てられた、大迫力の専門的な写真が多く並ぶ傾向がありますね。

インテリアショップや初心者に親しまれる「コウモリラン」

一方で、お部屋をおしゃれに飾るインテリアグリーンとしての文脈では、「コウモリラン」という呼び方がしっくりと馴染みます。

【OK例文:コウモリラン】

  • 雑貨屋さんで、可愛い苔玉仕立てのコウモリランを一目惚れして買った。
  • コンクリート打ちっ放しのカフェに、大きなコウモリランが吊るされていた。
  • 初心者でも育てやすいと聞いて、コウモリランの鉢植えを窓辺に置いた。

雑誌のインテリア特集などでも、「コウモリランでお部屋に立体感を」といったコピーがよく使われます。

生活空間に溶け込むポップな響きが、多くの人に受け入れられている証拠でしょう。

これはNG!間違えやすい生態の勘違い

指している植物は同じなので、どちらの名前を使っても間違いではありません。

しかし、名前に引っ張られて育て方を間違えてしまうのは非常に危険です。

  • 【NG】コウモリランの葉に元気がないから、蘭(ラン)用の開花促進肥料をたっぷり与えよう。
  • 【OK】コウモリランはシダ植物で花は咲かないから、観葉植物用の液肥を適量与えよう。

「ラン」という名前に騙されて、花を咲かせるための成分が強い肥料を与えてしまうと、葉ばかりを茂らせるシダ植物にとってはバランスが崩れてしまうことがあります。

名前の響きに惑わされず、その植物本来の性質を見極めることがガーデニングの基本ですね。

 

「ビカクシダ」と「コウモリラン」の生態を植物学的に解説

【要点】

ウラボシ科ビカクシダ属(Platycerium)に分類され、水分や養分を蓄える「貯水葉」と、光合成を行い胞子をつける「胞子葉」という、役割の違う二種類の葉を同時に展開する特異なシダ植物です。

もう少しだけ、専門家の視点からこの不思議な植物の生態に踏み込んでみましょう。

ビカクシダ(コウモリラン)の最大の特徴は、その奇妙な生え方にあります。

地面の土に根を張るのではなく、熱帯雨林の巨大な樹木の幹や枝に張り付いて生活する「着生(ちゃくせい)植物」です。

土のない空中で生き抜くため、彼らは全く役割の違う「貯水葉(ちょすいよう)」と「胞子葉(ほうしよう)」という二種類の葉を進化させました。

根元を包み込むように丸く張り付いているのが「貯水葉」です。

この葉はまるでスポンジのように水を吸収し、上から落ちてくる落ち葉や虫の死骸を受け止めて、自らの養分にするという驚くべき機能を持っています。

時間が経つと茶色く枯れたようになりますが、内部のスポンジ構造は生きて水を保ち続けるため、絶対に切り取ってはいけません。

そして、鹿の角のように長く伸びているのが「胞子葉」です。

太陽の光を浴びて光合成を行うと同時に、葉の裏側に茶色い「胞子」をつけて子孫を残す役割を担っています。

さらに、葉の表面をよく見ると、白くて細かな産毛のようなものがびっしりと生えていますよね。

これは「星状毛(トリコーム)」と呼ばれ、強い日差しから身を守り、空気中のわずかな水分をキャッチするための大切な防具です。

葉を素手でベタベタと触ってこの毛を剥がしてしまうと、植物が弱ってしまうので注意が必要です。

国立情報学研究所などのデータベースで熱帯植物の論文を検索すると、着生シダの独自の進化過程がいかに複雑で合理的かがよく分かります。

世界に18種類しか存在しないという原種のビカクシダたちが、それぞれ厳しいジャングルで生き残るために獲得した造形美。

そのメカニズムを知れば知るほど、壁に掛かった一株の植物が、とてつもなく愛おしい存在に思えてくるはずです。

 

