「clientele」と「client」の違いとは?顧客層と顧客を解説

「clientele」と「client」、どちらも「顧客」に関連する言葉ですよね。

ビジネスシーン、特にマーケティングやサービス業の話で耳にすることがありますが、「clientと何が違うの?」と疑問に思ったことはありませんか?

実はこの二つの言葉、「個々の顧客」を指すか、「顧客層全体(集合)」を指すかで、その規模感とニュアンスに明確な違いがあるんです。

この記事を読めば、「clientele」と「client」それぞれの意味や語源、具体的な使い分け、さらには「customer」との違いまでスッキリ理解できます。もう顧客について話すときに迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「clientele」と「client」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、「個々の顧客(一人ひとり)」なら「client」、「(特定の店や専門家の)顧客層全体」なら「clientele」と覚えるのが簡単です。「clientele」は「client」の集合名詞であり、単数形で「顧客集団」を表します。

まず、結論からお伝えしますね。

「clientele」と「client」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 clientele client
中心的な意味 (店や専門家などの)顧客層全体、得意先筋(集合名詞) 顧客、依頼人(個々の人)
集合名詞(単数形で集団を表す) 可算名詞(単数形・複数形あり: clients)
ニュアンス 特定のビジネスや専門職が持つ顧客の「層」や「集団」 サービスや助言を受ける「個々の人」や「一社」
高級レストランのclientele(顧客層) 弁護士のclient(依頼人)、デザイン会社のclient(取引先)
関係性 「client」の集まりが「clientele」 「clientele」を構成する「個」

一番大切なポイントは、「client」が「顧客一人ひとり」や「取引先一社一社」という「個」を指すのに対し、「clientele」はそうした顧客全体の「集団」や「層」を指す、という点ですね。

「clientele」は集合名詞なので、それ自体が「顧客たち」という意味を含んでおり、通常は単数形で扱われます。

なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

どちらもラテン語の「cliens」(保護を求める人、依存者)に由来します。「client」がその「個」を指すのに対し、「clientele」はフランス語を経由して「clientの集団」という意味を持つ集合名詞として発展しました。

この二つの言葉がなぜ「個」と「集団」という違いを持つのか、それぞれの成り立ちを探ると、その理由が見えてきますよ。

「clientele」の成り立ち:「client」の集合名詞

「clientele(クライアンテル)」は、フランス語の「clientèle」から来ています。これは、さらにラテン語の「clientela(クリエンテーラ)」に由来し、「保護関係」や「被保護者の集団」といった意味を持っていました。

そして、この「clientela」自体が、次に出てくる「client」の語源である「cliens(クリエンス)」の集合名詞的な役割を持っていたのです。

つまり、「clientele」は、その成り立ちからして「clientの集団・層」を示す言葉として英語に取り入れられたんですね。

「client」の成り立ち:「保護を求める人」

一方、「client(クライアント)」は、ラテン語の「cliens(クリエンス)」が直接の語源です。これは元々、古代ローマにおいて有力者(パトロン)の「保護(patronage)」を受ける平民や依存者を指す言葉でした。

この「保護を求め、専門的な助言やサービスを受ける人」というイメージが、現代の弁護士、会計士、デザイナー、コンサルタントといった専門家に依頼をする「依頼人」や、サービスを受ける「顧客(個々)」という意味につながっています。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「The lawyer has many clients.」(その弁護士には多くの顧客(個人)がいる)、「The cafe attracts a wealthy clientele.」(そのカフェは裕福な顧客層を惹きつけている)のように使い分けます。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。ビジネスシーンや日常会話での使い方、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

「個」に注目するか、「集団(層)」に注目するかで使い分けます。

【OK例文:clientele】(顧客層・集団)

  • Our firm aims to expand its international clientele. (当事務所は、国際的な顧客層の拡大を目指しています。)
  • That luxury brand has a very loyal clientele. (あの高級ブランドは、非常に忠実な顧客層を持っています。)
  • We analyzed the spending habits of our clientele. (我々は自社の顧客層の消費傾向を分析した。)
  • The new online service targets a younger clientele. (その新しいオンラインサービスは、より若い顧客層をターゲットにしている。)

「international clientele(国際的な顧客層)」、「loyal clientele(忠実な顧客層)」、「younger clientele(若い顧客層)」など、ある特定の属性や特徴を持つ「集団」として捉えられていますね。

【OK例文:client】(個々の顧客・依頼人)

  • I have a meeting with a new client this afternoon. (今日の午後、新規のクライアント(一社/一人)と会議があります。)
  • We must protect our client‘s confidential information. (我々は依頼人の機密情報を守らなければならない。)
  • Several clients have complained about the new policy. (何人かの顧客が新しい方針について不満を述べています。)(複数形 clients)
  • Each client is assigned a dedicated account manager. (それぞれの顧客には専任のアカウントマネージャーが割り当てられます。)

「a new client(一人の新規顧客)」、「our client’s(ある依頼人の)」、「Several clients(何人かの顧客)」、「Each client(各顧客)」のように、一人ひとり、あるいは一社一社という「個」として扱われています。