インテリアショップで僕が「ビカクシダ」と「コウモリラン」を別物だと勘違いして大失敗した体験談

実は僕自身、この「ビカクシダ」と「コウモリラン」が同じ植物だと知らなかったばかりに、お部屋の模様替えで大きな勘違いをした経験があります。

数年前、友人に連れられて行ったおしゃれなカフェでのことです。

コンクリート打ちっ放しの壁に、立派な鹿の角のような植物がいくつも吊るされていました。

「うわあ、かっこいい!うちのリビングにも絶対に飾りたい!」

すっかり心を奪われた僕は、店員さんに植物の名前を聞きました。

「ああ、それはコウモリランですよ。インテリアに大人気なんです」

その足で近くの雑貨屋に駆け込み、可愛らしい鉢植えの「コウモリラン」を見つけて即座に購入しました。

大満足で家に帰り、さらに壁掛けにできる大きな植物も探そうと、インターネットの園芸サイトを閲覧し始めました。

そこで僕の目に飛び込んできたのが、「男のインテリア!大迫力のビカクシダ(ネザーランド)」という魅力的なキャッチコピーでした。

「ビカクシダ……なんて厳つくて格好いい名前なんだ。よし、コウモリランの隣には、この別格の植物を飾ろう」

僕は迷わず、少し奮発してその「ビカクシダ」をネットで注文したのです。

数日後、待ちに待った大きな段ボールが届きました。

ワクワクしながら箱を開けた瞬間、僕は自分の目を疑いました。

「えっ……嘘だろ。これ、雑貨屋で買ったコウモリランと全く同じ葉っぱじゃないか!」

大きさこそ違いましたが、根元を包む丸い葉も、二股に分かれた葉の形も、完全に一致しています。

慌ててスマホで検索して、僕はようやくすべてを理解しました。

コウモリランとビカクシダは、全く同じ植物を指す別の名前だったのです。

しかもご丁寧に、僕が買ったのはどちらも「ビフルカツム(ネザーランド)」という全く同じ入門用の品種でした。

「なんて馬鹿なことをしたんだ……同じ種類の草を、名前が違うだけで別物だと思い込んで二つも買ってしまうなんて」

僕は自分の無知を恥じ、顔から火が出る思いでした。

この痛い経験から、植物を買う時は、お店のポップに書かれた流通名だけでなく、必ずその植物の「正式名称(学名や和名)」を確認しなければならないと身をもって痛感したのです。

ただ、結果的にこの失敗は僕にとって大きな転機になりました。

図らずも二株になってしまったビカクシダを持て余した僕は、一株を自分でコルク板に縛り付ける「板付け」に挑戦してみたのです。

四苦八苦しながら釣り糸で根元を固定し、壁に飾った時の達成感は、ただ鉢植えを買ってきた時とは比べ物にならないほど大きなものでした。

あの時、名前の勘違いで同じ植物を買っていなければ、僕がビカクシダの奥深い魅力にどっぷりとハマることはなかったでしょう。

今ではリビングの壁に、あの時の二株が立派な角を広げて、我が家の誇り高きシンボルツリーとして鎮座しています。

「ビカクシダ」と「コウモリラン」に関するよくある質問

ビカクシダとコウモリランは蘭(ラン)の仲間ですか?

いいえ、ラン科の植物ではありません。ウラボシ科という「シダ植物」の仲間です。美しい花は咲きませんが、樹木の幹に張り付いて育つ「着生」という生態がランと似ているため、親しみやすさを込めてコウモリランという名前が付けられました。

シダ植物なのに、なぜ「ラン」という名前がつけられたのですか?

園芸業界において、観賞価値が高くエキゾチックな雰囲気を持つ植物に、高級感のある「ラン」という言葉をつけて流通させることはよくあります。オリヅルランやリュウゼツランなども同様で、植物学的な分類よりも消費者のイメージを優先した結果です。

茶色くなってカサカサになった根元の葉(貯水葉)は切り取ってもいいですか?

絶対に切り取ってはいけません。根元を覆う丸い葉(貯水葉)は、茶色く枯れたように見えても、内部のスポンジ状の組織で水分を保ち、株を支えるという重要な役割を果たしています。見た目が気になるかもしれませんが、自然の造形としてそのまま残してください。

初心者が室内で育てるのにおすすめの品種はありますか?

「ビフルカツム」や、それを日本の環境向けに改良した「ネザーランド」という品種が圧倒的におすすめです。寒さや乾燥に非常に強く、多少水やりを忘れても枯れにくいため、初めてビカクシダをお迎えするのに最適な、最もポピュラーな品種です。

壁に掛けて育てる「板付け」にするのはなぜですか?

ビカクシダは本来、熱帯雨林の樹木の側面に縦に張り付いて生きている植物だからです。鉢に植えて土の上に置くよりも、板に縛り付けて壁にぶら下げる方が、植物本来の自然な姿に近く、根の通気性も良くなるため健康に育ちやすくなります。

 

「ビカクシダ」と「コウモリラン」の違いのまとめ

ビカクシダとコウモリランの違い、そして着生シダとしての魅力をご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事で解説した重要なポイントを振り返っておきましょう。

  • 言葉の関係性:両者は全く同じ植物であり、図鑑などで使われる正式な和名が「ビカクシダ」、園芸店で使われる商品名が「コウモリラン」。
  • 名前の由来:ビカクシダは「鹿の角」、コウモリランは「羽を広げたコウモリ」がモチーフ。ランの仲間ではなくシダ植物。
  • 特異な生態:水分を蓄える丸い「貯水葉」と、長く伸びる「胞子葉」の二種類の葉を持つ、土のいらない着生植物。

名前の裏側にある名付けの歴史や生態を知ることで、ただのインテリアグリーンだった植物が、厳しいジャングルを生き抜く逞しい生き物として見えてきますよね。

今度、おしゃれなカフェや雑貨屋さんで壁に掛かった大きな葉っぱを見かけた際は、ぜひ「あの鹿の角の形はビフルカツムかな?」と、植物のルーツを思い出しながら観察してみてください。

あなたのお部屋作りの解像度がほんの少しだけ上がり、植物と暮らす毎日がより豊かな時間になるはずです。

生き物や自然界の言葉の違いについてもっと深く知りたい方は、こちらの生き物・自然に関する言葉の違いのまとめ記事も、ぜひあわせて読んでみてください。

「聴く」と「読む」の違い

スキマ時間で語彙力を磨く2つの方法。
どちらも30日間無料で試せます。

耳で学ぶ Audible
  • 12万冊以上が聴き放題
  • 移動中・作業中にながら学習
  • ビジネス書・教養書が充実

30日間無料で体験できます

Audible 無料体験を試す →
目で学ぶ Kindle Unlimited
  • 200万冊以上が読み放題
  • ビジネス文書・敬語本も豊富
  • PCブラウザでそのまま読める

30日間無料で体験できます

Kindle Unlimited 無料体験を試す →

※ 無料期間中に解約すれば0円

スポンサーリンク