日常会話・一般的な文脈での使い分け

日常会話では、特に高級店や専門店の「客層」を指して「clientele」が使われることがあります。

【OK例文:clientele】(客層・集団)

  • The restaurant’s upscale clientele enjoys the quiet atmosphere. (そのレストランの上品な客層は、静かな雰囲気を楽しんでいる。)
  • The hairdresser is popular among a young clientele. (その美容師は、若い顧客層に人気がある。)
  • That exclusive club has a very specific clientele. (あの会員制クラブは、非常に特定の客層を持っている。)

「客層」と訳すと分かりやすいですね。その店やサービスを利用する人々の「集団」としての特徴を述べています。

【OK例文:client】(個々の顧客・依頼人)

  • My father is a long-term client of that barbershop. (私の父は、あの理髪店の長年の常連客(顧客の一人)だ。)
  • The freelance designer is currently working for three clients. (そのフリーランスデザイナーは、現在3社のクライアントと仕事をしている。)
  • As a personal trainer, I build strong relationships with each client. (パーソナルトレーナーとして、私は個々のクライアントと強い関係を築いています。)

理髪店の客「の一人」、3社の「クライアント」、「個々の」クライアントなど、「個」に焦点が当たっています。

これはNG!間違えやすい使い方

集合名詞(clientele)と可算名詞(client)の文法的な違いを混同すると、不自然な英語になってしまいます。

  • 【NG】 We interviewed ten clientele about their satisfaction.
  • 【OK】 We interviewed ten clients about their satisfaction. (我々は10人の顧客に満足度についてインタビューした。)

解説:「clientele」は集合名詞なので、通常「ten clientele」のように数を数える直接の対象としては使いません。個々の顧客を数える場合は、可算名詞「client」の複数形「clients」を使います。

  • 【NG】 Each clientele must sign the contract.
  • 【OK】 Each client must sign the contract. (各クライアントは契約書に署名しなければならない。)

解説:「Each(各々の)」の後には単数形の「client」が適切です。「clientele」(顧客層全体)という集団が署名するわけではなく、集団を構成する「個々」の「client」が署名するからですね。

  • 【NG】 The new store attracts many clienteles.
  • 【OK】 The new store attracts many clients (or customers). (その新しい店は多くの顧客を集めている。)
  • 【OK】 The new store attracts a diverse clientele. (その新しい店は多様な顧客層を惹きつけている。)

解説:「clientele」を「clients」と同じ感覚で複数形「clienteles」にするのは一般的ではありません。「多くの顧客(個人)」と言いたいなら「many clients」です。「多様な顧客層」のように、集団としての性質を述べたい場合は「a diverse clientele」のように単数形で使います。

【応用編】似ている言葉「customer」「guest」との違いは?

【要点】

「customer」は商品やサービスを「購入する人」(店や企業の客)を一般的に指します。「client」はより専門的なサービス(法律、デザイン、コンサルなど)の「依頼人」というニュアンスが強いです。「guest」は「招待客」や「もてなしを受ける客」(ホテル、レストランなど)を指します。

「client」と非常によく似た言葉に「customer」や「guest」があります。これらの違いも明確にしておくと、英語での表現がより正確になりますよ。

「customer」との違い

「customer」は、商品やサービスを「購入する人(顧客)」を指す、最も一般的な言葉です。スーパーマーケットの客、オンラインショップの客、銀行の客など、広範囲に使われます。通常、取引が比較的短期的・一時的である場合や、不特定多数の客を指す場合に多く使われます。

一方、「client」は、先述の通り、弁護士、会計士、コンサルタント、デザイナーといった専門的なサービスや助言を受ける「依頼人」というニュアンスが強いです。関係性がより長期的・継続的、あるいは個別的であることが多いのが特徴です。

「clientele」は、文脈によって「client」の集団(専門サービスの顧客層)も、「customer」の集団(特定の店の客層)も指すことができます。

「guest」との違い

「guest」は、元々「招待客」「ゲスト」を意味する言葉です。そこから転じて、「もてなしを受ける客」というニュアンスを強く持ちます。

そのため、特にホテル、レストラン、テーマパーク、イベントなどで、手厚い「サービス」を受ける「お客様」を指す場合に好んで使われます。「customer」や「client」よりも、より丁寧で、おもてなしの心を示す響きを持つことがあります。

「clientele」と「client」の違いを専門家(マーケティング)視点で解説

【要点】

マーケティング分野では、「client」を「個々の取引相手(BtoBでの企業やBtoCでの個人)」として捉え、その属性や行動を分析(顧客分析)します。一方「clientele」は、特定のブランドやサービスがターゲットとすべき、あるいは既に獲得している「顧客層(セグメント)」として捉えられます。市場分析やブランディング戦略において、自社の「clientele」の特性(例:富裕層、若年層など)を定義することは非常に重要です。

マーケティングや経営戦略の専門家の視点から見ると、「client」と「clientele」は、市場を分析し、戦略を立てる上で異なるレベルの概念として扱われます。

「client」(または customer)は、マーケティング活動の最小単位である「個々の顧客」を指します。企業は「client」のデータ(年齢、性別、購買履歴、ニーズなど)を収集・分析し、個々の顧客の理解を深めようとします(例:CRM – Customer Relationship Management)。BtoBであれば「個々の取引先企業」、BtoCであれば「個々の消費者」が「client」にあたります。

一方、「clientele」は、そうした個々の顧客の集合体ではありますが、単なる集まりではなく、特定の共通点(例:価値観、購買力、ニーズ、ライフスタイルなど)を持つ「顧客層」や「顧客セグメント」という、より大きな単位で市場を捉える際に使われる概念です。

マーケティング戦略を立案する際、「我々の製品はどのようなclienteleをターゲットにすべきか?(例:都市部の30代女性)」といったように、市場をセグメンテーション(細分化)し、ターゲットとなる顧客層を定義するために「clientele」の視点が用いられます。そして、その定義された「clientele」に属する「個々のclient」に対して、具体的なアプローチ(広告、営業など)を行っていくわけです。

つまり、「clientele」は市場分析や戦略立案(マクロな視点)で、「client」は具体的な営業活動や顧客管理(ミクロな視点)で、それぞれ重要な概念となると言えるでしょう。

僕が「client」と「clientele」を混同して報告した体験談

これは僕がマーケティング部門に配属されて間もない頃、ある競合企業の分析レポートを作成していた時の話です。

その企業は、非常にニッチながらも熱狂的なファンを持つブランドでした。僕は、そのブランドの熱心な顧客層について説明しようとして、レポートにこう書いてしまったんです。

“This brand has many loyal clientele.”

自分としては「多くの忠実な顧客層」と言いたかったつもりですが、文法的に非常に不自然な表現になっていました。

レポートをレビューした上司から、赤ペンで修正され、こう指摘を受けました。

「言いたいことは分かるけど、’clientele’ はそれ自体が『顧客層全体』という集合名詞だから、’many’ をつけて複数形のように扱うのはおかしいよ」と。

「『多くの忠実な顧客(個人)』なら ‘many loyal clients‘ だし、もし『忠実な顧客層(という一つの集団)を持っている』と言いたいなら、’a loyal clientele‘ とするのが自然だね。’clientele’ は層全体を指すから、その『数』を言うのは変だろう?」

まさにその通りでした…。僕は「clientele」を「client」の単なるフォーマルな言い方か何かと勘違いしていて、集合名詞であるという意識が全くなかったのです。

「個」を数えるのか、それとも「集団」として捉えるのか。この違いを意識しないと、基本的な文法ミスを犯してしまうのだと痛感しました。「clientele」は「顧客層」という「ひとかたまり」「client」はその集団を構成する「一人ひとり」。このイメージの違いをしっかり持つことが大切だと学んだ出来事でした。

「clientele」と「client」に関するよくある質問

Q. 「clientele」は複数形ですか?

A. いいえ、「clientele」は集合名詞と呼ばれ、単数形(-s が付かない形)で「顧客の集団」を意味します。そのため、通常は “The clientele is…” のように単数として扱われます。ただし、文脈によって複数の異なる顧客層を指す場合に “clienteles” という形が使われることも稀にありますが、一般的ではありません。

Q. 「client」と「customer」はどう使い分ければいいですか?

A. 「customer」は、店で商品を買う客など、一般的・短期的な「買い手」を指すことが多いです。一方、「client」は、弁護士やデザイナーなどの専門家に依頼する「依頼人」や、長期的・継続的な関係性を持つ顧客を指すニュアンスが強いです。

Q. 「a clientele」と「clientele」の違いは何ですか?

A. 「clientele」は集合名詞ですが、特定のタイプの顧客層を指す場合には「a」を付けて「a wealthy clientele」(ある裕福な顧客層)のように表現することがあります。「clientele」と単独で使われる場合は、「その」顧客層(例:The hotel’s clientele…)のように、文脈上特定されている場合が多いです。

「clientele」と「client」の違いのまとめ

「clientele」と「client」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 核心的な違いは「個」か「集団」か:「client」は「個々の顧客・依頼人」、「clientele」は「顧客層全体・集団」。
  2. 文法上の違い:「client」は可算名詞(複数形は clients)、「clientele」は集合名詞(通常は単数形で集団を表す)。
  3. 語源:どちらもラテン語の「cliens(保護を求める人)」に由来するが、「clientele」は集団を表すフランス語を経由した。
  4. ニュアンス:「client」は専門サービスの「依頼人」というニュアンスが強いことがある。「clientele」は特定の店や専門家が持つ「客層」を指す。
  5. 類義語:「customer」はより一般的な「買い手」、「guest」は「もてなしを受ける客」。

これらのポイントを押さえれば、もう「clientele」と「client」の使い分けで迷うことはありませんね。

ビジネスやマーケティングの文脈では、個々の顧客(client)への対応と、顧客層全体(clientele)への戦略の両方が重要です。それぞれの言葉が指す範囲を正しく理解し、自信を持って使い分けていきましょう。カタカナ語・外来語の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。